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科学部部長の理科室閉じ込め 

とん(@kyzn001002)さんのつぶやきに触発されて書きました。
理科室の状況想定にご協力いただいた皆様、ありがとうございます。




「……うむ、参ったな」
 固く閉ざされた理科室のドアを前に、須鳥聖美は途方にくれながらつぶやいた。部屋に二カ所あるドアはどちらもしっかりと施錠され、何度揺さぶってもびくともしない。
 白衣の袖を握り締め、どうにか開けることはできないかと試行錯誤を繰り返すこと3回。検証は十分に再現性を満たし、間違いなく開錠は無理だと証明できてしまった。
「まったく、中に誰かいるのかも確認せずに施錠とは、わが校の安全管理もなっていないな。これでは生徒たちの理学への興味を遠ざける一方だ。嘆かわしい」
 口を尖らせつつ、ずれた眼鏡の位置を治し、腕組みをして深く溜め息。上履きの爪先で交互に床を叩く。
 校内でたったひとりの科学部員兼部長の精力的な活動は、残念なことにそのことごとくを認知されておらず、なかなか一般生徒への理解が伴わない。
 というかそもそも科学部は正式な部活どころか同好会扱いですらなく、単に変わり者の生徒が勝手に白衣を着て理科室を無断で使っているだけというのが実態なのだが――それはノイズなので聖美は無視する。
 科学者はいつも孤独であるのだ。
 見回りに来た教師が誰もいないと誤認してドアを閉めたのも、聖美が休日である土曜日に無断で理科室に入り込み、気付かれないように実験棚の隅に潜んでいたからなのだが――科学者は過去を振り返らない。
「……というかそもそもだ。ドアが内側から開かない仕様になっている構造に誰も疑問は抱かなかったのか?」
 こつこつとアルミ製のドアを叩いて吐息。落ち着かない足取りのまま、白衣姿の少女は室内をうろうろと歩き回る。
 今更な疑問を口にするが、無人の理科室のどこからも反論は帰ってこなかった。
 ひとしきり昨今の若者の理系離れについて嘆いてから、聖美はとてとてと窓の方へと向かう。実験台の下から引っ張り出した椅子の上に登り、眼鏡を持ち上げて窓枠の外を覗き込んだ。
 落下防止用の金網の向こう、開けた窓から見下ろした先には5mほど離れた地面。いかに日ごろ、実践をもって科学の素晴らしさを世に知らしめ広めんとすることをモットーとする聖美とても、いまさら地上5mから重力加速度を体感するために飛び降りる気にはなれない。
 しばし無言で地面を見下ろし――いちど小さく背中を震わせてから、聖美はおとなしく窓を閉めた。
「……整理しよう。二つある出入り口のドアはどちらも施錠されており、内側からの開錠は不可能。奥のドアは薬品室。その先は行き止まりでありどこにも出られない。窓の外は地上3階。むろん梯子や非常階段もない。加えて、今日は土曜日だ。巡回してくる宿直の教師は限られている」
 確か、以前に確認した名簿では、見回りは午前と夕方の2回だけ。つまりあと6時間は誰もやってこない。だからこそ、誰にも邪魔されない今日を見計らって実験の為に理科室に忍び込んだわけだが……
(合鍵を落としてしまったのはいかにも間抜けだったな……)
 棚の隙間に転がり込んだスペアキーは、どう頑張っても引っ張り出すことはできそうになかった。密かに用意するのに随分と苦労したのに、年末の大掃除までは取り戻せそうにない。
「……つまり、要するに、だ」
 顎を擦りながら、ぐるぐると実験台の周囲を歩き回り、聖美は眉をしかめる。じっとして居られず、少しでも考えをまとめるためにはこうして動いている方がまだマシだ。
「要するに、私がこうして閉じ込められてしまったということは疑いようのない事実であることが証明された」
 ぐるりと、ぶかぶかの白衣の袖を広げて宣言する。
 ……いまさら証明するまでもなく当たり前のことだが、聖美には改めてそれを確認する必要があった。
 いや、どうしてもそうやって口に出して確認しておかなければならない、必要に迫られていた。
「そして、おそらく今日の夕方まで、誰も来ない。……この部屋のドアは開かず、私は外に出ることができない、わけだ」
 聖美の日ごろの活動が実を結び、科学の面白さに目覚めたクラスメイトが大挙してここへと押し寄せてくるようなことでもなければ。科学を志すものとして、聖実は無根拠に奇跡を信じるようなことはしないが、それでも今はそれを検討したい欲求にかられている。
 ……つまり。
「つまり――、控えめに言っても、これは、……んっ、……早急に差し迫った危機だ、ということになるな……」
 理科室に閉じ込められてしまった、(自称)科学部部長の4年生。制服の上から纏った白衣の裾、そこから覗く細い脚は、小刻みに小さく震えていた。
 そわそわと落ち着きなく擦り合わされる膝と腿、古びた板張りの床を、上履きが交互に足踏みする。白いタイル張りの床の上、上履きのゴムが擦れて耳障りな音を響かせた。
「んぅ……ッ」
(だ、だいぶ、辛くなってきたぞ……っ)
 理科室の主、須鳥聖美は。
 白衣の下、激しく尿意を訴える下腹部を、スカートの上からぎゅっと押さえ込んで。密室となった理科室のなかでトイレを求め、途方に暮れているのだった。





 ぞわり、ぞわり。断続的に背筋を這い上る感覚。足の付け根にじんと響く熱い疼き。乙女の『水門』を内側から引っ掻くような刺激が、時間と共に強さを増している。
 そっと撫でた下腹部は制服の上からでもはっきりと硬く強張り、張り詰めた欲求がいよいよ限界に近いことを知らせていた。
(こ、これはまずい、かなり……かなり、余裕がないな……っ)
 床の上に足を踏み鳴らし、聖美は落ち着きなく辺りを見回す。
 聖美が最後に水分を摂取したのは今朝の登校前だ。梅雨時の晴れ間、湿度も高く気温も上がる今日の気象状況に合わせ、熱中症を警戒してたっぷりのスポーツドリンクを二杯飲み干した。
 その前に朝食で牛乳をたっぷり飲んでいるので(カルシウムの摂取が身長やバストサイズに影響するというのは迷信に近いことは科学部部長として百も承知であるが、世の中には合理性とは別にすべき努力というものがある)、水分の総摂取量は7~800mLに迫ることであろう。
 翻って、聖美が最後に用を済ませたのは昨晩だ。日付を超えるあたりになって、つい実験ノートを読み返していた時に思いついた実験にすっかり夢中になり、気が逸っていた聖美は、あまり眠れないまま日が昇ると早々に朝食を済ませて家を飛び出した。
 その時に、トイレには入らないままだったのだ。
 真っ直ぐに学校を目指している間も、すっかりそのことについては思い至らなかった。
(まあ、あの時はさほど辛くもなかったし、実験の途中ででも行けば良いと思っていたのだが……失敗だったな……)
 そのまま理科室に忍び込み、実験に勤しんでいるうち、昨晩の夜更かしと睡眠不足から押し寄せた睡魔に負けて、ずりずりと実験台にもたれかかって寝込んでしまったのである。
 白衣の袖を涎に濡らして目を覚ました時には、見回りに来た教師が理科室に施錠をして出て行ってしまったところであり。
 閉じ込められた事を理解するとほぼ同時、聖美は猛烈に高まりはじめた尿意を自覚したのである。 あるいは――そのタイミングで目が覚めたのも、身体が強烈な尿意に耐えかねてのことかもしれなかった。
「……んっ……、ふ…ぅ……はぁ……っ」
 そして30分あまり。無人の密室に閉じ込められ、どうすることもできないまま聖美の排泄欲求はさらにじりじりと高まり続けていた。尿意はいよいよ激しさを増し、波のように断続的に少女の脚の付け根に押し寄せる。
 じん、じぃんっ、と疼く股間の刺激に、思わず息は荒くなり、姿勢はみっともなく前屈み。膝を擦り合わせるような足踏みがやめられない。
 真っ直ぐ立っていられなくなって実験台に寄りかかりながら、聖美は白衣の裾を握り締めた。
「こ、これはっ……まずいぞ……。良くない、たいへんに良くない……っ」
 張り詰めた下腹部、少女のダムを満たす水量は既に危険水位を突破し、すぐにでも水門の解放を叫んでいる。せり上がってくる排水の緊急警報に、聖美は切羽詰まった様子で周囲を見回すが、当然ながら理科室の中にトイレを済ませられるような設備などない。
(ううっ……た、確かにあれだけ水分を摂取したのだから、私の循環器系が正常である以上、生理的欲求は当然だが、な、なにもこんな時に……んぅ……っ)
 揺れ動く腰に意識がもっていかれ、思考が上手く定まらない。白衣の上を何度も握り締め、はあはあと息を繰り返す。
(そ、それに……発汗だってあるはずだ。なにも、摂取した水分すべてが排泄されるわけではない、はず……っくぅっ)
 だが。現実問題として。
 次のあのドアが開くのは6時間後。教師の夕方の巡回を17時きっかりと仮定して、正確には5時間37分後。
 そこまで我慢を続けていることができるのか?
(むっ、無理だ……っ、ぜったい……っ)
 無謀な想像は尿意を刺激する。きゅうんとうねる下腹部に、またこぽこぽと恥ずかしい熱水が注ぎ込まれ、ダムはますますその水位を増す。
 実験台に手をついて、額に薄く汗を滲ませ、聖美は懸命に考えをまとめる。
「こ、このまま待っていて、ドアが開く確率は非常に小さい……。そ、そして、救援の手は望み薄だ……。み、認めたくないが、そ、その前に……っ、」
(げ、限界、が……来てしまう……っ!!)
 思考がそこまで辿り付くのを見計らったかのように、きゅうんっと下腹部が強い尿意を叫ぶ。股間の先端へ走り抜ける痺れに、聖美はとっさにぎゅうっと脚の付け根を握り締めた。
「……ひゃう……ッ!?」
 白衣が皺になるのも構わず、ぎゅうぎゅうと股間を押し揉み、身体を伸び縮みさせる。水門を激しくノックする恥ずかしい水圧を、両手の助けで押しとどめる。
 懸命に堰き止める足の付け根、中には、刻一刻と恥ずかしい熱水が注ぎ込まれ、乙女のダムの貯水量は限界を超えつつあった。
「くっ、……うぅっ……だ、ダメだ。間に、あわないっ……そ、その前に……どうにか……っ、どうにかしなければ……っ」
 この、迫りくる危機を回避するために。
 なんとかして、窮地を打開する方法を見つけなければならない。科学とは自然を理解し克服するもの。科学部部長のプライドにかけて、こんな処で醜態を晒すわけにはいかないのだ。
「ぁ……、だめ、だめっ……っくぅう……ッ」
 もうまもなく、限界がやってくる。それは事実だ。聖美とて理解できている。しかし、こうして密室と化した理科室の中で、聖美が最悪の事態を避けるために選ぶことが可能な手段は驚くほど少なかった。
 まず、当然ながら理科室の中にトイレは無い。それに代わる代替器具、おまるや尿瓶、紙おむつといった正しい方法で排泄を済ませるための器具も――たとえ存在していたからと言って、聖美がそれらを使う気になるかどうかはまた別の話だが――存在しない。
 では、正しい方法での排泄が不可能ならば。それらの可能性が塞がれたならば、次に探すべきものは、論理的に言っても明らかだ。
(……や、やはり、仕方ないのか……っ)
 科学部部長としても。それ以前に一人の乙女としても、あまりに不本意な決断であるが。他に手段がない以上、検討しないわけにはいかない。
(な……なにかの、入れ物に、して、しまうしか……っ)
 液体を中に溜め、保持しておけるような容器。それに、いま聖美を苦しめている悪魔の液体を残らず出してしまえばいい。
 今すぐに、ここで。
 そのなかにオシッコをしてもいい『容器』を使って、トイレを済ませてしまうのだ。
「っ……」
 普段、授業でも使う特別教室で行うなど、到底許されないはずの行為。理科室での排泄。それに少女の理性はありえないと非難を叫びつづけている。科学部部長の合理的な判断は緊急避難としてそれしか手段がないことを訴えるも、聖美の少女部分、乙女の羞恥心はそれを強く拒否し続けていた。
(だ、だが……っ)
 トイレではない場所での排泄。それは少女としての、科学を志すものとして、築き上げた人類の英知、文明を捨て本能への敗北を認めるものだ。
 だが、いまや聖美は、この苦しみから自分を解放してくれるものを喉から手が出るほどに切望し探してしまうほどに、猛烈な尿意と戦い苦悶していた。
(こんなところで、漏らして……しまうわけには……っ!!)
 意地を張っていれば、それこそ最悪の事態に至る。制服を汚し床一面を濡らし――己が惨めに本能に敗北する姿。それこそが、最悪の事態である。その前の段階で被害をとどめるためには、論理的に正しい選択を選び取らねばならない。
「し、しかたない……しかた、ないんだ……っ」
 言い訳を繰り返しながら縋るように見回した理科室の中には、しかし聖美の望む『用途』に適合するものは思いのほか少なかった。まず思い当たったのは床の掃除などに使われるであろうバケツ。しかしこれらは廊下を挟んだ反対側の理科準備室に収められている。理科室に閉じ込められた聖美にはどうしようもない。こうまで綺麗に片付けなくともと思う聖美だが、理科室の掃除を勝手にやっていたのは彼女自身でもあるので強く言えない。
 次に思いつくのは、実験器具であるビーカー類。バケツに比べてそれを求める『用途』に用いることには強い忌避感があったが、背に腹は代えられない。
 しかしこちらはガラス器具ということもあって、戸棚に保管され施錠されていた。地震対策や、生徒が教師の目の届かないところで迂闊に手を出して怪我をしないようにという配慮である。まったくもって素晴らしい安全意識だが、今の聖実にはまるで有り難くない。
 薬品室には当然のようにビン類があるが、これらは大事な試薬を保管するものだ。勝手に開けていいはずがない。
「…………で、では……」
 ちら、と聖美の視線が実験台脇の流しに向けられる。
 実験台に作り付けられたホーロー引きの流しである。室内にある実験台それぞれにこの小さな流しがあるが、どれも狭く小さなものであり、器具を洗浄するならばともかく、それ以外の用途にはあまり使いやすい形状ではない。
 いわんや、切羽詰まった聖美の『欲望』を解消する『用途』には、とてもではないが不向きだった。
 もし、これを『使おう』とするならば、まずは下半身に身に付けているものを全部脱いで、片足を大きく持ち上げ、実験台に足を掛けるようにして大股開きとなり、『噴射口』の角度を調整してやらなければいけない。
「――――っ!!」
 その姿を克明に想像してしまって、聖美の顔はみるみる赤く染まる。まるで、犬が電柱にするマーキングと同じ――いや、それよりも遥かにみっともない姿だ。
(で、っ、できるわけないっ……!! できるわけないだろう、そんなコト……っ!!)
 仮にも科学部部長ともあろうものが、いくら限界だからって、実験台の流しにまたがってだなんて、そんなはしたない真似を――。
 もう、トイレを我慢できないからと言って。
 理科室の流しを使って、オシッコしてしまおう、だなんて。
「だ、だめだっ、ダメに決まってるだろうっ……!!」
 ぶるぶると首を振って、聖美は懸命に頭の中からイケナイ想像を振り払う。下着を脱ぎ、スカートを腰の上まで持ち上げて、流しの排水口めがけて猛烈な勢いで黄色い水流を噴射させている自分の姿。禁忌の想像に、股間が逸るようにじゅっと熱い湿り気を滲ませた。
「だ、駄目だっ!! だ、第一、ここは実験廃液しか流してはいけないことになっているんだぞ……!? 普通の排水とは別に、中和処理がひつようなはずで……っ」
 猛烈な勢いで、ホーロー引きの流しの中へと叩き付けられる『乙女の排水』。流しの排水口に流れ込んでいったそれらの液体が学校の処理装置まで辿り付き、専用の中和槽に蓄えられる光景。
 排水に異常がないかを確認するために『分析』され、普段とは違う『検査結果』から、自分の行為を克明に暴き出されてしまう様子までをも想像してしまって、聖美はとうとう頭から煙を吹いた。
「だ、ダメだ! とにかく駄目だっ!!」
 ばん、と実験台を叩き、聖美は妄想を振り払う。興奮したせいでさらに尿意が募り、しばらくそのまま俯いてぷるぷると震えたまま動けなかった。





(っ……ぁ)
 次々に塞がれる選択肢――切羽詰まった事態の中でいよいよ募る猛烈な排泄欲求。激しさを増す足踏みの中、まとまらない思考を垂れ流し、ぐるぐると理科室を歩き回った聖美が、何かないかと必死に探し回ってついに見つけたもの。
 それは、教卓の隣の流し台にひっくり返して乾燥中の、200mLのメスシリンダーであった。
「…………」
 ちょうど、何かの実験にでも使われた後、濡れていたので戸棚にはしまわれなかったのだろう。流し台に一本だけ取り残された、細長いガラスの計量容器。溶液を計量するのに用いられる実験器具である。
 聖美はその小さな計量器具を前に、長い逡巡をはじめていた。
(……っ……に、200mL……か)
 縋るように握り締め確かめたガラスの計量器具。細く頼りない口を開けた細長い目盛りは、200の数字を刻んでいる。それがこのガラス器具の測り取れる最大容量。貯めておける液体の量になる。
(た、たしか……私の年代の少女の場合、ぼ、膀胱の許容量は……平均して、300mL程度……だったはず……)
 200mLのメスシリンダーでは、少しばかり量が不足している。いや、この目盛りより上まで中身を入れることは可能だが――だとしてもとても300mLには及ばない。精々が230~240mLというところ。
「っ……」
 ぎゅっと閉じ合わせた腿の上、張り詰めて強張った下腹部をそっと白衣の上から撫でる。じんと響く尿意は、胃袋の下あたりまでむず痒く感じられる。今なおココに溜まり続け、その量を増している水量は、果たしてこのガラス軽量器具に納まりきるだろうか?
(摂取した水分量が、……700mLと、して……全量は排泄されないはずだから、400……いや、500mLくらいか? いや、食事からも水分は摂取されてしまうし、そもそも……それ以前に、さ、昨晩から、私は、その、トイレに行っていない、のだから……その分も……っくぅっ……)
 ぶるると少女の背中が震える。身体を押し付けられ震動の伝わった実験台の上で、小さくメスシリンダーが震えた。
(っ……待て、落ち着け……冷静になれ。……わ、私は、控えめに言って、あまり……認めたくないことだが、事実として、同級生よりも、発育の良い方ではない。つ、つまりは、それだけ……身体の各所の部位が、小さい……小ぶりである、ということだ。それは、お、おそらく臓器だって同じことのはずだ……)
 ここまでは間違いない、と小さく口の中で繰り返し、聖美はきゅっと唇をかむ。
(つまり、ということは……同年代の少女の平均に比べれば、我慢できる量も、少ない、はずだ……。で、あれば、私の場合であれば、なんとかこれに納まるだけの量ということだって、ありうる……お、おかしくはない、違うか……?)
 細く口を開けたガラス計量器の小さな口を見つめ、自問する。目盛りを超えて擦り切り一杯、推定240mL。
 それくらいの差であれば、なんとかなるのではないか。
 聖美の思考は、科学の敗北ともいえる、根拠なき希望的観測に傾いていく。
 じんじんと高まり押し寄せる強烈な尿意の波は、傍目にも甘い見積もりであると聖美の都合のいい想像を強く否定していた。
 しかし、今の聖美には目の前の客観的事実よりも、自分を励ましてくれる希望的観測を強く求めている。
 それは、客観的な事実と正確な実験結果に基づき、論理立てて推考し、合理的な決断を下す、科学部部長としての立場を自ずから否定することに他ならない。
(っ……はぅ……くぅう……ッ)
 だが、もはや。迫りくる原始の欲求に悶え苦しむ少女に、そのことは思い至れない。

 あれだけ水分を摂取して。
 昨日からずっと我慢を続けていて。
 これだけ猛烈な尿意を訴えるオシッコが、そんなささやかな量であるはずがないのに。

 少しでも冷静になれば自明の結論。だが、閉ざされた密室の中、他に解決手段を持たない少女は、偽りの結論が導く放水の誘惑から視線を背けられない。
「し、しかたない……しかたないんだっ……ほ、他に、どうしようもないっ!!……こ、これ以上っ……んぁぅ……が、我慢、できない……、んだっ……!!」
 ぶるり、と大きな震えが少女の腰を震わせる。それは、間もなく限界が訪れようとする合図。これまで以上に激しい大波が、一気に押し寄せてくる予兆。
 時間がない。もはや躊躇している余裕はない。決断の時だ。
「こ、これに……済ませる、しか……っ!!」
 赤くなる頬を自覚しながら、聖美はぐっと唇を噛みしめ、ついにメスシリンダーを掴んだ。手近な実験台の陰へ回り込むようにして、白衣の前を広げ、スカートを持ち上げる。
(っ……ううっ、こんな、……この私が、こんなこと……っ!!)
 羞恥を堪えながら、下腹部をぴっちりと覆う下着――凹凸の少ない体型に良く似合う、飾り気のない薄いブルーの下着を膝下まで引き下ろす。剥き出しになる白い肌は、余計な産毛ひとつない綺麗な乙女の証だ。
 いまも小刻みに震える下腹部は、耐え続けた尿意にうっすらと膨らんでいた。
「っあッ、だっ、だめ、まだ……ッ」
 遮るものの無くなった股間が、触れた外気の刺激に反射的に緩みそうになる。狭い放水路にたちまち注水が開始される。短い排水路、出口付近に感じる熱い刺激に、聖美は激しく身をよじって抗った。まだ準備は終わっていない。そう言い聞かせて下腹部をなだめ、腰をくねらせつつスカートの端を口に咥え、卓上のガラス容器を掴む。
(あ、だっ、だめ、で、出るぅうっ……!!)
 既に聖美の下半身は排泄の準備を整えていた。メスシリンダーに手を伸ばした瞬間に、排泄をはじめてしまっていたと言っても過言ではない。
 待ちきれないというように、尿意の解放に歓声を上げていた。心持ち広げた脚の足の付け根に、少女は握り締めた細長いガラス容器を近付ける。
 改めて見ると、頼りないほどに小さく狭いガラス容器の入り口。普段使うトイレの何十分の一と言う小さな『的』めがけ、その中に納まるように狙いを絞り、勢いを調節し、角度を定めて放水をコントロールせねばならない。
 だが。酷使された括約筋はもはや精妙な制御を失っていた。ガラスの丸い口が勢いあまって触れた刹那、その冷たい刺激に反応して、少女の股間からぶしゅうっ、と激しい水流が弾け、あどけない花弁を押し開くように熱水が噴出する。
「ぁ、んぅ、ぁ、んぅぅうっ」
(や、っ、やだ、だめっ、こ、こぼれちゃうッ!?)
 聖美が小さな身体で耐え続けた熱水の解放は、限界まで膨らんだ水風船の反動となって、強烈な水圧をもって乙女の水門から放たれた。

 ぶじゅうぅううウウゥッ!! びじゅっ、ぶじゅひびちゃびちゃっ!!

 桜色のスリットを突き破り、はじけ飛ぶ黄色い噴出。装丁していた角度や勢いとは全く異なる、スプリンクラーのごときオシッコの噴射だった。まっすぐ下ではなく身体の前方、前に向かって噴き出した乙女の恥ずかしい噴水は、聖美が構えていたメスシリンダーの丸い口を大きく外れ、ガラスの外壁に弾かれて飛沫を撒き散らし、四方八方ばちゃばちゃと床に飛び散ってゆく。
「んぅ、ぁぅふ、ふああ……ッ」
 スカートを噛んだまま思わず声を上げる聖美。とっさに水門を絞り、排泄を止めようとするが、しかしいったん静から動に転じた水流を押しとどめることはもはや不可能だった。括約筋はいうことを聞かず、半開きになった隙間からぶじゅうぅう、しゅうううっと断続的にだらしなく水流を迸らせる。
 また、同時に猛烈な尿意の噴出は途方もない解放感となって少女の腰を貫いていた。身体の芯を突き破り、足元へと吹き出す乙女の恥水に、腰骨が震え恥骨から響く甘い感覚が少女を蕩かす。

 ぶじゅじゅじゅうっ、じゅばっ、ぶじゅじゅううううううっ!!

(だ、だめ、らめっ、っ、こ、こぼれ……っ、あぁあぅ、は、入らないっ、う、うまく、中にっ、止めなきゃっ、止め、っあっ床っよ、汚れっ、あ、あああぁあっだめでるっでる、でちゃう……でちゃぅううぅうぅッ!?)

 じょじょわああっ、ぶじゅ、じゅうぅぅ、しゅっ、しゅうぅぅうっ……
 ぷしゅっ、ぶじゅぶじゅじゅじゅうぅうううううっ!!
 びちゃびちゃばちゃっ、じゃぼぼぼっ、ぶじょぼぼぼぼぼっ!!

 荒い息で眼鏡を曇らせ、スカートを咥えたまま、両手で構えたメスシリンダーを懸命に動かして、噴き出すオシッコを受け止めようとする聖美。しかし少女の下半身は快感にうねり、勝手に動いてしまう腰の下で水流は蛇のように曲がりくねって左右に跳ね、小さなガラスの口に角度が合わない。
 噴き出す水流は計量器具の入り口をかすめ、外側にぶつかり、目盛りを濡らし、激しく飛沫いては跳ね、メスシリンダーをきつく握り締めた聖美の手までを直撃していく。ぶかぶかの白衣の袖が熱い水流に直撃され、みるみる水を吸って重くなる。
「んふ、んうぅ、ふぁ、む、ううううぅ……ッ!?」
(だ、だめ、っ、でる、止まらな、あぁあっ、だめ、ちゃ、ちゃんと、ちゃんとし、なきゃっ……、なっ、なか、入れなきゃっ、このなかにオシッコ、しなきゃ、出さなきゃ、いけない、のにぃ……ッ!!)
 焦れば焦るほど、水流はガラスの口を外れるばかりだ。全開になった水門から思い切り吹き出す水流はあまりに野太く激しく、消防車の放水すらを思わせる。その勢いはとどまることを知らず、メスシリンダーの入り口をはみ出してなお床に飛び散るばかりだ。わずかに底に溜まった、20mLばかりの液体がガラス容器の中でちゃぽちゃぽと揺れる。
「ぁ、ぁふ、は、ぅうう……ッ!!」
 この状況で、容器にオシッコを受け止めるなど無茶極まりない。聖美のしているその行為は、ガラス器具に噴き出すオシッコを直撃させて、その飛沫で理科室の床一面を汚しているようなものだった。
「っ、っふ、ぅぅう、ぁ、あぁあッ……」
(な、なんで、止まら……止まらないのっ……!? ゆっ、床、服も、汚れっ……お、オシッコするトコ、壊れっ……ちゃった……っ!?)

 ぶじゅっ、じゅぶ、じゅうぅ、
 びじゅじゅっ、じゅぼぼぼっぼぼぼぼぼぼぼっ!!

 目に涙を浮かべ、ついに自暴自棄になって聖美は、ガラスの口を直接、排泄孔に押し付けた。水流迸る水門を、むりやりその小さなガラス穴にねじ付ける。
 とたん、メスシリンダーの状況は一変した。これまで無為にオシッコを浴びせかけられるだけだった細長いガラス容器は、たちまちその中に猛烈な勢いで黄金色の液体を注ぎ込まれてゆく。
 200mLの目盛りなど、ほんの一瞬で突破して。
 少女の股間に押し当てられたメスシリンダーはたちまち満水となり、その許容量を突破した。この程度の容量では、限界寸前の聖美の膀胱の代わりなど、とても務まらないとばかりに。
 なみなみ注ぎ込まれオシッコに耐えかねるように、メスシリンダーの口から黄色い水流が噴き出し溢れ落ちはじめる。

 ぶじゅぅっ、じゅぼぼぼぼっ、ぶじゅじゅぶぶうっ、
 びちゃびちゃびちゃっ、じゃぼぼぼぉぉばばばばっ!!!

「えっ、あ。ぇう、っま、待ってっ、な、なんでっ、なんで、こんなに、いっぱいっ……、で、でちゃうの……っ!?」
 平均300mL。事前知識による『同年代の少女』の基準値を、圧倒的に上回る大量排水。
 剥き出しの股間に押し当てられたガラス容器は、黄金色の液体で満水になって、なお噴き出す水流は行き場を失くし、無毛の少女の恥丘を跳ね、透明容器から溢れ落ちる。
「っ、やだっ、やだああ! なんでこんな、こんなに、っ、オシッコ……ッ、いや、いやあ!! 出ないで、止まってぇっ……!!」
 飛び散る飛沫に、自慢の白衣も薄黄色く染まってゆく。弱々しい抵抗の中、口元まで並々とオシッコを注ぎ込まれたガラス容器を握り締めたまま、聖美はさらに足の付け根の恥ずかしい部位から、激し水流を迸らせ、オシッコを噴き出し続けた。
 メスシリンダーを溢れさせ、床一面に飛び散り、なお弱まる様子を見せない水流は、太腿を跳ね水圧で四方に散りながら、下着を濡らし、上履きをびしょびしょに湿らせて、理科室の床に降り注ぐ。
 200mLのメスシリンダーで言うならば、目盛りの上限を突破し満水にして溢れさせ、さらになお3回以上。
 聖美のオシッコがようやく勢いを弱め、止まった頃には。
 少女が物陰に隠れて下着を降ろしてから、ゆうに3分近くが経過していた。
「うぅうっ……ぐすっ……」

 しょろっ……しょろろろ……ちゃぽっ、ぽちゃっ……
 ぷしゅうぅっ……

 なおもダムに残る水流が、名残惜し気に滴り落ちる。自慢の白衣を薄黄色に染める、恥ずかしい失敗の痕跡。科学部部長ともあろうものが、原始の欲求に屈してしまった証。
 股間に押し当て、握り締めた200mLのメスシリンダー、それをすっかり満水にしてなお外に溢れ零れ。
 床一面に広がる黄色い水たまりは、1辺30センチはある理科室のタイルをゆうに10枚近く占領し、見事なまでの『大海』を築いていた。
 池や湖とはとても呼べない、閉ざされた理科室に出現したオシッコの海原。その成分サンプルのように、びしょ濡れの手で握り締められたメスシリンダーの中身。
 まるでその床の面積こそが、少女のオモラシ――大失敗の規模を測るとでもかのように、聖美の足元でオシッコの海はなお四方へと広がり続けていた。




 (書き下ろし)
[ 2018/06/28 22:32 ] 小説 | トラックバック(-) | コメント(-)

お嬢様とドアガチャの話。 

久々に。
もう少し丁寧にお嬢様感をちゃんと出すべきかなという反省があります。




「見て、龍ヶ﨑様よ」
「今日もステキ……あぁ、どうしたらあんなにお淑やかになれるのかしら」
「ご、ごきげんよう、絵梨さま!」
「ええ、ごきげんよう」
 ぴんと背筋を伸ばし、顎を引いて。身体の軸をぶらさずに、歩幅も均一に校舎を颯爽と歩く。多くの下級生たちが思わず見惚れるのも無理はない。龍ヶ崎絵梨はこの生え抜きのお嬢様が集う鶺鴒女学院でも一目置かれるお嬢様である。
 幼少の頃から徹底した礼儀作法を躾けられたその立ち居振る舞いは、いついかなる時も余裕を持ち気品に溢れ、洗練された一挙手一投足には常に感嘆が漏れる。
 そんな彼女であるからこそ、当然のように学院では風紀委員を務め、多くの生徒の模範となるように日々を過ごしていた。
「ごきげんよう、絵梨さま。今日はもうお帰りですの?」
「ええ、少し先約がありますの。……申し訳ありません」
「そんな、お気になさらないでください!」
 いつもと同じように慎ましやかに受け応える絵梨の、しかしほんのわずかに口元を歪ませるその『要因』に思いを巡らせる者は誰もいなかった。
 常に学院生徒の模範となるべく率先して振る舞う彼女が、いつもより態度に焦りを滲ませ、足取りも心なし先を急いでいる――そのことを感じ取れるものは、絵梨に憧れを抱く下級生の中にもいなかったのだ。
(………っ)
 その仕草をおくびにも出さず、穏やかな笑顔を見せる少女の下腹部では――はち切れんばかりの尿意が、今にも限界と暴れ回っていたのである。
 女性にとっての洗練された振る舞いの中に、『それ』が求められる以上、絵梨は当然のように、排泄の不自由を克服するための訓練も受けていた。常に衆目の中にあって、醜態をさらすことが無いように。幼少時から、みだりにトイレの欲求を顕わにすることの無いよう、徹底した躾けを受けているのである。
 絵梨の下腹部のダムの貯水量は、平均的な成人女性の許容量を軽々と数倍上回る千数百ミリリットルにまでに至り、括約筋と排泄孔周辺のその強靭なコントロールは、まさに中世の淑女が謳われた『貴婦人の膀胱』と呼ばれるに相応しいものになっていた。
 だが、それをもってしてもなお、この時の絵梨の感じている尿意は、耐えがたいほどに強烈なものだったのである。さまざまな巡り合わせによって、昨晩から一度も解放を赦されなかった乙女の水門は、刻一刻と水位を増すダムの水圧に懸命に耐え続けている。
 無論、絵梨はそのような窮地にあっても決して取り乱すことなく、猛烈な排泄欲求を飲み込んで平然と振舞う術を身に着けていた。しかしそうやって洗練された振る舞いを続ければ続けるほど、少女の下腹部に溜まり続ける羞恥の熱水はなお膨らむ一方であり、抑えつけた排泄欲求はなお激しい衝動となって少女を襲うのであった。
 出来る限りのさりげなさを装って、そっと制服の上から下腹部をさする。本来ならばこれすら、赦されぬ振る舞いであるが――既にそのことを気にしているほどの余裕は、深窓の令嬢からは失われつつあった。
 制服のスカートを幾分きつく張り詰めさせる下腹部。むろん、1リットル半にも及ぶ尿意を堪えたところで、絵梨の下腹部はみっともなく身体のラインを崩すことはない。鍛えられた腹筋によって、膀胱は体外に膨らむことなく、少女のおなかの内側へとその容積を拡大している。
 だが、そうやって足の付け根の水門から大きく遠ざけるように、じんと熱く重い水風船を『抱え上げ』続けた少女の身体も、徐々に強烈な生理現象に音を上げつつあった。
 先を急がんと急ぐ足元がわずかに乱れ、歩道のタイルを踏む震動が、身体のうちに溜め込んだ黄色い水面を揺らす。たぷんっ、たぷんっと音を立てそうな猛烈な水量が、きゅっと閉じ合わされた乙女の水門にぐっと圧し掛かる。
 少しでも気を抜くと、脚の付け根の奥で下品にひくひくと綻びそうになる乙女の花弁を、意識してぎゅっとすぼめ閉じて――こうして意識することすら、絵梨の身に着けた淑女の規範と照らし合わせればはしたないと咎められるべきものだが――少女は学院からの帰途を急ぐ。
 孫娘を世間知らずの箱入りお嬢様にしたくはないという祖父の意向もあり、社会勉強という建前で、絵梨は自家用車の送迎を断り、自宅からの通学にバスと電車で行っていた。どちらも片道5分ほどの短い距離ではあるが、常ならば学友や下級生と共に歩く道を、絵梨は足早に急ぐ。
(っ……、はやく、しないと……)
 こわばった表情の下、自然に歯が噛み締められる。
 切羽詰まった欲求は、鍛え抜かれた絵梨の制御をして、もはや一刻の猶予もないところにまで達していたのである。
 不幸な巡り合わせは続き、学院の化粧室は下水のトラブルが起き、急遽工事が行われていたのである。本校舎のトイレが軒並み使えなくなったため、下級生たちが押しかけて列を作っていた旧校舎は大混雑となっていた。それを押しのけるようなことは、絵梨にはできなかったのだ。
 と言って、帰途の途中にある公園の公衆トイレや、コンビニのトイレなどは、当初から絵梨にとって使用を許されるようなものではなかった。仮にも学院の制服を身に着け、その振る舞いを求められる立場にあって、深窓の令嬢たる彼女が駆け込んで良いものではないのだ。
 せめて、送迎用の車があれば、自宅に急ぐ方法もあったろうが――
 じんじんと、足の付け根に響く、下品にして抗いがたい誘惑。ずっと拒絶し続けてきた欲求が、いよいよ弱り始めた絵梨の心を籠絡せんと暴れている。ぎゅっと引き結んだ唇、汗ばむ手のひらを握り締め、絵梨は急ぐ。
 この時間、バスのやってくるのは15分おき。普段なら大した時間ではないが、一分一秒を争う今の絵梨には永遠にも等しいものだ。それに、生徒たちが並ぶバス停の前でじっと立ったまま、彼女たちの視線に晒されながら、悟られないように表面を取り繕うのは、今の絵梨には難しいだろう。
 ならばせめて先を急ぎ、足を動かしている方が、いくらかでも気分がまぎれる。
 落ち着い佇まいの商店街。優良な学院の子女に悪影響を与えるような誘惑はない。
 絵梨が、点滅する赤信号に募る焦りを抱えながらも足を止めたその時だ。
 きゅうん、と、脚の付け根を深く貫く感覚――抱え込んだ羞恥の熱水を揺さぶり動かす、猛烈な尿意の『波』。それに絵梨はぞくりと背中を震わせる。
(んぅ、はぁ……ぅっ!?)
 たちまち、抱え込んだ水圧に耐えかねるように、ひく、ひくと閉じ合わせた敏感な花弁が震え始める。知らず開きそうになる乙女の秘所を、咄嗟に気を引き締めてぎゅうっと抑えつけ、絵梨は大きく息を吐いた。
 暢気に音楽を鳴らす信号の点滅を見つめながら、令嬢の足元は落ち着きなく、数度地面を叩く。もはや絵梨が身につけた淑女の振る舞い落第の、落ち着きない有様。
 だが――執拗に少女の水門を攻め嬲る尿意はいや増す一方。一方的に注ぎ込まれてゆく下腹部の恥水は、乙女のダムの危険水域を突破し、なお増える一方である。1リットル半もの貯水量がもたらす尿意は、想像を絶する苦痛となって、絵梨を脅かしていた。清楚な乙女の肢体を包む下着、ぴったりと身体に寄り添った布地の奥で、乙女の秘書がいやらしく蠢いてしまうのを、絵梨はもはや抑えられない。

 だめ、
 でちゃう。

 本能の上げる警告に、絵梨は戦慄した。乙女の理性を消し飛ばす、原始的で下品な欲求が、限界を訴えている。もはや家までなんてもちそうもない。それどころか、あらゆる羞恥をかなぐり捨てて、駅のトイレを使うことを許容したとしても、そこまで粗相をせずに辿り付けるかも、怪しい。
 一瞬でも気を抜けばそのまま排泄をはじめてしまわんとする下半身の切なる訴えに、絵梨は一気にパニックに陥った。
(っ、だ、だめ、このまま、じゃ……っ)
 細く震えた喉がひゅっと音を立てる。絵梨は突き動かされるように辺りに視線を巡らせ――交差点のすぐ向こうにある、落ち着いた佇まいの喫茶店に目を止めた。
 煉瓦造りに蔦を這わせた外観に、ガス灯を模した装飾。メニュを丁寧に記した黒板。質素ながら洒落た佇まいの外観は、駅前の喧騒とは無縁にも思える。その穏やかな雰囲気は、絵梨の突発的なワガママでも、優しく許容してくれるような印章を与えた。
 もはや、形振り構っている時間はない。絵梨は焦れるように信号が変わるのを見届けるや否や、足早に交差点を渡り切り、真っ直ぐにその玄関をくぐった。
「いらっしゃいませ」
 落ち着いた受け答えの、初老の店員に、内心の焦りを押し殺して――躊躇に震える唇を小さく開く。大丈夫。ちゃんと、落ち着いて。恥ずかしがればそれだけ、醜態を晒すことになる。
「も、申し訳ありません、不躾なお願いなのですが、あの、――お手洗い、を」
「ああ。……どうぞ。奥にありますよ」
 貸してくださいませんか、と最後まで口にするよりも早く、店員は絵梨の意図を察し、汲み取ってくれた。示された先をはっと振り仰ぎ、じっと注視してしまってから――絵梨は慌てて我に返り、頭を下げる。
「あ、ありがとうございます、スミマセンっ」
 声が震える。頬が紅くなる。いくら限界寸前だからと言って、人前でこんなに、あからさまに自分の欲求を曝け出して――乙女の羞恥が、刻み込まれた淑女の躾が、みっともない己を責め苛む。
 顔を伏せるように足早に、店の奥へと小走りに急ぐ絵梨。
 言い終わるよりも先に要件を把握されたということは、今の絵梨は傍から見ていてもはっきりとわかるほど、『その欲求』に支配されている有様で、それをまったく隠せていないということになる。
 そのことを改めて把握させられ、少女の頬は羞恥に染まり、鼓動が激しくなる。

 ――いちど正規の客として、なにかお店に注文をすればよかった――
 ――訴えるにせよ、いきなり口にするべきではなかった――
 ――せめて、入る前に一回立ち止まって、深呼吸するくらいしていれば――

 赤点塗れの自分の振る舞いに、無数の後悔が押し寄せる。かあっと耳の後ろ、首筋まで熱くなるのを感じながら、絵梨は示された店の奥へと走り込んだ。
 店の奥の少し奥まった通路を右に曲がった先、小さな喫茶店のトイレは、店内の装いに恥じぬ落ち着いた佇まい。利用者もそう多くないからか、意匠を施された男女共用を示すプレートが掛けられている。本来、男性も使うことのあるトイレに入るなど許されないが――緊急避難で駆け込んだ今、そんなことは言っていられない。
 潔癖な心が騒ぐ忌避感、嫌悪感を非常事態だとねじ伏せて、絵梨はドアノブへと手を伸ばした。同時に返ってくる、がちゃんという固い手ごたえ。
「え、っ」
 余りにも間抜けなことに、その事態は絵梨にまったくの想像の埒外であった。それだけ彼女の余裕がなかったということでもある。
 絵梨にとって、入り口で店員に声をかけた瞬間から、この可能性はすっぽりと頭から抜け落ちていた。いや、あるいは無意識のうちに、限界を訴える原始的な欲求に耐えかねるように、この可能性を排除してしまっていたのかもしれない。
 トイレが使用できない状態にあることなど、想像もしていなかったのだ。がちゃんと重い手ごたえを返すドアノブ。
 開かないはずはない。
 この事態にあって、絵梨が最初に向いた意識は、あろうことは其れだった。他の可能性を全く無視し、不具合を訴えるドアノブを反射的に両手で掴み、何度も動かしてしまう。噛み合ったような重い手応えと、ドアを揺らす激しい金属音。
 だが、無情にもドアは開かない。開くはずがないのだ。
 見下ろしたドアノブの下には、『使用中』を示す、赤い表示が見えていた。
「ひぁ……ッ」
 そのことを理解して、絵梨の頭は瞬時に沸騰した。
 誰かがトイレを使っている――そんな可能性ぐらい、想定しておくべきだった。そうでなくとも、せめてドアノブの下の表示を確認するぐらいのこと、いくらなんでもできるはずだった。
 絵梨はそれらを怠って、もう、完全に個室に入れる者だと決めつけ、ドアノブを押し開こうとしたのだ。――もし、中にいる相手が、万が一にも施錠を忘れていたりしたら、開け放ったドアの向こうにその様を暴き立ててしまう可能性すらあったというのに。
「っ…………」
 しかし、絵梨はそのことにも思い至らず、開かないドアをつい反射的に、ガチャガチャと鳴らしてしまった。はっとしながら、絵梨は手を離すが――もう遅い。中にいる誰かには、いま個室の向こうに居る絵梨の存在と、彼女がどれだけ切羽詰まっているか――使用中の表示を確認する余裕もなく、ドアノブを激しく鳴らすほどの追い詰められているかを、思い切り宣言してしまったに等しいのである。
 一気に混乱のさなかに陥った絵梨に、容赦なく下腹部の欲求が襲い掛かる。ドア一枚を隔てた先に、この苦痛から解放してくれる場所があるのだと知った排泄欲求が、少女に激しく訴えかけた。
「んぅッ!? ぅく、はぁあぁッ……」
 思わず口元を抑えた手のひらから、なおも抑えきれぬ喘ぎがこぼれる。ぎゅうっと内股のみっともない姿勢を強いられ、押し寄せる尿意の大波に抗した。緊張に敏感さを増した膀胱が、伸びきった組織を急速に収縮させんとする。水風船の出口を塞いだ水門へと、猛烈な水圧がのしかかった。
 がく、がくと腰を動かしつつ、絵梨は大きく足を踏み鳴らす。
 トイレの個室のドア前で、ついにご令嬢は脚の付け根を制服のスカートの上からぎゅうっと押さえ込んでしまった。皺の寄ったプリーツスカートの間に、少女の手のひらが挟み込まれ、もじもじと下半身がよじり合わされる。
 人前では決して――いや、たとえ誰も見ていなくとも、絶対にしてはならないはしたない姿。しかし、今の絵梨はそうでもしなければ、1リットル半にも及ぶ猛烈な尿意を押さえ込むことすらできない。
 待望のトイレを前にして、少女の排泄器官は絵梨の意志を無視して歓喜を上げていた。堪えてきた、抱え込んできた羞恥の熱水を、一気に出口へと向けて押し動かそうとしている。
 ぶるぶると震える下腹部奥のダムの衝動に怖気を走らせながら、絵梨は必死になって足の奥の衝動を押しとどめ、耐えようとする。だが――
 じんっ、じぃんっ、じんっ、じゅっ……
 懸命にい押しとどめる脚の付け根の奥。ぎゅうっと挟み込まれた下着の間に、不穏な感覚。直後に広がるじわりと熱い湿り気は、錯覚ではなかった。
「っ、だ、駄目……っ」
 じわり、ぴったりと脚に圧しつけられた下着の股布に広がる、熱い感触。決してあってはならないもの――おチビリの、感触。
 自分のしてしまった「お粗相」に、身体を慄かせて、絵梨は蒼白になった。
 ありえない、してはならない、やってはならない。
 こんな歳になって――? まさか、本当に――!?
 だが、少女は驚愕にうち震えている暇などなかった。間をおかず再度の猛烈な波が、少女の股間を炙るように責め苛む。ぎゅうっと抑えつけた奥で、乙女の花弁が内部からの水圧に耐えかねたようひくひくと緩み、押し開かれようとする。
 女の子の部位を懸命に閉じすぼめようとする絵梨と、それを無視してこじ開けようとする羞恥の熱水。必死の綱引きが、少女の心を弄ぶ。
「あ、ぁ、あぅ……ッ」
 ぱくぱくと口を開閉させながら、絵梨はとっさに、目の前のドアを見た。
 ノブの上の表示は相変わらず赤色――使用中。
 切羽詰まった衝動に突き動かされるまま、絵梨は拳を固め、ドアを激しくノックした。二度、三度。硬い響きが狭い個室の前の空間に響きわたる。

 コンコン、
 コンコンッ!

 ――もう一度。再度、硬いドアを叩いて、絵梨は訴える。

 だめなんです。おトイレ、オシッコ、我慢できないんです。
 早くしてください。おトイレ入れてください。

 切なる訴えはしかし、なんの反応もないままだった。焦りと共に叩かれたドアのノックとは対照的に、返ってくるのは無機質な静寂。絵梨の焦燥を無視するかのように、個室の反応は静まり返っている。
 はあぅっ、と息を引き攣らせながら、絵梨はその場で足踏みを繰り返した。もし学院の生徒が通りかかったならば、あまりのことに目を疑う格好だ。不恰好におしりを突き出し、左右に激しく揺り動かしながら、もじもじと身をよじり、太腿を擦り合わせ、交互に足踏みを繰り返す。お嬢様の模範たる姿とはとても呼べはしない。
 手のひらの一方は、ぎゅうっと脚の付け根に挟みこまれ、スカートの上からき付く股間の布地を掴み。
 もう片方の手のひらは、通路の壁紙に爪を立て、体重を預けるように壁に伸ばされ、かと思えば制服の下腹部を懸命に撫でさする。身体の内側に抱え込んだ、下品な衝動に支配されて、猛烈な我慢を繰り広げる――学院の誰もが憧れ見惚れる先輩の姿である。
 半開きになった唇からは、はっ、はっと熱い吐息がこぼれ、かと思えばぎゅうっときつく引き結ばれて、きつく歯が立てられる。激しく悶え動き回ったかと思えば、突然ぴくんと背筋を反り返らせてその場に静止する。
 その時、猛烈な排泄衝動の波が、乙女の水門をこじ開けようとしているのを、懸命のおんなのこの大事なところ――乙女の恥ずかしい花びらを閉じ合わせて抵抗しているのを、詳らかにしている。
 激しい身悶えと苦悶の最中、絵梨は目元に涙すら滲ませてドアを睨む。
 一向に開く様子のない目の前の個室。今の絵梨にとって何夜も重要な、大切な場所、待ち焦がれたトイレ。おんなのこの欲望を解消するための場所と、いっこうに解放してくれる気配の見えない、意地悪な先客。
「っ……」
 形振り構っている余裕などなかった。絵梨は再度、きつく拳を握り、ドアを叩く。さっきよりも強く――何度も。

 ゴン、ゴンッ、どんどんッ!

 それは、余裕を失った少女の切なる訴え。今まさに下腹部を占領しつつあるみっともない欲望を、そのまま形にしたかのような叫び。
 繰り返されるドアの連打は、そのまま、少女の股間で閉ざされた水門を執拗に叩き続ける排泄衝動、尿意の波の衝撃そのものだった。
「んぅッ、くっ――!!」
 いまや全身が余すところなく、せり上がる切実な尿意を押さえ込むのに手一杯。他の事をしている余裕などないのに――ノックのためには、どうしても手のどちらかを離さなければならない。
 喉の奥に呻きを堪え、はげしくぎゅうぎゅうと身をよじりながら、絵梨は込み上げる羞恥の中、激しくドアを叩いた。

 どんどんっ、どん! どんっ!

 それでもなお、個室の中からは何の応答もない。ここに駆け込んでから――恥を忍んでトイレを貸して欲しいと訴え、まっしぐらにここに駆けつけてから、どれくらい時間が過ぎたのだろう。これだったら、まっすぐに駅を目指していた方がまだよかったのでは? こんな寄り道をせず、あの、駅の奥にある公衆トイレを使う決断をしていれば、もうオシッコを済ませていられたのでは? いや、今からだって遅くないかもしれない――

 ひく、ひくっ、きゅうううぅんッ、じぃいんッ……

「んぁあああッ…!?」
 堂々巡りを始めた少女の懊悩を打ち砕くように、強烈な尿意の塊がおなかの奥からせり上がってくる。とっさに両手を使って脚の付け根を握り締め、絵梨はその場に身を硬直させてぶるぶると背中を仰け反らせた。
 じわ、じわと脚の付け根に広がる感触が、じっとりと少女の内腿に広がる。激しい水圧の高まりを懸命に『出口』から遠のけながら、絵梨ははあはあと息を荒げた。気のせい、汗に決まっている、お粗相なんかしていない――そう自分に言い聞かせようとしても、込み上げてくる尿意は、閉じ合わせた花弁の内側に渦巻き、ぷくりと排泄孔を盛り上げる恥ずかしい熱水の感覚が、少女の感傷を叩き壊す。
「っ、は、っ、あっ、……くうぅうッ」
 熱水の欲求を体内に押し止めながら、ぎゅうっと唇を引き絞り、絵梨はきつくドアを睨みつけた。
 相変わらず無反応なドア――固く施錠され、赤い『使用中』をふてぶてしく示し続ける個室の境界。
 もう一刻の余裕もない。本当にもう、間に合わない。
(つ、次に、今みたいな、波が来ちゃったら……っ)
 いや増す下腹部の水量、限界水量の1リットル半を超えつつある、下腹部の熱水が、羞恥の熱にぐらぐらと湧き立ち、激しく出口を求めて噴きこぼれんとしている。疲弊した下腹部の水門が耐え切れないことは想像に難くなかった。
 ぞっとする背筋に怖気を感じつつ、絵梨はもう一度、きつく拳を固め――
 睨むようにしてドアを見るよりも先。予想よりもはるかに早く尿意の波は突然に押し寄せた。
「っあぁああっ!?」
 ぞくぞくと下半身が震え、内股になった脚が大きく上下する。ぎゅっと閉ざしていたはずの水門、その細い水路にたちまち通水が行われ、出口に向けてぴゅっ、ぷしゅっと熱い雫を噴き上げた。
「い、いや……ァアッ」
 喉を引き攣らせ、絵梨はそのまま個室のドアにしがみ付いた。
 お粗相――オモラシの恐怖に我を忘れ、ご令嬢は激しくドアノブを握り締め、がちゃがちゃと乱暴に動かし揺さぶった。
 固いドアを鳴らし揺らす振動に、施錠されたノブがぎしぎしと金属音を軋ませる。
「っあ、っ、あ、っ、あああっ!! っダメ、っ、はやくっ、はやくしてぇ……!!」
 今まさに、下腹部を襲う猛烈な尿意の大津波。少女は体内からの衝動に突き動かされ、衝動のままにドアに拳を叩き付ける。

 どんどんッ、がんがんっ、どんっ、どどどんッ!!
 ガチャッ、ガチャガチャガチャンッ! どんどんどんッ!!

「あ、開けて、ッ、ねえ、ドア、開けてっ……おねがい、開けてくださいっ、こ、ここ、おねがい、おねがいしますッ……!!」
 哀れな懇願が絵梨の喉から絞り出される。嗚咽塗れの叫びと共に、少女の脚は激しく床を踏み鳴らした。揺さぶり動かされる、閉ざされたドアノブのガチャ音と、扉を叩く激しいノック、そして床を踏み鳴らす足音。三つのビートは、空前絶後の尿意に晒された少女の魂の叫び。
 そして、それに重なる、必死の懇願。
「ねえっ、おねがいします、開けて、っ、開けてくださいっ、と、トイレ、っ、トイレ、間に、あわなっ、ッあぁああっ……お、おねがいっ」

 がんがんっ、がんがんがんっ!!
 ガチャガチャッ、ガチャンッ!!

「お、おねがいします、お、っ、お、わたし、と、トイレ、っ、お、おしっこ…っはあああっ、……オシッコ、がまん、できないんですっ……」
 ああ。なんとしたことだろう。
 少女はついに、その下品な欲望を露わに、その可憐な唇を震わせてまで個室の中に訴えかけたのだ。
 開かないドア、待たされ続けた時間、限界を訴える下半身。もはや外面を取り繕う余裕など一切ないまま、己の心のうちまで詳らかにして、叫ばねばならないほどに、迫り来る尿意に絵梨は追い込まれていたのだ。

 どんどんっ、どんどんどんっ、ガチャ、ガチャガチャっ!!

「お、おねがいします、おねがい……ッ、と、トイレ、オシッコっ……、わたし、も、もうっ、オシッコが、漏れちゃいそう、なんです……ッ」
 あらん限りの声を振り絞り、必死になって訴える。固く閉ざされたドアの向こう側に広がるであろう楽園を思い描き、排泄の予兆にゆっくりと開き始めた女の子の花弁を懸命に押さえ込んで、叫ぶ。
 じわり、じわり、脚の付け根で下着が湿り、透けるように張り付いて、乙女の肌にぴったりと濡れ透けさせてゆく。
「っはあ、はあっ、おねがいします、代わってくださいっ、おねがいしますっ……トイレ、おしっこ……ガマン、出来な……ぁああっ、くうぅう……っ!!!」
 1リットル半もの痛切な尿意に急かされた訴えに――しかし個室は依然沈黙を守り――否。

 こん、こん。

 これまで頑なに、静寂を保っていた個室の中から、それは確かに聞こえた。
 絵梨の熱のこもった切望とは、正反対の、無機質なまでの、静かなノック。
 己の尿意を開示し、その程度や状況まで、羞恥身に塗れたプレゼンまでして訴えた少女の恥辱に関してはまるで取り合わない、ただ単に、確認事項だけを示す、事務的な反応。
 すなわち――

 『中に居ます』

 というだけの、反応。絵梨の訴えなどまるで別次元、ドアノブの赤い『使用中』となんら変わらない、この個室が現在、使われていることだけを示す。一方的な通告。
 だが――それは、絵梨にとっては、無慈悲なまでの対話の拒否に近かった。
 全身を戦かせながら、少女は再度、ドアにもたれかかるように身を寄せた。下半身を擦り合わせ、足踏みを繰り返しながら、
「っ、あ、あのっ、あのうぅっ!! す、スミマセンッ、ぁ、あのっ……っ、ぉ、おねがいします……っ!!」
 再度、痛切なノックを伴って、少女の熱を帯びた声が返る。体をくねらせ、腰を揺すり、喉を震わせて。
 内部からの応答は、ある意味での希望でもあったのだ。このドアが故障や何かの事情で施錠されているのではなく、きちんとトイレとして使用することのできる場所であることの証明であった。つまり、自分の順番が来れば、中に入ることができれば、おしっこができる。
「お、おねがいします、っ、なっ、中に、入れてくださいっ、おねがいしま、すっ……、わ、わたしっ、もう、ガマン、っ、我慢できないんですっ……!!」

 こんこんっ、コンコンっ!!

「も、もう、本当に、げ、ッ、限界で、っ、っくぅう……ガマン、できな、っ、ああああっ、はあ、はあっ、お、おねがいします、おねがいします……で、出ちゃう……本当に、お、オシッコ、ッ、オシッコが、、でちゃんですうううっ!!!」
 見るも無残に、深窓のご令嬢がそのプライドをかなぐり捨てて、みっともない欲望を叫ぶ。固めた拳をドアに叩きつけ、施錠されたドアノブを必死に揺り動かして。お嬢様の慎ましやかな姿などもはや影も形もない。力づくでドアを押し破ってでも、そのまま個室の中に飛び込んで、己の欲望のままに下品な衝動を解消すると言わんばかり。
 そこまで我を失うほどに、たまりに溜まった1リットル半もの尿意は、激しく少女の下腹部で煮詰められ、絵梨を追い詰めていた。
「ッ、ゥ、はぁあああああンッ……だ、め、でちゃう、ッも、もれちゃ、ゥ、ッお、おしっこ、オシッコ、おしっこォおっ!!!! ト、トイレ、トイレ、させてくださいっ、おねがい、開けて、トイレ、おといれぇえええ!!」
 堰を切った絵梨の欲望は、剥き出しのままドアへと叩きつけられる。このドアの一枚奥に、理想郷が、おトイレをしても良い場所があるのだ。だから、入らせてください、排泄を許可してください。それを訴え、強請ろうとする。
 分からずやの先客に、理解を促すために。もうどうしようもないのだと、分かってもらうために。恥も欲望も全開にして、自らかなぐりすてたお嬢様のプライドを、自分自身で踏みにじりながら、もっと恐るべき恥辱を、絶望を回避するために――叫ぶ。
 そんな、必死にも切実な叫びの合間。
 がちゃがちゃとドアノブを激しく動かした絵梨が、息を荒げて、もう一度拳を力の限り、拳を叩き付けんとしたとその時だった。


「――ゴホンっ」


 咳払い。
 はっきりと、騒乱の空白に聞こえたそれは、間違いなく個室の奥からのもの。
 ノックの他に示された新たな意志表示。それはつまり、騒ぐドア向こうの絵梨をたしなめる性格をもつもので――しかし、それ以上に、遥かに明瞭に伝わるのは、つまり。
 その咳払いが、あきらかに男性の、それも幼い少年のものではないとわかる、――もっと言えば年配の男性の発したものであるということ。
 地位も立場もあるであろう異性の相手から、はっきりと、絵梨に対して不快を示したものであるということ。
(ぇ、っ…………)
 少女の頭が真っ白になる。
 そう、まったく迂闊な事にも、この瞬間まで。
 絵梨は、この個室を占領している相手が誰であるかをまるで考えずにいた。いや、そのこと自体は責められるべきことではないかもしれない。切羽詰まった尿意に苦しめられ、その衝動に抗うことに精いっぱいだった。
 なによりも、絵梨はもともと箱入りのお嬢様である。幼稚舎から筋金入りの女子校に通い続けた深窓のご令嬢にとって、男女共用のトイレというものは、存在としての知識はあっても、実際に経験のない設備だった。
 普段から乙女の学び舎、異性の姿のない清らかな温室で育てられた生え抜きのご令嬢は、この個室の前に辿り付いたときから、無意識のうちに閉ざされたドアの向こうにいる相手の可能性から異性の存在を除外してしまっていた。
 こうしていま自分が、ドアの前に待たされ、今から中に入ろうとしているのだから、当然のようにいま個室の中に居る『先客』も自分と同じ、女性であるのだと。そう思い込んでしまっていたのだ。
「ぁ……ッ」
 だからこそ、ああもはしたなく限界を訴え、必死にドアを叩いた。同じ性別の相手になら、切実な状況を理解してもらえると思ったから。許容こそなくとも共感はあるのだと、そう思い込んでいた。切羽詰まった頭ではそうとしか考えられなかったのである。
 ひゅ、と少女の喉が細い音を漏らす。
 困惑と、混乱と、羞恥と――あらゆる衝撃が綯い交ぜになって、乙女の思考を塗り潰す。
 ああも、必死に、大胆に――恥もなく己の尿意を叫び、トイレに入れて欲しいと叫び続けた絵梨の心は、いまや冷や水を被せられたように萎縮を始めていた。
 あろうことか、
 見ず知らずの相手に、
 それも、男性に対して、
 はしたなくも、全力で、足を踏み鳴らしスカートを握り締め、ドアを叩きノブを揺さぶって、オシッコ漏れちゃう、出ちゃう、我慢できない、とと連呼していた事実を、
 絵梨は改めて眼前に突きつけられたのである。
「ぁ、あうぁ、っあ」
 その衝撃もはや、限界寸前の少女にとって受け入れることのできないものであり。最後に堪えていた乙女の一線を打ち破るに十分なもの。
 すべきを論ずるならば、絵梨は今すぐにでもこの場を離れ、できることならば喫茶店も辞して、他のトイレを探すべきであったろう。

 こん、こん。

 再度、落ち着き払ったノックの音。お行儀の悪いことはせず、大人しく次の順番を待てと、教え、諭すような――ドアの前の絵梨の礼儀をたしなめ、叱責するように。
「あ、う、ご、ごめ――すみま、せっ」
(ぁ、あっあぁああぁッ)
 条件反射のように、謝意を口にしかける絵梨。だがもはや、尿意は少女に他の行動を許さなかった。

 しゅるるる、しゅうぅっ、しゅううゥうううう―――ッ

 1リットル半もの羞恥の熱水は、もはやひび割れたダムの水門で支え止めることは叶わなかった。
 抑えつけたスカートの下、閉じ合わせた太腿の間。乱れることの無いプリーツの裾の奥に、ご令嬢に相応しい気品と、清楚なたたずまいを併せ持っていた上品な下着が、みるみるを色を変えてゆく。
 屈辱の尿意と押さえ込む指でくしゃくしゃと握り締められ、湿り気を帯びていた下着に、乙女の水門を突き破った熱い水流が噴きつけられる。
 股布にぶつかりぷしゅううっと禁忌の音を響かせたオモラシの先触れがは、瞬く間に白い下着を侵食し、熱い水流は布地の保水力を超えて白い肌を流れはじめる・
「ぁ、あああっ、だっだめっだめぇえっ!!」
 ガクガクと膝を揺すり、前かがみになってドアに手をつき、くねくねと腰を揺する絵梨。しかし突き出されたおしりでは、ぷしゅっぷしゅうっと
断続的に熱水がスプレーのように噴射されては濡れぼそった下着にぶつかて、恥辱に染み濡れる面積を広げてゆく。
 ぴったりと少女の股間に張り付き、濡れ透けた下着は、おチビりの解放感に上下に揺すられる少女の腰の動きに合わせ、じゅじゅっじゅじゅううっと下品な水音を響かせながら、足元に水滴を撒き散らした。

 しゅうっ、しゅうううううぅっ、じゅじゅじゅうぅうぅっ。

 もはや、おチビリでは済まされない大量の噴出。小さなおしりを包む布地は熱い液体にびしょびしょに浸されて、制服のスカートにまで大きく染みを広げてゆく。きつく握られた制服、プリーツの裾からもぴちゃぴちゃと雫が滴り始めた。
「ぁあああっ……ぁ、いや、いやぁああアアァ……ッ」
 しゅううううっ、しゅるるるぅっ、しゅううっ、内股になって押さえた制服は、大量の水を吸って重さを増し、トイレの床に広がる水たまりからは、長時間の我慢が培った濃い臭いが立ち昇る。およそ――清楚なるお嬢様が人前でさせてはならないものだ。

 ぶじゅじゅうぅつっつじゅじゅじゅじゅうぅうううっ……
 びちゃびちゃびちびゃっ、ちゃぱぱぱっっぶじゅじゅぶぼぼぼっ……

 狭い個室。ドアの一枚隔てたトイレを前に、『してはならない場所』での、ご令嬢のオモラシが、盛大に床に飛び散りはね返る。
「あ、あっあああぁ、あっ、あっ、…あぁーーッ…」
 腰骨を貫き背筋を這い上がる、猛烈なまでの解放感。下半身を暖かなお湯にでも浸したような心地よさ。じゅうっしゅうっと色濃い熱水を噴出させながら、緊張の糸が切れたご令嬢の下半身は、理性のコントロールを失い、着衣のままの排泄を受容してしまう。
「はぁあ……ぁあああああっ」
 熱い吐息と共に、閉ざされたままのドアにもたれかかった。
 あたかも、ここが『そう』であるかのように。こうして、下着も下ろさずスカートもたくし上げず、下半身をびしょびしょに汚してオモラシをすることが正しい作法なのだと言わばんばかりに。
 あまりにも見事な、風紀委員長の――ご令嬢のオモラシ。
 がくがく震える膝が、堰を切ったように溢れ出す水流が、ばちゃばちゃと少女の革靴を濡らし、足元に大きく広がってゆく。お洒落なタイル張の床には排水溝などなく、色とりどりの模様は少女の下腹部に蓄えられていた特濃のオシッコの黄色に覆われ、なおその勢力を広げていた。
「ふぁ……ッ」
 がくん。ついに力を失ってぺしゃんと崩れ落ちる少女の下半身。地面に落ちてばちゃんと飛沫を立てた少女の股間、捲れたスカートの隙間から、布地を貫通して、羞恥の熱水はなお激しく、いよいよ制御をうしなって激しく噴き出す。
 自分の排出する水流の勢いの中、令嬢のプライドをも粉々に砕き流し去りながら、絵梨はオモラシを続け――
 ようやく今になって、ドアの奥では水を流す音とともに、個室のカギを外す音が聞こえてきた。



 (2018.2.25 書き下ろし)
[ 2018/02/25 23:23 ] 小説 | トラックバック(-) | コメント(-)

同人誌の通販をはじめました。 

「し~むす!16」で頒布した同人誌の「泉会のおねえちゃん先生」の通販をはじめました。
本ブログに掲載している「子供達とバスの中のお話」「保育園のお話」の加筆修正版です。
表紙と挿絵イラストをこおりみず様(@kohri_Ms)に描いていただきました。

◆通販ページはこちらとなります。(製本直送.comのオンデマンド印刷サービスです)
http://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=167712639


泉会のお姉ちゃん先生_表紙

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[ 2017/11/03 10:32 ] 小説 | トラックバック(-) | コメント(-)

お姉ちゃんが頑張る話。 

長年お蔵入りにしていた作品。とある閉鎖サイトの作品のストーリーの一部(「順子の羞恥日記」)をお借りし
そのまま自分なりのアレンジで書いてみた習作。
細かい描写はともかく起きる展開はほぼそのままなので公開していいものか迷っていたのですが
元のページが一切見れなくなって10年以上過ぎているのでとりあえず公開。




 新築のマンションが立ち並ぶ、首都圏のとある住宅街。
 大きな幹線道路に面したバス停には、子供を連れて通園バスを待つ大勢の主婦達に混じって、制服姿の少女の姿があった。
「もー。正樹、じっとしてなさい。もうすぐバス来るから」
「はーい」
 この春市内の高校に進学した井上美春は、歳の離れた弟の手を引き、主婦達の列に並ぶ。
「おはよう美春ちゃん。毎日大変ねぇ」
「ホントです。こいつももー少し落ち着いてくれれば手もかからないのに」
「頑張ってるものね、美晴ちゃん」
 弟が生まれてから離婚してしまった両親の間で、姉弟はそれなりに逞しく生きてきた。一応父親の元で暮らしてはいるが、家事のほとんどは美春の担当である。
 こうして歳の離れた正樹を連れて、私立の小学校行きのバスを待つのも、日課の一つであった。
「それにしても遅いわねぇ」
 隣のスーツ姿の女性が腕時計に視線を落とし、いらだたしげに薄化粧をした顔をちょっと歪める。
 覗きこんでみれば時間は朝の8時を少し回った所だった。
 いつもは時間きっかりに迎えに来る路線バスだが、今日はなぜか遅れているらしい。
 目の前の信号に並ぶ大型トラックがいらだたしげに空吹かしを繰り返していた。
「いやねえ、事故かなにかしら。こんなに混んじゃって」
「ですね」
 美春は隣の奥さんに頷きしながら爪先を立てて背伸びをする。びっしりと車で埋まった道路の隙間に目を凝らしても、白と緑の車体は影も形も見当たらない。
 高校の始業は8時45分。ここから自転車を飛ばせば10分と掛からないとは言え、美春の心にも少し焦りが産まれはじめていた。
「ねえお姉ちゃん、どうしてバスこないのお?」
 元気いっぱいの子供たちは、そろそろ我慢の限界を迎え始めているらしい。正樹もいい加減痺れを切らして、美春の制服の前のスソを上下に引っ張り駄々をこねだした。
「うーん。もうちょっとだと思うから待っててね。正樹」
「……んぅ? ……お姉ちゃん、どおしたの?」
「え!? べ、べつに何でもないわよっ。ほら、捕まってないで離してってば」
「うん」
 鋭い弟の指摘に内心ぎくりとしながらも、美春は平静を装って答える。
「……にしても遅いなぁ」
 爪先でとんとんと地面を叩き、きゅ、とスカートを押さえて。
 美春の額にはいつの間にかうっすらと汗がにじみはじめていた。

 


 学校が変わり、生活が変化したせいか美春は少し体調を崩していた。馴れない環境への疲れか、はたまた宿題か気晴らしの夜更かしのせいか、今朝は見事に寝坊をしてしまっていたのだ。
 昨日床についたのは夜中の2時。目が覚めたのは7時半過ぎで、父はとっくに出勤していた。美春はそれから超高速で朝食を作り着替えて支度をし、正樹を急かして家を飛び出した。
(こんなことならもっとゆっくりすればよかったなぁ……せめてトイレくらい行っておけばよかったよ……)
 父親の給料日ということで大好きなキムチ鍋などを夕飯に作ったせいか、寝る間際にジュースなんかをぱかぱか飲んでいたのが悔やまれる。黙って出ていってしまった父を少しだけ恨めしく想いながら、美春はそわそわとため息をついた。
 恐らく、父も疲れているであろう美張るをできるだけ寝かせてやろうと思ってくれたのかもしれないが、それは余計な心遣いと言うものである。
(そんなんだからママにも愛想尽かされちゃうんだぞ……)
 はぁ、と声にならない溜め息と共に、美春は再び渋滞の列に視線を戻す。
 できるだけ、身体の中に生じ始めた感覚を気にしないように。
(気のせい、気のせい)
 しかし、言い聞かせるたびにぞわりぞわりと込み上げてくる感覚は、一分一秒ごとに強さを増し、徐々に美春の下腹部を支配しつつあるのだった。
「ホントに遅いわねぇ……何やってるのかしら」
 スーツの女性が苛立ちをあらわに踵を踏み鳴らす。何人かの主婦達も今後の予定を控えているのだろう、バス停の周辺の空気は次第に不穏なものになりつつあった。
 長針はそろそろ8時20分を刻みつつある。
「ねー、まだ~?」
「もうちょっとだから、ね、我慢して」
 正樹に言い聞かせるように、美春はつぶやいてこっそりと足に体重を掛け直す。さわわ、と背中を駆け登る感覚を押さえ込むように、さりげなく膝を交叉させた。
 もう、これは気のせいでは済まない。
(あー、マズいかも。トイレ行きたいな……)
 はっきりと、トイレに行きたいと感じるほど美晴は本格的に尿意を覚え始めていた。
 先ほどから感じていた尿意は、すでにかなりのレベルまで少女の身体の中で膨らんでいる。それを意識すまいとすればするほど、下腹部に溜まった鈍い重みはその総量を増していく。
 しくんっ、と震える下腹部をなだめるようにそっと手を添える。わずかに膨らんだ感触は、軽く押しこむと弾力を持って跳ね返り、おなかのなかのとんでもない状況を知らせていた。
(ええと……今朝はトイレ行ってないし――昨日お風呂入る前も……え、ひょっとして……ごはんつくる前からずっと? ……ちょっとヤバいんじゃないそれって……ぁうっ)
 そう確認してしまうと、尿意は加速度的に増大を始めてゆくようだった。
 意識しないうちに腰が揺れ、爪先に力が入る。
 不自然な格好で我慢をしようとすればするほど、少女の身体を苦しめる尿意はその勢力を増し圧力を高めてゆく。
 暴れだした尿意の鈍痛は、徐々にその全貌をあらわにし始めていた。考えてみれば、寝る前に口をつけた2リットル入りのお茶のペットボトルには、まだ半分以上中身が残っていたはずなのだ。
 今にしてみれば、飲んでいる時なぜトイレにいきたくならなかったのかが不思議なくらいだ。
(うー……まだ、かなぁ……) 
 そわそわと落ち着きをなくし、尿意に苛立ち始めた美春はまた腕時計に目を落とす。8時20分を数分過ぎてもなお、バスの姿は見えなかった。通勤時間にしてはありえないほどの遅延である。
 周囲の主婦達の焦燥も、次第に形を取り始めている。
 そして、美春の我慢も次第に激しさを増しつつあった。
(……んぅっ…やば…ホントに、おしっこしたくなってきちゃった……
 どうしよ……トイレ、行って来ようかな。でも、バス来ちゃうと面倒だし……正樹放って置けないよね。……これ以上、待たせちゃうのも……ぁうっ)
 美春に要求される辛抱の度合いはとどまることを知らない。そろそろ外面を取り繕うのも難しくなってきた。
 意識をはじめてからわずか十数分。かなりの危険水域まで達し始めてきた尿意は大きな津波を作り、ざわざわと美春の膀胱で暴れ出す。
 きゅうんっ、と収縮した下腹部にあわせて、美春は息を詰まらせた。
(んん…っ……くぅ、…ぁうっ……)
 少女の全身を巡り、生命活動を営んだ結果の水分が抽出され、女の子の最も恥ずかしい場所に蓄えられてゆく。一晩掛けてじっくり煮詰められ、用意されたおしっこが美春の“お母さんのいない家でも平気なりっぱな優等生”の余裕を次々と奪い去る。
(くぅ……ぅ…ぁう…)
 尿意の波は収まらない。引いては返す排泄衝動はわずかの余裕すらも与えないまま、美春はだんだんと“おしっこなんかしたくありません”というポーズを取り続けることも辛くなってきた。
(や、やだぁっ……くぅんっ……なんで…こんな、急にぃ……っ……。さっきまでっ、全然…平気だったのに……)
 そう。いくらなんでもこんな短時間に美春の膀胱におしっこが溜まったわけではないのだ。
 美春は知る由もないことだが、美春の下腹部は彼女が起きる随分と前からこの危険な状況にあった。
 人間は睡眠中は起きているときに比べて尿意を覚えにくい。全身の筋肉は弛緩しているせいで普段よりも膀胱が拡張し、さらに足元ではなく背中に向けて重力がかかるために圧迫をも免れる。自律神経も緊張から解放されることで、我慢できる量は通常よりも遥かに多いものとなる。
 それほど尿意を感じなくとも、早朝の排尿の量が日中のものに比べて多いのもそのためだ。
 そして、夕食のときのちょっとだけお相伴に預かった父の晩酌のビール、辛いものを食べ過ぎたせいでの就寝前の2リットル近い過剰な水分摂取、昨晩の夕食の支度からから一度も行なっていない排泄、気候の変化によって汗をかかずに済んだことなど、様々な条件が重なった結果、美春の体内には実に普段の許容量の二倍を越えるおしっこが溜まっていた。
 これは彼女と同年代の少女の平均を遥かに上回るものであり、圧倒的な尿意を催すのに十分なものであった。美春の目覚めと共に活動を始めた自律神経は、1時間という時間を経てからおうやくそれを確認し始めたのである。
(で、ちゃううっ……)
 もはや、危険、どころの話ではない。
 美春はきつく膝を押し付け、不自然にならない程度に腰をかがめる。
 人目さえなければ、恥も外聞もなくしゃがみ込み思いっきり股間を握り締めていただろう。爆発的に高まる尿意と戦いながら美春は震える唇を噛み締めて耐える。
「…………?」
 先ほどから小刻みに震えだした美春の様子を、彼女の制服の袖を持ったまま正樹が不思議そうに見上げる。
「お姉ちゃん?」
「…………っ」
「お姉ちゃん? ねえ、どうしたの? ねえ?」
 返事がない事を不審に思い、正樹は美春の袖をくいくいと引っ張る。
 だが、ぎゅっと手を握り締め排出孔を打ち破ろうとするおしっこを必死に塞き止めている美春には、それに気付く余裕はなくなっていた。
「ねえ、お姉ちゃんってばっ!!」
 正樹は気付いて貰おうと、袖を握る手にさらに力を篭めてぐいぐいと乱暴に振り回した。
「……っ!! あっいっいやっ!! だっ、、だめぇえっ!!」
 たたらを踏んだ美春の股間に凄まじい衝撃が走る。
 どうにか安定を取り戻しかけていた膀胱が一気に収縮し、中にぱんぱんに詰まったおしっこを噴き出そうとする。美春はたまらずぎゅうっと両手で股間を押さえてしまった。
「ううっ……ぁっく…くうううっんん、んあああっ…!!」
「お姉ちゃんどうしたの? おなか痛いの?」
「くぅ……ま、正樹…っだめ……」
 下腹部を抑えたままよろけてつまずきそうになった体勢でなんとか踏み止まり、美春はスカートに爪を立てる。熱い吐息を唇の端からこぼしながら、美春はどうにかその衝撃をやり過ごした。
 限界まで張り詰めた括約筋は、皮一枚のところで収縮を繰り返し、崩壊の時を乗り切ったのだ。ほんのわずか、排泄孔に接する下着の股布にじんわりと染みが広がるが、美春にそれを感じる余裕はない。
「ま、正樹っ……も、もう少しだ……から、我慢……し…なさい……っ!!」
 正樹に言い聞かせると、美春はぎゅっとスカートの裾を掴んで足元に引っ張り下ろす。ローファーの爪先はピンと伸び、アスファルトの上で落ち着きなく揺れている。
 もう一刻の猶予もままならなくなってきた。少しでも力を抜いてしまえば、そのまま地面の上に誤魔化しようのない水たまりを作ってしまうだろう。
 羞恥に頬を染めながら、美春は浅く早く息を継いで、辺りに視線を向ける。
(ぁあ……どうしようっ、どうしようっ……おしっこ…でちゃう……っ、おしっこしたいよぉっ……)
 美春はきょろきょろと周囲を窺った。ここはマンションが多い区画ではあるが、200mほど先にはコンビニがある。もっともそんな場所まで尿意をこらえて走るくらいなら、自宅のマンションまでは20mだ。エレベーターを使う時間を考えてもまだ余裕がある。
 今すぐバスが到着し、正樹を送り出してからエレベーターに飛び乗り、自宅に戻ってトイレに駆け込む――そして待望のトイレに辿り着き、女の子が誰にも見せずに個室で行う行為の過程を思い描いて、美春ははぁぁ、と背筋を震わせる。
 トイレで、おしっこ。
 それだけの行為を、こんなにも心から待ち望んだ事はなかった。
「……く……ふ…っ」
(ぅぅ、はやく来て、よぉ……)
 けれど、それも全てバスが来てからのことだ。今はただ、美春は必死におしっこを我慢しつづける以外の選択肢はない。
(はやく……はやく……)
 いくらなんでもそろそろ来るはずなのだ。あと少し、少しだけと胸の中で繰り返しながら、美春はきゅっ、きゅっとローファーを鳴らす。
 そんなことを脳裏に巡らせている美春の後ろで、やはり子連れの奥さんが首をかしげた。
「ねえ、美晴ちゃん、さっきからどうしたの、そんなにそわそわして」
「…んぅ……えっ? は、はいっ」
 唐突の大きな声に、とりあえず返事をした美春だったが、すでにまともな受け答えをできる状況ではなかった。
「どこか具合悪いの? 無理しない方がいいわよ。ただでさえ美春ちゃん、色々頑張ってるんだから。もっと息抜きしてリラックスしないと」
 話しかけてくるおばさんの声は、かなり大きなボリュームだった。ただでさえバスの待ち時間で焦れている人々は、ちょっとした異変にも敏感だった。周囲の視線が何事かと一様に美晴のほうに集まってくる。
「え、ええと……その、べつに……」
(や、やだ……見ないでよっ……く、うぅうっ……が、我慢できなくなっちゃうぅ……)
 注視に晒されて、美春これまでは辛うじて取っていた前傾姿勢も、膝を交差させる我慢ポーズも取れなくなる。漏れそうなおしっこを我慢する事すら許されない苦痛に、美春の胸は激しく高鳴った。
 同時、羞恥に晒され、美春の下腹部で再び強烈な尿意の波が巻き起こる。
(えっ、や、やだっ、嫌ああっ!!)
 膀胱の中でおしっこが渦を巻き、出口に向かって殺到する。それに抗する美春の水門は徐々に力を失くし、ひくっと悲鳴を上げて引きつる。
「ねえ、美晴ちゃんてば。本当にだいじょうぶ?」
「ぅく、…は、だ、だいじょぶ……です」
「ちょっと……大丈夫じゃないわよぉ。顔真っ青じゃないの」
(やっ、触らないでよぉっ……!! お願いいっ!!)
 額に伸ばされた奥さんの手を振り払いたくなるのを美春は必死にこらえた。
 ただでさえわざわざ話しかけてくるような(しかも桁外れに声の大きい)お節介なおばさんだ。ここで美春がくねくねと身体をくねらせ、腰を揺すりでもして必死におしっこを我慢している仕草を見せてしまえば、『あらあら大丈夫? おトイレ? おしっこなの?』とでもみんなの前で大声で報告してしまうだろう。
(そんなの、絶対にイヤっ……)
 いい年をして、家を出る前にトイレにも行っておかなかった、ちゃんとおしっこも済ませられない女の子。
(と、トイレのしつけもできてないなんて言われちゃったら……っ)
 そんな事になれば、美春は明日から生きて行けないに違いない。
 真っ赤になっておしっこを我慢していた女の子。通勤、通学の人通りの最中で、その存在が目立たないはずはないのだ。ただでさえ父子過程ということで美春の家は注目を集めやすい。この上美春の恥態が知られれば、おしゃべり好きのおばさんたちに噂話の格好の材料を提供してしまうことになる。
 おばさんの問いかけに真っ青になって首を振りながら、美春は渋滞の車の列を睨みつける。
(まだ……なのっ!?)
 時計は8時25分を示していた。まだバスの影は見えない。
 背中を冷たい汗がひとすじ、ふたすじと這い降りてゆく。
「ねえボク、お姉ちゃんどうしたの?」
「わかんない。でもさっきからなんかヘンだったよ? いつもあんなことでおこったりしないのに」
 美春が答えなくなったことで、おばさんは質問の相手を正樹に切り替えたようだった。見知らぬ顔だということもなんのその、おばさんは持ち前の『誰とでもお話できるオーラ』を駆使して正樹と話し始める。
「そうなの。困ったわねぇ」
「うん。お姉ちゃんどうしたのかな……」
(ばか……余計なこといわないでよっ……き、気付かれちゃうじゃないっ……)
「やっぱり、お母さんがいないといろいろ大変なのかしらねぇ……」
(違うわよっ……そんな、そんなんじゃないのっ……)
「ねーねーママ、お姉ちゃんびょうきなのー?」
 正樹と隣の女の子が心配そうに美春のことを案じているため、おばさんはこれ幸いと美春の顔をじろじろと眺め回してくる。美春は失礼という単語を知らないらしいおばさんから不機嫌を装ってぷいっと視線を反らした。
 ――お母さんがいないから。
 それは、美春が一番言われたくないことだ。確かに普通の家とはちょっとだけ違っているが、そんなことでとやかく言われたくはない。だからこそ、美春は暴走しそうになるぱんぱんの膀胱を力ずくで捻じ伏せて、必死に平静を取り繕うのだった。
 しかし、そんなことで美春の体内に溜めこまれたおしっこと、それによって引き起こされる生理反応は着えてなくなるわけではない。おばさんは美春のうなじに浮かぶ汗を目ざとく見つけ、大きな声を上げた。
「うわ。すごい汗じゃないの。やっぱりなんでもない事ないじゃないっ」
「ち、ちが……も、もうっ!! さ、さっきから言って…るじゃない・・…ですかっ!! だっ…だっいじょうっ…ぶ……ですからっ、放っておい…て、くださいっ」
 きゅううんっ、と切なげに膀胱が震える。身をよじるほどの尿意がこみ上げ、美春の理性を吹き飛ばそうとする。もはや朦朧とする意識の中、美春は唇を強く噛み締めて必死に『おしっこなんて我慢してない』自分を奮い立たせる。
 それでも、すさまじい尿意は一向に収まる気配がない。まるで全身の水分を絞り上げられ、それが股間の一点に注ぎこまれているかのようだった。脚の付け根の大事な場所を熱く痺れさせる尿意に、美春の意識が薄れる。膀胱を直撃する排泄の衝動に、少女は全身を震わせていた。
(ふぁ、くうぅっ、ガマン、ガマンしなきゃ……っ)
 必死に自分に言い聞かせても、そのままの姿勢で耐え切る事は不可能だった。美春は両足をきつく交差させ、鞄で隠した下でスカートの股間をぐぐぐぎゅううっと押さえ込む。人目に晒されるなかで取れる最大限の譲歩だ。本当は恥も外聞も捨てて股間をぎゅうぎゅうと絞り上げたい。
「んうっ……くくっ……んああっ」
 必要以上に湿り気を帯びた、熱い吐息が美春の唇からこぼれる。
 誤魔化せているつもりだったのだが、その動作は傍から見ても少し調子が悪い、程度のものではない。美春の異変に気が付き始めた隣のおばさんは美春の事を心配と興味に満ちた視線で眺め始める。
(ぁあ…やば……っ、き、気付かれちゃった……のっ!?)
 おばさんたちは決してなにかをしてくるわけではなかったが、ぴったりと張りついた視線は『ねえ、美春ちゃんひょっとしてトイレ行きたいんじゃないの?』と問いかけられているかのようだ。無遠慮なおばさんの視線に、美春は全身が熱くなるのを感じる。
 同時に、底知れぬ冷たさが美春の背中を這い落ちてゆく。
(どうしようっ……ほ、ホントに、おしっこしたいって……バレちゃったらっ……)
 このマンションのおばさんたちは町内でも有名なお喋り好きで有名である。噂話ならまだしも、時には煙の無い所に火事を起こす事ような真似まで平気でやってのける。暇さえあればお喋りの相手を探し、さらに下世話な話が大好き――と、良識ある住人たちからは非常に迷惑がられるほどの悪癖であった。
 しかし、それで本人たちはお節介、世話好き、と思いこんでいるのだからタチが悪い。
 高校生にもなって朝からトイレにも行かず、バス停でくねくねとおしっこをガマンしている美春は、格好のおしゃべりの材料に違いなかった。
(っく……ダメ…っ。この人、の前でだけはっ……、ぜったい、にぃっ……)
 おばさんのお喋りの犠牲となった住人たちのことを思い出し、美春は背筋を震わせる。ただでさえ、父子過程で妙な勘繰りが耐えないのだ。ヘタをすれば、正樹まで『おトイレのしつけもできていない子の弟』と、そのおしゃべりの犠牲になりかねない。
「ねえぇ、美春ちゃん……?」
「ど、どうか……しました?」
 全身の神経を総動員して括約筋に集め、美春は平静を繕って姿勢を正した。ガマンに耐えかね排泄孔を直接塞ぎたくなる両手を鞄に添えて、こつこつとひっきりなしに爪先で地面を叩く。
 おばさんはなおも不審げに美春をじろじろ眺めていたが、その時、40分遅れで到着したバスが渋滞の向こうに姿を見せた。
「あっ、きたー、ねえ来たよ、お姉ちゃん、バス来たよっ!!」
(……っ、やったぁ……だいじょぶ、あとちょっとだけ……我慢すればっ……)
 クリーム色の大きな車体がようやく停車し、ぷしゅうとドアを開くと同時、バス停の前に待っていた一堂から安堵の声が上がる。
「あー。やっっときやがったかー」
「遅いよー。もう遅刻だ遅刻」
「申し訳ありません、ご迷惑をおかけしました」
「いいよいいよ。今日混んでたもんね」
 どやどやと乗り込んでゆくバス停前の一堂。
「っ……く、ぅ……~~……っ……!!」
 けれど、本来正樹を送り出してやらなければならないはずの美春は一歩も動けなかった。
 そう、ほんの数秒前から再び彼女の膀胱には強烈な尿意が猛威を振るっており、美春はぴんと全身を硬直させてそれに耐えていたのだ。
(やっ、だ、……だめ、おさまって……ぇ……っ)
 美春は必死に括約筋を引き絞りながら、おさまりのつかない自分の下半身に懇願する。

 じんっ、びりびりびりりっ!!

 だが暴れ狂う尿意に蹂躙され、猛烈な刺激に美春の排泄孔は緩みかける。背筋を貫く稲妻に意識が遠のきそうだった。
(うぁあっ……動いたら、で、ちゃう、かもっ……)
「ほらっお姉ちゃん!! バス、来たよーっ」
 正樹は手を握ったまま動こうとしない姉に痺れを切らし、目の前に停車したバスを指差して美春を急かす。
「ほらお姉ちゃん早くってばぁ。健二くんも乗ってるよぉっ」
「ちょ、ちょっと、待ってっ……正樹、おねがい、お願いぃっ」
 我慢の綱引きの真っ最中に、ふらつきながら懇願する美春。けれど、はしゃぐ正樹には聞こえていない。正樹は美春のジャケットの前のスソをぐいぐいと引っ張りながら、バスの扉の方に美春を引きずってゆく。無理矢理歩かされる刺激に満杯の膀胱の中身がたぽんたぽんと震え、今にも膝が砕けそうになる。
 美春の背中におばさんの視線が突き刺さる。
(ちが……違うの、これは、ち、違うんだからぁっ……)
 必死の言い訳も、内股で覚束ない足取りと下腹部に添えられた手を見れば一目瞭然だった。美春は暴れ回る尿意と戦いながら、辛うじて一歩一歩を進んでゆく。もはや地面に足がついているようにも見えない。
「ねえ、お姉ちゃんヘンだよ。早くぅっ」
 いつもと様子の違う姉に気付いても、思いやることのできない残酷な幼さで、正樹は美春をさらに急かしジャケットの裾を握り締め激しく揺さぶった。
 ぐい、と大きく前に引っ張られ、美春はバランスを崩してしまう。
「ぅ、あううっ……だっダメ、正樹っっ」
 つんのめった美春は思わず大股で一歩を踏んでしまった。

 じくん、きゅうううっ!!

(っッッ!! ……く、あ、や、ぁああっ)
 収縮する膀胱が激しくよじれ、内部の不要な水分を絞り出そうとする。破裂しそうなおしっこが収まらない。排泄孔に殺到する恥ずかしい熱湯に、今にも股間を貫かれてしまいそうだ。
「ばーかっ僕のが先だよっ」
 生涯したことのないほどのガマンに悶える美春の前に、いきなり正樹と同じ歳頃の元気な男の子が列の前に割り込んできた。
「うわっ? こら、横入りすんなよっ」
 叫ぶが、少年は止まらない。正樹は後ろに押しのけられた勢いで美春の方に倒れこむ。
「わわあっ!?」
 捕まる場所がなかったのだろう。バランスを崩した正樹の頭と背中が美春の張り詰めた下腹部に激突する。
(―――や、バカ、正樹っ!!)
 悲鳴を上げる暇さえなかった。
 ただでさえ限界まで張り詰めていた膀胱にすさまじい衝撃が走った。ただでさえもう1ミリも余裕のない恥かしい水風船が外部から圧迫され、必死で微笑んでいた美春の表情が一瞬にして硬直する。

 じゅわっ。

 じくん、と排泄孔に走る痛みと同時、確かに股間が爆発したように感じられた。我慢と尿意の間で張り詰めていた下半身を崩壊させる確かな引き金は、無常にも振り下ろされてしまったのだ。ぷしゅっ、と熱い雫が美春の脚の付け根で弾け、少女の下着に染み出したおしっこが、じわりじわりと股間に広がってゆく。
(だ……ダメ、だめ、ダメ、だめっ、だめぇっ、ダメぇえええっ!!!!)

 じゅじゅっ、じゅぅっ、じゅわわっ、

 少しずつ漏れだす熱い迸りが下着の股布にぶつかって恥かしい音を響かせる。美春の全身は凍りつき、噛み締められた唇がぎゅっと引き締められ、額にはじっとりと油汗が浮かぶ。
「っ……んふっ……んんんああっ」
 堪えようとするも悲鳴は止まらない。しゅるしゅると漏れだすおしっこは美春の身体の芯にまで熱く響き、途方もない解放感をもたらした。急激に高まった尿意と排泄の快感は、まるで射精にも似た悦楽だ。
 もう恥も外聞もない。少しでも気を抜けばおしっこが容赦なく吹き出して、この往来の注視の中おもらしを始めてしまうことは確定的だった。美春は排泄の誘惑を必死に振り切りながら、ぐぎゅうぅっと交差した両足の付け根にぐいっと左手を突っ込んだ。
 スカートの下、湿った下着の上から包み込むように爪を立て、必死で渾身の力を込めて自分の股間を押さえあげる。
 全身の筋肉が痙攣したように引き攣り、美春の背が震える。絞り上げられ小刻みに震えながら虚空をにらみ続け、美春は息を止めて決壊の時を乗り切ろうと耐える。
 そんな、一世一代のおしっこ我慢を続ける美春を尻目に、正樹はバスに乗り込んでいった。
「いってきまーーっす」
 刹那、正樹を視界の隅で捕らえていた美春は爆発寸前の尿意を鉄の意志で押さえ込む。
(手、手、振って、あげない、とっ)
 鞄を放すわけにはいかない。美春は股間の手を引きはがし、今にも破裂してしまいそうな膀胱を絞り上げ、正樹に向けて手を上げる。じわりと濡れた指は、おしっこにまみれてひんやりとしていた。
 皆に見られながら、もじもじとお尻を震わせてがくがく脚をすくませて、おしっこで汚れた手を振って、弟を見送る。ぼろぼろの笑顔こそ浮かべてはいたが、美春の心はすでにずたずただった。
 やがてバスが渋滞の列に流れ込み、バス停に残った見送りの人々は一人、また一人と姿を消していく。
 しかし、さっき美春に声をかけてきたおばさんだけは、やや離れた位置からじっと美春を凝視している。下世話な興味が丸出しの視線は、美春がどうなってしまうかを楽しむかのような悪意すら感じさせた。
(くぅ、ぅううっ、やだっ、やだあっ、見られちゃ……ダメ、がまん、がまんんっ!!)
 本当なら今すぐこの場を走って逃げ出したい。しかしそんな衝動も、さっきの弾みで漏れ出したおしっこは美春の下着をぐしょぐしょに濡らし、薄い布地をぴったりと美春の股間に張りつかせている。そして今なお崩壊寸前のダムは恥かしい熱湯を一気に溢れ出させようと小刻みに脈動しているのだ。
(う、動いたら……でちゃう・…っ!!)
 このまま一歩でも歩き出そうものなら、それが呼び水になってまたおチビリがはじまってしまう。これ以上漏らし続ければ間違いなく、おばさんに決定的な瞬間を目撃されてしまうに違いない。
 せめて他の人の目のないところ。誰にも見られないところ。
 腰を伝う震えに耐えながら、美春は緊急避難場所を探し始めた。
 しかし、近くにトイレはない。美春の部屋まではあまりに遠いし、仮にコンビにまで我慢できたとしても、店の人や客にはっきりと見られてしまう。
 おしっこをできる場所は、どこにもない。
「…も、…もうだめっ……もれ、ちゃ…っ」
 絶望と共に美晴ががくん、と腰を落としかけた瞬間だった。
 ゴミ捨て場から戻るエプロン姿の眼鏡の女性……同じマンションに住む朝霧由梨絵。美春のクラスメイトの姉である。
 文字通りの地獄に仏。美春は藁にもすがる思いで由梨絵の名を呼ぶ。
「ゆっ、ゆりえ、さんっ……」
 かなり距離はあったが、バス停の向こう側から部屋に戻ろうとしていた由梨絵は怪訝そうな顔をして足を止め、辺りを窺う。
 おずおずと手を伸ばし助けを求めようとした美春だが、切羽詰った尿意はそれすらも許さない。元の位置に戻った手のひらで股間をおさえ、少女は必死の表情で由梨絵に救いを求める。
「美春ちゃん? ……どうかしたの?」
 今度こそ美春に気付き、由梨絵は柔らかな笑顔を浮かべて少女に歩み寄る。差し伸べられた天の救いに、美春は我も忘れて由梨絵に飛び付いた。
「きゃ……っ!? 美春ちゃんっ……!?」
「由梨絵さんっ、そ、そのっ…お、ねがいっ……」
 驚く由梨絵に、頬を赤くしながらも美春は歯を噛み締めて尿意を訴える。
「っ、もっもうだめ……っ、もれ……ちゃううっ」
「え……?」
「ごめんなさいっ……もっ、もうだめ…は、はやくぅっ、……」
 美春の異常に気付いたか、由梨絵も深刻な表情になって周囲を窺う。相手が二人になり、さすがにさっきのおばさんもじろじろと眺め続けることに気まずさを覚えたのか、そ知らぬ顔で視線を反らしていた。
「ちょ、ちょっと、大丈夫っ? 美春ちゃんっ」
「……だっ、だめッ……お願いっ……由梨絵さんっ、早くぉトイレ……貸して……」
「え……美春ちゃん……トイレ?」
 由梨絵はきょとんとした声を上げたが、すぐに美春の切羽詰った様子と途切れ途切れの単語から危機的状況を察知してくれた。美春は由梨絵の肩を借り、おばさんの視線から逃れる。
 ようやく差し伸べられた救いの手に感謝する美春だが、再び切迫してきた尿意に身体をピンと竦ませる。
「ぅあ、うぅぅっ……あ…っく……」
「……ねえ、ひょっとして美春ちゃん、おなか壊しちゃってるの?」
 由梨絵が声を潜めて聞いてくる。美春は額にびっしりと汗を浮かべたまま小さく首を振った。こみ上げてくるおしっこを塞き止め、内股になってぶるぶると震える。
「ぉ……おしっ……こ……。もうだめ…ぇ…は……早くぅっ……」
「あ、そうか。今朝バスが随分遅れちゃったから……うちまでちょっと歩くけど、大丈夫?  美春ちゃん」
「は、はいっ……んうぅあっ……んんっ、くぅうぅっ……」
 由梨絵に手を引かれ、へっぴり腰のまま必死で進む美春だが、わずか2,3歩で突然立ち止まってしまう。低いうめき声をこぼして前かがみになった美春は、空いている方の手でスカートの上から股間を握り締める。
「あ……っ、ぁあっ……ゆ、由梨絵さんっ……ちょっ…ちょ…っと……ま…ってっ。も……ちょ…っと……ゆっ…くりぃっ……」
 肩で大きく息をしていた美春の全身がビクンと大きく震え、ソックスの足ががくがくと震える。歩くだけで膀胱が圧迫され、じゅじゅじゅっ、とおしっこが漏れてしまいそうだ。下腹部で弾ける尿意が、少女の恥骨に激しい衝撃を運んでくる。遠い路肩の先を焦点の失った瞳で見つめていた美春は、熱い吐息と共に由梨絵の手をギュッと握り返した。
「あっ……あ、あ、あああっ……も、う……っ、あ…ああっ」
「ちょ、ちょっとってばっ。美春ちゃん、ほらっ、立ってなきゃダメだよ。…しゃがんじゃったら出ちゃうよっ?」
「うぅっ……んあっ……はぁはぁっ…んああっ!!」
 由梨絵の手を握り締めたまま、ぎゅうっときつく足を交差させる美春。しかしどれだけ美春が健気に気を張り詰め、我慢を重ねようと、身体は勝手に生理的欲求の限界を訴え、おしっこを排泄しようと勝手に腰を落し排泄の準備を始めてしまう。閉じていたはずの排泄孔がじくんと歪み、溜まりに溜まったおしっこの圧迫に耐え兼ねて収縮を繰り返す。
「だめだよこんなとこで、ほらっ!!」
「はあっ…はあはあっ……んっ!!……ああっっ!!」
 由梨絵に促され、震える足先で一歩踏み出す。瞬間、美春の体が再びぶるっと大きく震えた。
「あっ……うぅぅ……」
「あああ、ダメっ!! 美春ちゃんっ!!」
 前にかがみ、後ろにひょこんと突き出した美春のお尻が、スカートの下で小刻みに震える。そして下着の内側でじわっ、と広がった染みが、紺のスカートの外側まで染みだしてきた。それを見つけた由梨絵は、素早く美春の後ろに回りこみ、美春の持っていた鞄で少女のお尻を隠す。
「がんばって!! もう少しだからっ!! もうちょっとだけ我慢すればおしっこできるんだからっ!!」
「はぁ…はぁぁっ……んああっ……ううううっ」
 もはや脊椎反射でふらふらと歩き始める美春。しかし、またも5、6歩進んだところでぎゅうっと前かがみに立ち往生をしてしまう。今度は両手でおしっこの出口を塞ぎ、唇を噛み締めてくねくねと腰を揺する。
 だが、そんなはかない抵抗も空しく、美春の股間から再度ぶじゅううっと水音が響く。同時に美春の内腿を伝って幾筋もの水流が流れ落ちる。ぽた、ぽた、とこぼれる雫は地面に黒い点々を描き、美春の荒い息に合わせて広がってゆく。
 さっきのおチビりとは比べ物にならない、あきらかな『おもらし』だった。とっさにぎゅっと力をこめて膀胱の出口を塞いでも、尿道に詰まった雫は我慢しきれず、美春はさらにぶぢゅっ、とおしっこを吹き出させてしまう。熱い雫が下着の股布に勢いよくぶつかり、スカートのお尻に浮かんだ黒い染みがひときわ大きくなる。
「だめだよ……美春ちゃんっ、ほら、さっきのおばさんまだ見てる……我慢しなきゃだめ、もうちょっと、ほんのちょっとだけだから、ね?」
「う、うんっ、んんっ、くぅうううっ……ぁああああっ……」

 じゅ、じゅぅ、じゅっ、しゅるるっ……ちょろろっ……

 おばさんの視線は美春の背中にも痛いほど突き刺さる。今ここでお漏らしをしてしまったら、一体どんな噂を立てられるか。しかし既に美春は『おしっこも済ませられない恥かしい女の子』として十分すぎるほど目立ってしまっているのだ。由梨絵の言葉は気休め以外の何者でもなかった。
 しかし、由梨絵の声に理性を奮い立たせ、美春はどうにか決壊だけは乗り切った。下着はびっしょりと濡れてしまったが、まだこぼれたおしっこは少しだけだ。
 美春はなおも歩いては立ち止まり、前かがみになっては必死に腰をよじってを繰り返し、何度も何度も限界寸前の尿意を堪えてやっと大通りから由梨絵の部屋に続く階段の入り口に這いずり込んだ。
「ほら、あと少し……もうちょっとだから、美春ちゃん頑張ってね、もうちょっとだよっ」
 まるで自分のことのように必死に励ましてくれる由梨絵にしがみつくような格好で、お尻を突き出し腰を折ったままでよろよろと歩きつづける美春。しかし、震える足を辛うじて持ち上げ階段を登りきって、入り口まであと数メートルという距離で、少女の辛抱は途切れてしまった。美春の下半身がおしっこを受け止める地面の誘惑に屈するようにがくん、と落ちる。
 もはや尿意を我慢するためのステップも踏めない美春の身体が一瞬大きく震えたかと思うと、凍りついたように硬直する。
「あっ…んはぁあっ……!! だっだめ、由梨絵さんっもっもう、でっ……出るっ、でるうっ、でちゃうよおっ!!」
 かすれた声で振り絞るように由梨絵に叫んだ美春は、股間をのスカートに激しく皺を寄せて絞り上げ、ぎゅうっと目を閉じてしまった。その間にもじゅうぅっと排泄音が響き、股間を押さえる美春の左手の脇から溢れだしたおしっこが太股を伝って滴り落ちてゆく。ぽた、ぽたたっ、と床のコンクリートに恥かしい模様を描いてしまう。
「あぁ……美春ちゃん、あとほんのちょっとだから我慢しなきゃだめ!! ほら、立って、しゃがんじゃったらおしっこ始まっちゃうからっ!!」
 声を荒げないよう、由梨絵は美春の耳元で叫ぶ。ほんの少し限界を超えてしまっただけでこの量だ。美春のおなかに溜まったおしっこの総量は一体どれほどのものになるか。
 由梨絵の励ましを頼りに、美春は涙の滲む目を開き、意を決してずりずりと足を動かし始める。
「あっ…うぅっ!! んあっ、ダメぇっあうううっっ!!」
「美春ちゃぁんっ!!」
 腰を砕くほどの強烈な尿意の大波が少女に襲いかかる。もはや冷静な判断力を失い、美春は自分の股間を押さえていた手の平を少しずらし、股間の下で受け皿のように構えてしまう。
「ほら! 手はなしちゃだめっ、美春ちゃんっしっかり!!」

 じゅぅうぅつ、じゅじゅじゅぅうっ、しゅるるるっ

 美春は戦慄と共に大きく染みの広がりだした自分の股間を見下ろし、肩を大きく震わせた。少女のあごから汗がぽた、ぽたと滴り落ち、地面にこぼれたおしっこの跡の上に新しい黒い跡を作る。
 それには、もしかすると少女の恥辱の涙も混じっていたかもしれない。
「あ…だめ…ゆ、由梨絵さんっ……わたしっ、もう、だめ、おしっこ、……っ、……こ、ここでしちゃうっ……」
「ねえ、ねえ、しっかりして美春ちゃん……ここってトイレじゃないんだよ? おしっこするところじゃないんだよ!? 美春ちゃんっ!」
「だめっ、……ガマン、できな……でちゃう、っ……」
 猛烈な尿意の蹂躙に晒され、ぼろぼろに疲れきるまで理性を陵辱された美春は既に冷静な判断力を失っていた。おしっこがしたい、もうガマンできない。それだけの意識が清らかな乙女のプライドを打ち砕き、本能のまま欲求に従えと美春の身体を衝き動かす。美春の下半身は理性を失い、まるで動物と同じように、ところ構わずに排泄を欲している。
 美春はちょこん、とお尻を突き出した姿勢のまま、両足の間に手のひらで作った器を構えて『おしっこを漏らすポーズ』を取ってしまった。今にも腿の間からほとばしりそうなおしっこを、手の平で少しでも受け取めようとする。
「美春ちゃんだめっ、だめっ、がまんしなきゃだめだよぅっ!!」
 由梨絵は美春の背中を叩き、必死になって少女の姿を周囲から隠そうと覆い被さった。だが次の瞬間。
「あ、あああ、あああああああーーーッ!!」

 じょじょっ、じじゅるるるうっ、びちゅびちゃじゃぱっ……

 突き出した美春のスカートの奥でくぐもった音が響き、少女の脚の付け根の染みが一気に拡大した。美春が自分の股間の下で構えた手の平に、熱い濁流が小さな滝となって迸る。
 耐えに耐え続けた、少女の本当の勢いでの排泄が間近だ。排泄とは無縁の、マンションの入り口でそれが繰り拡げられようとしている。誰が通りがかってもおかしくないというのに、美春はここでおしっこを始めようとしていた。
「だめ――!! 美春ちゃん、だめだよっ!!」
 少女の心の貞操を守るため、由梨絵は心を鬼にして強引に美春を前にグイッと押し出した。
「ぁっんっ……!! だっだめっ、ぃやっ……っ、ゆりえさん……いじわる、やめてぇ……もうここでいいよぅっ、ここで、っ、ここでするのっ、しちゃうからぁっ……」
「だめ、だめだよ美春ちゃんっ!! 女の子なんだから……ほら、立ってっ、もうすこしでおトイレ入れるんだからっ!!」
 前のめりになった美春はぽたりぽたりと飛沫を股間から振り撒きながら、必死で股間を押え込み、何とか奔流の決壊だけはまぬがれる。足元にぱちゃぱちゃと水流の跡を残し、少女は崩壊の一歩手間を保ち続けて足を進め、ようやく由梨絵のアパートの部屋の前までたどり着いた。
「ほら、あとほんのちょっとだよっ!! 今鍵開けるから我慢して、がんばってっ!!」
 まるで自分の事のように、大慌てで鍵を開けてくれる由梨絵。しかしそんなわずかのタイムラグさえ、股間を握り締め尿意の大波に攫われるたびビクンと背を伸ばし続ける今の美春にとっては地獄のような苦しみだ。
「ゆっ、由梨絵さんっ、はやくっ、はやくはやくっ、はやくぅうぅっ……」
「うっ、うんっ!! ほら開いたよっ!! トイレの場所っ、分かるよねっ!」
 背中から念を押され、美春は前かがみになったまま股間を押え込みながらもふらふらと玄関に向かう。廊下はあまり広くはなく、もう由梨絵が支えに入るスペースはない。美春はトイレまでの数メートルを自力で進まねばならない。
 両足は前できつく交差され、皺を寄せて押え込んだ美春のスカートには、既にどう努力しても隠し通せないほどに大きな染みが広がり、腿やふくらはぎまでにもいくすじものおしっこの跡が残っている。床にも地面にも、これまでの道のりで美春はすでに十分すぎるほどおしっこを漏らしていた。
 だが、それでも全然足りないのだ。美春のお腹を占領した恥かしい熱湯を出しきるのには、まったく足りていない。むしろ数度の排泄と中断がますます尿意の激しさを増している。
「はぁっ……はぁっ……ふぅうんっ、んんぅぅううっ……」
 美春が熱い吐息を漏らすたびに、内腿に広がる染みがじわりじわりと広がってゆく。下着の中で、少女の排泄孔はすでに緩みはじめていた。一歩ごとに膀胱にぱんぱんに詰まったおしっこが外に漏れ出してくる。
「あっ……ぁうううっっ……はぅうぅううっっくぅう!!」
 美春のお尻に張り付いたスカートの奥で、じゅるるるるるぅうっ、とくぐもった音が響く。
「きゃっ……ダメだよ、もうトイレすぐそこなんだからっ!! 美春ちゃん、おしっこあとちょっとでできるよ!? がんばってっ!!」
「……ぁぅううっ……だっだめっ!! も、もぅ……」

 じゅわわっ、じゅるるう、じゅじょじょじょっ!!

 背中から由梨絵の応援を受けるも、ビクン、と足を止めた美春の靴下が一瞬で色を変え、スカートの裾から小さな滝が足元に滴り始める。

 ぶじゅっ、びゅるっ、じゅぅぅっ

 少女の股間の先端から、荒い息に合わせたように熱い濁流が間断的に噴き出す。
「んふぁあああっ!! だめぇええええっ……」
 叫びながら美春は必死に玄関の段差に脚をかけた。同時、少女の股間からこぼれ出した雫が、激しく音を立てて直接床を打つ。少女のおしっこ我慢の行進の道のりを示すかのように、美春の歩いた後には水たまりが点々と続いている。
 美春を先に入らせた由梨絵が後ろ手にドアを閉める。前かがみになりながら俯いた少女は、靴を脱ごうとした姿勢のまま硬直し、お尻を突き出したまま喘ぐ。
 そして、再び激しい排泄の先走りを床へと吹きこぼした。
「んんんっ……くぅっ…ぁっ!! ……ふぅっ…はっはうぅうっ、はあっ……はあっ、んぁはあっ!!」

 じょじょっ、じゃぁっ、じょじょじょわあっ、びちゃびちゃばちゃっ!!

「ああ、だめだよっそんなところでっ……!! 美春ちゃんっ、しっかりっ!!」
 美春の股間から噴き出したおしっこの熱い濁流が、玄関に置いてあった靴に降りそそぐ。他の家の床と玄関を台無しにしてなお、美春の尿意はとどまる所を知らない。
 美春はじょぼじょぼと音と立てて止まらないおしっこを手のひらで受け止めながら、震える足で無理矢理に前に進もうとする。玄関のマットの上に靴も脱がず昇ったところで、再び少女は身体を硬直させた。
 激しく肩が震え、右手がこれ以上ないほどきつくスカートを掴み、左手は必死に内腿を擦っている。
 少女の視線は既に焦点を失い、ふらふらと左右に揺れるばかり。スカートから染み出したおしっこの奔流は、すでに足元の水たまりまで途切れること無く続いている。
 由梨絵の目の前で、美春は最後の尿意の大津波に飲み込まれた。
「ぁうあぁあああっ……っ、く、く、ぁ、ぅ、あ、っ……」
 少女の背中がびくんと仰け反る。限界を超えた膀胱が自律神経に支配され、収縮の予兆に震えた。括約筋が千切れそうなほどに熱く焼けきれる。永遠にも思える壮絶な我慢で、酷使された美春の大切な部分は真っ赤に色を変えていた。
「もっ、もぅ……」
 はぁーっ、はぁーっ、という堪えようもない荒い吐息。渦を巻き暴れ狂うおしっこに蹂躙されて、美春はもう一歩も動けない。
「も、もう……だめっ!! ごめん、ごめんなさいいぃいっ……」
 次の瞬間、美春の身体から一気に力が抜け落ちる
「み、美春ちゃんっっ!!」
「ぁっ、あっあっ!! ああああっはぅうっ!!!」

 じょわわわっ、じょぼじょぼじょぼぼぼぼっ、じゅるるるるぅ!!

 足に張り付いたスカートを引き剥がすかのような膨大な水圧と水量で、少女の股間が弾けた。限界を迎えた排泄孔から一気におしっこが吹き出す。羞恥の洪水は瞬く間に下着とスカートを水浸しにし、美春の下半身を侵食した。
「ぁ……っ、ぁ、ぁ、ぅ、ぁ……っ~~~…!! だめ、だめ、由梨絵さ…んっ、もうだめっ、ガマン…で、きなっ、ぁ、っ・……」
 排泄の快感にふらりと傾いた身体をを支えるため、美春は反射的に左手を壁についてしまった。外から押さえる力の半分になった股間がびゅじゅっぶじゅっと激しい潮を吹き上げる。疲弊した括約筋では押さえこむことなど叶わなかった。

 じゅぶっ、ばちゃ、ぶじゅっばちゃばちゃじゅぼぼぼぼっ、じょばばばっ

 おしりを後ろに突き出した姿勢のまま、美春は排泄の甘い痺れのなすがままに侵されてゆく。溜まりに溜まったおしっこはホースからの放水にも似た勢いで床に叩きつけられてゆく。
 その時。廊下の奥の方の部屋の戸が開き、中から由梨絵の弟――美春のクラスメイトである幹也が顔を出した
「あっ、ぁ、あ――――、ダメえっ……で、でちゃ、でちゃうぅっっ!!」
「姉貴、どうしたんだよっ…て、美春? …うわっ!? おっ、おい、なにしてんだお前っ!!?」
「や、馬鹿、バカっ、見るな、見るなぁあ!!」
 幼馴染の目の前で、女の子が絶対にしてはならない行為が始まってしまう。
 既に制御下を離れた股間を必死に隠しながら、そう叫ぶのが精一杯だった。
 押さえられたスカートの下、すでに悲惨な状況になった下着のなかで、美春の敏感な突起だけが薄い布地を突き破らんばかりに震えている。
「はあっ……、はああっ、んぁあぅっ!!!」

 ぶじゅっ、びゅるるっ、じゅびゅっ

 美春の股間の先端からは荒い息に合わせたように熱い濁流が漏れ出していた。
「ん…ふぁあ…っ!! …だ、めぇ……」
 美春は身体を小刻みに震わせながら、股間に残った右手を太腿でぎゅっと締め上げる。ぐしょぐしょに濡れたスカートが股間を塞ぎ、下着の先端から滴り落ちる熱い雫を受け止めてゆく。だがそれは少女の下半身の衣服をさらに壊滅的な状況にしてしまうことに他ならない。
「ああっもうだめ、、ぉ…しっこ…もれ……ちゃううっ、、んはぁあああぅぅうっ!!!」
 熱い吐息と共に、美春は尿意を一気に放出した。
 ぐっしょりと濡れて色を変え、脚に張りつくスカート。両足を広げぎみに、アヒルのようにおしりを突き出したまま、真っ赤な顔で美春は下着をつけたま本当の勢いでおしっこをはじめてしまう。唇をぎゅっと噛み締めたまま、定まらない視線を泳がせながら、決壊しはじめたオシッコが床に大きく水たまりを作っていた。

 ぶしゃあぁッ!! ぶじゅしゅじゃじゃっゃぶしゃじゃじゃあああああっ……!!

 美春の引けた腰の太腿の付け根に広がっていたシミが一気に拡大し、瞬間バケツをひっくり返したような大量のおしっこが紺のスカートの布地から滝のようにあふれだす。限界を超えたおしっこはまるで生き物のように太い流れをいくつもくねらせ、張りついたスカートの腰、股間、腿、脚、靴下に至るまであらゆるところを侵食して洪水のように流れ落ちてゆく。

 びじゅぶじゅぶじゅぶびちゃばちゃびちゃばちゃ……っ!!

「美春・・…お前……っ」
「やだ…なんでいるのよっ…止まって、止まってよぅっ」
 幹也の視線は美春の股間にくぎ付けになっていた。美春は悶えながら脚をよじり、流れ落ちるオシッコを塞き止めようとする。しかし一度始まってしまったオシッコを、ガマンの上に我慢を重ねたおしっこを、いまさら止めることができるはずもない。
 玄関マットの許容量をはるかに超えたオシッコの津波は廊下に流れ出し、床の上に湖を形成し始めている。湯気の立つほどの熱気を伴なって流れるオシッコをからとっさに身を引いた幹也が悲鳴を上げた。
 身を切るような羞恥に襲われながらも、美春は自分の股間から流れてゆく濁流の行方をなすすべなく見下ろし続けるしかない。
 括約筋はすっかり機能を失い、排泄孔は壊れた蛇口のようにじょろじょろとオシッコを出し続ける。熱くなった水門をぐっしょりと濡れた股間の上から押さえながら、美春はふらふらと脚を動かす。

 じゅぅうっ、じゅじゅじゅじゅじゅぅうぅっ、ぼちゃちゃぼぼぼべちゃぼちゃ……

 排泄の途中だというのに再び美春の尿意が高まり、閉じた股間に食い込んでいたスカートの先端から熱い濁流が一気に溢れ出す。脚の付け根に挟んだスカートから太い奔流をからめ合いながら、オシッコが大量に滴り落ち、激しい濁流の重みで、スカートは大きく膨らんで熱い流れが床に激しくはじけていく。
 悪魔の水が作りだした大量の羞恥失禁。美春のオシッコはまだまだ終わらない。



 (了)
[ 2017/09/19 23:08 ] 小説 | トラックバック(-) | コメント(-)

トリシア様のお粗相について 


 いまよりも、少し昔の事でございます。
 その頃、アトラテアのシャルナーズ方伯のご令嬢トリシアさまと言えば、幼いながらその類稀な美貌と、それ以上に生来の気の強さ――たとえお父様であるシャルナーズ伯が相手とあっても、己が正しいと思えば物怖じせずその舌峰を向けることで有名でありました。
 とは言え、トリシア様は本心ではけして誰彼構わず憎んでいるというわけではありませんでした。母君を早くに失い、多忙な方伯様の負担にならぬようにと、他の姫君がまだ無邪気であられるころから、貴族令嬢たらんと精一杯の背伸びをしてきたことがその要因にあったようにも思われます。
 世間の評判とは裏腹に、トリシア様は本当は心優しいお方であるということを、方伯様や方伯様のお城に古くから仕える使用人や侍従たちはよくわかっていたものでした。心を許した方には、一見冷たいような態度をお取りになられても、トリシアさまがその者のことを慮っているのがわかるようになるのです。
 それは、トリシアさまの幼馴染みにあらせられるカイル様――後のカイル4世様にあっても、同じ事でございました。
 幼い頃から交流を持たれ、気心の知れたご友人として健やかに育たれたカイル様を、トリシア様はいつしか慕われるようになっておりました。しかし、カイル様が王位継承を間近に控えられるようになる頃には、トリシア様はそれはもう、カイル様に辛く当たられていました。
 トリシア様は聡いお方でしたので、ご自分のような生意気な娘が、後の国王様と頻繁に会うことによって、カイル様の宮廷でのご評判が損なわれることを畏れていらっしゃったのです。
 ……もっとも、それ以上にトリシア様は、カイル様の前では素直に想いを伝えることができず、ついついその場の勢いで心にもない事を口にしてしまっては、夜毎後悔に枕を濡らすようなこともしばしばであったようでございますが。
 無論のこと、カイル様もそれを十分にご存知でしたので、トリシア様を遠ざけるようなことはせず、お忙しいなか、よく方伯領まで訪ねていらっしゃったものでした。
 これをトリシア様は冷たくあしらうのですが、その嬉しさが言葉の端々に隠しきれずに現れるのは、とても微笑ましいものでございました。



 その日も、トリシア様はヴォンテルブローからリトリューゲンの離宮に向かわれる間、カイル様より同じ馬車に乗るようにとお誘いを受けておりました。
 これはまったく光栄なことで、世のご令嬢方がその話を耳にすれば、我先にと押しかけ詰め寄り、カイル様のお側に選ばれなかった悔しさに手袋を噛むようなものでありましょう。
けれど、トリシア様ときたら、こうしてカイル様と同じ時間を過ごせることが嬉しくてたまらないというのに、
「――はあ、どうして私があなたなんかと一緒にいなければいけないのかしら。国王様はご令嬢一人を送り迎えする馬車も用立てられぬほど窮しておられると噂されてもよろしいの?」
 つん、と窓の外に視線を向けながら、心にもなくそんなことを仰るのです。
 そうした態度をお取りになられてはいても、白くシルクの手袋に包まれたトリシア様の指はそわそわと座席の羅紗をなぞるばかりですし、流れるような美しい金髪の隙間から僅かに覗く耳は、かあっと朱く染まっているのです。
 トリシア様はカイル様とひとつの馬車にいらっしゃる、ただそれだけで、天にも昇る心地なのは、見るものが見れば明らかなのでした。
 そして勿論ながら、カイル様はすっかりそんなことはご存知ですので、いつものように穏やかな笑みを浮かべられて、そうだね、とお答えになるばかりでした。
 そんな態度がますますトリシア様を困惑させるのです。
 一層忙しなく白手袋の指を組み合わせながら、本来ならばピンと伸ばしていなければならない背筋をお行儀悪く丸めて。トリシア様はむうっと眉を寄せ、カイル様をじっと見上げます。
「もう、分かってらっしゃるの? 私も貴方も、いつまでも幼馴染みのトリスとカイルのままではいられませんのに。ご自分の立場をご理解なさって、軽妄はお慎みなさいませ、カイル殿下」
 ああ、なんとお労しいことでしょうか。トリシア様は折角のひとときをこうしてご自分から突き放されるような御言葉を選ばれ、あえて冷たい態度を取るのです。恐らく今宵も、トリシア様は今日のご自分を思い起こし、なぜ、ああも自分は素直になれぬのか――と深く深く後悔されることでしょう。
 世のご令嬢が美しく儚げに小さな胸を焦がし、季節の彩りや鳥の囀りになぞらえて、恋を、愛を語ると言うのに、自分ときたらこのように詰まらぬ政治と宮廷を気にして外聞のことばかり。これではたとえ方伯の娘であろうとも、恋文のひとつも届くまい――そうお思いになっているのですから。
 けれど、この日ばかりは少し、様子が違いました。
 トリシア様は、お昼前にカイル様からお誘いを受けてからはすっかり浮かれてしまい、何もかもが上の空で、ついつい、大切なことを失念しておられました。
 とても、とても大事なことを。
 それは、そう。いまもトリシア様のもう一方の、白い手袋に包まれた小さなお手がそうっと撫でさする、ほっそりとしたお腹のその奥に秘められた一大事でございます。
 ふっくらとした布花を膨らませるドレスに包まれた細い腰は、馬車の座席の上で静かに、けれど精一杯の強さで、ぐ、ぐっと擦りつけられ。
 向かいに座るカイル様の目を盗んで、トリシア様の小さな手は、ふわりと膨らんだスカートの上から、はしたなくも閉じられしきりに擦り合わされる足の間へと滑り込み、白いドレスの布地をきつくきゅうっと握りしめていらっしゃるのです。
 浅く開いた桜色の唇がきゅっと引き結ばれ、荒い息を押さえます。
(……っ、ダメよ、弱気になってはダメ、トリシア……っ)
 焦燥と緊張に強張る表情を、できるだけ覚られぬように、鈍い幼馴染みへと向けるいつもの不機嫌な仕草に装いながら。
 がた、がたと揺れる馬車の震動に、時折びくっと身体をすくませて。
 トリシア様は、精一杯のさりげなさを装いながら、スカートの間を何度も、白手袋の指で握り締め――懸命に、乙女の幸せなひと時を、絶望の窮地へと追い込まんとする、猛烈な尿意と戦っておられたのでした。



 トリシア様を苦しめておられるのは、その小さなおなかの中の秘密のティーポットの中で――くつくつと激しく煮立ち沸き立つ、恥ずかしい欲求の根源。乙女の秘密たるティーポットの中に注ぎ込まれ、いまにも『注ぎ口』から溢れださんとするホットレモンティのもたらすものにございました。
(っ……はぁ、はぁ…っ、はぁ……っ、ふ、ひぁッ!?)
 がくんと揺れる馬車の震動が、トリシア様の敏感なティーポットに、大きな波の揺れをもたらします。もう何度、たまらずにスカートの奥、脚の付け根を押さえ、溢れそうになるポットを支えててしまった事でしょう。
 リトリューゲンまでの長い道のりを、馬車は淡々と進み続けていきます。
 無論ながら、いかに王家のものとは言え、この馬車の中にご夫人が御用を足せるような場所などあるはずもなく、さりとて方伯のご令嬢が、いかに幼馴染といえど、まさか男性の前で尿意を口にできるはずもありません。
 トリシア様はただお一人、静かに襲い来る生理的欲求と戦い続けていらっしゃるのでした。
 途中、何度か馬車は道端に止まり、休憩を挟みはしましたが、従者達もまさか国王様と方伯のご令嬢をやすやすと一人にできようはずもありません。お二人はずっと同じ個室の中に腰掛けて、時折談笑なさる程度です。
 いやはや、もともとが勝気なトリシア様、小さな頃はお転婆でも有名で、木登りかくれんぼもお手の物でございました。いざとなれば大胆な行動力を発揮されるのは今でも同じで、その気になれば従者の目を盗んでそこいらの茂みに駆け込み、おしっこを済まされることは決してとっぴな想像ではありません。
 我慢に我慢を続けて、みじめに令嬢としての醜態をさらされるくらいなら、その前の恥を選ぶ――そうした合理的なことを、判断なさることができるお方でございます。
 けれど、お慕い申しあげるカイル様を前にして、まさかトリシア様がそんなことを口に出せようはずもありませんでした。
 そのようなはしたない振る舞いに出て、カイル様のご機嫌を損ね、嫌われてしまうことを畏れ、トリシア様は鋼鉄の意志でこみ上げてくる激しい羞恥の衝動に耐えていらっしゃいました。
 いかに幼馴染といえども――いえ、御幼少の頃からまるで兄妹のようにご交遊をもたれていたからこそ、トリシア様はその事を恐れていたのです。
 もし、カイル様が何の気にもせず、いつものように――ああ、行っておいで、と。優しい声で、それをなんの抵抗もなく受け入れてしまったら、と。
 誰よりも優しく理解のあるカイル様であるからこそ。
 自分が婚約相手として釣り合うご令嬢ではなく、まだ御不浄のしつけもままならない、小さな妹のトリスでしかないのだと。
 ――そう思われることを、トリシア様は心から恐れておられました。
 そのような按配ですから、次第にトリシア様は、ただただ揺れる馬車の上で、おなかの中にぐらぐらと沸き立つティーポットを抱え込み、震える指先でドレスのおなかを撫でさすり、しきりに脚を擦り合わせて、言葉すくなに黙り込むことが多くなってまいりました。
 そうなれば、カイル様とて不安に思われるのは当たり前のことです。気分が悪いのかと馬車を停めさせ、窓を開けさせ、飲み物を勧めることを繰り返します。これらは全てトリシア様を慮ってのことでしたが、どれも今のトリシア様にはあまりにも酷なことでございました。
「い、いえ……結構ですわ」
 懸命に、胸中の焦りを押し殺し、硬い表情でそうお答えになるのが精一杯。それでもカイル様のお心遣いだからと、トリシア様は健気にも、揺れ動く腰を押さえつけ、両手でスカートを握り締めんとするはしたない衝動を必死に堪えて、冷たい飲み物に口を付けるのです。
(んぅぅ……ッ)
 いまにもぶるぶると震えだしそうになる膝頭を抑え、トリシア様は健気にもこくりこくりと冷たく冷えた飲み物を喉へと流し込んでゆきます。胃の腑の奥へ流れ落ちる冷えた木苺のジュースは、まるでそのまま身体の奥の貯水池へと沈みこみ、限界の膨らみをなお膨らませていくようでした。
 そうしたことが何度もあったものですから、なお尿意は募るばかり。激しさをいや増してトリシア様を襲い、もはや方伯ご令嬢の鋼鉄の意思をもってしても我慢の限界を超えんばかり。
 トリシア様はきゅうっと脚を閉じあわせ、席の上で腰を浮かしかけては体重を左右に揺らし、お身体を小刻みに震わせます。
「あ。あの……っ」
 何かを話しかけられても上の空。さざ波立つティーポットは『注ぎ口』を湿らせ、周囲の布地まで滲みを広げていきます。
 猛烈な水の誘惑に苦しみは酷さを増す一方。トリシア様は迫る最悪の事態を前に今度こそ打ち明けて降ろしてもらおうとカイル様にお声をおかけになるのですが――
 なんだい、とカイル様に見つめられれば、そのまま言葉を失って、
「な、なんでもありませんわっ」
 と、恥ずかしさを誤魔化すように声を荒げてしまうばかりです。そうしている間にも、方伯ご令嬢のティーポットにはどんどんと、恥ずかしくもはしたない熱水が溜まり続けてゆくのです。



 ……ああ、なんという事でしょう。
 がたんっ、と跳ねる車輪から、クッションでも吸収しきれぬ衝撃を受け、トリシア様の『乙女』は上下左右に揺さぶられ。
 満水のティーポットの『注ぎ口』からは、じわっ、じゅわあ、ちょろろっ、と、羞恥のホットレモンティがこぼれ出してゆくばかり。
 絶体絶命の窮地へと追い込まれ、トリシア様のお顔は真っ青でございます。
(はぁああ……く、ぅぅう……っ)
 身体を伸び縮みさせ、腰を揺すり、背筋を揺らし。いまにもがばりとスカートをたくし上げ、その根元を脚の付け根を『ぎゅうッ』と握り締めてしまいたい衝動を必死に堪えながら。
 トリシア様は馬車が進むのを、憧れの離宮が見えてくるのを、待望の『お手洗い』が見えてくる瞬間を、今か今かと待ち焦がれていました。
 大切な、大切な、お慕い申し上げるカイル様と共に過ごすひととき。一分一秒でも長く共に過ごしたいという時間を、はやくはやくと口の中で繰り返しながら。
(はやく……おねがい、はやく……ぅ……ッ)
 トリシア様が少しでも気を抜けばそのまま足元にはしたない水音をたて、湯気をあげながらも大きな大きな水たまりを作ってしまうことは間違いないでしょう。何度も交差された脚の間ではじっとりと湿った下着の布地が嫌な感触を伝えてくるのです。
 トリシア様は、それは汗だと、自分に言い聞かせていらっしゃいましたが――はたしてそれは真実のことでしたでしょうか?
 けれどもさすがトリシア様は、なんとか気力だけでリトリューゲン領内までは持ちこたえたのです。
 ですが、そこまで。いかなトリシア様とても、もうそれ以上の辛抱は、どうにもならないことでございました。
 もう、どうすることもできず、方伯ご令嬢は我慢の限界をむかえてしまったのでございます。
 最後の休憩として馬車が止まると、トリシア様は身を揺すりながら、とうとう両手ではっきりと、スカートの前を押さえ混み、手袋の指で『ぎゅううううううッ』と脚の付け根を握り締めながら、ドレスの布花に、みっともなくも大きな皺をつくり、はしたなくご自身の欲求を口にされたのです。
「お、お願いです……ご、ご不浄に……っ、行かせて、くださいまし……! こっ、このままじゃ……お、っ、ぉ……し、っこ……ぅ、ぁ、ぉ、おなかが、はち切れて、しまいますの……っ」
 そう、トリシア様は、泣きべそをかいてカイル様に訴えられたのでした。



 桜色の唇をきゅっと引き結び、俯き切なく息を切らせ、微かな喘ぎを堪え、白いお顔を耳まで真っ赤になさってのシャルナーズ方伯ご令嬢・トリシア様の懇願。
 それに、カイル様はすぐにお応えになりました。
 聡明なカイル様でございます。いつも気丈なトリシア様が、小さなおなかの中で湧き立つ恥ずかしいホットレモンティに責め苛まれ、窮地へと追い詰められていらっしゃることをすぐにご理解なさったのです。
 方伯の令嬢としての体面や乙女の矜持と、恥ずかしい下半身の要求の板挟みとなり、絶体絶命の瀬戸際に追いやられたトリシア様でございます。
 押し寄せる羞恥を懸命に堪え、か細い助けを求めていらっしゃいました。そのことを慮り、カイル様はすぐに事を荒立てるようなことはなさいませんでした。
 しかし、トリシア様はカイル様が優しく差し伸べてくださったお手を取ることはかないませんでした。なにしろ白手袋に包まれたトリシア様のお手は、今にも噴きこぼれそうなティーポットの出口を押さえ込むので精一杯。ドレスのスカートを握り締め、一時もそこを離れることは叶わなかったのでございます。
 馬車の座席、クッションの上に身をうずめるようにしてうずくまったまま、一歩も動けないと首を振るトリシア様でございました。
 もはや押し寄せる下品な衝動に抗うことも危うい、お可哀想な幼馴染みをご覧になり、それを察したカイル様のその後の判断は、まことに迅速であり、なんとも大胆なものでございました。
 カイル様はすぐさま御者に声をかけると、強い調子で申し伝え、街道のその場に馬車を止めさせたのでございます。
 この時の急ブレーキにともなう衝撃にも、馬車の中でトリシア様はきつく目をつぶり、ぎゅうっとスカートの前を押さえ込む手に力を込めては、『んうぅッ……!』と熱い喘ぎをこぼされるほどのあり様でございました。
 まさに、我慢の限界がトリシア様に迫っていたのでございます。
 そうして幼馴染のご令嬢にもはや一刻の猶予もないことを改めて察したカイル様は、トリシア様のお体を軽々と抱え上げると、そのまま馬車のドアを開け、猛然と外へ飛び出されました。
 その時、その場に居合わせた従者たちの驚きと言ったらそれはもう、ひとしおでございました。
 カイル様は呆気にとられる従者たちに向け、誰にも後を追わぬようにきつく言いつけた後、腕にしがみ付いて震えるトリシア様をしっかと抱え上げ、街道にほど近い、梢繁る森の中へと風のように駆け込んだのでございます。
 鬱蒼と茂る森の中は、枝を張り苔生した木々に覆われて、昼なお薄暗い程でした。山野の獣や怪しげな盗賊どもですら、立ち入ることも躊躇うような森の中を、カイル様はトリシア様を伴ったまま、臆することなく駆け進んでいきます。
 囁く虫の声、怪しげなる鳴き声、梢を揺らす羽音。
 深き森の中にあって、トリシア様は普段の気丈さも失い、震えながらぎゅうっとカイル様の腕にしがみ付くのですが――実のところ、トリシア様にはもう、森の恐怖など感じている暇はございませんでした。
 カイル様はできるかぎり優しくトリシア様のお体をを抱えてくださっていたのですが、なんということでございましょう。この時のトリシア様にとっては、馬車が街道の小さな轍を乗り越えるときの細かい振動ですら、耐えがたいほどに下腹部を揺する辛い衝撃となるのでした。
 トリシア様の下腹部のティーポットには、たっぷりと羞恥の熱水が注ぎ込まれ、いまにも噴きこぼれんばかりの水位に達していたのです。
 苔生した木々の隙間を飛び越え、倒木と岩の間を潜り、泥濘をまたいで走るカイル様の腕の中にあって、その振動と言ったらばもう、言葉にできぬほどでありました。
 カイル様に抱えられている間じゅう、トリシア様ははしたなくも、ドレスの脚の付け根に『ぎゅうっ』と両手を重ねて押し当てて、シルクのスカートに皺が寄るのもかまわず、ただひたすらに指先に力を込めて『注ぎ口』を塞ぎ続けねばならなかったのです。



(だめ、でちゃう、でちゃう、もれちゃうっ)
 波濤のごとく押し寄せる猛烈な尿意。馬車の中で長い間、一人孤独に戦い続けたトリシア様は、すっかりお疲れでございました。立て続けの出来事に混乱し、頭の中が沸騰せんばかりの羞恥に覆われ、もはや何も考えられなくなっていらっしゃいました。
 ただただ、カイル様がこの窮地から助けてくださるのだと、お信じになるしかなかったのでございます。
 そうして、森の奥へ奥へと踏み入ったカイル様は、人気のないそこが苔生した大木や、木々の梢、生え繁った草むらによって作られた緑の緞帳によって、すっかりあたりの視線が遮られるようになったことを確かめると、ゆっくりと立ち止まり、腕の中のトリシア様にそっとお声をおかけになりました。
 もう平気だ。ここなら大丈夫だよ。誰も見ていない。
 それを聞いて、トリシア様はわずかな安堵ともにしばし呆けられ――それから、すぐにカイル様の意図を知って、ぼんと頭から湯気を吹かんばかりに真っ赤になられました。
 その通り、このような時ですらトリシア様は聡明でございました。この状況が何を意味するのか、すぐにご理解なさったのです。
 ここなら誰も見ていない。
 だから、――どうすればよい、というのでしょうか。
 いっそ、何もかも投げ出してしまえたのなら、トリシア様もここまで苦しむことはなかったことでございましょう。
 幼いころから想い慕い、いまは立場を慮ってその恋心をひた隠しにされている、あろうことかその当のお方が、ご自身のご不浄の為に森の中へと連れてきてくださった。
 その事実に直面させられるなど、方伯令嬢として――いえ、一人の乙女としてはあまりにも恥ずかしく、辛いことでございました。
「な、なにを仰るの!! じょ、冗談でしょう!!? こっ、ここで、ここでなんてっ、ッ、そんな、破廉恥なっ!」
 もはや一時の猶予もないというのは間違いないはずでございますが、素直になれぬお心のまま、乙女の羞恥によって、反射的に言い返してしまうトリシア様でございます。
 ですが、もうご自分では一歩も動けないのは間違いありません。カイル様が助けてくださらなかったら、あのままな馬車のなかで、はしたなくも熱い雫を足の付け根に迸らせ、後から後からとめどもなく噴き出す黄色い噴水に、ご自身の白いドレスを見るも無残に汚してしまっていたことでしょう。
今もこうして、カイル様が支えてくださらなかったら、一人で立つことも難しい有様なのでございますから。
「わ、わたくし、ッ、が、こんな、トコロ、でッ……!!」
 頭から湯気を吹かんばかり。首元まで朱に染まり、ドレスの前を握り締めたままもじもじと激しく身をよじり、トリシア様は叫ばれます。
 ああ、なんとお可哀想なトリシア様でございましょう。
 離宮までの道中に、貴族のご令嬢がご不浄を済ませることのできる場所などないのです。もはや我慢がならぬとなれば、村娘のように森の木陰、草むらの茂みに腰を下ろし、ドレスの裾をたくし上げ、満杯のティーポットの中身を零すしかないのでございます。
 無論、トリシア様にもその状況は飲み込めぬはずがありません。もう辛抱できないと訴えたのはトリシア様なのでございます。
 ですが、こうして深い森の中にカイル様と二人きりになっては、恥ずかしさに頬は紅潮するばかり。容易く下品な欲望に身を任せることなど、そうそうできるはずがありませんでした。
「………、………ッ」
 そうして。
 トリシア様は、決して短くは無い葛藤の中、何度も何度も悩み抜き、みっともなさと羞恥を懸命に押さえ込んで、『そのための』覚悟を決めねばなりませんでした。
「ッ………わ、わかり……ました、その、ッ、み、見ないで……くださ」
 押し寄せる尿意に身を震わせ、追い詰められた先、ついに、『そのこと』を口になさらんとしたトリシア様。
 ……ですが。運命のいたずらは、なおトリシア様を苛んだのでございます。
 カイル様は、最後の慈悲を願わんとしたトリシア様のお体を地面に下ろすことはなさいませんでした。
 いえ――あろうことか、カイル様はトリシア様のお体を腕の中に離さぬまま、方伯ご令嬢を背中から抱きかかえるように抱え上げ、その脚を掴むようにして、大きく左右に割り開かせたのでございます。
「え……ッ!? きゃああ……ッ!? ッ、ちょ、ちょっと!! なっ、な、なにをッ、カイル様ッ!!」
 無論のこと。ご令嬢にはあってはならぬはしたない姿でございます。あまりにもみっともない格好を強いるカイル様の真意がわからぬまま、トリシア様は絹を引き裂かんばかりの悲鳴をあげられます。
 咄嗟の事にトリシア様は暴れもがくように、カイル様の腕の中を抜け出さんとなさいましたが――まるで羽毛のように軽く小柄なトリシア様では、逞しいカイル様のお力にはまるで抗う事はかなわないのでした。
 まったく、その通りでございます。トリシア様の現在のご容態を深くご理解されていたのはカイル様のほうでございました。
 と言いますのも、トリシア様の足腰は長い長い我慢によってすっかり力を失い、生まれたばかりの小鹿のように歩みもおぼつかないのでございます。
 ここでトリシア様を地面に下ろしたところで、一人ではご不浄の御準備をなさるなど満足にはいかぬ、まして剥き出しの土と泥まみれの地面でございます、ご令嬢の美しきドレスを汚さぬままに用を足すことなど不可能であろうと、カイル様はそう案じていらっしゃったのです。
 言わばこれは、トリシア様に方伯ご令嬢としての恥をかかさないようにという、カイル様のご配慮でありました。
「いや……ッ、いやぁあッ……!!」
 けれど。……ああ、けれど。
 そうしてトリシア様が強いられる、背中から抱きすくめられ、大きく股を広げられ、太腿から膝を左右に割り広げられるお姿は、閨の中で愛するお方にすら見せることを憚るような、恥辱の極みと言っても過言ではないお姿でございました。
 そう。それは、まさに。
 『おしっこしーしー』のポーズでございました。
 まだ、お一人ではご不浄を済ませることのできないほどに幼いお子様を、乳母や子守役が、ご不浄の中でそっとお助けするお姿。
 まだ恥を知らぬ赤子や御幼少のころであればともかくも、夜界デビューを間近に控えたご令嬢がなさるには、あまりも、はしたなくもみっともない格好でございます。
 貴族のご令嬢にとって、屋外で晒すなどありえない、恥辱のお姿でございました。まして、トリシア様はお慕いするカイル様の前でこのお姿を強いられ――いえ、カイル様の前であるからこそ、トリシア様はこのような格好を見られるのは耐えられなかったのでございましょう。
 何度も悲鳴を上げ、顔を涙でくしゃくしゃにして叫ぶトリシア様。その胸中は窺い知ることはかないません。いったいそのお辛さ、恥ずかしさ、悔しさは、いかばかりであったことでしょうか。
 けれど、いくらもがいてもカイル様はのお力は強く、トリシア様はもう逃れることは叶わなかったのでした。


 カイル様は、トリシア様の白いドレスの裾が汚れぬよう、これを大きく捲りあげられます。
 大胆に持ち上げられたスカートの上、バニエ諸共に白い下着(ドロワーズ)が露わになり、トリシア様はふたたび、喉も張り裂けんばかりの声で悲鳴をあげられます。
 ですが、その声もまた深い森の中に飲み込まれるばかり。
 これも、トリシア様の羞恥を案じてのカイル様の深慮でございました。
 ここには他に誰もおらず、誰も見ていない。
 だから、恥ずかしがる事はない、と。
 カイル様はそうトリシア様を諭したのでございます。
「ッ~~~………!!」
 もはや、トリシア様は声もありません。ぐるぐると目を回しながら、カイル様の手を懸命につかんで抗おうとなさいます。さしものトリシア様も、この異常事態にあって、冷静な判断力を失っていらっしゃるようでございました。
 トリシア。手を。
「――――ッ、あ、っ、な、なッ……!!」
 それは、乙女のプライドの最後の砦。
 腰上まで捲られたスカートの一部と共に、ドロワーズの付け根をきつく握り締めつづけるトリシア様の白手袋の手に、カイル様は訴えます。
 手を離して。汚れてしまう。
 そっと顔を覗きこみながらの、その真摯なお声に。ただ一心にトリシア様の身を案じてのカイル様のお言葉に。
 ついにトリシア様はふっと諦めるように、お手の力を抜かれたのでございました。
 ぶるるっ、と小さく身震いされたトリシア様の細いお体。腰上まで捲られたスカートと共に。ぐいと力強くの下着が膝まで引き下げられます。
「っ…………!!」
 そうして露わになるのは、緊張と羞恥に赤く染まったトリシア様の、まるで白雪のように滑らかに美しい肌でございました。
 懸命の我慢に震える内腿、暴れ回る羞恥のホットレモンティを閉じ込めた下腹部は、いまやはち切れんばかりに張り詰め膨らみ。
 ほんのわずか、日に透ける様な白金の御髪とおなじ、柔毛が薄く張り付いた、清廉なる乙女の部位が、外気に晒されていきます。
 長い間、ドレスの上からしきりに握り締められ、押さえつけられ、すっかり擦れて赤く色づいたその先端は強く熱を持っていました。『そこ』が森の中のひやりとした外気に触れるやいなや、トリシア様は「ひぅっ」と高い声をあげられます。
「あ、あっ、嫌…っ」
 いよいよ後がなくなり、まるで本当に、子供がむずがるように、首を左右に振っていやいやをなさるトリシア様。
 その耳元に、カイル様の優しいお声がかけられます。
 もう、だいじょうぶ。
「あ、あっ、あ……っあ、っ」
 心の安息をもたらす、想い人の優しい言葉。
 その声に、張り詰めていた緊張がついに途切れたのでございましょう。
 ぴゅっ、ぷしゅっ、ぷしゅうっ。
 懸命に塞ぎ続けていた『注ぎ口』が緩み、たちまち腿の間に雫を迸らせます。
「み……ッ、みない、で……ぇっ……!!」
 噴き出す水流の飛沫を感じながら、トリシア様は、燃えるような羞恥で染まったお顔を白手袋の両手で覆い、かすれた喉から懸命に声を絞り出すので精一杯でした。
 その微かな懇願の声をかき消さんばかりに。
 トリシア様の脚の付け根、色づく部位から激しい水流が噴き出すのは、まったく同時のことでございました。

 ぷしゅッ、しゅしゅうゥッ! ぶッしゅシュィイイィいッッ!!

 中身を限界まで詰め込み、伸びきって張り詰めた水袋に、小さな穴が開いたかのよう。噴き上がる奔流は、乙女の密やかな花片の合わせ目を押し開かんばかりに真っ直ぐに前に迸り、目の前に構えた苔生した大木を勢いよく直撃いたしました。
 わずかに弧を描きながらも、宮殿の噴水と見まごうばかりの勢いで、ぶじょじょぶしゅううじょじょじょぶじゅううううと叩き付けらる水流は、たちまち幹の四方に飛沫を飛ばし、激しくも下品な音を響かせて地面に猛烈な勢で注がれてゆきます。
 もはや辛抱も慎みもなく、方伯令嬢がその身を下品な欲望へと委ねるばかり。激しく打ち重なる水流が地面を叩き、猛烈な水音を響かせてゆきます。身体の中心に孔があいたかのように、トリシア様はなお激しく水流を噴出させます。いまやこの深い森の一角は、トリシア様専用のご不浄も同然でございました。
 長い馬車の旅の中、方伯ご令嬢がその小さな体で耐えに耐え続けてきた羞恥の熱水は、大木の幹を伝い、滝のごとく流れ落ちて、剥き出しの地面へ注ぎ、まるで大海のとばかりの大きな大きな水たまりを作っていくのでございます。
 深窓のご令嬢が、耐えがたい羞恥を必死に押し隠し、おなかを不格好に膨らませてまでお体の内側に閉じ込め続けたホットレモンティ。特別性のトリシア様のお体とあっては、『注ぎ口』から噴き出すその勢いは途方もなく、受け止めるティーカップなど、ひと噴きで吹き飛ばしてしまうことでございましょう。
 健気にも、トリシア様がカイル様のとのささやかな逢瀬の最中、必死になって乙女のティーポットに押さえ込んだ羞恥の熱水。その解放の凄まじい様と言ったらもう、街道沿いに停車した馬車馬が地面に噴き出すそれよりもなお激しく、多かったに違いありません。

 ぶじゅうぅううッ、じゅじゅじゅううううううッ……
 じょじょぼぼぼぼぼぼぼぼ……!!!

 じょぼじょぼぶじゅううっとみっともない水音を力強く森の中じゅうに響かせ、脚を深く抱えられたまま、前方の地面に、苔生す大木の根元に向けて、黄色く熱い羞恥の噴水を噴き上げさせながら。
トリシア様は長い長い苦痛からの解き放たれ、まさに天にも昇らんばかりの心地でございました。
「っ……ぁ、はぁあああああ……ッ」
 固く閉じられた栓が開き、身体の奥の熱が乙女の身体の最も奥底、一番大切なる秘めやかな部位に空いた孔から迸るその心地。
 それはそれは筆舌に尽くしがたき解放感。
 幼い子供が無邪気にそうするように、お体が不要なものを排除せんとする欲望のままに身を委ね、己を律していたシャルナーズ方伯令嬢という立場からの解放。
 この、屋外露天でのご不浄は、トリシア様にすっかり我を忘れさせ、いと高き天の国へと連れてゆくに相応しいものだったのでございます。
(おしっこ……いっぱいでてる……キモチいい……)
 あるいは。この瞬間は、奥様を早くに失い、物心がつかぬ頃から気丈に振る舞い、ひたぶるに貴族令嬢の模範たらんとし続けたトリシア様が、御幼少のみぎりに置き去りにしてきた、幼心の発露であったのかもしれません。
 カイル様のたくましい腕に、まるで小さなの子供のように足を抱えられ、森の茂みにご不浄を済ませる、その間ずっと、ずっと。
 トリシア様の手はぎゅっと、スカートの端と、そしてカイル様の腕を握り締めていらっしゃったのでした。
「ふぁ……んぅ……っ」
 大きく開かれた裸の下半身、剥き出しの脚の付け根から、なおもばしゃばしゃと水流を地面に噴きつけながら。
 言葉にできぬ想いをぎゅっとかみしめ、トリシア様は、じゃれるようにカイル様の胸板に、お顔を擦りつけます。
 ぐりぐりと押し当てられたトリシア様の目元は赤く滲んでいましたが――そのお顔は、これまで一度もないほどに、安らいでいるのでございました。
 そして。
 トリシア様のご不浄はなお途切れることなく森の中の地面を濡らし続け、いつしか森の奥に確かなる美しい乙女の泉を広げるにいたったのです。
 たっぷり、3分以上もかけて。
 シャルナーズ方伯ご令嬢が乙女のティーポットをすっかりの空っぽにしてしまう頃には。
 トリシア様はカイル様の胸に顔をうずめ、すんすんと眼に涙を滲ませながら、そっと鼻声でお甘えになるばかりでございました。
 馬車へとお戻りになったお二人を見て、従者たちはさらに首を捻るばかりでございました。と言いますのも、森から戻ってきてなお、カイル様が変わらず、トリシア様のお体を抱きかかえたままだったからです。
 いつもであればこのような時、トリシア様は声を荒げ、余計なことをなさらないでくださいまし! と鋭い叱責と、時には平手まで飛ぶこともあるのですが――
 トリシア様は赤く泣きはらした瞳で、けれどぎゅっとカイル様のお体にしがみ付き、離れようとはなさらなかったのです。
 もっとも、それも仕方のないことでございましょう。長い長い苦痛からの解放にトリシア様はすっかり腰を抜かしてしまい、まっすぐ歩くどころか立つことも叶わなかったのですから。



 そうして、これより後。
 シャルナーズ方伯ご令嬢・トリシア様は、以前よりも頻繁に、カイル様の元へと通うようになられました。お二人の関係は以前よりもぐっと近しいものとなり、トリシア様ははっきりと、ご自身の想いを口にされるようもになりました。
 トリシア様とカイル様は、あの日の秘密を境に、深い絆で結ばれたのでございます。
 そうして。カイル様との逢瀬の約束のため、どこか恥ずかしげに御者に命じ、離宮への道に馬車を急がせる時。
 トリシア様のお顔はどこか上気し、あどけないお顔には、えも言われぬ妖しい魅力が宿り。ドレスの裾から覗くその脚がいつも落ち着きなく足踏みを繰り返し、懸命に何かを堪えるように、その白手袋のお手が、ま白いスカートを握り締めている事が常であったといいます。
 街道への道を、馬車が離宮への道をひた走る最中。
 馬車が轍にその車輪を跳ねさせるたび。
 お座席にある室内には、トリシア様の「んっ……ぁんっ……」と甘い声が漏れ、荒い息がいつまでも途切れることなく続いていたそうでございます。


 (了)
[ 2017/01/03 20:02 ] 小説 | トラックバック(-) | コメント(-)