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永久我慢の狂想曲 CASE:浅川静菜5 

「あら、どうしたの、静菜?」
「あ、うん……その、ちょっと……」
 玄関に下りて靴を履こうとしていた静菜を見とがめて、母親がリビングから顔を出した。最初は10時過ぎの時計の文字盤を見上げ夜遊びとは何事かと表情を厳しくしていたものの、そわそわと落ちつかない娘の様子に、すぐにその理由を察する。
「ああ、お手洗いね」
「う、うん……『おトイレ』行きたくなっちゃって」
 母親は、静菜の発した『おトイレ』がどんな意味を持ち、なんのための場所であるかを知らない。静菜がどれほど苦しんでいるのかを理解しないまま、悲しいほどにすれ違った納得をして静菜を見送る。
「もう遅いから、お隣に迷惑かけないようにね」
「あの……それなんだけど、コンビニまで行ってこようかなって……だめ?」
「そうなの? でもねぇ、もう遅いから遠出はやめておいたら? 危ないわよ。最近チカンが出るって話もあるじゃないの」
「でも、こんな時間に『おトイレ』なんて借りるの、恥ずかしいし……」
 言葉通り、羞恥心ももちろんある。恐らく今の静菜の『おトイレ』は、とんでもなく長く、激しいものになるだろう。いまだ尿意のおさまらない静菜の下腹部はそれだけの切羽詰った状況にあった。
 それだけの時間を掛けてたっぷりと『おトイレ』をしなければ、静菜はもう満足にオシッコを我慢できない。
 しかし、それよりもなによりも、せっかくトイレを借りておきながら、静菜はそこを『おトイレ』としてしか使わない。実際には一滴もオシッコをすることができないのだ。そんなことのために夜遅く、隣家に迷惑を掛けるわけにはいかなかった。
「だから……いいでしょ? ね?」
「そうね……」
 まるで、おなかの中のオシッコに突き動かされるように熱意を持ってねだる静菜に、渋っていた母親も折れる。
「早く帰ってきなさいね。今日もお父さん帰ってこないから、あんまり遅いとカギ閉めて寝ちゃうから」
「うんっ、ありがとお母さん……行ってきますっ」
「ああほら、そんなに急いだら危ないわよっ」
 出発の挨拶もそこそこに、静菜は急いで玄関を出た。お昼も履いていたスニーカーを、サイズの合わない新品を履いた時のように何度も何度もとっ、とっ、と地面を叩きながら、落ちつきなく門を抜けて通りに出る。
 静菜の家から最寄のコンビニまでは、徒歩でおよそ5分。二つ角を曲がり、大通りに出たところだ。すっかり暗くなった住宅街は、早々にそ明かりを落としている家もあり、決して視界はよろしくない。暗闇に気分が萎えると同時、緊張感で静菜の股間が疼き始める。
(ぁあっ、ダメ……は、はやく、『おトイレ』っ……)
 夏休みとは言え、都心から離れた郊外は幾分冷える。夜の涼しい風にぞわぞわとおしりを撫で上げられ、静菜は加速した尿意を抑えようと腰を“ぐいっ”と捻ってしまう。一刻も早くコンビニに向かわねばならないが、それも思うようにいかない。
 急ごうにも、重力に押し下げられる膀胱の重みがいちばん敏感で脆い一点に集まってきて、思わず足は内股に、歩みは小刻みになってしまうのだった。
(っ、だめ、ちゃんと『おトイレ』まで我慢しなきゃ……っ)
 薄暗い夜道にはひとけもなく、ついつい膝が寄せられ、手のひらが下腹部へと伸びてしまう。だが、いくら誰も見ていないとは言え、往来で『おトイレ』なんてもってのほかなのだ。
(……ヘンな人とか、来ないうちに……急がなきゃ……)
 お昼のお喋りでも、家を出る前の母親の話にもでてきた変質者の事を思い出し、できる限りの早足で、静菜はコンビニへと急ぐ。
 オシッコを済ませるためではなく――
 オシッコを我慢する、ただそれだけのために。





 煌々と照明を輝かせるコンビニが、ガラス張りの窓から駐車場を明々と照らし出し、停められたバイクや自転車の影を長くアスファルトに映し出している。
 こんな時間でも、レジの前には会社帰りの男性や夜遅くのバイトに向かうであろう少女達で3、4人の行列ができ、ちょっとした混雑が見られた。幹線道路のひとつである大通りでは、こうして夜遅くまで人通りが絶えない。
(着いたぁ……やっと、『おトイレ』できるっ!!)
 目的地まで無事に辿り着いたことに安堵しつつも、左右に開いた自動ドアの向こうから吹きつけてくる店内の冷気に迎えられ、静菜はぎゅっとシャツの前を引っ張ってぐっと口を閉じる。
(……が、我慢、してるの……気付かれないようにしなきゃ……)
 ここまではさして人目もなかったが、店内には男性客を含め多くの視線がある。そんなところでたとえほんの些細な素振りでも、オシッコを堪えているのを見られるなんて、死んでも耐えられない。
 今にも股間を握り締め、『おトイレ』をはじめたくなる手を、ぎゅっとシャツの裾を掴むことで代わりにして、静菜は雑誌の並ぶ棚を大きく回りこみ、丁度入り口の反対側にあるトイレに急ぐ。
 歩数にしておよそ20歩。これまでに比べればあまりに短い距離だが、そろそろ限界に近付きつつある下腹部を抱えてでは十分すぎるほどに長い。ATMを操作している大学生をそっと迂回して、静菜はトイレのある区画に向かった。
 しかし――
 そこで静菜を出迎えたのは、無常に並ぶ青い注意書きの文字列。

『防犯上のため、トイレは施錠しています
 ご利用の方は、店員までお声をお掛けください』

「ぇ……」
 またも訪れた不幸な偶然。予想外の事態に静菜は困惑する。
 実は先日、静菜は家までどうしても我慢できずにここで『おトイレ』を済ませていた。その時はこんなものはなかったのだ。ここのトイレはなんの問題も制約もなく利用することができ、静菜は学校から抱えてきた尿意をたっぷりと我慢し、『おトイレ』を済ますことができたのだ。
 だからこそ、家のトイレが使えない今、静菜はここに真っ先に急いだのだが――
(あ、開かない……っ ホントに開かないっ!?)
 思わず握ったノブが、硬い施錠音と手応えを返す。注意書きの文字に嘘偽りはなかった。誰にも気付かれずに『おトイレ』ができるはずだったのに、無常にもドアは硬く閉ざされ、静菜を拒んでいる。
「そんなぁ……」
(これじゃ、お隣の借りるのと変わんないよぉっ……)
 むしろ、ここまでの道のりだけ無駄足を踏んだに等しい。5分も余計に我慢し、ここからまた夜の道を引き返すことを考えれば、大きなロスだと言えた。
 ちらり、と横目で窺ったレジには、変わらず順番待ちの列ができて会計を待っている。夜遅くだというのに、一番後ろの女性が両手で下げる買い物籠にはお弁当や冷凍食品、飲み物などがいっぱい詰まっていた。
 トイレに入ることもできず、店内をうろうろと往復する静菜を、ATMの前にいた大学生が振り返る。静菜は慌ててドアの前を離れ、なにげない風を装った。ここにいることはそれだけで、静菜がオシッコを我慢してることを知らせているのに等しいのだ。
 しかし、そんなこととは無関係に、刻々と水位を増す恥骨の上のダムは、限界へのカウントダウンを刻み続ける。
(と、『おトイレ』……『おトイレ』したい…っ!!)
 我慢の素振りすらも押さえ込んで辿り着いた場所でまたも肩透かしを喰らい、静菜の股間は徐々に危険を訴え始めていた。下腹部もジンと重く疼き、もはやさりげなく腰を揺すってしまうのを押さえ込むのは難しい。
 一刻も早く『おトイレ』を――誰の目も届かない秘密の個室で股間を握り締めたかった。選択の余地は残されていないことを悟った静菜は、『おトイレ』への渇望に突き動かされ、急いでレジに向かう。
「あー、すんませんっ、えーと……」
「まだかね、ああもう、早くしてくれっ」
 レジの列では、先頭にならんだ初老の男性がバイトらしき店員と言い争いをしている様子だった。さっきから少しも列が進んでいないのにはそんな理由があったのだ。不慣れらしいバイトの店員が、電子マネーでの清算を間違えてしまったらしく、レジの前でマニュアルをめくっている。
 隣のレジには『休止中』の札があり、なんのタイミングか他の店員は席を外しているらしい。レジに並んだ他の客達もいくらか待ちくたびれた様子で、イライラとした雰囲気が伝わっていた。
「……早くしてくれ、まだなのか?」
「すんません……」
 男性が不機嫌に唸ると、店員もむっつりと声を返す。茶髪の店員の態度があまりよろしくないのも、男性客の怒りをかりたてているらしかった。
(こ、声かけづらいなぁ……)
 一声、トイレを使いたいと言いさえすれば、静菜の用は事足りる。……実際には静菜はオシッコをするわけではないが、トイレに入れないのではどうしようもない。
 とげとげしい雰囲気の中、静菜はそろそろと列を迂回してレジに向かう。
「すいませんっ」
 下半身の同様を悟られぬよう、ぎゅっとシャツの端を握って静菜は列の脇からレジに声を掛けた。
 しかし、店員はレジの前でマニュアル二視線を落としたまま、静菜のほうを見ようともしない。
「あの……」
 聞こえなかったのだろうかともう一度声を掛けようとしたとき、レジの前にいた男性客が声を荒げた。
「なんだね君は。横入りかね?! ちゃんと並びたまえ、順番だろう!!」
「あ、違います、わたし――」
「なにが違うんだ、私だって待たされてるんだぞ!! ちゃんと並べ!!」
 男性客は唾を飛ばし、列の後ろを指差して怒鳴る。
 ちょうど、さっきの最後尾の女性の後ろにアルコールの缶を抱えた二人連れの男女が並んだところだった。有無を言わせず命令する男性客の怒りは一見して至極真っ当なもので、静菜に注がれる店内の客達の視線は控えめに見ても好意的なものではない。
 静菜はじろじろと向けられる注目から逃れるようにそっと脚を交差させ、我慢を押さえ込みながら、先を続ける。
「違うんです、その、お手洗いを――」
「え……? んだよ、この忙しいのに……」
 男性客に遠慮しつつ、おずおずと問いかける静菜だが、茶髪の店員は顔をあげるなり、静菜にもはっきりと聞こえるように舌打ちをした。
 不快感をあらわにされ、静菜は思わず小さくあとずさってしまう。
「え、えっと……」
「使えないって書いてなかった? 他でやってよ」
「あの、でも、店員の人に声、かけてくださいって、書いてあったんで……」
「うっさいなぁ、見てわかんない? すっごい混んでんだよ今!! 悪いけど他んトコ行ってくんないかな、ガキじゃないんだからトイレぐらい我慢できんだろ?」
 店員は不機嫌な声で言うと、再びレジを弄り始めた。
「いま店長いねーから、勝手に使わして汚されッと迷惑なんだよなぁ」
 まるで静菜が悪いとばかりの言いようだった。もはや取り合う様子もなく、店員はレジの操作に戻ってしまう。
(そんな……使わせてくれたっていいじゃないっ……べ、別に、汚したりしないわよ……単に『おトイレ』に使うだけで……本当に、その、オシッコ――しちゃうわけじゃないんだから……)
 静菜は、『おトイレ』のための場所が使いたいだけなのだ。実際にはトイレットペーパーも使わないし、水だって流す必要はない。まあ、音消しくらいはするかもしれないが、それだってやめろと言われればやめられないわけではない。
 だが、ここで店員や大勢の客を前にそんなコトが説明できる訳もない。そもそも、静菜のような多感な年頃の少女には、人前でオシッコを我慢していることをはっきり知られるだけでさえ、できれば避けたい事態なのだ。
「なに? まだなんかあんの?」
 不機嫌な店員が静菜を睨む。男性客も、いらいらと腕組みを続けて静菜を見ていた。
 もはや、もう一度お手洗いを借りたいと言いだせる雰囲気は消え失せている。白けた空気に耐えかね、静菜は思わず頭を下げてしまった。
「す、すみませんでした……」
 決して、いけないことなどしていないはずなのに。
 このコンビニには、もはや静菜の居場所はなかった。
[ 2008/03/25 23:52 ] 永久我慢 | トラックバック(-) | コメント(-)

永久我慢の狂想曲 CASE:浅川静菜4 


 トイレが使えない。
 オシッコが、できない。
 その二つは普通、等号で結ばれるものではない。けれど家のトイレ以外でオシッコをすることのできない静菜は、世界でたったひとつのトイレ=“オシッコのできる場所”を失い、年頃の少女にとってあまりにも過酷な我慢の延長戦の最中にあった。
(んっ……)
 じんっ……
 軽く身じろぎしただけで、おなかの中に塞き止められたオシッコがたぷんと揺れて、膀胱の内側に打ち寄せてくるかのようだ。ダイニングで母親と食卓を囲んだ静菜は、ちょっとした油断で疼き始めようとする股間をさりげなく椅子に擦り付ける。
「どうかしたの? さっきからきょろきょろして」
「う、ううん……ちょっと、足、蚊に刺されちゃったみたいでさ。あはは……」
 怪訝な顔をする母親に苦しい言い訳を並べながら、静菜はテーブルの下でぎゅっと足を交差させる。
 本来ならもうとっくに解放されていておかしくない尿意が、なおも激しく高ぶりながら静菜を責め立てる。ぴったりと寄せ合わされた膝の上、脚の付け根。少女の下腹部をふっくらと膨らませるほどの圧倒的な尿意が、間断的に静菜を苦しめていた。
「お母さん、あの……と、トイレ、いつ直るの?」
「ああ……そうね、明日修理屋さんが来てくれるそうなんだけど、一日で直らないかもって電話で言われちゃったのよ。だから悪いけど、しばらくかかるかもね」
(しばらくって……、いつまで……?!)
 それが一体いつまでなのか聞きたいのだが、はっきりした答えは帰ってきそうに無かった。静菜は重苦しい気分に沈みながら、食卓の上の夕食を機械的な動作で口に運ぶ。今日のメニューは大好きなパスタだが、味もよく分からなかった。
 そんなことよりも、少なくとも明日学校から帰るまで。修理の終わった家のトイレに入るまで、静菜はトイレを使うことが不可能であるという事態が、重く静菜の頭を占めている。
(それまで……オシッコできないし、トイレもできないんだ……)
 今日一日という長い我慢を乗り越えた直後に、さらなる我慢を要求された下腹部は、昼よりもさらに重く張り詰めている。あれからさらに時間が経って、静菜の膀胱にはさらに多くのオシッコが追加されているようだ。シャツの下では既にベルトは取り外され、ジーンズのボタンも掛かっていない。
 それでも、尿意の波の頻度は午後よりも狭まってきていた。
(ん、くぅっ……)
 じくん、と滲むむず痒い感触に、静菜は思わず身を竦める。椅子の上に軽くおしりを押しつけて、小さな波を乗り越える。
 静菜が最後に『おトイレ』をしてから2時間近く。高まり続ける尿意は下半身の緊張を促進させ、静菜は段々と我慢の仕草を隠しきれなくなっていた。
(ご飯、食べ終わったら……『おトイレ』、行かないとダメかな……)
 本当のトイレが使えないなら、せめて『おトイレ』をたっぷりと済ませて、尿意がおさまるまで暴れ回るオシッコをなだめてやらなければならない。うずく股間を鎮めてやるには、恐らくかなりの本格的な『おトイレ』が必要になるだろう。
 ひくひくと痙攣を始めつつある括約筋に急かされるように、静菜は食事のペースを早めた。
「あら、スープいらないの?」
「う、うん。ちょっと……おやつにジュース、飲みすぎちゃって」
 そうして急ぐゆえにだろうか。静菜は自分でも無意識のうちに、メニューのうち野菜のスープと食後のお茶を外側におしやっていた。
 いくら人並み外れたオシッコ我慢の才能をもち、普通の女の子の何倍もオシッコを我慢することができる静菜でも、さらなる我慢を強いられた今、これ以上の水分の摂取は避けねばならなかった。
 しかし、静菜の状況をまるで知らない母親は、厳しい顔で静菜に勧めてくる。
「あんまり甘いものばかり飲んでると体に悪いわよ。お茶はいいけど、ちゃんとスープは食べなきゃダメ。いい?」
「う、うん……」
 皮肉なことに、静菜があまりにオシッコ我慢の才能に恵まれ、これまで一度の失敗もなく優秀にトイレと『おトイレ』を使い分けてきたため、静菜が家の外のトイレではオシッコをすることができないという事実は、なんと家族にすら知られていない。
 無論、静菜の両親も愛娘の異常にもっと早く気付いていれば、こうなる前に何らかの手立てを打っていただろう。祖母が他界してから娘に構ってやれなかったことを反省し、専業主婦となった母親も、残念ながら静菜の身体の変調を察することはできなかった。
 だが――静菜は今更そのことを口にすることはできなかった。祖母の気持ちを裏切りたくはなかったし、両親を心配させたくはない。なにより、家のトイレ以外でオシッコができないなんて、そんな事を口にするのは恥ずかしすぎる。
 これは、自分自身が一生守ってゆくべき秘密なのだと……静菜は幼い心にそう誓っていたのだった。
(どう、しよう……)
 目の前に並ぶ、コンソメの香りを漂わせる野菜スープ。いつもならば食欲をそそるその匂いも、口にすればすぐにさらなる尿意の呼び水となることは明白だ。今の状態の静菜には、あまりに辛いものだった。
(こ、こんなの飲んだら、もっとしたくなっちゃう……明日まで、オシッコできないのに……)
 飲食と排泄。
 実に単純な生物の生理現象だ。飲んだ分だけがオシッコに変わり、排泄される。生命活動として当然の摂理である。
 そのうちの一つを封じられ、しかし静菜は普段と同じように振舞わなければならない。誰にも言えない秘密を胸に、今にも脈動を始めそうな下腹部に熱い液体を一杯にして抱え、静菜はどこまでも孤独だった。
「んっ……」
 とうとう覚悟を決めてスープに口をつけた静菜は、目をつぶってひとくちひとくちを喉の奥に流し込んでゆく。こうして摂取された水分は、胃と腸を経てやがては身体に吸収され、新たなオシッコの素になって静菜を苦しめるのだ。
(んぅっ……っ!!)
 一口を飲みこむたびに、直接膀胱の中にオシッコがちゃぽちゃぽと注ぎ込まれているような気がして、静菜は知らず膝を寄せ合い、お尻をもそもそと動かしてしまう。普段なら絶対にしないような仕草だが、それほどに静菜の尿意は高まっていたのだ。
 そして、水物を口にしないまま食事をすることは難しい。
 落ちつきがないと母親にたしなめられながら、どうにか食事を終えた頃には、静菜はさらにスープカップに一杯とグラスに一杯の水分を口にしてしまっていたのだった。





「ふぅ……はぁ……」
 六畳のフローリングに、どこか苦しげな吐息が響く。
 自室のベッドの上に横になって、静菜はずっと下腹部を撫で続けていた。
 時折やってくる尿意を押し殺すようにぎゅっと股間を抑え、こくりと口の中に溜まったつばを飲みこむ。それだけでも敏感に反応しようとする排泄孔は、長い我慢に酷使されてわずかに赤くなっている。
(ま、まだ9時……全然……時間経ってないや)
 いろいろ試してみた結果、排泄孔に直接膀胱の重みがのしかからない、仰向けの姿勢が一番楽なことに気付き、静菜はベッドに横になって下腹部を柔らかく撫でながらオシッコの波に耐えていた。
 しかし、じっと我慢を続けながらの夜はあまりにも長い。枕もと目覚まし時計の長身が文字盤を一周する、たったそれだけのことがまるで永遠のようだ。
 次第に、頭の中からものを考える余裕が消え失せ、オシッコの我慢とトイレの事しか考えられなくなってゆく。
(明日……部活はお休みして、できるだけ早く帰ってこよう…たぶん、学校が終わるくらいなら工事も終わってるよね……そうすれば、すぐにトイレできるし、オシッコも……)
 一日後の尿意からの解放を想像し、きゅん、と疼く股間をごまかすように、静菜は寝返りをうって脚を交差させる。
 一瞬は楽になったものの、横になった姿勢では排泄孔と括約筋に余計な負担がかかり、すぐに尿意は倍化してゆく。
(えっと……明日の4時……3時半くらいだから、あと……18時間くらい……1時間が18回で、1分が10…1080回)
 どれだけ短く見積もっても、それよりも早く尿意の解放が赦される事はないだろう。
 その予測も、もっとも都合のいい結果が成立した時のものだ。場合によっては二日や三日、家のトイレが故障したままなんでことだって十分にありうる。しかし、そんなことを考えていたらとてもじゃないが耐え切れそうにない。
 そう、
 静菜は、本当の本気で明日の夕方までオシッコを我慢し続けるつもりでいた。
(だ、だめ……もう、『おトイレ』しないと……)
 羞恥に耐えながら、寝返りを打ってうつ伏せになった静菜は股間に両の手を揃えてあてがい、力を込めてぎゅっと押さえ付ける。
「ふぅ、ふぅうっ……」
 ぐっと枕に顔を押し付け、声を押し殺し、まるで獣のように四つん這いになってお尻を突き上げる。下腹部で沸騰する尿意を緩和するために腰をむりやり左右に揺すって、ヒクつく尿道を指で強く擦り、楽にする。オシッコの出口を手で塞ぐことで、括約筋をほんの少しだけ緩め、酷使された疲労を回復させるのだ。
 膝から下をばたばたと動かし、突き上げるような尿意の波を、おしりをくねくねと動かすことによって身体の中に飲みこんでゆく。
 とても人には見せられない、あまりにもはしたない姿。しっかりとドアに鍵を掛け、カーテンを念入りに引いた密室の中だからこそできる、恥も外聞もない我慢スタイルだ。静菜の『おトイレ』は予想よりもずっと早く、本気の状態になりつつあった。
「ふぅう、……はぁ……っ」
 肩で息を繰り返しながら、聞き分けなく尿意を訴える股間と、膨らんだ下腹部を丁寧に撫でる。少しでも触りかたを間違えれば、せっかく収まろうとしている尿意がまた膨らんでしまうことを、静菜は経験的に知っていた。
(だんだん、キツくなってきちゃった……っ)
 友達とのお喋りに興じながら、午後いっぱいを掛けて摂取した水分が少女の全身を循環し、時間差を経て抽出され、いま静菜の身体の中で最も敏感になっている場所にに集まろうとしている。
 利尿作用の強いコーヒーや紅茶といった飲み物を口にしていたことが、静菜の尿意をいっそうきついものにしていた。そして、さっきの夕食で口にした水分も同じ経路を辿り、さらに静菜を苦しめるだろう。
「んう……ん、っ……」
 ぎゅぎゅ、と両手の指が股間を揉みしだくのに合わせ、静菜の腰がベッドの上に跳ねた。うつ伏せになって頭を低くし、おしりを突き上げた姿勢は、排泄孔を高くすることでおなかの中のオシッコの重みを胸の方に分散させる効果もある。
 こうして尿意が『キツい』時に迂闊に体勢を崩し、排泄器官の中で一番脆い部分に、暴れだしたオシッコの重みが全て殺到してしまえば、あっという間にダムが決壊してしまうのだ。これらは全て、静菜が必要に迫られて身につけた我慢のための知識である。
(おさまってっ、……おねがい、おとなしくしてて……っ)
 まるで、おなかの中の赤ちゃんに語りかけるように。静菜は言うことを聞かない下半身をなだめようとしていた。
 目を閉じて祈りながら、尿意が収まるのを待ち続ける。真っ赤に染まった顔を枕にうずめ、カバーをぎゅっと噛み締めて込み上げる衝動に耐える。
 もはや、まるで自慰でもしているような有様だ。
 こんなみっともなく恥ずかしい格好、いくら家の外でオシッコのできない静菜でも滅多にすることはない。そもそも、静菜が隠すことなくオシッコを我慢することを許されるのは、『おトイレ』だけのはずだった。
 静菜にはオシッコを我慢することが『おトイレ』ですべきことなのだから、当然『おトイレ』でもない場所で我慢の仕草を見せることはNGである。
 なのに、今の静菜はオシッコ我慢の仕草を隠さないばかりか、尿意に耐えかねて、なし崩し的に自分の部屋を『おトイレ』にしてしまっている。これは普通の女の子にたとえれば、自分の部屋の中でオシッコを我慢しきれず、床や絨毯の上に出してしまっていることに等しい。
 まさに、羞恥の極みだった。
「っふ、ふぅっ……はぁ、はっ、はぁ……」
 じくん、じくん、とおなかの奥が疼く。
 己に課したタブーを破る屈辱と羞恥に心を震わせ、汗で湿った下着を擦りながら、深呼吸を繰り返し、小刻みに腰を揺する。
 普段は決してすることのない、自分の部屋での『おトイレ』。
 もうそれを、この2時間で3回も繰り返した。一回ごとの『おトイレ』で楽になっている時間も徐々に長くなり、対照的に尿意のおさまり具合は悪く、その間隔も短くなっている。
(っ……だめ、やっぱり……ちゃんとした『おトイレ』じゃないと……)
 いつまで経ってもおとなしくならない尿意に身悶えしながら、静菜は唇を噛む。
 たとえ実際には使うことがないとしても、形だけでも便器やトイレットペーパー、洗面台などといった設備の整った場所でする『おトイレ』は、気持ちの切り換えや精神的な面で、普通の我慢よりもかなり満足できる効果を得られるのだった。
 この、耐えようもないほど激しい尿意を我慢しやり過ごすための場所――『おトイレ』を渇望し、静菜はぎゅっと目をつぶる。
「っ……」
 またも込み上げる尿意を抑え、静菜の両手に力が篭る。さっきから一向にオシッコの波が引かない。たぷたぷと揺れる下腹部がひっきりなしにむず痒い排泄のメッセージを訴えてくる。
(……『おトイレ』、行きたいよぉ……っ)
 限界に近い尿意を堪えながら、さらなる我慢のできる場所を求める静菜。
 家のトイレが使えない今、せめてきちんとした場所で『おトイレ』をしたかった。おなかをさすり、ぱんぱんに張り詰めた膀胱をマッサージすることで少しでも下腹部に余裕を作らなければ、いつかおなかが破裂してしまう。
 だが、静菜の家のトイレは現在完全に使用することができなくなっており、そこに入るだけで不自然な行ないとなる。家族に見られれば当然疑問を持たれるだろうし、それをごまかして説明しきる自信はない。
 そもそも、静菜にとって本当の意味でのトイレ――オシッコを出せる場所に入って、そのまま我慢を続けていられるのか、という疑問もあった。
(おねがい、おさまってよぉっ……)
 静菜はただ、一心にオシッコがおさまることを願いながら、自分の部屋で『おトイレ』を続けるのだった。

[ 2008/03/25 23:52 ] 永久我慢 | トラックバック(-) | コメント(-)

永久我慢の狂想曲 CASE:浅川静菜3 


 楽しかった、けれどとてつもなく長かった一日が終わる。
 傾いた夕陽の中で最後の友達とさよならして、静菜は足早に家へと続く緩やかな坂を登っていた。
 さしもの静菜も、あれからさらに5時間という我慢を経て、そろそろ限界が近付きつつあった。歩きながらもどこか引けてしまう腰や、さりげなく下腹部に伸びてしまう手のひらを抑えこむことがそろそろ難しくなっている。
(ぅあ……トイレ、オシッコしたい……っ……)
 今度こそ、家の外の『おトイレ』ではなく、真実オシッコを済ますことができる本物のトイレを目指し、静菜は帰途を急ぐ。
 ずっと我慢し続けたオシッコは容赦なく静菜の下腹部を圧迫し、隙あらば暴れだそうと不気味にうねりを見せていた。
 あれから、静菜はも2度も外の『おトイレ』に入って限界寸前の尿意をやりすごしている。これは普段のペースに比べても異常だった。いつもの静菜なら、お昼の『おトイレ』だけで家に帰るまでの間十分用を済ませることが可能なのである。友人にも『あはは、静菜お茶飲み過ぎちゃった?』と心配されるほどだった。
 そして冷静に振り返ってみれば、静菜は今朝起きてから一度もオシッコを済ませていない。それはつまり、土曜の夜にオシッコをしたのを最後に、実に20時間近くもオシッコを我慢し続けているのだった。
 それでいて水分の摂取は普段以上に多かった。雰囲気に飲まれてついついおなかの冷えそうなものばかり食べ続けてしまったせいもある。
 つまり、まる1日分を遥かに越えるオシッコが、静菜のおなかの中に詰めこまれている計算になる。本来なら何回にも分けて排泄されるべき量のオシッコを、静菜は一滴も漏らさないままに身体の中にとどめているのだった。
 これも、祖母の教えに基づいて常識外れに鍛えられた静菜の排泄器官だからこそ成せる技である。もし静菜以外の女の子がこれに挑戦しても、たちまち限界を迎えてオモラシしてしまうだろう。
「ふぅ……、っと」
 静菜は重いおなかを抱えながら慎重に交差点を渡る。もちろん、誰かに気付かれるようなみっともない真似はしない。あくまでも表面上はそんなそぶりを見せることはないのだ。
 こんな風に長い長い時間オシッコを我慢できる身体のことを、貴婦人の膀胱、と呼ぶのを静菜は知っていた。昔の貴族はオシッコをしない女の人ほど魅力的だとされていたのだ。だから、静菜はもう外のトイレに行けない自分を恥ずかしいとは思わない。
 そろそろ日が山の向こうに消えようとしている。家への道のりもいつしか半分を過ぎ、終わりに近付いている。あとは角を一つ曲がればすぐ静菜の家だ。
(……あー、やっぱりちょっと遅すぎたかも……もっと早く帰ればよかった……
 そうすればもっと早く、おうちでオシッコできたのに……んぅっ……)
 ぶるぶると背筋を這い登るイケナイ感覚に耐えながら辻を折れ、向かって三軒目の玄関の門を押し開ける。15年前の新興住宅地である藤咲市の1区画に、際立てて特筆すべきものはなにもない、ごくごく平凡な静菜の家はあった。
「ただいまー」
「お帰りなさい。もうすぐ夕ご飯よ」
「はぁーい」
(オシッコ、オシッコっ……)
 母親との挨拶もそこそこに、切羽詰った尿意を心の中で繰り返しながらブーツを脱ぐ。すでに静菜の心はあと数m、廊下のすぐ向こうにある扉1枚を挟んだトイレの中に飛んでいた。ずっと長い間閉じ込められていたオシッコがついに解放を宣言され、その瞬間を待ちわびるように一気にざわめき始める。
(あー、ヤバかった……電車の中、もう出ちゃうかと思ったよぉ……電車の『おトイレ』まで使っちゃったし……恥ずかしかったなぁ。
 でも、みんなに気付かれなくてよかった……)

 今日、この日。
 この時、この瞬間までは、静菜にとってみれば決して特別なことが起きた日ではなかった。静菜がこんな風になるまでオシッコを我慢しているのは、いつもとは言わずともたまにあることで、言ってしまえばありふれた日常の一コマでしかない。
 けれど、この日だけは違っていた。

 コン、コン。
(うぅ、漏れちゃう、漏れちゃうっ)
 軽くノックをしてから、静菜はほぼ時間も空けずにノブに手をかける。静菜の家のトイレはドアの向こうにすぐ便器があるタイプのもので、鍵をかけずに使う者は誰もいない。鍵がかかっていないのはドアノブを見れば一目瞭然で、だからこの動作も静菜にはほとんど習慣的なものだ。
 だが。
 ガチャリ、と開いたドアの向こうには、黒々と汚れた水を、便座の縁ギリギリまで詰まらせた洋式便器があるのみだった。
(え……?)
 まったくの予想外の光景に、静菜の思考が停止し、理解不能のホワイトノイズに包まれる。
 目の前の状況がまるで理解できずに、静菜は瞬きを繰り返した。
(え……、え? え? え!?)
 見る影もなく、壊れた、トイレ。
 ゆっくりと、その事実が忍び寄ってくる。
 便器から溢れ出した汚水が飛び散ったのか、床も薄黒く汚れ、便座の内側では時折ごぼり、という音を立ててぬめった泡が沸きあがる。生理的嫌悪を催す粘着質の汚れと、鼻を背けたくなる悪臭の奥で、少女が待ち焦がれていた大切な場所が、踏み入るのもためらわれるような汚辱に侵されている。
 配管のどこかが壊れているのだろうか、ちょろちょろという水音がずっと途切れずに響いていた。その水音に歓喜され、静菜の膝が小さく震え始める。
(え、ええ!? う、嘘……ウソでしょ!?)
 目を擦っても、頭を振っても、悪夢は晴れない。
 静菜の思い描いていた安息の地とはあまりにかけ離れた光景は、厳然とした事実として少女の眼前に横たわっていた。
 世界で唯一、たったひとつ、静菜がオシッコをできる場所は――見るも無残に破壊し尽くされていた。
「ああ、静菜? ごめんね、トイレ使えないのよ。なんだか下水のほうで故障しちゃったみたいなの。……お隣にお願いしておいたから、もし行きたかったら使わせてもらいなさい。嫌だったらコンビニで借りてもいいしね」
 母親がなんでもない風に台所から声を飛ばしてくる。
 けれど、それはまるで意味がない。静菜にとって、『ここ』……この家のトイレを除いた世界じゅうの全てのトイレは、オシッコを済ませることはできず、尿意を我慢するための擬似的な『おトイレ』でしかない。
(…ぉ、…お…しっこ……)

 ぞくん。

 途切れていた意識が、強烈に下腹部に殺到した尿意を察知する。
 猛烈な排泄衝動が立て続けに巨大な大波になって溢れ出した。襲い掛かる衝撃に静菜はぎゅっと両手を下腹部に押しつけた。
「はぁ…ううぅう…っ!!?」
 びくびくと内腿が引きつり、股間が疼き、下腹がじくじくと暴れる。どうにかなだめすかし、抑えこんでいた尿意が一斉に牙を剥いていた。強烈な衝撃が稲妻のように腰骨に響き、静菜はたまらずトイレの床にしゃがみ込んでしまう。
(や、やだっ、……ウソ、なんでっ、なんでっ!?)
 ここに来れば、ここまで我慢すれば、絶対にオシッコができるはずなのに。そうでなければおかしいのに。そう思ってずっとずっと我慢してきたのに。だって、静菜は世界でたった1ヶ所だけ、ここでしかオシッコができないのに。だから、そのために何度も何度も外の『おトイレ』に入って、我慢を続けてきたのに。
 それなのに――
 オシッコが、できない。
 本来ならあと数秒で済まされていたはずの尿意が、解放を許されずに押し留められた静菜のオシッコが、猛烈な勢いで膀胱の中に渦を巻き、ぎゅるぎゅると暴れ始める。
「ウソ……ぉっ」
 ぼやけていた頭が、トイレの故障という事実を理解するに至り、静菜の顔から血の気が引いてゆく。
 このトイレが、使えないということは。
 静菜は、もう二度とオシッコができないということを意味していた――。








 永久我慢の狂想曲――
 浅川静菜のケース。





[ 2008/03/25 23:48 ] 永久我慢 | トラックバック(-) | コメント(-)

永久我慢の狂想曲 CASE:浅川静菜2 


 それまでの生活に比べれば、学校という場所で少女が拘束されている時間はあまりにも長い。当然ながら、静菜は尿意の限界を覚え、学校のトイレを使わざるを得なかった。祖母の教えはそれを否定していたが、生理現象まではどうしようもない。
 しかし、できなかった。
 どれだけ、頭の中で家のトイレも外のトイレもまるきり同じなのだと理解しても。どれだけ自分に言い聞かせてみても、いざ学校のトイレに入りスカートをたくし上げ下着を下ろし、個室の鍵を閉める頃には静菜のオシッコはぴたりと止まってしまうのだった。
 もちろんそれは、尿意までもが綺麗さっぱり消えてしまうわけではない。オシッコがおなかの中で暴れているむず痒い感覚はまるで衰えることなく続いている。しかしその一方で、静菜がいくらおなかに力を入れても、オシッコはまるで出てこようとしないのだった。
 むしろ、せっかく排泄のための場所に足を運んだというのに、尿意はますます高まるばかり。運が良ければ(つまり、どうしても我慢できないほどに切羽詰っていれば)ほんの少し、ちょろちょろとおしりを熱い雫が伝うくらいのことはあったが、それはかえって下着やスカートを汚してしまう結果になり、静菜はうまくオシッコを済ませることができない自分をますます嫌悪した。
 そんな生活はずっと続いた。進級し、後輩を持つようになって、少女の気持ちだけが焦ってゆく。緊張した肉体と自律神経はますます排泄を促し、一日に何度も何度も尿意を募らせる。そんな悪循環が続いた。
 だが、もうその頃には、何度試しても、静菜は学校のトイレを使うことができなくなっていた。どんなに切羽詰っていても、家以外のトイレではオシッコを出す事はできず、むしろオシッコをしようとすればするほど尿意は激しいものとなり、その一方で実際には一滴も絞りだすことができない。地獄のような苦しみだった。
 やがてそれは、学校以外の場所でも同じになってゆく。
 もし、静菜の家が学校から走って5分、という奇跡的な立地条件がなければ、静菜は何度もオモラシを経験していただろう。
 だが、昼休みや20分休みを利用して家を往復し、共働きで留守の家のトイレでオシッコを済ますことで、静菜はなんとかその危機を免れた。
 オシッコをするためだけに家に帰る。
 学校のトイレではオシッコもできない。
 しかし、静菜は両親にはそのことを話そうとはしなかった。祖母はすでに家にいなかったが、自分がきちんとオシッコができないことを大人に訴えるのは、自分がちゃんとした女の子ではないことを認めるのと同じだったからだ。
 誰にも言えない秘密をたったひとりで抱えながら、静菜は耐え続けた。そしていつしか、静菜は学校で過ごす時間、どうにか一度もオシッコをしないでも過ごせるようになっていた。当時の静菜の幼さを思えば、それは驚異的な出来事である。必須とも言うべき長い長いオシッコ我慢の繰り返しが、もともと素質のあった静菜の『我慢の才能』を開花させたのだ。
 とは言え、学校で過ごす時間は次第に長くなり、不意なアクシデントにも事欠かない。次第に険しくなる学校での長時間の我慢行を乗りきるため、静菜は学校のトイレを使って『おトイレ』をするようになっていた。
 静菜にとってオシッコをすることができる場所=本当の意味でのトイレとは、唯一無二の家のトイレだけを指す言葉である。つまり、それ以外のトイレで、静菜がすることはひとつ。限界に近い尿意をなだめ、どうにかして押さえこむための我慢だ。『おトイレ』とは、どうしても我慢できなくなった時にオシッコを我慢するための設備であり、そんな時にする我慢を示す行為だった。
 幸いなことに、周囲の視線からも遮られ、少々大袈裟な身じろぎをしてもさして不審に思われない個室の中は、人目を気にせず我慢をするのにおあつらえ向きだったのだ。
 これは思わぬ副次効果ももたらした。
 多感な時代の少女、まして連帯感の強い、学校という社会の女の子のコミュニティにおいて、休み時間にみんなが席を立つ中で一人だけトイレに行かない、ということがどれほど不自然なのかは考えずとも分かる。
 みんなと同じように学校のトイレに連れ立ち、そこで『おトイレ』をすることで、静菜はクラスメイトからも自分の秘密を隠せるようになったのだった。
 そして静菜は、長い間自分を苦しめていた排泄に関する悩みから解放されたのだ。
 他の女の子なら普通にできるはずの『お外のトイレでオシッコをする』という、当然のしつけ――オシッコの後始末が、やっとできるようになったのだ。
 それはあまりに歪んだ代償行為ではあったが、静菜は長年苦しめられていた重荷から解き放たれ、やっと普通の女の子と変わらない生活を送れるようになった。
 やがて静菜は上の学校へと上がる。入学当初は祖母の厳格すぎた教えが原因でクラスメイトともすれ違うことが多かった静菜だが、やがて友達ができて人並みにお洒落にも興味を持つようになった。
 しかし、お気に入りのジーンズに買ったばかりの革のブーツを履いて、仲の良い親友達と日曜日のお出掛けをするようになっても、静菜の心に深く刻まれたトイレのしつけの教えだけは変わらなかったのだった。
 だが、もはや静菜には些細な問題だ。その頃には静菜は家のトイレでしかオシッコを済ませることができなくても、外のトイレで『おトイレ』さえ欠かさなければ問題なく毎日を送れるようになっていたのだから。
 そう。
 この日、までは。





(んっ……そろそろ、行かなきゃ……)
 軽く便座の上に腰を浮かし、静菜は尿意を確かめるように中腰になる。
 まだじんわりと恥骨に響く感覚は残っているが、十分すぎるくらい『おトイレ』をし終えたせいで、すっかり緊張の解けた下腹部はだいぶ余裕を取り戻していた。ちりちりと続くわずかな尿意も、激しい動きをしなければそれほど辛くはない。
 静菜はそれほどたっぷりと『おトイレ』をしたのだ。
(すごかったなぁ……あんなにいっぱい『おトイレ』しちゃうなんて……)
 遠慮なく前押さえができたおかげで、とうとう最後かと思われるまでに追い詰められた末期的な怒涛の尿意も無事に乗り越えることができた。安定期に入った尿意は、おとなしく膀胱の中にとどまり、ぱんぱんに詰まったオシッコも圧迫感を与える程度まで落ちつきを回復している。
 これでまた、しばらくは大丈夫だろう。
(もうちょっと、『おトイレ』してたいけど……あんまり長いのも心配させちゃうし)
 『おトイレ』を終え、静菜はおさまった尿意を不用意に刺激しないようにゆっくりと身づくろいを始める。
 息を吸っておなかをぐっと引っ込めながら、窮屈になったジーンズのボタンを一つずつはめ直し、ベルトをぐっ、ぐっと力いっぱい引き上げながら止めてゆく。
「んぁっ……う、うぅっ、……はぅ…っ!!」
 一度緩めてしまったおなかの中で、膀胱はその中に詰まったオシッコの重みで重力に引かれて、ふっくらと前に迫り出している。マッサージでやわらかくほぐれたとは言え、それを再びベルトでぎゅうぎゅうと締め付けるのだ。何も感じずにいるほうがおかしい。
 家以外のトイレでオシッコが禁じられている静菜にとって、こうして『おトイレ』の中で過ごす時間はわずかでも人目を気にせずに我慢できる貴重な時間だった。しかも、尿意こそ和らいではいるがおなかの中にたまったオシッコは一滴も減っていない。
 ごくゆっくりとではあるが、再びじわじわとその勢力を増し始める気配を見せる尿意に、どうしても後ろ髪を引かれてしまうが仕方がない。
 しかし、今日は外に友達を待たせている。いつまでも『おトイレ』に入り浸っている訳にはいかなかった。
(……よしっ)
 ぐっと気合いを入れると形だけ水を流し、普通にオシッコを済ませた女の子と何も変わらない風を装って、静菜は何食わぬ顔で洗面台に向かった。きちんと両手を洗い、鏡に映った自分を眺めてどこかおかしい場所はないかを入念にチェックする。
 『おトイレ』に入る前に覗いていたオシッコの気配を全て消し去ったことを確認すると、静菜はにこにこと笑いながらトイレを出た。
「遅いー、もう待ちくたびれたよー」
「ごめーん、ちょっと混んでたから……」
 口を尖らせる友達の一人に照れ笑いを返し、静菜は友人達の座るボックス席の開いているスペースに腰を下ろした。
 果たして、彼女達に……いや、店内にいる客、店員に至るまでの全ての人間の誰が、もうまるで余裕のないままトイレに駆け込んだ少女が、一滴もオシッコを出さないままに戻ってきた事を想像できただろうか。
 それほどに、静菜の我慢は完璧なものであった。厳しい祖母の躾と、それを厳格に守ろうとした努力のためか、オシッコを我慢する才能において、静菜は人並みはずれたものを得るまでになっていたのだった。
 まさに鋼鉄の排泄器官。
 ……いや、ここまで完璧に尿意を押さえ込めるのであれば、静菜の膀胱はもはやオシッコを排泄するための器官ではなく、オシッコを我慢するための器官と呼んでも過言ではない。普通の女の子と比べる方がおかしいくらいなのだ。
「ね、次どうする? デザートでも食べにいこうか?」
「……あんたまだ食べる気なの?」
「えー、いいじゃん。この前さ、すっごいおいしいジェラート屋さん見つけたんだ」
 楽しげにお喋りに興じる友人達を前に、静菜は目の前に用意されたアイスティのグラスを手に取る。
 さっき友人たちが用意してくれたおかわりだ。きんきんに冷えた利尿効果のある紅茶をなみなみと満たすグラスに、静菜は躊躇なく口をつけた。無論、『おトイレ』を済ませたばかりであるはずの静菜がここでためらうわけがない。
 たとえアイスティーの利尿効果が同じだけの水に比べて数倍から数十倍に匹敵するとしても、その点においても彼女の我慢は完璧なのだった。
「んっ、んっ、んくっ……」
 一息でアイスティを飲み干し、空になったグラスをテーブルに戻す。摂取した水分は着実に少女の身体に吸収され、やがては尿意の素になって膀胱に集まってゆくだろう。
 再会されたお喋りに忌憚なく参加した静菜は、午後の予定がデザートのジェラート屋台の食べ比べに決定するまでのおよそ40分でさらにもう2杯、ガムシロップを多めに入れたアイスコーヒーとアイスティのグラスを空にして。
 2時を少し過ぎた頃、静菜は、またも高まってきた尿意を悟られぬよう平然を装いながら、友人達と一緒に店を出た。

[ 2008/03/25 23:46 ] 永久我慢 | トラックバック(-) | コメント(-)

永久我慢の狂想曲 CASE:浅川静菜1 

 永久我慢の輪舞曲スレに投下したネタの改訂版。
 ある種やりすぎなくらいに恐ろしく長い我慢モノ。かなり続く。






「――でね? そうしたら先輩がさぁ」
「ホント? 凄いねー。三島先生怒ってたんじゃないの?」
「あっははっ、言えてるかもー」
 ファミリーレストランの禁煙席でかしましくお喋りの声が響く。冷房の効いたレストランのボックス席でドリンクバーのグラスを重ねる少女達は、遅い梅雨明けの後に訪れた週末の解放感を全身で謳歌していた。
 楽しげに交わされる笑い声の中、一番奥まった席に付いている少女の表情だけがわずかに翳っている。良く見れば少女の膝はきゅっと寄せ合わされ、かかとは小刻みに震えていた。
「よし、おかわりしてこよ」
「あ、あたしもお願い」
「わたしもー」
「……静菜ちゃんは?」
「あ、……う、うん」
 不意に声を掛けられ、静菜はふと顔を上げた。ちらり、とまだ半分ほど残ったグラスの中身を眺め、小さく頷いた。全員のグラスを持ってドリンクバーに向かう友人達を見送りながら、静菜は席に残った隣の友人に小声で話しかける。
「ねえ」
「なに? 静菜ちゃん。なにか頼むの?」
「そうじゃなくてさ……ゴメンね――私、その、『おトイレ』行きたいんだけど」
「あ……ごめんっ」
 友人は――先ほどから小さく脚を擦り合わせていた静菜の様子を見て、慌てたように大きく椅子を引いてくれた。ようやく席から立てるスペースが解放され、静菜は大急ぎで席を立つ。
「ありがと……ちょっと行ってくるね」
「うん、いってらっしゃい」
 友人の声を背中に、静菜は混雑する店内を横切って、真っ直ぐに『おトイレ』を目指す。
(ぅあ……ちょ、ちょっと……マズイ、かもっ)
 先刻から静菜の下腹部を占領していた重苦しい圧迫感は、立ち上がると同時に鈍い疼きに変わり、すぐさま股間へと伝播していった。むず痒いようなつんとした感覚があっという間に下半身を占領し、少女の排泄器官を刺激する。
(ぁあ……だめ、来ちゃう……っ!!)
 できるだけ平静を装おうと努力はしていたものの、込み上げてくる尿意の波は静菜の予想を大きく上回っていた。とうとう早足では耐え切れなくなり、静菜はせわしなく入り口のドアを揺らし、小走りに『おトイレ』へと駆け込んでゆく。
(は、はやくっ……はやくしなきゃっ……『おトイレ』……間に合わないよっ!)
 クリーム色のタイル張りのトイレには、鍵のかかっていない個室が二つ並んでいた。幸いなことに塞がっているのは一つだけ。
 心の中で幸運に感謝しながら、焦る心を沸き立つ下腹部と一緒になんとか抑えつけ、静菜は一番手近な個室に飛びこんだ。鍵をかけるのももどかしく、ジーンズのベルトに手をかける。
(っ、……!!)
 疼く下腹部と尿意の波にこぼれそうになった悲鳴をおしとどめ、きつく腹部を固定していたベルトを緩めて、続けてズボンの前を止めているボタンも外し、脚の間に手のひらを滑りこませる。
 そのままノンストップで便座の上に腰を下ろす。都合2秒ほどの『おトイレ』のための動作を早業で終え、静菜は大きく息をついた。
「はああぁ……」
 狭い個室にゆっくりと響く安堵の声。
(ま、間に合ったぁ……)
 ゆっくりと詰めていた息を吐きながら、静菜の体が脱力する。
 強張っていた下半身の緊張が解け、張り詰めていた尿意がじんわりと拡散してゆく。どうにか免れたオモラシの危機と、尿意からの解放に、静菜はこくり、と口の中にたまっていた唾を飲み込む。
(も、もうちょっとでホントに出ちゃうトコだったかも……『おトイレ』、我慢できてよかったぁ……)
 きしきし、と身体を前後させながら、静菜はそっと下腹部を撫でさする。
 ――もし、ドアの外に順番を待つ誰かがいれば、もしかすると異常に気付いたかもしれない。
 あれだけ切羽詰って『おトイレ』を渇望し、ぎりぎりのところで駆け込んだ静菜だというのに、一向に尿意の解放を示す水音も、それを隠蔽する音消しの洗浄音も聞こえてこないことに。
「はぁ……」
 狭い個室の、様式便器の上。慎重に深呼吸を繰り返す静菜の股間。そこには彼女の両手が差し込まれ、下着の上から石のように硬くなった下腹部をゆっくりと前後に揉みぼぐしている。
 下着。……そう、下着だ。
 静菜は淡い水色の下着をしっかりと穿いたまま、便座に腰を下ろしているのだった。少女の股間を覆い保護するはずの薄い布地は、うっすらと下腹部に食い込み、まるで少女の排泄器官を拘束するかのように、確固としてそこに留まっていた。
「……んっ、…んぅっ……」
 時折響く鼻にかかった声は、少女の尿意の波を知らせるバロメータ。ぎゅぎゅっと自分のリズムに合わせて股間をマッサージし、静菜は下腹部をゆっくりと揉み解してゆく。手慣れた指先の動きには、そうすることで少しでも長く尿意をやり過ごそうとする意図がはっきり見受けられた。
(はぁ……『おトイレ』、キモチいい…。……ずっと我慢してたもんね……)
 もう何時間も前から我慢していた“前押さえ”と“股間を握り締め”る解放感が、徐々に股間の緊張をほぐし尿意を和らげて行く。その安心感に身を委ね、静菜はまるでオシッコを済ませたかのような安堵の吐息をこぼした。
 なんとも奇矯なことに。
 友人に『おトイレ』と告げ、個室に限界に近い尿意を堪えたまま駆け込んでおきながら、静菜はかたくなに、この排泄のための場所で、膀胱を占領し続けるオシッコを出そうとはしていなかったのだった。
「はぁ……ふぅ……」
 深呼吸と共に、震えていた膝がゆっくりと落ちつきを取り戻し、引けていた腰も脱力を始める。やや内股の脚だけはまだいくらか尿意の余韻を残していたが、さっきまでの切羽詰った状況は大分緩和されていた。
「ふぅ……すっきりしたぁ……」
 しかし、その言葉とは裏腹に。ベルトとズボンに抑えつけられていた下腹部は、その跡を薄赤くくっきり残したまま、ぱんぱんになった膀胱の形そのままになだらかに膨らんでいる。
 少女のしなやかな体型をいびつに歪めてしまうほどに、静菜の尿意がすさまじいものになっていることは傍目にもはっきりと窺えるのだった。そうして激しい尿意に現在進行形で苛まれながらも、静菜はかたくなにトイレを使おうとはしない。
 ――いや、
(うぅ……急にくるんだもんなぁ……ちょっと油断してジュース飲みすぎちゃったかも……。
 だいじょうぶ、我慢、我慢……ちゃんと『おトイレ』したんだし、ね)
 正確には使いたくとも、使えないといったほうが正しい。
 静菜にとって、ここは『おトイレ』をする場所であって、決して本来の意味のトイレ――オシッコを済ませるための場所ではない。暖かな色合いのクリーム色のタイル張りの壁も、十分なスペースを取って堅固に区切られた個室も、清潔に整えられ、温水洗浄と保温便座を備えた便器も、たっぷり準備された上等なトイレットペーパーも、全て飾りでしかない。
 排泄を済ませるための設備をこれ以上ないほど完璧に整えていながら、ここで静菜はオシッコをすることは許されなかった。
 だから、ここで静菜ができるのは、オシッコではなく『おトイレ』。
 つまり、今も彼女が続けている、限界近くなった尿意を堪えるための『前押さえ』と『我慢の仕草』なのだった。





 ……それがいつのことだったか、静菜はもうはっきりと覚えていない。
 静菜がずっとずっと小さかった頃だ。たしか、日曜日だかのお休みの日の日、両親が揃って用事で出かけ、静菜は当時はまだ一緒に暮らしていた祖母とデパートにお出かけをした。
 その時、どういう具合か静菜はどうしてもオシッコが我慢できなくなってしまった。原因は前の日に飲みすぎたジュースか、祖母にねだったソフトクリームか、定かではない。とにかく、まだ小さな静菜にとってそれは人生最大のピンチだった。
 祖母は優しいけれど礼儀に厳しい人で、静菜が行儀の悪いことをしているとすぐに怖い顔でお説教をした。だから静菜は必死になって気付かれないように我慢をし、精一杯普通に振舞った。
 けれど、小さな女の子がそんな簡単にオシッコがしたいのを隠しきれるはずがない。とうとう祖母には気付かれてしまい、静菜はデパートに行く途中の商店街のまんなかでお説教されながらオモラシをしてしまったのだった。

『この子ったら!! いくつになるの!? まだお手洗いのしつけもできてないなんて、なんて恥ずかしい子かしら!!』
『まだオムツも卒業できてないなんて、恥ずかしい……!!』
『これじゃあみっともなくて、表も歩けないじゃないの!!』

 大切なお出かけの日に、多くの人の前で恥も外聞もなくトイレを我慢し、ついにはオモラシという大失態を犯してしまうという前代未聞の出来事に、祖母は激しく怒りをぶつけた。お仕置きという名目で、静菜を着替えさせないまま……オモラシのまま濡れたスカートと靴を履かせたまま、家まで連れ返ったのだ。
 絶えることない周囲の視線は、まだ幼い静菜の心を激しく苛んだ。泣きじゃくる静菜をよそに、祖母はオモラシがどれだけみっともないことなのか、女の子が人前でトイレを我慢するなんてあってはならないことか。そして外でオシッコをするなんてとんでもないことだと繰り返し言い聞かせたのだった。
 いささか潔癖すぎるそんな道徳観を、祖母はまだ片手にも満たない年齢の幼い静菜に押しつけた。それは、ミッション系の教師を勤め多くの生徒をどこに出しても恥ずかしくない良家の令嬢として世に送り出してきた祖母なりの矜持だったのかもしれない。
 しかし、静菜はその教えをまっすぐ受けとめるにはあまりに幼かった。羞恥と共に刻み込まれた言葉は、呪縛のように静菜にひとつの恐怖感を植え付けてしまったのである。
 仕事で忙しい静菜の両親は祖母に娘を任せきりで、その『異常』を見過ごしてしまっていた。
 彼等が注意深く娘の様子に気を配っていれば、いつしか、静菜が家以外の場所でトイレに入ることがなくなったことに気付いただろう。
 ……それでもまだ、静菜が十分に幼く、生活の場が家を中心にしている間はそれほどの問題が生じることはなかった。
 だが、やがて祖母が他界し、静菜は学校に上がることになる。
 そこで静菜は初めて、自身の身体に起きた異常を自覚したのだった。
 ――自分が、家以外のトイレではオシッコをできなくなってしまっているという事実に。

[ 2008/03/25 23:45 ] 永久我慢 | トラックバック(-) | コメント(-)
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