FC2ブログ



スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-)

初詣と神社を巡るお話。 


(うぅん……)
 気付くと初音は、傘を差して大雨の中にいた。見慣れた庭に商店街、学校の校庭、見渡す限りの一面が水浸しで、見る見るうちに水かさが増してゆく。
(に、逃げなきゃ)
 そう思うものの、道路も河のようになっていて、脚がずっしりと重い。思うように走ることもできすにいるうちに、水かさは長靴の上を通り越し、膝の上まであがってきてしまう。雨はますます激しくなり、河の堤防が決壊したのか、どどうと大波のような水が押し寄せてきた。
(うそ、流されちゃう……!!)
 胸を越えとうとう頭の上まで深くなった水に飲み込まれて、初音は溜まらずにレインコートの裾をぎゅっと抑える。傘は水流に飲み込まれてどこかにいってしまった。初音は溺れないようにぎゅっと身体をまるめ、目を閉じて息をしないように口を閉じた。
(うぁ……やだぁ……助けてぇ……)
 がぼがぼと空いている手を振り回してみても、水面にたどり着くことも出来ない。このままでは息が続かなくなってしまうだろう。けれど、一秒ごとにどんどん深くなってゆく大洪水の中では、初音はまるで小さな米粒のように、なにもできず流されてゆくだけだった。
 全身を――とくにおなかの下からを、重く水が浸してゆく。ゆっくりとおなかのあたりから広がってゆく重苦しい水面は、次第に上のほうまで上がってきた。
(やだ、やぁ……)
「―――!! ――……さい!!」
(やだぁ……助けて、誰かぁ……)
 深い水の奥から伸びてきた手が、ぎゅっと初音の肩を掴む。暗い水底に引きずりこまれそうになって、初音は必死でその手を振りほどこうとした。けれど、手はしっかりと初音を掴んで、放そうとしない。それどころかガクガクと初音を左右に揺さぶるのだ。
(……ぁあああ……だめ、ダメぇ……)
 もうダメだ、と。初音が覚悟を決めた時だった。

「初音!! ほら、早く起きなさい!!」

 ベッドの上でぼんやりと目を開けた初音の前で、コートを着たお母さんが眉をしかめている。ふかふかの布団のなかに埋もれていた初音は、んぅ? と寝惚けた頭で回りを見まわした。
 無論のこと、なんの変哲もないいつも通りの初音の部屋だ。大雨も洪水もなく、のどかなお正月の晴れ空が窓の外に覗いている。
「もう、いくら呼んでも来ないと思ったら……起きた?」
「お母さん……? あれ? どうして? ……大洪水は?」
「もう……新年早々寝惚けないでちょうだい。しっかり目を覚まして!! もうお父さんも支度して下で待ってるのよ」
 ようやく焦点を取り戻した初音は、ベッドの上に身体を起こす。
(そっか……寝ちゃったんだ、わたし……)
 時計を見れば、朝の10時。つい何時間か前には家族揃って『あけましておめでとうございます』の挨拶をして、おせち料理を食べて、お年玉を貰って、ちょっとだけお屠蘇も飲んでみたりして、初音は元旦の朝を満喫していたのだ。
 一通りの行事を終えたあと、新年の特番を流し続けているテレビを放って、初音は初詣にいくために2階の自分の部屋に戻り、よそ行きに着替えて――そのあたりでふらりと記憶が途切れていた。
(うん、確か――ちょっとお布団がふかふかでキモチ良さそうだったから、横になって……)
 うとうとしているうちに、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。時間にすればほんの30分ほどのことだろう。
「どう、目は覚めた? 早く行きましょ」
「あ、うんっ」
 初音は母親にせかされるまま、寝起きの頭をぶんぶんと振って部屋を出る。頭の左右にリボンで括った髪が犬の尻尾のようにぱたぱたと揺れた。
(うぅ……)
 階段を降りてゆく間にも、ふわぁ、と大きなあくびが出る。
 昨日の夜、つまり大晦日に除夜の鐘が鳴るまで頑張って起きていようとしていたのが、やっぱり響いていたらしい。今年こそ、と気合いを入れて、お母さんにコーヒーや濃いお茶まで用意して貰ってチャレンジしたのに、結局最後には11時半ごろに眠ってしまった。今年も初音は新年の切り替わる瞬間には立ち合えなかったことになる。
 とんとんと階段を下りる初音に、お母さんはハンドバックの中の鍵を探しながら聞いてくる。
「夢でもみてたの? なんだか、随分うなされてたみたいだったけど」
「あ、うん……そうみたい」
 さっきまでの大洪水の夢のことを思い出して、初音は答えた。新年早々溺れる夢なんて、ぜんぜん楽しくない。
「……ねえお母さん、ああいうのも初夢になるの?」
「さあ……一年で一番最初に見た夢ならそうじゃないかしら」
「えー……やだなぁ……あんなの」
 口を尖らせる初音に、母親はふいと顔を上げる。
「なぁに? ひょっとして溺れる夢でも見たの?」
「……えっと……」
「そうなの? 今年こそ泳げるようになりなさい、ってことでしょ。ちゃんと練習しなさいね」
「ぇえーっ……違うよぉ」
「ふふ、まあ、初夢は秘密にしていると本当になる、なんていうけどね」
 言い合いながらも玄関を出れば、すっかり待ちくたびれた様子で、お父さんが運転席から車のドアを開けてくれる。車の中はすっかり暖房が効いていて、寒くて困る事はなさそうだった。
「初音、お正月からお寝坊かい?」
「……ごめんなさぁい」
 お父さんにぺこりと頭を下げ、初音は助手席のお母さんに続いて後部座席に乗りこんだ。まだチャイルドシートを使っていた頃から、なんとなくお出かけする時の初音の指定席はここになっている。一人で後部座席を占領するように、シートの真ん中に腰掛ける。
 家の前の細い道路から大通りへと乗り出した車がゆっくりとスピードを上げ、窓の外を流れる景色がどんどんと後ろに過ぎ去ってゆく。お母さんがカーナビをいじると、さっきまでリビングで流れていたお正月特番が音声だけで流れ出した。
 陽気な音楽と笑い声が、車内を静かに満たしてゆく。
「お昼までに帰って来れるかしら?」
「うーん。混んでるだろうからなぁ」
 暢気に答えながら、父親は信号待ちのウィンカーを入れた。午後からは親戚が遊びに来ることになっているので、母親はすこし急いでいるらしい。
「初音も楽しみにしてるんだし、できれば早く戻って来れるといいわね……」
 半年ぶりの従姉妹との再会は、もちろん初音にも楽しみなことだ。母親の発現はそれをおもんばかってのことかもしれない。
 が、それよりも今の初音には気になることがあった。そのせいで両親の会話は上の空、返事を返すことも忘れている。
(………ぅ)
 ぞくり、と鈍い刺激が恥骨に響く。
 いまさらのように、初音は下腹部にじんと集まる重みと、脚の付け根に集まったイケナイ感覚を思い出していた。

 それは、おしっこ。

 はっきりと自覚できるほどの尿意が、初音の下半身を占領している。
(そっか……急いでて、おトイレ、行き損ねちゃった……)
 着替える前には、出掛ける前にトイレに行っておかないと、と考えていたのを思い出す。寝坊したせいですっかり忘れていたけれど、良く考えてみれば初音は今日は起きてから一度もトイレに行っていない。
 だから、初夢に水の夢なんか見ていたのかもしれない。冷静に分析してみると、おなかに響く尿意はかなりのレベルに達している。思っていたよりもずっと切羽詰っていた事態に、初音はこくりと口の中の唾を飲み込む。
(ひょっとして、あのまま夢、見つづけてたら……オネショとか、しちゃってたかも……)
 となると、母親に叩き起こされたのも決して悪いことではなかったのだ。
 後部座席に他の人の目がないのをいいことに、初音はスカートの前にぎゅっと手のひらを挟みこむ。
(着いたら、トイレ行こ……)
 シートの上でもじもじと腰を前後させ、おしっこを我慢する初音を乗せ、車は一路、片道30分の神社への道を進んでゆく。





「寒いわねぇ」
「……去年はこんなでもなかったけどなぁ」
「でも、さすがにすごい人ね……去年よりも多いかしら」
「みたいだね。初音、離れないようにしなさい?」
「う、うん」
 神社の境内は人でごった返していた。お正月の渋滞にくわえ、駐車場での10分あまり順番待ち、さらには参道でものろのろ歩きの順番待ちを強いられたため、すでに時計の針は11時半近くを指している。
(ふぁぅ……っ)
 あれからも初音の我慢は続いていた。
 早朝の寒さに冷えきった下半身は、すっかり尿意に占領されている。黒いストッキングに包まれた脚はせわしなく寄せられて、ぎゅっ……と動きを止めては小刻みに震えるのを繰り返していた。
 おなかにじんじんと響く尿意を感じたまま、初音は父親に手を引かれ、境内の人ごみの中にいる。足元はどこかふわふわと頼りなく、まっすぐ歩くのにも苦労する。
 新年の冷えこみはタイツに守られた少女の下腹部を容赦なく刺激し、初音の尿意を加速させていた。お参りの最中に、『おトイレまで我慢できますように』なんてお願いをした女の子は多分初音くらいのものだろう。
(おトイレ……行きたいっ……)
 切迫な初音の訴えは、しかし言葉になることはない。
 頻繁に時計を気にする母親の様子が伝染したのか、両親はそろって初詣をできるだけ早く済ませたいと焦っていた。車を降りるなり、初音はまっすぐに神社の境内、参拝者の列の中に連れ込まれてしまっていたのだ。
「ふぅ……っ」
 人ごみではぐれないようにとぎゅっと握られた初音の手のひらには、じんわりと汗が滲んでいる。
 不自然に力の入る手のひらを、父親は愛娘がはぐれないように緊張しているものと勘違いしている。そうして父親が初音を安心させようとしっかり手を繋ごうとするため、初音はますます自由を失ってしまっているのだった。
 片手がハンドバックで塞がり、もう片方の手は握られたままでは、スカートの前をおさえることも叶わない。どうしても不自然に寄せ合わせる膝が大きく動いてしまう。
「おっと……」
(うぁ!!)
 バランスを崩しかけた父親にぐい、と手を引っ張られ、初音は思わず悲鳴を上げそうになった。
 せっかく内股に揃えていた膝が離れ、寄せ合っていた内腿にひんやりとした空気が流れこむ。スカートの中にまで侵入してくる初春の寒気は、薄布に守られた少女の股間をゆっくりと侵し、くつくつと沸き立つおなかの中の恥ずかしい液体を活性化させるのだ。
 初音は慌ててぎゅっとスカートの前を握り、コートの裾を引っ張って膝を交差させる。
(っ、……出ない、おしっこなんか出ない……ガマン、しなきゃっ……)
 自分に言い聞かせるように、呪文のように『我慢』いう単語を繰り返して、そっと下腹部を撫でる。わずかではあるが落ち付いたおしっこの波を感じ、初音は小さく息を吐いた。真っ白い吐息が行列の中に溶けてゆく。
(うぅ……ち、チビっちゃうかと思ったよぅ……お父さんのばかっ)
 ちらり、と父親の顔を窺うも、当の父はと言えば母親にしっかりしてと怒られ、いつもの顔で参った参ったと頭を掻くばかり。
「ほら、あんまりきょろきょろしないの」
「だ、だってぇ」
「だってじゃありません」
 たしなめられながらも、初音はそちらを窺わずにはいられない。少女の視線の先には、人ごみの隙間から覗く境内の端にずらりと並ぶ行列があった。
 新年の大混雑は、初音がいま一番行きたい場所であるトイレにも公平に訪れている。初詣で慣れない着物を来ている女の人も多く、そのせいでますます行列の進みは遅かった。
 初音が一番最初に確認してからもそれなりに時間は経っているのだが、状況は一行に改善されず、それどころか順番待ちの列はさらに長く伸びていた。普通に並んでいるだけで何十分という時間を浪費してしまうであろう。
 この上こんな寒空の下でそんなに焦らされていたら、順番が回ってくる前におしっこが出てしまう可能性のほうが高いようにも思えた。ならばいっそこのまま我慢を続けて、家のトイレでおしっこを済ませるほうがまだいくらか下腹部に負担を強いないで済むのかもしれない。
 だと、いうのに。
「……ありゃ、小吉か」
「わたしは中吉ね。ここのおみくじ、当たるって有名なのよ。初音はどうだった?」
「え、えっと……」
 のんびりと会話する両親に気付かれないように、初音は小刻みに靴のかかとを参拝路の石畳に押しつける。
 早く帰りたい、という初音の内心を汲み取ってはくれないまま、両親はおみくじの内容に一喜一憂している。二人とも、まさか愛娘が去年から一度もおしっこをできていない、という事実に苦しんでいるとは思いもよらないのだろう。
 手元を覗きこんでくる母親に気付かれないよう、初音はさりげなく膝を寄せ合わせて、できるだけなんでもない風に答える。
「こ、こんな感じだけど……?」
「初音は末吉ね。……失せもの、見つからず。待ち人、望まずとも来る? なんだかあんまり良い感じじゃなさそうね?」
 さすがのご利益と言うべきだろうか。トイレは見つからず、来て欲しくないおしっこの波は次々とやってくる。見事にふたつとも的中していた。
「あ、でも健康は良しってなってるわ。よかったじゃない」
(よ、よくないようっ……!!)
 またも的中。少女の循環器はいまもいたって健康で、いままさに現在進行中で、去年のうちに飲んで全身に吸収されたお茶にコーヒーを、強力な利尿作用のままに続々とおしっこへと抽出しては小さな膀胱に送り込み続けている。
「事故……水に注意? あら怖いわ。気を付けてね初音?」
「う、うんっ……」
(あ、だ、だめ、は、はやく、おしっこ……っ!!)
 これまた的中。初音の下半身は今まさに、オモラシ警報の発令中だ。口の中に溜まったつばを飲み込んで、辛うじて頷く。
 ちらりと横目に、無効の行列の先頭で俯いていた、自分と同じくらいの女の子がぱっと顔を輝かせてトイレの中へと飛びこんでゆくのを見て、初音は切なげに腰を揺らしてしまう。
「……はぅ…っ!!」
 同時、じんっ、と鋭くイケナイ感覚が初音の腰骨を伝う。初音はこぼれそうになった悲鳴をぐっと飲み込んだ。
「あらあら……恋愛……年頭に苦難あり。乗り越えられねば今年は難しい、か。まあ初音にはまだ早いわね」
(……ぅ、しない、オモラシなんかしないもんっ……!! しないの、し、ない……ぃ、ぅ)
 初音も今年でもう5年生なのだ。そんなことは絶対にゆるされない。オモラシしてしまう女の子のことなんか、だれも好きになってくれるわけがないのだ。
 けれど、もう初音のおなかはぱんぱんで、タイツの膝はぎゅっと擦り合わされるまま、離れようとしない。
「初音、どうかしたのか?」
「……具合でも悪いの?」
「あ、あの、お母さん、は、はやくっ……か、帰ろうよぅっ」
(はやく!! はやくトイレ、おしっこ、トイレおしっこ!!)
 言葉の裏に真意を隠し、初音は両親に訴えた。
 その間にも刻一刻と限界へのカウントダウンが進んでゆく。コートとスカートの下で、ぴったりと寄せ合わせた内腿の奥。じっとりと股間に広がる熱い感触が、じわじわと外に広がってゆく。
 もはやダムの崩壊は少女の括約筋では塞き止めることは叶わず、とうとう初音の今年最初のおしっこが始まってしまったのだ。それも、最悪の――オモラシ、という形で。

「あ、あ、やだ、やぁ、やぁあ!!」

 じゅわぁ、と下着の股布を溢れだした湿り気があっという間に足の間を伝い、タイツの色を侵食してゆく。
 初音は悲鳴を上げながら、くねくねと足をよじるが、そんなことで出始めたおしっこが止まるはずもない。
「お、おい、初音?!」
 父親の驚愕の声に、何事かと周囲の注目が集まる。まさか、今年で5年生になる娘がオモラシするとは予想していなかった父親にとっては仕方のないことだが、オモラシのまっだたなかの初音にはあまりにも辛い仕打ちだった。
「いやぁ……見ないで、見ちゃやだぁ……っ」
 排泄の瞬間を隠そうと、初音は反射的にぐりぐりと股間を握り締めてしまう。少女が身体を震わせて声を上げ、、小さな手のひらを重ね止まるはずもないおしっこを塞き止めようとする様は、どこか背徳的なものすら感じさせた。
 初音の小さな身体が去年から懸命に我慢し続けた熱い雫が、色の変わったタイツの股間から噴き出してぱちゃぱちゃと石畳の上に撒き散らされてゆく。神社の境内で盛大にオモラシをはじめてしまった少女を、周囲の人々は騒然と見つめていた。
 自然、周囲に開いた輪の中心で、初音はちいさくしゃくりあげながらよろよろとしゃがみこんでしまった。ちょうどおしっこをするための体勢になった初音の身体は、ここがどこなのかも、服を着ているということも無視して条件反射的におしっこを出し続ける。
 我慢に我慢を重ねたおしっこはあっという間に少女の下半身をずぶ濡れにしていった。
「ちょっと、……初音!! もう、どうしてトイレ行かなかったの!?」
「っだって、だってぇ……!!」
 自分の作ってしまったおしっこの水たまりの上、いやいやと首を振りながら、初音は母親に言い訳をする。しかし、何もかもがもはや手遅れだ。
 一年の計は元旦にあり――初夢は、誰にも言わなければ正夢になるという。おしっこの夢を秘密にしていた初音は、まさにいま夢と同じ状況を体験してしまう羽目になったのだった。



 (初出:書き下ろし 2008/01/24)
[ 2008/01/24 00:09 ] 小説 | トラックバック(-) | コメント(-)

二人のヒミツ 


 おもらし百選スレの小説の一節、「わたしの分までおしっこしてきて?」と、永久我慢の輪舞曲スレに出てきた「おなかの中におしっこする」というシチュエーションに酷く感銘を受けて書いたもの。我慢特化。




 美沙の様子がどうにもおかしい、と思ったのは午後4時も回った頃のことだった。
 その日も放課後に文化祭の実行委員で残っていた私は、頭のすみにひっかかっていた違和感をさりげなく口にした。
「ね、ねえ……まさか、本当にそうなの?」
「あはは……ばれちゃった?」
 クラスメイトと括るには少々親しく、親友と呼ぶのはちょいと気恥ずかしい彼女とは、前の学校から同じクラスと言う縁で親しくなった。
 部活には入っていないが運動神経はよく、いつも快活で、勉強はそこそこ、程良い人気者。特徴は軽めの色を入れたショートカットと、男の子みたいなふうを気取った一人称。人を間違えれば痛々しいだけのそれも、彼女には不思議と似合う。
 可もなく不可もなく、どこにでもいるごくごく普通の女の子――それが今日までの私の彼女に対する印象だった。
「気付かれてないと思ってたんだけどなぁ……千里って結構鋭いねえ」
 照れ笑いをするその仕草も、この数年で見慣れたもの。
 けれど、たった今聞きだした事実の前では、そんなものは軽く吹き飛んでしまう。
「帰るまでガマンできると思ってたんだけど……ボクもまだまだだねぇ」
 せわしなくスカートの下で行き来する膝をぎゅっとくっつけながら、美沙は今日でもう3日近くも、トイレに行っていないのだという事実を告白したのだった。
「ホントに、3日も……?」
「そ、そんなに驚かないでよう、もうっ。それに実際はまだ3日目ってだけで、時間的には2日半くらいだってばっ」
「そんなの変わんないわよっ!!」
 3日といっても、女の子にとって、その……大きいほうのお通じが不規則なのはありがちなこと。それくらいの期間トイレのお呼ばれがないというくらないなら、聞き流してしまってもそれほど支障はないだろう。
 問題なのは、美沙がガマンしているのがそっちではなくもうひとつ――いわゆる小さいほう、おしっこである、ということだった。
「ね、ねえ、嘘だよね? 冗談……だよね?」
 にわかには信じられないことだった。どうにも気になって聞いてはみたものの、気分的にはまさかという思いが半分だったのだ。それなのに美沙は本当に、3日前の朝からトイレに行っていないのだと繰り返す。
「うん、本当……ちょっと昨日の夜ジュース飲み過ぎちゃってさ……ほら、お昼の時からもうおなかぱんぱんで……座ってるのきつかったんだ」
 一度認めたことで楽になったのか、美佐はもうもじもじと動く膝を止めようとはしなかった。衝撃の告白にすっかり参ってしまった私は、スカートの下でせわしなく動く美沙の脚から目が離せない。
「飲みすぎたって……美沙、今日だってあんなに喉渇いたって……」
「体育の時は平気だったから。ほら、1時間目だし。起きてすぐはちょっと楽なんだよ」
「楽って……」
 ぞっとする。朝の登校前どころか夜寝る前にもトイレを済まさずに、そのまま眠って起きて学校に来る――その上あんなにお茶まで飲んで。普段でも2時間に一回はトイレに行っている私には想像すら不可能な、超人とも呼ぶべきガマンだった。
「2日目くらいから結構楽になるんだよ。ほら、だんだん慣れてくるって言うか……わかんないかな?」
「わ、わかるわけないじゃないのっ!!」
 そんな、生理みたいな呼び方されても困る。だって……トイレ、オシッコだ。どれだけトイレが遠い子だって、せいぜいが学校で一回、済まさずにいられるかどうかだ。私なら半日だって気が狂いそうになってしまう。それを、何日って単位で続けるなんて。
 あまりの事に眩暈までしてきた。
 3日ということは、24の3倍で72時間。つまり24時間営業のコンビニでも3分の1しか及ばない。まあでも実際は約2.5日で、60時間……ということは、ええと……どういうこと?
 わけのわからない方向で混乱に陥る私に、美沙はあはは、と照れながら椅子の上でモジモジを続ける。
「そ、そんなにガマンして平気なのっ!? 病気とか、なっちゃうんじゃ……」
「うーん……どうかな、こんなにガマンしたのはじめてだし……わからないけど」
 辛そうに腰をよじりながら、それでも美沙はまだまだ余裕を見せる振りをしている。
「今まで一番ガマンしてたの、1日半くらいだし……あは、新記録」
「……美沙、あんたって……」
 呆れてものが言えなかった。
 嬉しそうに3日目だと告げる彼女が、あまりにも嬉しそうだったから。
 一体そんなことをして何の意味があるんだろう。そりゃ確かに、私みたいにトイレが近い身としてはそれだけガマンし続けられることに対してちょっと羨ましい気持ちがないでもない。トイレに悩まされずに生活できるというのはなかなかに魅力的なことだろう。
 それにしても、一日半なんていうのは論外、無茶苦茶だ。まして3日なんて、タチの悪い冗談としか思えない。実際、私はいまだ美沙の告白には半信半疑……どころか三信七疑くらいの状況だ。
「じゃあ、もうホントに一昨日の朝からトイレ行ってないわけ?」
 念を押すように、はっきりと『嘘つかないでよね?』と視線で問いかけながら、確認する。すると美沙は、
「……あは、まさか。そんなわけないよ、千里ってば」
「え?」
 以外にあっさり前言を翻した彼女に、肩透かしを喰らった気分だった。
 どういうことだろう? やっぱり嘘ってコトだろうか。でも美沙は今もひっきりなしに腰を揺すって辛そうにしている。演技とは思えない。
「だってほら、皆に気付かれちゃうとヘンな目でみられちゃうみたいだしさ、今日はちゃんと行ってるよ? トイレ。……しっかりパンツも脱いで座ってるし。おしっこ、してないだけで」
「……ねえ、アンタ実はすっごい馬鹿なんじゃないの?」
 私はかなり本気でこのお馬鹿な友人の頭の中を開けて覗いてみたい衝動に駆られていた。私が昨日一昨日と小テストを前に必死になって勉強している間、美沙はこんな事ばっかり考えていたというのか。それどころかそんな状態のままテストで私よりもいい点とりやがったのか。
「ま、まあちょっとそのこと忘れてて、昨日までトイレに行くの忘れちゃってたけどさ……そうだよね、ちゃんと最初の日からそうしてれば、今日も気付かれなかったのにね」
「のにね、じゃないってのあんたは……ええい同意を求めるなっ」
 やっぱり。
 どうやら本当、正真正銘に、美沙はガマンを続けているらしい。だってこんなことに嘘をつく必要がない。トイレに行かないなんて気取ってみたって、ガマンしていることを知らせてるんだから意味がないし。
「………・…」
「どしたの?」
 私の視線にも、きょとんとしたままの美沙。確かにガマンの状況はだいぶ辛そうな部類に入る。もう他人の目を気にせずにガマンし続けられないレベルのようだ。ひっきりなしにお尻を――いや、股間を椅子の天板に擦りつけ、背中を心なし丸めておなかの負担を軽減しているように見える。
 ここまで限界の尿意を抱えたまま、個室に入って便座に腰掛けて、それでもなおおしっこをせずに済ませる自信は、とてもじゃないけれどない。
 たとえ私が美沙と同じくらいガマンできたとしても、そんな状況になってまでガマンし続ける事は絶対にできない気がした。
「そ、それにさ?」
「まだなんかあるの?」
「おしっこ、『ガマン』してるのは……今日の朝からだから。今朝くらいまではまだトイレ行かなくても大丈夫なくらいだったし」
「…………訂正。あんた本当に馬鹿でしょ」
「ひ、酷いようっ!? なんで千里そんな酷いこと言うのっ!?」
「ええい自分の胸に聞いてみろっ!!」
「ひんっ!?」
 思いっきり怒鳴り返して、私は椅子に背中を預けた。
 ありえない。ありえない――けれど、間違いない。
 ちらり、と美沙の様子を窺う。制服のスカートは、いつもと同じ位置。決して目立つような状況じゃない。あの小さなおなかに、本当にまる二日分以上ものおしっこが溜め込まれてるんだろうか。……想像すら難しい状況に、私の頭は完全にパニックになってきていた。
 頭を冷やす必要がある。
「とにかく――なんか変な話してたらしたくなってきちゃった。……ちょっと休憩」
「うん、そうだね……」
 席を立った私は、そう言ったきりじっと椅子に腰掛けたままの美沙を見下ろす。
「え? ……ねえ、美沙、どうしたの?」
「どうしたの、って、なにが?」
「何じゃないでしょ。行くんでしょ? 一緒に」
「行くって、どこ?」
「トイレに決まってるじゃない!!」
 だって3日だ。どれだけガマンしてるって言うのか。遠慮のないようにと席を立った私に対し、思うように反応が返してくれない美沙に、思わず苛立って怒鳴ってしまう。しかし当の美沙はあっけらかんととんでもないことを言った。
「いいよ」
「いいよって、いいわけないでしょ!?」
「だいじょうぶだよ。せっかくここまでできたんだから、ちゃん“と3日間”我慢してみる」
「な……!!」
 絶句していた。
「付き合ってあげたいんだけどさ、今トイレ行っちゃうと……ボク、多分、もうガマンできなくなっちゃうから。千里一人で行ってきて?」
「ちょっと、美沙……やめなよ、身体に悪いって、絶対。そんなの……」
「だいじょうぶ。それにほら、千里もけっこうガマンしてるでしょ?」
 なにを、言っているのだろう。
 2日半もおしっこをガマンしていながら。
 美沙は、まだトイレに行かないのだと、言う。
「ボクの分もすっきりしてきて?」
 そう言って笑う彼女に、私はなぜか――不思議な胸の高鳴りを覚えていたのだった。





「ふぅ……」
 後始末を終えたトイレットペーパーを便座の中に落とし、一息。
 私もまた自分で思っていたよりもガマンしていたようで、我ながらおしっこはかなりの勢いだった、と思う。
(――美沙、本気なのかな)
 自分の用を足している間にも、頭の中を占めるのは今なおガマンを続ける美沙のおなかの中のことばかり。そのせいかちゃんと出したはずなのに、あまりすっきりした気分にもなれない。
 だって、ずっとずっと美沙の方がトイレに行きたいはずなのに、私のほうだけが先におしっこを済ませてしまうなんて、なんだか順番を抜かしたようで気分が悪い。
「…………」
 思わず、わずかに色の付いて染まった便器の中をまじまじと覗き込んでしまう。
 もともと溜まっていた水の中に注がれて、全然はっきりとはわからないけど――多分、いま私がしたのは、たぶん500mlペットボトルの半分くらいにも満たない量。
 でも、トイレの近い私にしてみれば、尿意はもうかなりのものだった。ちょっとはしたないくらいに勢いも良かったし、音消ししなければ飛沫も飛んでしまっただろう。
 でも、だとすれば――あれだけ見境なく水分を取って、しかももう3日もトイレに行っていない――美沙はいったいどれくらいすごいおしっこをするんだろう。
「…………っ」
(……ば、馬鹿、何考えてるのよ、私ってばっ!!)
 友人のおしっこの様子、なんていうとんでもない想像をしてしまっていた事に気付き、私はぶんぶんと頭を振って個室を出た。流れる水音を聞いても、なんだかおなかの奥がじんじんと熱くてすっきりした感じがしない。
 洗面台の前で鏡を覗きこむと、ちょっと頬の赤くなった自分の顔が映っていて、私はたまらず顔を洗ってそれをごまかした。
 熱くなった頭を冷やそうと、購買の自販機に寄ってペットボトルの清涼飲料を買うことにする。学生向けゆえには安いのはありがたいものの、運動部の要望が強いせいか500mlの商品が多くて、私なんかはいつも飲みきれず残りを処分するのに苦労するのだが――いまは贅沢を言っている場合ではない。一刻も早くこの沸騰しかけた頭を落ちつかせるのが先決だった。
 封を切ったペットボトルに口を付け、ひとくち、ふたくち。
 ……そうしている間にも、思考は水分の摂取=おしっこの増量、という方向に向いてゆく。もはや私はすっかり美沙の告白の虜だった。
(美沙、どれだけ……ガマンしてるんだろ?)
 そのことに思い至り、私は思わずごく、と口の中身を思いっきり飲み込んでしまった。
 おしっこ、トイレなんて毎日する普通のことのはずなのに、それがなんだかとてもイケナイ事のような気がして、私は頬がさらに熱くなるのを感じた。
 単純に計算してみれば、私が一日にトイレを使う回数の3倍近くだけ、美沙はおしっこをガマンし続けていることになる。私の平均が、少なめに見て一回100mlとすれば、だいたい100ml×10回×2.5日……以上。
 つまり、およそ2リットル半。
(うわ……)
 導き出された結論に頭が熱くなった。
 2リットルって、簡単に言うけどつまりはコンビニとかスーパーで売ってる一番大きな烏龍茶とかのペットボトルと同じだ。重さにすれば2キロ。
 コップに移せば、楽に10杯以上。そんなの一人で飲むのだって大変な量なのに。それをあの小さなおなかの中に収めてしまっているってことになる。
 ちゃぽん、と中身を揺らし手に掛かるペットボトル重さが、ダイレクトに脚の間に響くようだった。むずむずし始める下着の奥にイケナイ感触が滲み出す。さっき済ませたばかりなのに、またトイレにいきたくなってしまった。
(これより、多く……美沙のおなかの中に、溜まってるわけね……)
 考えまいとすればするほど、その想像は頭の中から離れない。
 美沙の腰の上、ふっくらとしたおなかの中にぱんぱんに詰まった黄色い液体。一歩ごとにたぷんとゆれるその水面が、まるではっきりと見えるみたいに頭のなかに浮かんでしまう。
「んっ……」
 思わず声が出てしまい、慌てて回りを見まわす。幸いなことに、人影はなかった。
 他の女の子のおしっこのことを考え続けるなんて、……どんだけヘンタイなんだろうか、私。でも、あまりにイケナイことに対する誘惑みたいなものからは逃れられない。ちょうど、初めてえっちなことに興味をもったときと同じように。
「う……」
 じくん、と腰に響く甘い痺れに、私はもう一度トイレに引き返す羽目になった。





「お帰りー」
「た、ただいま……」
 随分経ったような気がしていたけれど、実際には10分くらいのことだったようだ。美沙は変わらず席に座ったまま、委員の仕事を続けていた。
 さっきよりは楽になったのか、腰を震わせる頻度はいくらかおちついている。
 それでもぎゅっとおしりの下に巻き込まれたスカートは、大きく皺を寄せて、美沙のガマンが今もなお継続中であることをはっきり物語っていた。
「あ、それ買ってきたんだ。ボクの分は?」
「え? あ、ええと……買って、来なかったけど……」
「なんだー、せっかく購買まで行ったんなら買ってきてよう」
「ご、ごめん……ってまだ飲む気なの?!」
「喉渇いたんだもん」
 いったいこの子は何を言ってるんだろう。だって、今にも辛そうなくらいトイレをガマンしてるのに、この上さらに膀胱を膨らませるようなことをするつもりなのだろうか。
 ありえない。
 ありえない、けれど。
 美沙はずっとそうしていた。昨日も、今日も、一昨日も。
「あの、さ……その、ヘンなこと、聞くけど」
 さりげなく聞こう、と思っていたことが、知らず口に出てしまう。
「なに?」
「その、したくなったら……どうするの?」
「ガマンするんだよ」
「そんなのは見りゃわかるわよっ!! そ、そうじゃなくて、もうガマンできないくらい辛くなったりして……ああもう、ほら、分かるでしょ!? 波みたいになるじゃない!! ち、ちびっちゃったりとか、ないのって聞いてるのよ!!」
「ああ……えっとね、慣れてくると分かると思うんだけどさ……」
 美沙の語ったところによれば。
 彼女のように、たっぷりと訓練されていると、そのうちに込み上げてくる猛烈な尿意を『飲み込む』ことができるようになるのだと言う。ちょうど気分の悪い時に、吐きたくなるのを無理矢理こらえるみたいな感じで。
「そ、そんなこと……本当に?」
「うん。……あそこをね、こう、ぐぅって力、入れて……ごくって感じで」
「ごく、って……」
 どんな状況なのだろう。まるで想像がつかない。
「あ、ほら、いまちょうどそんなカンジだよ」
「わ、分からないってばっ!! いきなりおしっこの実況なんてしないでよねっ!?」
 だいたい、その、女の子の『そこ』は――まあ女の子に限らないけど――とにかく『そこ』は、もともと排泄器官なんて言うくらいで、おしっこを出すことが役目なのだ。身体に不要になった成分を、水と一緒に血液から漉し取って、外に排出する……そんな機能を持っている部分なのだ。
 確かにおしっこをガマンすることはできても、それは……まあ、垂れ流しになってしまわないようにするための付随的な機能で、断じてそれが主目的でじゃないはずだ。
 でも、多分。
 美沙の膀胱と、『そこ』は――長い訓練の末に、いまやおしっこを『出す』ことよりもむしろ『ガマンするため』の器官になりつつあるのかもしれない。だから、そんなふうに常識外れのガマンだって可能なんじゃないだろうか。
(うぅ……なによ、このヘンな気分はっ……!!)
 ぐるぐると渦巻く思考を追い払おうとしてはみたものの、目の前にその原因が座っていれば上手くいくわけもない。
「ねえ千里、触ってみる?」
「えぇえ!?」
 席に付いてからもまるっきり上の空で、ほとんど作業なんて手についていなかった私は、不意にそんなことを言われてずっこけるくらいに仰け反った。
「さ、さわ、触って、って……なによそれ!? そ、そんなのダメよ!? だってほら、その――だって、そんなの……ぁあう……ええと、なんだっけ!?」
「あはは。へいきだよ。千里もすっごく気になってるみたいだし。いいよ?」
「って……」
 動揺する私をよそに、美沙は制服の上着を半脱ぎにして、薄いブラウスのおなかをぐっと前に突き出させた。
 女同士だというのになんだかちょっとヘンな気分になりそうな、細くてすらっとした腰のカタチ。とてもじゃないけど……その、2日半もオシッコをしてないなんて想像がつかない。
「えっと、あんまりぎゅっとされちゃうと辛いから、そっとね?」
「う、うん……」
 いつの間にか、流されるように。
 遠慮がちに伸ばした指先が、美沙のおなかに触れる。
「んぅ……っ」
「うわ……」
 触った瞬間、その異質さに思わず声を上げてしまった。
 まるで、鍛えられた腹筋を触ってるみたい。
 美沙のおなかからはまるで想像と違う、石みたいに硬い感触が返ってくる。ただそうやって触ってみるだけでも解るくらいの、途方もない量のオシッコが、小さなおなかにぎゅうぎゅうに詰まっているようだった。
「ぁふ……」
「へ、ヘンな声出さないでよっ!?」
「仕方ないよぉ……もう、ボクの身体、そうなっちゃってるんだから……」
「ええいあんたはまた誤解を招くような表現を……っ!!」
 普段なら軽く鉄拳制裁してやるところなのだけど、いまはそんな場合ではない。私は目の前の神秘に釘付けだった。
「こ、これ、どうなってるの……? 全然、その、見た目はふつうなのに……」
「おしっこしたいの、たくさん『飲み込んだ』んだ……。油断してると、おなかぽこって膨らんでみっともなくなっちゃうから。制服も着れないし、ガマンしてるの分かっちゃって、恥ずかしいしね。だからマッサージと腹筋で、膀胱をおなかの内側に『飲み込む』の。……えっと、だからね?」
 美沙は私の手を握ると、自分のおなかに指を触れさせたまま、おヘソの上のほうまでなぞるようにして動かす。おヘソを通り越し、おなかも通りすぎ、辿り着いた先はみぞおちの近く、ブラのすぐ下のあたり。
「だいたいこの辺まで、膀胱が来ちゃってるカンジかな」
「こ、こんなところまでっ!?」
 だって、だってもう、ここはおしっこなんかとは全然関係ない、胸の側なのだ。こんなところまで美沙はおしっこを外に出す代わりに『飲み込んで』いるっていうことなんだろうか。
 そっと、自分のおなかに手を添える。どきどきと高鳴る胸の鼓動が聞こえた。
 こんなところまで……ってことは、ひょっとして心臓の脈動まで膀胱に伝わるくらい敏感に鳴っているってことだろうか。美沙はもう、おなかのどこを触られても、おしっこを誘発するようなあの感覚を感じてしまうのだ。もし仮に私が美沙だったら、この動揺でおなかのなかがさらにおしっこの感覚でいっぱいになって、漏らしそうになってしまっているのかもしれない。
 もう、耳まで真っ赤になっているのが自分でもはっきり分かるくらい、顔が熱い。
「へ、平気……なの? その、そんなに出さないでいたりして、どっか病気になっちゃったり、とか……」
「そこは特訓あるのみだよ。毎日ちょっとずつだけど、しっかり鍛えてるもん。いろいろ役にも立つしさ」
 ナニのドコをどういうふうに鍛えてるとおっしゃるのか。反応に困る私の前で、美沙はあは、と小さく笑顔を覗かせる。
「病みつきになっちゃうんだよね……ほら、あるじゃない? 誰だって。ちっちゃい頃、オトナの女のひとはトイレなんか行かないんだって思ったりしなかった?」
「えっと……それ、どこの国の人?」
「えー? そうかなぁ」
 まあ、その。男の中にはそんなふうに、アイドルとかお嬢様に幻想を抱いてるのがいるなんてことは聞いたことがないでもない。でもそれもほとんどギャグみたいなノリで言ってるのであって、心底信じてるとしたら正直、病気だと思う。
 けれど美沙は言うのだ。
「でも、いまのボクってさ、“そう”なんだよ。トイレなんてはしたない場所には、絶対に行ったりしないお姫様……ね?」
「そ、そんなの……違うわよ」
「違うの? なんで?」
「っ、だって、そんなの、別に――トイレ、行ってないだけで……ガマンしてるだけじゃないっ」
「じゃあ、昨日のボクとかはどうなのかな? 一度もおしっこ行ってないけど、ガマンもしてなかったよ?」
「う、うぅうっ、ええい離れなさいっ!!」
 間近で囁かれ、思わず胸が高鳴ってしまう。実はごく一部でひそかに下級生にも人気のあるなどという噂もあったりするんじゃないかと思ったりする、少しハスキーな声でそんなことの同意を求められれば、そりゃまあ動揺するなというほうが無茶でありましてね。
 でも。
 実は、そのお姫様は、おなかのなかにおしっこをぎゅうぎゅうに詰めこみながら、必死に平静を装っているわけで。
「美沙ってさ、実はかなりのMっ気あり?」
「あはは、かもね」
 あっさり肯定されたよオイ。
「……昔から、あんまり女の子らしいこと、させてもらえなかったからさ。その反動かなのかも。ほら、さっきエッチな声出すなって千里、怒ったでしょ? こうしてると、……なんだか、自分がちゃんとおんなのこなんだなって、安心するんだ」
「……えっと」
 おなかにナニかを詰め込む、っていうのは、たぶん赤ちゃんを育てることの真似みたいなもので。女の子が自分の性を無意識に確認するための遊びだ――とかなんとか。美沙の弁舌にごまかされたように納得してしまう。
 実のところ、さっきから私は美沙のガマンのことばかりが気にかかっていて、ほとんどまともな思考ができていなかったりした。
「でも、知られちゃったのが千里で、よかったかも」
「な、なによ、それ」
「だって、千里も喋ったりしないでしょ。他の子に」
 美沙は、そうやって、まるっきり私を信用したふうに、言う。
「だから、二人だけのヒミツ。……だよね?」
「……あんた、はっ」
 違うのに。今日のこれは、私が、一方的に美沙のヒミツを握っただけだと言うのに。そんなふうに、美沙は私とこのヒミツを共有するのが嬉しいとでも言うように、笑うのだ。
 ぎゅぅっと、胸が締め付けられる。切なく、苦しく、甘く。
 二人だけの秘密、という言葉が、こんなにも素晴らしいものだということを、私は今日初めて知った。
「ねえ、千里」
「な、なによ」
「さっきのペットボトル、まだ飲む?」
「…………っ」
 美沙が何を言わんとしているのかは、色ボケた頭でも理解はできた。それはクラスメイトとして――友達として、いや、人間としてさせちゃいけないことなのだろうと言うのも分かる。
 この上、あんなになるまで小さなおなかの中に尿意を抱え込んで、さらに口からも水分を摂取する。美沙は、おしっこをガマンするためのひとつの装置になりたがっているみたいに思えた。
 けれど。
 私はこの、一種病的なまでに実にお馬鹿な友人の秘密を知ってしまった今、その頼みを断ることが、どうしてもできそうにないのだった。
「飲ませて、くれる?」
「……おなか、ホントにパンクしちゃうわよ」
「あは。もうほんとにたぷんたぷんなんだよ」
「…………」
 こくり、と息を飲んだ。
「ねえ、千里?」
「……明日」
「あした……?」
 ああ、多分。もうきっと、私の頭までどうにかなってしまったんだ。そうでなきゃ説明がつかない。こんなことを言い出すなんて。
 ふたりで共有するヒミツという甘美な響きに侵されて、私は頭の中を支配する熱っぽさのままに言葉を続ける。
「あした、どうなってるか……さ、触らせてくれるなら、……いいわよ? できる? ちゃんと、ガマンできる……?」
「…………」
「ねえ、どうなの? 美沙っ」
「……あは。なんだ。千里って……けっこうSなんだ。……女王様ぁ、ありがとうございますう、って感じ?」
「う、うるさい、真面目に答えなさいよっ……!!」
 まともに顔も見れないまま、無茶を言う私に。
 美沙は、小さくコクンと頷いてくれたのだった。



 (初出:書き下ろし 2008/01/12)
[ 2008/01/12 22:01 ] 小説 | トラックバック(-) | コメント(-)

シズク忍法帖・その参 


「……シズク。やはり貴方は少しばかり修行が足りませんね。今日は少し、特訓をしなければいけないようです」
「えっ……」
 湯船から上がろうとした妹分を呼びとめて、カスミは厳かにそう告げた。
 え、と首を傾げるシズクを捕まえ、岩の洗い場の上に腰を下ろし、脚を拡げさせる。しゃがみ込むのと似た姿勢に危険を感じたのか、案の定シズクは途端に反応をはじめる。
 もじもじと腰を揺すり始めた妹にのしかかるように前から覆い被さり、カスミはそっとシズクの腹を撫でた。今度は遠慮せず、はっきりとその奥に蓄えられた熱いものの存在を感じとらせるように。
「ぁ、や、やんっ、駄目、駄目です、姉さまぁ……!!」
「――なんです、この程度で音をあげて。だらしないですよ」
 ほんの少し、かるく下腹部を撫で上げただけで甘い悲鳴を上げるシズクに、カスミはやや声を鋭くして叱咤する。
「ぁ、だ、だって……こ、こんなに、辛抱して……るんですからっ……」
「泣き言を言わないの。まだ全然膨らんでもいないではないですか。……ほら、脚を動かしては駄目」
 カスミは大胆に、しかしシズクに決定的な刺激を与えぬよう繊細な力加減を見極めてやわやわと下腹部の控えめな膨らみを揉みほぐしてゆく。
「や、駄目、ぇ……姉さま、そんなに強くしちゃ……で、出ちゃう……せ、せっかく、すこしだけ落ちついたのにっ……」
「シズク」
 聞き分けの無い妹に諭すように、カスミはその耳元に唇を寄せる。何をされるのかとびくりと身体を竦めるシズク。
「貴方もいずれは流水の里の忍びとして、厳しいお役目を果たさなければなりません。……今更言うまでも無いことでしょうが、私たちくのいちは、必要とあらば娘として殿方に触れねばならぬ時があります」
「……?」
 いつもとは違う真剣な口調に気付いたのだろう。手を止めぬカスミに、時折びくっとその身体を竦ませながらも、シズクは暴れるのをやめ、大人しくカスミの言葉に耳を傾ける。
「世の中の殿御の中には、いわゆる――その、男女の交わりについて、あまり“まとも”ではない趣味をお持ちの方もいます。特に私たちのようなくのいちが近付かなければならない身分の高い殿方は、ひととおり普通の男女の交わりというものを知り尽くし、飽きた方が多いのです。そうした方はまず、“まとも”ではないやりかたを好むのです」
「まとも、では、ない……?」
「ええ。中には、このように――」
「ひゃんっ!? ね、姉さま!?」
 ぎゅ、とこれまでより強く下腹部を圧迫され、シズクが可愛らしい悲鳴を上げる。突然の狼藉に恨みがましい目で睨んでくる妹分をさらりと受け流し、カスミはシズクの身体をそっと自分の方へと抱き寄せた。
「あ……」
「んッ……」
 形良く膨らんだ腹のふくらみが、シズクの身体に押し付けられる。大きさの違うふたつの下腹の膨らみが押しあわされ、やわらかく形を変えた。触れ合う肌の心地よさ、暖かな妹の体温。そして何よりもじんと背筋に響くむず痒さを飲み込んで、カスミは言葉を継ぐ。
「このように、孕み娘を好んで褥に招く方も、多くいるのです」
「え、ええ……っ!?」
 シズクには、いくらか想像の埒外のことだったらしい。そうだろう、綾瀬大社に始まり、ここ天津の国では赤子を宿した娘は神の身子を授かったという意味で敬われ、尊ばれる。そんな孕み娘を好んで犯すなど、常軌を逸した行いだ。
「まことのことです。……あ、あまり考えたくは無いことですが、たとえば、他の殿方との愛しい子を、陵辱し蹂躙することに昏い歓びを見出すのかもしれません。中にはそうした相手でなければ男の滾りを覚えない方もいるとか。
 ……私もなんどか、そのような嗜好の方にお会いしたこともあります。そのような殿方に近付くためには、秘水の堰はとても都合が良いのですよ。まさか気に入られるために本当に赤子を孕むわけにもいかないのですから」
 流水の里に限らず、くのいちは任務として身体を使った色事を試みることもある。まさか、そのたびにいちいち赤子を孕んでいたらとてもではないが身が持たない。カスミもシズクも、月の触りが来るようになってからは里の薬師が造った秘薬を服用し、子を孕まぬように心掛けている。
「考えて御覧なさい。そのような時は、今よりも大きなおなかを膨らませたまま、そこを揉まれ、触られ、押しこまれ――そうしてさらに殿御の猛りをこの胎(はら)の奥に受け入れなければならないのですよ。……はちきれそうなお腹のなかを掻き回され、うつ伏せにのしかかられ――どれほど辛いか想像できますか?」
「ぅ……」
 シズクがぶるっっ、と背中を震わせたのは、単に尿意からだけではないだろう。
 固く張り詰めた妹の下腹部をそっと包み込み、カスミはやわらかくシズクの耳たぶを噛んだ。
「ぁ、ひぅっ!?」
「そして、私達には想像すべくも無い、百戦錬磨の手練手管で、天にも昇る心持ちの歓びを与えられ――何度も絶頂へと突き上げられ、それでもなお、秘術を解く事を許されない。……そうした過酷なことも、いくらでもあるのです」
「は、ぁ、や、……ねぇ…さまぁ……」
 尿意の辛さとその解放への誘惑。同時に甘く蕩けるようなくのいちの手練手管。シズクはたちまちのうちに幸苦の入り混じった渾然一体の感覚の虜となっていた。
 四肢をひくつかせ、息を荒くしながらも、言い付けだけは護って股間だけは緩ませぬように懸命に耐える妹。カスミもいつしか、そんなシズクの姿がたまらなくいとおしくなってきている。
 くのいちは、かりそめの伴侶を相手にしても身も心も相手に捧げねばならぬときもある。こうして、目の前の少女を――そう、たとえ同じ女であっても、必要とあらば心から惚れる事ができるように育てられているのだ。
「ね、ねえ様も……そんな風に……?」
「いえ、私もまだそこまではしたことがありません。せいぜいが天井裏で、声も出せず身動きも許されぬまま、堪えきれなくなった小水を辛抱させられて、二刻余りも指やら舌やらで責め続けられたくらいです。……イズミさまや、ツユハ姉さま、アマネ姉さまに」
 自分を仕込んでくれた里の姉達の名を挙げながら、カスミはシズクの淡い秘裂へと指を伸ばした。湯ではないぬめりに覆われたそこは、すでにいくらか辛抱できず漏れ出した乙女の秘水が湿らせているのかもしれない。
 そこを撫でると、シズクは甘く小さな叫びを上げる。
「ッあ……ぅ」
「皆さん、とても厳しい方達ばかりでしたよ。私のように甘くはありません」
「っく…ね、姉さまより厳しいなんて……そんな、想像も付かないです……」
「……貴方を甘やかしすぎたのですかね、私は」
 年上の姉達は、修行と称しながらもまるで底意地の悪すぎるほどに意地悪く、カスミを弄んだ。下腹部を小水でいっぱいにして、どうすることもできずに震えるカスミに徹底的に排泄衝動を制御できるように仕込んだのだ。中でも一番辛かったのが、丸四日にも渡って小水を禁じ、辛抱も限界の状態で無理矢理厠へ連れていくという荒行だ。
 この時、カスミの股間には排泄を禁じた符が張られている。墨で丹念にびっしりと暗号文を書かれたこの符を、きちんと読めるままに保つというのが修行の内容だった。符の文字は少しでも水に濡れるとたちまち滲み、読めなくなるという工夫がされている。
 そうして、カスミはこの符を股間に張り付けたまま服を脱ぎ、厠にしゃがみ込んで、煙草を一服吹かすばかりの間じっとしていなければならない。まさに小水を迸らせる格好をさせておきながら、一滴も排泄を許さないまま、ちょうど用を済ませたように振舞わせて服を整え、外に出てゆかせるというものだ。
 無論、用を足す事は許されない。
 もし堪えを無くしてわずかばかりでも小水を漏らそうものなら、たちまち股間に張られた符が文字を滲ませ読めなくなる。厠の入り口で待ち構えている姉に符を調べられ、ごく一部でも文字が読めなくなっていれば、罰として椀に一杯の水を飲まされる。
 この間、いつものように普段通りの鍛錬も並行して続けられた。
 小水を堪えているということを口にするのも許されず、まるで素人娘のように泣きじゃくって本来の力を出せない惨めさ、情け無さ。まるでが狂わんばかりの厳しい修行に、カスミは何度も姉達を恨みもしたが、そうした姉達の徹底した躾によって、若くして里でも一番の素質と呼ばれるまでにカスミは成長した。 
 だからこそ――カスミは自分が姉となって一番始めに教えたシズクが、このようにおちこぼれているのがどうしても許容できないのだった。
「ほら、そのように腰を動かすのはお止めなさい。もっときつくしますよ」
「ね、ねえ様っ」
「力を抜いて。脚をもっと広げなさい」
「だ、だめ、でっ、出ちゃうぅ……」
 首を振っていやいやをするシズクに厳しく言い聞かせ、カスミはきゅ、と強めにその下腹を押しこんだ。
「手や足を使ってはなりません。おなかに力を入れて、深く呼吸(いき)をなさい。ここの力だけで耐えるのです」
「あ、あ、ああ!!」
 排泄孔のすぐちかくを指で圧し、その感覚を教えるカスミ。
 いつもならこうしてカスミに攻め寄られると、たちまり我慢をなくしてしまうシズクなのだが、今日は少しばかり様子が違っていた。堪えている様子ははっきりと露にしてしまっているが、それでもなおふるふると、健気に決壊を耐え続けている。
 それを見て、カスミはそっとシズクの耳元に唇を寄せた。
「ぁ……ねえ、さま?」
「ふふ……そう。ちゃんと堪えていなさいね。いまから始めますから」
「え……っ?」
 怪訝に眉を寄せるシズクの耳にそっと息を吹きかける。一瞬身体を竦ませたシズクを椅子の上に引き寄せて抱え上げ、ひときわ大きく足を左右に押し開く。秘所をはっきりさらけ出すようなあられもない様は、まるで幼い子の用足しを手伝っているような格好だ。
「ぁあっ!?」
「しー、しー……」
「え、……あ、や、やだぁっ」
 それは、まさしく幼子に排泄を促す言葉。天津に生まれたならばどんな者でも知っているだろう共通語。そして、今まさに吹き出さんばかりの小水を腹に溜めこんでいる少女には、あまりにも甘美で切ない誘惑の言葉だった。
 優しげに語りかけるカスミの声は、まるで我が子を慈しむ母のよう。
「しー、しー……しー、しー……」
「か、カスミ、ねえ様っ……だめ、それ、駄目ぇ・・…っ!!」
 そして事実、シズクは脚を大きく広げさせられ、まさに秘められた乙女の部位から小水を迸らせんばかりの姿を強制されていた。小刻みに震える内腿の間で、ほんのりと色づいた花園がぷくりと膨らむ。
「ぁくぅ……、あ、はぁっ……」
 一度は落ちつきかけた尿意が、凄じい勢いで再燃してきたのだろう。逃れようと暴れ出すシズクをがっちりと押さえ付けたまま、カスミは悪辣な囁きを続ける。
「ほら……しー、しー……しー…なさい? 我慢していては身体に毒よ」
「ぁ、あく……だ、駄目ぇ……」
 カスミが敢えて声色を変えているのは、これが訓練であるということを忘れさせないため。本来はそのままの声で囁くのだが、シズクのことだ、ある程度念を入れていないと本当に漏らしかねないとカスミは一応の配慮をしていた。
「しー、しー……いいのよ。ゆっくりと力を抜いて、ここで全部出してしまいなさい」
「ぅ、あっ……っだ、で、ちゃう……ぅ」
 言葉遣いまで幼くして、シズクがいやいやと首を振る。排泄を命じる言葉が直接幼い妹を従えてゆく。次第にシズクが排泄の体勢を取りつつあるのを、カスミは感じていた。
「しー、しー……ふふ……ああ、そう、すこしずつ出てきたわ……しー、しー……ちょろちょろと音を立てているの、解る?」
「っ、……くぅう……」
「ほら……シズク? しー、しー……」
「っ…………!!」
 排泄を促す言葉に、目を閉じ歯を食いしばって、それでもシズクは耐えようとしていた。ぴく、ぴく、と膨らんでいた乙女の花園が、内側からきゅぅと引き絞られ、裏返りそうになっていた排泄孔がゆっくりと元の淑やかな形を取り戻す。
 いったいそれを成すのはどれほどの精神力だろうか。姉として慕う愛しい相手に、身体をまさぐられ優しく囁かれ、それでもシズクは幼い身体を奮い立たせて誘惑を断ちきろうとしていた。
「ぁ、ち、ちが……っ、で、出てませんっ……まだ、も、漏らしてないです…っ…!!
 ねえ様…っ、わ、わたくし……もっと精進、いたします……が、がんばります、からっ……き、厳しく、されてもっ……けして、負けません、からっ……」
 切なげに目元を潤めながらも、シズクはカスミを見つめ、固い決意を口にする。
「今は、足手まといでも……姉さまと、同じように……姉さまのように、なりたい……ですからっ……うくぅ……っ」
 なおも数度、尿意の余韻に背筋を震わせながらも、ちろり、とほんのひとしずくだけ琥珀色の雫をこぼしただけでシズクは耐え切った。腹の中が泡立つかのような猛烈な尿意を下腹部の筋肉だけで押さえこみ、シズクはぜえぜえと大きく肩を上下させる。
 まさにその腹の中は煮え滾る湯釜の中のような、地獄の有様だろう。
「良く辛抱しましたね、シズク」
「ねえ様……」
 憔悴しきった表情で姉に応えるシズク。カスミはそっとその頭を撫でてやった。シズクは普段の緊張した様子からもさらにほぐれた、年齢相応のあどけない笑顔を覗かせる。
「ふふ、ご褒美に今夜は少し遊んであげましょうか? いつも一人では寂しいでしょう?」
「っ……」
 姉妹の絆を深めるための閨の誘いに、羞恥に顔を染めるシズク。
「どうしたの? 嬉しくないのですか?」
「ぅ……うれしい、ですけれど……、ま、また、弄られたら……すぐに、辛抱できなくなってしまいます……」
「なんです。本気にしたのですか?」
「――ひ、酷いですっ、姉さまっ!?」
 そう答える妹分に、どこか愛おしさを覚えながら、カスミは笑顔で答えるのだった。



 (初出:書き下ろし 2008/01/12)
[ 2008/01/12 21:49 ] 小説 | トラックバック(-) | コメント(-)

お遊戯の時間・トイレ取り 


 今日はみなさんに面白いゲームを紹介しましょう。
 “トイレ取り”と言うゲームです。イス取りゲームに似た遊びですが、あれよりもずっとスリルに満ちた面白い遊びです。
 まず、おしっこを我慢している女の子を何人か……できれば多い方がいいですが、7~8人くらいが適当でしょう。あまり大勢になってしまうと混雑して大変です。
 つぎに、おまるをひとつだけ用意します。このおまるは白鳥の格好をしたスタンダードなものがベストです。女の子が小学校にもなればまたぐ真似をするだけでも恥ずかしいような、できるだけ小さな物を選びましょう。
 どうしても見つからない場合は、ペット用のトイレや、金だらいなんかでも代用できます。ペット用のトイレは後始末のために専用の砂はたっぷり引いておきましょう。金たらいは金色の、ぴかぴかに磨いたものを用意して、水を注いだ時にできるだけ大きな音を立てるようなものがいいでしょう。


 遊ぶ場所はできるだけ何もない、広い部屋がいいでしょう。入り口も少ないほうが心理的な圧迫感を与えてベストです。
 さて、用意したおまるを一つ、トイレットペーパーと一緒に床に置きます。この時注意したいのは、おまるを高い台の上などに設置して女の子達が座った時、きちんと周りから見えるようにすることです。特にゲームに参加している女の子達から、きちんとおまるにまたがっているのが分かるようにしておきましょう。こうしておかないと、女の子がおしっこをしているときに、恥ずかしくなりません。『ここでおしっこするなら死んじゃうほうがマシ』くらいになるように、工夫が必要です。
 この年頃の女の子達は、きづかれないようにこっそりをおしっこを済ませてしまうかもしれません。誰かに見られているだけで女の子達の羞恥心はぐっとアップし、簡単におしっこができなくなります。


 さあ、準備は終わりました。女の子達にはきちんと立ってもらって、おまるの周りにぐるりと輪を作ってもらいます。あとは、普通のイス取りゲームと同じ要領で曲を流し、女の子たちにぐるぐるおまるの周りを回ってもらうだけです。前を押さえてもじもじしているので、なかなか進めない子もいるでしょう。その時はちゃんと参加するように注意しましょう。
 選曲は自由ですが、『おトイレまで我慢』や『オモラシしないよ』などといったトイレトレーニングの童謡などを使うと効果は倍増です。
 そして、曲が止まった時に、女の子達にはおまるに座ってもらいます。このとき、いちばん早くおまるに座れた女の子にはおしっこをする権利があります。もしおしっこがどうしてもガマンできない時は、思う存分出してもらいましょう。他の女の子達がじっと見ている中ではとても難しいので、なかなかうまくできない子もいると思います。


 ちゃんとおしっこを済ませられた子には、幼稚園の名札にはなまるをつけた『よくできました』の勲章を渡してあげましょう。この子は勝ち抜けとして、輪から離れたところに座っていてもらいます。みんなの中で一番おしっこに行きたくて、我慢ができなかったことをきちんと説明してあげるといいでしょう。
 また、この時おまるに座ったのにおしっこをしなかった子は、まだまだおしっこがしたくないということですから、罰ゲームとしてごアイスコーヒーや冷たいお茶など、おしっこを近くする飲み物をたっぷり飲んでもらいます。
 おまるに座ろうとして間に合わなかったり、あるいはまだ曲の途中で我慢ができなかった子には、『オモラシしました、ごめんなさい』という名札をあげましょう。もう失敗しないようにオムツを使わせてあげたりするのもいい考えです。
 あるいは、みんな遠慮しあっておまるに座る子がいない、ということもあるでしょう。その時は全員に罰ゲームをさせると効果的です。


 さて、おしっこを済ませてしまった子を輪から外して、また曲のスタートです。
 あとはこれを繰り返して女の子の数を少なくしていき、最後のひとりになるまで続けます。勝ち残った子が優勝です。優勝した子はいちばんおしっこが我慢できて、おなかがぱんぱんになるまでおしっこをおなかの中に溜めておけるすごい女の子であることを丁寧に説明してあげましょう。
 優勝した子にはきちんとしたおトイレでおしっこをしてもいい、と教えておくと、みんな一生懸命我慢に参加してくれます。
 幼稚園の頃に卒業したおしっこのしつけを思いだしてもらう、とてもいいゲームですので、みなさん試してみてはいかがでしょうか……?



 (初出:書き下ろし 2008/01/07)
[ 2008/01/07 21:38 ] 小ネタ | トラックバック(-) | コメント(-)

第6夜 長靴をはいた猫 


 そしてとうとう、王様の狩りの邪魔をしたカラパ公爵なる貴族がいったいどんな人間なのかを見極めるため、王様の使いの女騎士がやってきました。ぴかぴかに磨いた銀の鎧を来て、金髪を肩の上で切りそろえた美しい女騎士です。
 たとえわがままな王様の命令でも、騎士にとって命令は絶対なのでした。
 女騎士はおろおろするハンスをじっと見下ろして、びしっとした声で言います。
「そこな男、カラパ公爵の領地はこちらでよいのか?」
 カラパ公爵なんて知らない、と正直に答えてしまいそうになったハンスの唇にしーっ、と指を当て、猫は答えました。
「騎士様。ここはもうカラパ公爵さまの領地にございます」
「なんと。それはまことか?」
「ええ。あの牧場もあの森もあの川も向こうの湖もあっちの家も、全部カラパ公爵の領地でございますよ」
 なんと、猫は次々でたらめを並べてゆきます。
 本当は、カラパ公爵なんて人はどこにもおらず、獲物のはずのウサギを助けて、王様の狩りの邪魔をしてしまったのはただの木こりのハンスなのですが。
 猫は長靴を履いた後ろ足で器用に立ち、ちょこちょこと歩きながら、いかにカラパ公爵がすごい人物であるのかを説明しはじめるのでした。
 その後ろでハンスはいつ気付かれやしまいかとはらはらしていますが、猫は心得たものでさも得意そうに村の中を自慢してゆきます。
「カラパ公爵様は大変儀礼に厳しい方にございます。領主が率先して民の手本とならねばならないと、常々気にとめておられます。そのため領民のおおくもああして他人を敬い礼儀正しく過ごしております」
「う、うむ……そうだな」
 言いくるめられた女騎士はうなずくしかありません。
 王様に逆らったカラパ公爵なる人物がすこしでも無礼な人間なら、すぐに王様に報告して打ち首をしてしまうつもりだったのですが、猫がカラパ公爵のことを褒めちぎるものですから、すっかり思惑が外れてしまったのです。
「この道もこの畑も、カラパ公爵様の領地にございます」
「ふむ……ではあそこで畑を耕しているのは誰だ?」
「あれは、カラパ公爵様の土地で暮らす農民でございます」
「ではあの男に公爵の評判を聞くとしよう」
 ハンスはぎくっとしました。猫がウソをつくのならいくらでも女騎士をだませますが、他の人に聞かれたらたちまちカラパ公爵のことなんででたらめだとばれてしまいます。
「では、少々お待ちくださいませ。僕が呼んでまいります」
 ですが、猫はまるで動じたふうもなくそう言うと、くわを持った男にぴゅうっと駆け寄っていって何やら話し、ハンスと女騎士のもとまで連れてきます。
 ああ、これはいよいよダメだ、とハンスはぎゅっと目をつぶりました。
「そこな農民、ここがカラパ公爵の領地であるというのはまことか?」
「はい、そうでごぜえますだ。カラパ公爵様は大変立派な方でごぜえます。おかげさまでオラも重い税や飢饉に苦しまずこに、幸せに暮らしていられますだ」
「ふむ……そうか。手間を取らせた。これは取っておくがよい」
「へ、へえ。ありがとうごぜえますだ!!」
 女騎士が男に金貨を渡すと、男は深々とお辞儀をして畑に戻っていきました。
 一体どういうことだろう、とハンスは目を白黒させました。
 実は、猫はこの男に、何を聞かれても『カラパ公爵は素晴らしい人だ』と答えれば金貨が貰えますよ、と入れ知恵をしていたからなのですが、女騎士はそんなことに気付きません。
 それから、女騎士は猫とハンスの案内であちこちを歩き回りました。とちゅう女騎士は洗濯をしている娘や行商人や、狩人を呼びとめ、カラパ公爵の評判を聞きました。
 娘は、公爵様がいるからまいにちお天気で洗濯物がよく乾くと答えました。行商人は、公爵様が商売を認めてくださるのでいいものをたくさん売れると答えました。狩人は、公爵様がいるからたくさんの獲物が取れると答えました。
 もちろん彼等には全員、猫がこっそりと入れ知恵をしていたのです。
 行商人から氷で冷やした冷たいジュースを買った女騎士はそれをごくごくと飲みながら、カラパ公爵のすばらしい評判をすっかり信じ込んでしまいました。
「なるほど……カラパ公爵どのは、さぞ素晴らしいかたなのだな」
「はい。公爵様は素晴らしいおかたでございます」
「そして、とても広い領地を治めておられるのだな」
「はい。あの森もあの草原も、カラパ公爵様の領地にございます」
 猫はそう言いながら、女騎士の前に立ってずんずんと歩いていきます。ハンスもそれについていくのですが、さすがにずっと歩きどおしで、だんだん足が痛くなってきました。
 けれど猫はいつまでたっても立ち止まろうとはしません。
「ね、猫、ここも……そうなのか?」
「ええ、あの川もその向こうもその先の森も、ずーっとカラパ公爵様の領地にございます。どうです、素晴らしい眺めでしょう?」
「う、うむ……大層広いのだな」
 言葉とは裏腹で、女騎士は景色を楽しむ様子はなく、せわしげにあたりを見回しています。馬も心なしか早足で、ハンスは着いて行くのにも一苦労。そのうち段々と息が切れてきました。
「ま、まだあるのか?」
「はい、カラパ公爵様の領地はまだまだたくさんございます。ご安心ください、僕がきちんとすべてをご案内しますので、迷ったりはいたしません」
「う、うむ、そうか。……は、早く頼む」
「はい」
 この頃から、女騎士の様子がだんだんおかしくなりだしたことに、ハンスも気付きました。なんだかずいぶんと先を急かすのです。
「ね、猫、まだ終わらぬのか? あ、あの十字路はさすがに違うのだろう?」
「いえ、あそこもカラパ公爵さまの領地にございます。その先の森の向こうにもカラパ公爵様の領地がございますので、ご案内します」
「う、ううっ……そ、そうか、は、早くしてくれ」
 女騎士は首筋に汗をかいて、あぶみに掛かった脚にぎゅっと力を込め、そわそわと手綱を持ち替え、鞍の上でしきりに座る位置を直しています。
 そのうち、女騎士の質問が変わりだしました。
「……うっ…猫、では、あちらの水車小屋の陰も、そうなのか?」
「ええ、もちろんカラパ公爵様の領地にございます」
「で、では……っは……ぁ、あの茂みは違うのではないか?」
「いいえ。あの草の一本一本までぜーんぶ、カラパ公爵様の領地にございます」
「……そ、そうなのか……あっ……で、ではあの柵の隅などは……」
 これまでは猫の後について歩いていた女騎士ですが、なんだか物陰や草むら、木陰などをしきりに気にして、そちらに馬を歩かせようとするのです。
「騎士様、そちらではありません、カラパ公爵様の領地はあちらにもございますよ」
「う、うむ……だ、だがな、その」
「王様のご命令、さぞ大変かとは存じますが、どうかカラパ公爵様の領地をすべて余すところなくご覧になっていってくださいませ」
「あ、ああ……くぅ……っ」
 そして、そんな様子のおかしい女騎士のことなぞまるで気にせず、猫はあちこちに立ち止まっては、デタラメな方角を指差しては『カラパ公爵様の領地です』と繰り返します。そのたびに女騎士は焦ったように返事をし、先を急がせました。
 いったいぜんたい何が起きているのだろう? ずっと首を捻っていたハンスに、猫が駆け寄ってきます。
「どうです、もうすぐ面白いものが見れますよ」
 それはどういうことだ、とハンスが聞き返すと、猫はすっかり落ちつきのなくなった女騎士を指差しました。
「ほらハンス様、見て御覧なさい。あの騎士様。おかしいったらありゃしませんねぇ。あんなにぐりぐりと鞍に股倉を擦り付けて、あれはもう相当に我慢してますよ」
 我慢って、何をだろう。そう思ったハンスに、猫はくすくす笑います。
「何をって、そりゃあ決まってるでしょう。オシッコですよ。さっき喉が渇いたからってジュースをたくさん飲ませたのがたちどころに効きましたね。
 ほら、あの女騎士殿はさっきからトイレに行きたくって行きたくってたまらないんですよ。おかしいですねぇ、お城に使える騎士様ともあろうものが、さっきから草むらやら物陰にばっかり行こうとしてるじゃありませんか。お城に帰るまで我慢できそうにないから、こっそり済ませてしまおうなんて不埒なことを考えてるんですよ」
 ハンスは、あまりのことにびっくりしました。
 あんなにも勇ましくうつくしく若い女騎士が、自分と同じようにおしっこをする生き物だとはとても思えなかったのです。女のきょうだいもおらず、母親もはやくになくし、世間知らずに育ったハンスは、村の幼馴染から言われたデマをいまのいままで信じこんで、女の子はトイレに行かないのだと本当に思いこんでいたのでした。
「ほら、いいから黙ってついてきてください。悪いようにゃしませんから」
 呆然とするハンスの肩をたたき、猫は、女騎士を連れまわします。女騎士はもう誰が見てもこっけいなほどにもじもじそわそわと激しくトイレを我慢していて、剣術の試合で相手に切りつける隙を窺っているかのようにぴりぴりと張り詰め、少しでも人目が途切れればすぐにおしっこを始めてしまいそうでした。
 とうとう馬の上に乗っていられなくなった女騎士は、近くの木に自慢の馬を繋ぎ、猫に話しかけます。
「な、なあ猫よ、こ、こは……ま、まだ、…っく……カラパ公爵の、りょ、領地…なのか?」
「ええ。そうでございます」
「ま…っ、まだか……その、私はだな、そろそろ……戻ろうと、思うのだがっ」
「そんなことを仰らないでください。僕はカラパ公爵様の領地を全てご案内するように仰せつかっているのです。まだまだ半分もご案内できておりませんので。もし不手際がありましたら、僕が公爵様に怒られてしまいます」
「し、しかし、だなっ……」
「さあ行きましょう!!」
 女騎士が何かを言おうとするのも遮って、お城とはまるっきり反対の方向へ歩きだしました。女騎士はたまらず『ああっ』と小さく声を上げます。
 それからも猫は焦らすようにくねくねと道を曲がり、騎士をあっちへこっちへと連れまわします。騎士は鎧をかしゃかしゃと鳴らしながら内股になって付いてゆきますが、その歩き方はよちよちと立ったばかりのの赤ん坊のようで、ハンスに追いつくこともできません。
「ぁ、ああっ……だ、ダメ……」
 そしてとうとう、女騎士は道の真ん中でしゃがみ込んでしまいました。
 銀色の鎧の下で、スカートが小刻みに震えています。
「お、お願い、ま、待って……」
「どうしたんですか騎士様、ここはカラパ公爵様の領地です。ずっとずっとこの先の先の先まで、カラパ公爵さまの領地ですよ?」
「ぁ、ああ……そ、そんなぁ」
 女騎士はもうおしっこがしたくしてしたくてどうしようもないのです。けれど、ここはひょっとしたら王様よりもずっとずっと立派で、ずっとずっと広い領地を持つカラパ公爵が治めている場所です。王様の騎士がよその国のものを、許可なく勝手に使うわけにはいかないのでした。
 女騎士はもうずっとこうやって、おしっこを済ませるのにかっこうの茂みや物陰を黙って通りすぎさせらていました。それがいよいよ限界になってしまったのです。さっきからずっと内股になっていたのは、スカートの下の下着に滲み出したおチビリが見えないようにごまかしていたのでした。
「ほら、騎士様、そんな道の真ん中でしゃがんでないで立ってください」
「ぁ、嫌、ダメっ……っあ、ぁ、あっ…!!」
 女騎士は、訴えかけるようにハンスの方を見ます。けれどハンスがとっさに何をできるわけもなく、女騎士は下着をおろすこともスカートをたくし上げることもできないまま、おしっこを漏らし始めてしまいました。
「ぁあ、や、だっ……だめえ……出ちゃう……ぅっ」
 じょぼじょぼと音を立てながら、女騎士の足元に黄色いおしっこが吹き出してゆきます。まるで、女騎士の金髪にそっくりな、美しい透明なおしっこでした。ハンスは、女の子がおしっこをする瞬間、それも綺麗で若い騎士がするオモラシの光景に、すっかり言葉を失っていました。
 道の真ん中で、隠すこともできず真っ赤になった顔を俯かせて、腰を揺すりながら、女騎士のオモラシは続きます。
「い、嫌ぁ……ぁ……っ」
 女騎士はしくしく泣き出してしまいました。美しい頬に涙があふれても、女騎士のおしっこはまるで止まりません。
「あーあー、こりゃいったいどういう了見です騎士様。カラパ公爵様のご領地で、はしたなくもオモラシなさるなんて」
「ま、待ってくれ、その、こ、これはっ」
 猫に言われてはっと我に帰った女騎士は必死に身体をよじって溢れるオシッコを塞き止めようとするのですが、滝のようにこぼれ落ちる水流はまるでおさまりません。あっというまに黄色いおしっこは女騎士の鎧を水浸しにし、スカートをお尻の方までぐっしょりと色を変えてゆきます。道の真ん中に大きな水たまりをつくり、地面に吸いこまれてゆくこともない女騎士の盛大なオモラシを、ハンスは呆然と見つめていました。
「あ、ああ……ダメ、止まらない…っ 、ぜ、全部、でちゃ、う……ぅ……やだ、やぁ……っ」
 ぽろぽろと涙をこぼす女騎士に、ハンスは我も忘れてすっかり見とれていました。
 すると、猫がハンスの背中を叩きます。
「ほら、何やってるんです。あんな綺麗な女性に恥をかかせたままにするつもりですか、ハンス様」
 え? と顔を上げたハンスに、猫はやれやれといったように肩をすくめてみせます。
「助けておやりなさい。……カラパ公爵様のお目に止まらないように、こっそりとね」
 猫がウインクをしたので、ハンスはやっとその意味を悟りました。





「……ご、ご迷惑を掛けた……」
 やっと落ちついた女騎士は、ぺこりと深く頭を下げました。
 女騎士はハンスの母の服を着ていました。古くさい服ですが、ハンスの家に大切にしまわれていた物です。ちょっと大きめの袖からのぞく白い指が、実は女騎士がハンスの思っていたよりもずっとずっと小さな女の子だということを知らせています。
「いや、礼を言うのは私の方だ……その、あ、あんなことの後始末までさせてしまって」
 まるで頭から煙を吹きそうに真っ赤になって、女騎士は何度も何度もハンスに頭を下げます。
「お前の……いや、あなたのお名前を聞かせてください。こ、このお礼は、必ずいたしますから……」
 ……かくして。
 カラパ公爵の治める領地は、王様のわがままから解放されて、そこに住む人々はみな幸せに暮らせるようになりました。
 そして、それからも時々、お城から女騎士がハンスの家を訪れるようになったのですが……それはまた別のお話。


 ――めでたし、めでたし。














 ……おや、みなさんの知っているお話とは全然ストーリーが違う? 悪い人食い鬼がやっつけられてないし、王様の使いの女騎士なんかもともとおはなしに出てこない? いやいや。世の中のおとぎ話はひととおりじゃなくて、たくさんの解釈があるのです。
 このおはなしでは、たまたまそうだったというだけのことなのですから、ご心配なさらずに。
 それでは。また。



(初出:おもらし特区 SS図書館 2007/12/04改訂)
[ 2008/01/07 21:32 ] WetMarchen | トラックバック(-) | コメント(-)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。