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トイレの多い子の話。 


 事故による渋滞に巻き込まれ、高速の料金所の前でうごけなくなったワンボックスの中。羽田霧香は、3人の友人達と共にかつてない窮地に立たされていた。
 ワンボックスには霧香の友人である4人のクラスメイトと、運転手兼保護者役の親友の姉、三佳子が乗っている。予定にまったくない長時間の拘束によって、車内の少女たちは、迫り来る危機に小さく身体を震わせていた。
「あー、こりゃダメだね……ぜんぜん動かないや」
 三佳子が誰に言うとでもなくつぶやくと、後部座席の少女たちの表情が形容しがたい緊張に彩られてゆく。互いにそれとなく相手の様子を窺い、視線をそらしながら、そっと座席の上で脚を揃える。
 言葉すくなに目を伏せながら、しかし霧香たちは何よりも雄弁に、“そのこと”を語り合っている。なんとも不可思議な光景であった。
「ねえ、美希、佐奈ちゃん、霧香ちゃん、だいじょうぶ? ……無理そうだったら早めに言ってね。遠慮しなくていいからさ。――芽衣ちゃんもね」
「「「「…………」」」」
 できるだけ軽い調子をつとめて三佳子が言うが、霧香たち4人の反応は思わしくない。それも当然だろう。霧香たちを苦しめているモノは、そう簡単にどうこう済ませられる類のものではない。
 参ったな、と頭をかいて、三佳子はハンドルに体重を預ける。
 この微妙な雰囲気は三佳子にも耐えがたいものであった。
(あーもう、女の子って不便だよねぇ……ホント……)
 それが三佳子の偽らざる感想だった。





 少女達は一様に、背もたれからわずかに浮かせた背中を小さく左右に揺らし、緊張させた腰を軽く動かし続けている。
 内腿には数秒に一回の割合で力の篭り、揃えられた膝がきゅっと押し付け合わされる。そのたびにベロアから靴のかかとが浮き、爪先がぐりぐりと床を叩く。
 なんとも不自然な姿は、耐え難い苦痛を前に、精一杯のさりげなさを装うとする少女たちのいじらしい努力ゆえであった。
 本当は皆、大きく腰を揺すり脚を踏み鳴らし、ぎゅうぎゅうと前を押さえたいのを必死に我慢しているのだった。
 そう、例外なく彼女たちを襲っているのは、無慈悲な大自然の摂理――尿意である。
 純心無垢な少女達の、ほっそりとした脚の付け根。
 乙女の純心と恥じらいを象徴する清潔な白い下着の中に封印されたイケナイ液体は、危険水域を超えていや増し、いまにも一番脆いところを突き破って外に溢れ出そうとしていた。
「んぅっ……」
 俯いた少女の唇からこぼれた可憐な呻きが、小さく、けれどはっきりと車内に響く。それは何よりもはっきりと、彼女たちの心の声――『おしっこしたい』という本能に忠実な欲求を訴えていた。
 冬休みを利用しての友達同士での遊園地。ほんの数時間前までは楽しげなお喋りの響いていた車内は、いまや気まずい沈黙に包まれている。
 時折誰かがもぞもぞと身体をよじり、軽く唇をかんで小さな呻きを漏らしてはため息を繰り返す。
 少々暖房の効きすぎた車内で、皆は浮かれ気分のままに次々と水分を口にしていた。ミネラルウォーター、お茶、ジュース、ココア、コーヒー、清涼飲料――5人分を合計すれば500mlペットボトルに換算して8本を超える量が、すでに少女たちの体内へと流し込まれている。
 コーヒーやお茶の利尿作用や、清涼飲料の水分吸収効率など、少女たちの身体のことなど考えていない暴挙ではあったが、サービスエリアの利用や目的地まで1時間という距離から、誰もそれを深刻なこととは考えていなかった。
 だが、4車線の真ん中、左右を渋滞の車に挟まれて身動きの取れないという事態のまま2時間以上が経過し、摂取された水分は少女たちの健康で活発な循環器を経て丹念に抽出され、いまや彼女たちの身体の一点――その慎ましやかなスカートと下着に覆われた大切な部分へと注ぎ込まれていた。
「んっ……ふぅ……」
 後部座席のシートでもじもじと太腿をすり合わせ、美希が小さく呻く。快活そうなショートカットの下に覗く表情は硬く、緊張に張り詰めていた。4人の中ではムードメーカーの彼女だが、姉の三佳子に軽口で応じるいつもの元気は影を潜めている。
 下腹部を激しく圧迫する尿意に耐えかねて、持ち前の快活さもどこかに吹き飛んでしまっているようだった。
「……ぁっ……」
 その隣、小さく口を明けたまま、俯いて細い声を上げ、スカートの前を押さえているのは佐奈。飾り気なく髪留めのゴムで肩までの髪を縛ったいちばん大人しい雰囲気の彼女は、もはや口を利くのも難しいほどに羞恥と屈辱に表情を曇らせている。わずかな身じろぎがそのまま大失敗の引き金になることを悟っているのだ。
 特に今、佐奈は一番の危機的状況にあった。何度となく訪れていた尿意の“波”が、さらに激しくなって佐奈の“女の子”へと押し寄せてきているのだ。物静かな容貌の少女は、友達の姉のものである車を汚すまいと必死になって重ねた両手を下腹部に押し当て、脚の付け根をぎゅうぎゅうとシートに押し付けている。
「――――」
 そんな中で、やや様子が異なるのは佐奈の向かいに座る芽衣だ。切羽詰った他の二人とは明らかに違う様子で、できる限り車内を見ないように、視線を窓の向こうに固定している。その頬は薄赤く、見れば耳までもほんのりと赤く上気している。そわそわとした落ち着きのなさはないものの、嘘をついて言い逃れをしたときのような、居心地の悪さを窺わせる様子だった。
 少女の足元には、硬く封を閉じられた小さなパックが転がっている。
 ぱんぱんに膨らんで、いまにも弾けそうなそれの正体は、使用済みの携帯トイレだった。半透明のパックには薄黄色い色を透かし、ラベルに記された『大容量、600ml』の宣伝文句を覗かせている。
 ついさっき――芽衣は、車内で一番最初に音を上げて、この携帯トイレにおしっこを済ませたばかりなのである。密閉された車内、どこに隠れることもできず、すぐ隣の席で親友が、小さな袋を股間に押し当てておしっこをするのを目の当たりにしてしまった皆の間には、口にできない微妙な雰囲気ができあがっていた。
 もちろんすぐに換気を済ませたものの、まだほんのわずか――おしっこの匂いは車内に篭っている。それはこの渋滞の中、動けなくなったワンボックスをトイレと錯覚させるに十分なものだ。いまだ少女のプライドを守り、我慢を続けている残る3人にはまさに拷問とも言うべき仕打ちなのである。
「…………っ」
 芽衣の排泄はスカートの下に隠れて行われてはいたものの、小さな袋に水音を立てて注ぎ込まれる大量のおしっこの音や匂いは、ただでさえ辛い少女たちをより一層の窮地へと追い込んでいる。
 自分も我慢できなくなればやがて同じことをしなければならないという羞恥や、もう早く楽になってしまいたいという気持ち。もし万が一失敗したらどういようという不安。多感な年頃の少女たちの胸を、複雑に入り混じった感情が渦巻いていた。
 さらに、芽衣もまた言い知れぬ恐怖を感じている。確かに携帯トイレというアイテムで九死に一生を得たものの、本当のトイレではない場所での排泄は無用な緊張を強いて、完全にすっきりした状況とはいいがたいのだ。
 からからの喉にコップ半分くらいのぬるま湯を飲んだような気分で、そう遠くないうちにまたトイレに行きたくなるような不安が頭から離れない。
 そしてそれは、芽衣の摂取した水分や車内の状況を鑑みるに、間違いのない事実であった。
 そして――
 ぎゅっ、とドアの手摺を握り締めた霧香の手に、ひくっと力がこもる。彼女もまた体の奥底から押し寄せてくる下品な衝動と戦っていた。
 ブラウスはほんのわずか、緩やかな曲線を描き、少女が必死に耐えているものの存在を教えている。
 けれど――霧香の場合、ほかの二人に比べてもさらに事情が違っていた。
「……ふぁっ……」
 おしりの上から背中に向かって、ぞわぞわとした感覚が這い登る。下半身を占領した尿意は、霧香の身体を徐々に支配しつつある。
(やだ……っ)
 おなかの中をたぷたぷと揺れる水面はもはや“入れ物”の縁のすぐ手前まで達しており、いつ限界になってもおかしくない。霧香の視線が助けを求めるように車内をさまよい、シートに置かれたレジ袋に向けられる。
 コンビニのレジ袋には、三佳子が念のためにと用意した携帯トイレが入っていた。芽衣の分を除いた3つの携帯トイレ――ひとりひとつの割り当てで残る未使用の携帯トイレは、少女たちのおしっこ我慢の最終手段として、最悪の事態からの救済を約束してくれている。
 くれている、はずだった。
(どうしよう……もう、我慢できないっ……でちゃう、オシッコ出ちゃう……っ)
 たとえ友人たちに見られても、この小さな袋を使っておしっこを済ませれば、車の中でのオモラシという悲劇だけは回避できる。そのはずだった。
(どうしよう、あ、あれ、使って……ちょっとだけでもしちゃった方が……でも、途中で止められる……? っ、む、無理だよぉ……)
 霧香のひそかな悩み。それは、人並み外れて――トイレが“多い”ことだった。





 通常、成人女性の膀胱のサイズは、平均して300~400ml。霧香の年齢ならば、それよりもさらに少ないのが普通である。これらには無論個人差はあるが、その半分に達すると尿意を覚えることになる。訓練や生まれつきの体質として、これらはある程度“大きく”することが可能だ。
 あまりトイレが近いようであるならば、排泄を我慢することでトレーニングをし、ある程度の量までおしっこを溜めておけるようにする治療法は、実際に行なわれている。
 だが、霧香はその逆で、生まれつきトイレが非常に“多い”子だった。
 体質的な問題であることは霧香も理解している。極端に循環器系が活発であるためか、霧香の身体は通常よりも遥かに多いおしっこを作り出してしまうのだ。特段、さして多く水分を摂取するわけでもないのに、霧香の排尿量は同年代の少女の倍ほどになる。
 そのままではトイレから離れられないような生活を送るしかないのだが――そうした体質に適応したためか、霧香はそうした常人に倍するおしっこを蓄えるための膀胱のサイズも、また人並みはずれて大きかったのだ。
 そのため、霧香がトイレに行く回数はさほど多くはない。普通の子に比べるとむしろ少ないかもしれないくらいだ。
 膀胱のサイズが大きいということは、それだけ尿意を感じるのも遅いということになり、いざそのためにトイレに入ったと霧香のおしっこの迫力は凄まじい。
 なにしろ、霧香がちょっとトイレに行きたいな、と思う頃には、普通の少女の3倍――900から1000mlのおしっこが膀胱に蓄えられてしまっている。
 クラスメイトと同じようにトイレに入っても、ちょろちょろ、良くてもしょおおおおーっ、という慎ましやかな友人たちの排泄音に比べて、霧香の音といえば――

 ぶじょぉぼっぼぼぼぼぼぼぼぼ、じょぼぼぼぼぼぼぉおおおぉーーーーっ!!!

 はたして、この全開にした蛇口に繋いだホースの先を潰し、便器の中に水流をぶちまけたような下品極まりない水音が、この可憐な少女の股間から噴出するおしっこの音だと思い至る人間がどれほどいることだろう。
 音消しの水を流しても、恐ろしいほどにはっきりと自己主張をしてのけるほどの激しい水流はまったく誤魔化せない。ひしゃげた排泄孔を波打たせて迸るおしっこは、猛烈な勢いで便器の中の水面を打ち、濁流のように波打ち、激しく飛沫すら上げて四方に飛び散る羽目になる。
 洋式トイレではお尻がびしょびしょになるほどに跳ね返りを飛ばし、和式トイレを使おうものならどれだけ慎重にしていても、周囲の床はおろか壁までをびちゃびちゃに汚してしまう――およそ少女の排泄としてはありえない、下劣な“おしっこ”が、霧香の悩みの種だった。
 できるかぎり静かにおしっこする練習というものを、霧香は欠かしたことがない。しかし生来、大量のおしっこに対応している霧香の身体はに、そろそろとおしっこの出口を絞りながら、ちょろちょろという静かな勢いに調節して、長く長くおしっこをするのは激しい苦痛なのだった。
 実際、普通の女の子のような慎ましやかな排泄では全部出し終わるのに何分かかるものかわかったものではない。だから気がねなく、本当の勢いで『おしっこ』をできる家のトイレが、霧香にとって唯一安堵できる場所だった。
 霧香くらいの年齢であると、学内における女子のコミュニティにおいて、様々な行為はコミュニケーションの一環として共同で行われるのが普通である。霧香も休憩時間などには、友人達に誘われて一緒にトイレに向かうこともしばしばだ。しかし、学校の女子トイレは防音も完全ではなく、音消しも設置されていないことがしばしばだ。
 それほど分厚くはないトイレの壁ごしに音が聞こえるのをためらうあまり、霧香は個室に入っておきながらおしっこを済ませず、ただ水だけを流してトイレを後にすることもしばしばだった。
 だが、ただでさえ人並み外れて多く抽出されるおしっこは、そうやって霧香が我慢すればするほどさらになみなみと少女の下腹部の入れ物を満たし、ずっしりと下腹部に重く圧迫してしまう。そうなればなるほど、いざ用を足す段になっておしっこはさらに激しく多いものとなり、ますます霧香から排泄の機会を奪ってしまうのだった。
 一度、いったいどれくらい我慢できるのだろうかと思い、霧香は後ろ暗い好奇心のまま、その量を測ってみたことがある。その結果に、霧香は馬鹿なことをしたと酷く後悔していた。
 お風呂場で用意した、廃棄予定の古い洗面器をトイレの代わりに、霧香がぱんぱんに膨らんでいたおなかを空っぽになるまですっきりさせると――そこに溜まったおしっこはいまにもそこから溢れんばかりという――恐ろしい有様になっていた。考えたくもないが、あの時の量はおそらく2リットルを超えていただろう。
 あれからまた時間が経って、霧香はさらに我慢できるようになっている事は間違いない。たぶんいま現在、霧香が我慢している量は、それよりもまだ多いのだ。
 だから――
 携帯トイレなどという、あのちゃちな入れ物程度では、とてもではないけれど霧香のおしっこは全部おさまるわけがないのだ。





 だが、霧香の我慢はいよいよ限界に達しつつある。ただでさえ敏感な身体は、普段飲みなれないお茶やコーヒー、紅茶の利尿作用にてきめんに反応していた。膨らんだ膀胱は外から万力でぐいぐいと締め付けられるような感覚すら覚え、いつ水門が崩壊してもおかしくない。
「だ……だめ……ぇ」
 天井知らずに高まり続ける尿意に、霧香はとうとう音を上げてしまう。
 他の皆は揃って、次に携帯トイレを使い始めるのはもうどうみても余裕のない佐奈だろうと思っていたところだったので、霧香のギブアップは軽い驚きをもって皆に迎えられる。
 なにしろ、佐奈はさっきから胸元にぎゅっと形態トイレのパックを握り締めて、神様に祈るような格好をしていたのだ。
 だから、その芽衣も意外なように霧香を見上げる。
「霧香ちゃん、うん、無理しないで。恥ずかしいことじゃないから――気にしなくていいよ。ね?」
 三佳子のフォローは、しかし繊細な少女たちの羞恥心を和らげる役にはあまり立たなかった。ことさらに微妙な空気になった中、芽衣がおずおずとレジ袋の中から新しい形態トイレを取り出す。
「あの、霧香、これ――」
 だが。
 未使用の携帯トイレ、我慢の限界のおしっこを受け止める専用の入れ物を、霧香は受け取ろうとはしなかった。
「霧香? ねえ……」
 不安げに首を傾げる芽衣に対し、霧香は小さく首を左右に振る。
「え、ええとっ……」
「ねえ、霧香ちゃん、恥ずかしいかもしれないけど、でも外でおしっこなんかできないでしょ? 我慢して――」
「ち、違うのっ!!」
 三佳子の言葉を遮って、霧香は芽衣の服の袖を掴んだ。
「そ、そっちじゃないの……」
「え……? でも霧香、その……、ぉ、おしっこ……だよね?」
「っ……違うの、そ、そうじゃなくて……っ」
 芽衣にも、他のみんなにも、霧香の意図はもどかしいほどに通じていない。仕方のないことではあるが、それを口にするのは霧香にはあまりにも辛いことだった。
 しかしこのまま車内を汚してしまうわけにはいかない。だって――
「そ、それじゃないの!! それじゃ、ダメなのっ」
 恥も外聞もなくして下半身をくねくねとよじり合わせながら、霧香は真っ赤になって声を絞り出した。
「そんなちっちゃいのじゃなくて、そ、そっちの――ビニール袋っ!!」
 おしっこのための入れ物ではなくて、買い物に使う白いレジ袋。霧香が欲しいのはそれだった。
「え? ……こんなの、どうするの?」
 きょとんと芽衣が目を瞬かせる。美希も佐奈も目を丸くしていた。
「え、えっと、霧香ちゃん、気分悪い、とか?」
「……霧香?」
「ち、違うのっ!! わ、わたし、それに“する”から!! っ――そ、それじゃなきゃおしっこ、できないのっ!! そんな携帯トイレなんかじゃ、ぜったいに全部出せないから……っ!!」
 自分がガマンしているおしっこが、どれほどのものか。自分のトイレが、どれだけすさまじくて激しくて下品ではしたないものであるのか。霧香は声をかすれさせて訴えた。
 大容量600ml。ずしんと霧香の膀胱を膨らませたおしっこを受け止めるには、その程度の当たり前な大きさではとても間に合わない。霧香のおしっこタンクを満杯にする恥ずかしい液体は、携帯トイレどころかその入っていたビニール袋を一杯にしてもおかしくないレベルなのだ。
「え……それって」
「ご、ごめん、もうダメ……おねがい、あっち向いてて……!!」
 霧香は立ち上がるなり芽衣の手からもぎ取ったビニール袋の口をがばぁっと広げ、スカートを引き上げ下着を膝下までひきずり下ろす。
 ワンボックスの中で大きく下半身を丸出しにして、膨らんだおなかの下、いまにも爆発しそうな股間に、白いビニール袋があてがわれた。
 思春期の女の子として、決して許容できようはずもない、“ビニール袋”へのおしっこ――しかしそれでも、オモラシよりはマシだ。今の霧香には他の選択肢はない。
 本当なら、ちゃんとしゃがみ込んで、見えないようにおしっこをはじめるべきなのは霧香も理解している。だが、そんな不安定な姿勢では、絶対におしっこをビニール袋の中に納めきれず、床にこぼし撒き散らしてしまうだろうことは疑うべくもない。
「いやぁ……っ!! でる、でるうぅ…っ!!」
 引き攣れたような叫びを皮切りに、おとなしく縮こまっていた排泄孔が数度震えると、そのまま猛烈な勢いでおしっこを吹き出した。

 ―――――――ッ、―――――――ッッ!!!!

 霧香は唇を噛み締め、俯いて、その猛烈な音を意識の外に閉め出した。あまりにも激しい、消防車の放水のような、触れただけで手の指くらいなら千切れてしまいそうな高水圧の水流が、激しい飛沫を迸らせて、ビニール袋の内側に激突する。
 たちまちのうちに白いビニール袋を膨らませる薄黄色の液体は、激しく水面を泡立たせ、ビニール袋の中をずしりと重く押し広げ、あっと言う間に一杯にしてゆく。

 ―――――ッ、――ッ、―――――――ぁッッ!!!!

「…………っ!?」
 目の前で繰り広げられる超大迫力の排泄シーンに、友人たちが言葉を失って立ち尽くしている。誰も、霧香のこんな姿を知りはしないのだ。見るなというほうが無理なほど、その排泄音も勢いも凄まじい。
 なにしろ――締め切った車内の外まで、霧香のおしっこの音は響くほど。左右の車が突然の異音に不審に思って、霧香たちの乗るワンボックスを覗き込もうとするほどだった。
 薄いスモークでは完全に遮りきれず、霧香のビニール袋へのおしっこは、たちまちのうちに周囲の車に乗る人々にも知るところとなってしまう。
 しかし、もう堪えきれないおしっこを中断するのは不可能だ。
 ずっしりと持ち手が指に食い込んでゆく。安っぽいレジ袋では、霧香の膀胱と同じ役割をするだけの耐久力はなかった。決して小さくはないビニール袋の容量が半分を超えてなお、霧香のおしっこはまるで衰えない。
「う、うそ、そんなに――ガマンしてたの? 霧香……」
「っ…………!!」
 呆然とした美希の呟きが、霧香の羞恥心を激しくえぐる。
 特別おしっこのできやすい循環器と、頻繁なトイレを少しでも自由にしようと適応した膀胱が産んだ、特別性の霧香の身体。
 携帯トイレでは、残りの3つ全部、佐奈と美希のぶんを使っても入りきらないだろう大量のおしっこは、ビニール袋をほぼ完全に一杯にして、ようやく弱まり始める。
 おさまってゆく下半身にわずかに安堵を覚えながら、両手指にのしかかる猛烈な重さに、霧香は声を殺しながらなんどもしゃくりあげていた。
 その量といったら、リットルで数えたほうがはるかに早いだろう。
 大容量600ml――むなしくもそんな文字を書いた包装の、未使用の携帯トイレが――霧香の足元にすとん、と落ちた。



(初出:書き下ろし 2009/01/01)

[ 2009/01/01 02:53 ] 小説 | トラックバック(-) | コメント(-)
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