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買い物帰りの話。 

 
 賑やかな大通りから一本、道を入ると、たちまち喧騒は遠ざかってゆく。
 植え込みと赤レンガで舗装された歩道は途切れ、真新しいアスファルトが規則正しく碁盤目のように続く清潔な佇まいの一角は、まだ開発の続く新興の住宅地だ。
 昨今の不景気で開発が遅れ、まだ分譲の幟がそこここに見える区画には歯の欠けた櫛のように更地も目立ち、さほど人通りも多くない。
「んっ、しょ……っ」
 夏休みの午後とあって、車も滅多に通らない道の真ん中あたりを、危なげな足取りが進んでゆく。
 頭の後ろで左右に髪を括った年端もいかない少女は、身体の前に大きなレジ袋を両手で抱えていた。レジ袋のロゴは、ここから程近い量販店のもの。どうやら今日のお使いを済ませた帰りと見えた。
 ぎっしりと中身の詰まったレジ袋は少女にはやや大きく、両手で持ち上げていないと地面を擦ってしまいそうだった。荷物を抱えた不安定な足元は、頼りなくふらふらと左右に揺れている。
 だが、所在無げに周囲を見回し、落ち着きない足取りは、単に重い荷物を抱えているだけが理由ではなさそうだった。
 ふいに、少女の脚がぴたりと止まる。
「うぅ~~……ッ」
 道路の真ん中で立ち尽くし、小さく唸る少女の眉はハの字を形作り、困惑と戸惑いをはっきり知らせていた。
 は、は、と荒い呼吸が形の良い小鼻を膨らませ、唇は吐息と共に小さく噛み締められる。ほんのりと赤く染まった耳たぶは、俯き加減の少女の羞恥の度合いを知らせるよいバロメーターだ。
 少女は無理をして足を踏み出そうとし、そのままよたよたとバランスを崩した。レジ袋の重さに負けた小さな身体は、踏みとどまれぬままにふらふらっと道の片側に寄りかかってしまう。
「や……っ」
 わずかに声を上げ、小さな手のひらがレジ袋を抱えなおす。
 その時にさりげなく、少女は片方の手でスカートの前を押さえ、ぎゅう、と脚の付け根を圧迫した。
 こみ上げる衝動に耐えかねてのその動作は、しかしそれだけに留まらない。一瞬だけ応援に向ったはずの手のひらは、そのまま少女の下腹部をきつく押さえたまま、動かなくなってしまう。
「んんっ……」
 内股に寄せられた脚は小さく震え、つぶらな瞳はきつく閉じられ、小さなあごはちょんと突き出されて上を向く。それら全てが少女の限界が程近いことを示していた。 普通に歩くこともつらいほどに、少女はその身体の中に恥ずかしい液体を溜め込んでいるのだった。未発達な下腹部を膨らませる液体は、一歩ごとに危険水域を突破し激しく水面を波立たせている。
 しかも、重い荷物を抱えたままでは、両手がふさがってしまい思うように前押さえもできないのだ。大通りを抜けたところで人目が途切れ、緊張がわずかに緩んだことによってか、少女は往来で幼稚園児のような我慢の仕草を披露してしまっていた。
 道路の傍らの壁に背中を半分預けるような格好で、小さな脚がたん、たん、と交互に足踏みを繰り返す。同時に腰が左右に揺すられ、膝上のスカートもひらひらと揺れる。ぶれる身体と共に、ちゃぷちゃぷと揺れる水音が聞こえてくるかのようだ。
 だが、もともと住宅街であるこの近所に、少女が気軽に立ち寄れるようなトイレはない。見ず知らずの家でトイレを借りるなど、まだ幼い少女にはとても考えも付かないことだった。
 もうとっくに幼稚園なんか卒業して、ひとりでちゃんとお使いにもいける自分が、いまさらおしっこが漏れそうなんて理由で知らない人に迷惑をかけるわけにはいかない。幼いなりに、少女にも羞恥やプライドというものがあるのだ。
「ん……っ」
 下腹部がわずかに落ち着くのを見計らって、少女は再度、大きなレジ袋を持ち上げてはそろそろと進み始める。このまままっすぐ歩いて交差点を三つ、横断歩道を二つ越えれば、ゴールである少女の家まで辿り着ける。
 しかし、スーパーを出た時は我慢できると思っていたはずの家までの道のりは、いまは果てしなく遠く思える。ましてこの大荷物を抱え、寄せ合わせた膝の上に満水のダムを抱えたおぼつかない足取りではなおさらだ。
 今からでもいいからもと来た道を戻ってスーパーに入り直し、トイレを借りたほうがいいのでは……そんな思いが少女の頭の端をかすめる。
「おしっこ……っ」
 無視しようにも、あまりに強烈な存在感を訴える尿意が、股間からぐうっとせり上がってくる。それに押し出されるように少女ははっきりと尿意を口にしてしまっていた。同時に、歩き出そうとした脚がまたぴたりと固まり、少女は道の真ん中で立ち止まってしまう。
「だめ……でちゃう……」
 一度そう意識してしまえば、辛うじて保たれていた均衡は脆くも破られ、後は際限なく片方へと傾き崩れ出すばかりだ。きゅうんっ、と切なく疼いた下腹部に、少女はぶるっと背中を震わせる。
 なんとか家まで持たせようという心が挫けてしまえば、身体のほうも同時に音を上げる。少女の水門はこれまでの絶対的な使命だった第一目的“家に到着するまで”を放棄し、“どこか、トイレのできる所”までという短く楽な目標に、我慢のモードを切り替えてしまう。
「ぁ、あ、っ」
 ソレは、排泄器官が放水の準備とカウントダウンを始めることに他ならない。たちまち押し寄せる膨大な尿意に支配され、少女は焦ったように脚を擦り合わせ、何かに縋るように周囲を見回す。
 が、そうなったからと言って周囲の状況が変わるわけでもなく、無論の事ながらそう都合よく少女の欲求をかなえる場所など、あるはずもない。
 とっくに確認していたはずのことに、改めて少女は落胆し、それに連動してますます下腹部がぴくんと反応し、限界を訴える。切羽詰った尿意に押し動かされるように、少女は“最後の手段”を選ぶことを余儀なくされた。
「っ……」
 それは、野ション――いわゆる野外排泄だった。
 我慢しきれないおしっこをするため、トイレではない場所へと向かう――そんな自分に激しい嫌悪を感じながらも、同時にオモラシの恐怖から逃れる一心で、少女はそれを選択していた。
 赤く染まった頬を隠すように俯き気味に、少女は歩く道路の反対側、更地のまま放置されて雑草が生えた区画に向って歩き出した。
 雨ざらしになったどこかの不動産会社の看板を乗り越えて、柵もない更地の茂みの中へ踏み入れた少女は、そこに抱えていたレジ袋を下ろす。そのまま、周囲を念入りに確認しながら雑草を掻き分け、さらにその奥へと進んでいった。
「んぅ……っ」
 がさがさと草を押し分けると小さな虫が飛び回り、否が応でも“お外でのおしっこ”を少女に自覚させる。何度も何度も周りを見回して、茂みの中心地へとたどり着く頃には、緊張と焦りでもはや我慢の限界はカウントダウンの秒読みを数えるまで近付いてきていた。もはや家まで我慢できないことは明白だ。
 しちゃいけないことだと頭では理解できていても、くつくつと煮えたぎる尿意には逆らえず、少女はなおも念入りに回りを確認し、人目がないことを確かめてから、スカートをたくし上げ、下着を膝まで下ろして茂みの中にしゃがみ込む。
 幸いにして生え揃っている雑草はかなり背が高く、少女の小柄な身体ならば背中を丸めて深く腰を下ろしていれば、よほど注意して眺めなければ見つからないだろう。
「…………」
 あらわになった白い下腹部の幼い秘部、まだ細いたて筋しかないそこが、小さく震え、我慢による汗でしっとりと湿っている。
(が、がまんできないんだもん、しかたないよね……)
 これからはじめるおしっこに、罪悪感とぬぐいきれない羞恥を、緊急避難として正当化し、早まる鼓動にぎゅっと口をつぐみながら、少女は最後の防波堤となっている緊張をゆっくりと抜いてゆく。
 閉ざされていた水門が緩やかに弛緩し、しゅぅ、と小さな水音を響かせ、熱い水流にぷくりと膨らみ――
 その時、
「……あっ!?」
(や、やだっ、袋、おきっぱなしだ……っ!!)
 更地の入り口に放り出したレジ袋に思い当たり、少女は背筋を震わせた。買ったばかりの物が沢山詰まっているそれは、どう見ても道路から丸見えで、通りがかった人の注視を引いてしまうように思えた。
 大事なお使いの買い物を、おしっこをするところのすぐ近くまで持っていけないという少女の心理が、かえって悪く働いた結果だった。
 思わず腰を浮かしかけるが、ソレよりも早く、少女の股間からは塞き止め切れないおしっこがぶじゅうぅ、と噴出してしまっていた。緊張と焦りでヘンな具合に下腹部に力が入り、半分閉じ欠けた排出口は妙な具合によじれ、おしっこはまっすぐ飛ぶことなく脚の内側に激しくびちゃびちゃと飛び散った。
 まるで、ホースの先に手を押し当てているかのように、曲がりくねって入り組んだ出口に篭った水流はスプリンクラーのように、少女の内腿に所構わず水流をほとばしらせる。
「あ、あぁ、っ」
 放出の解放感が、足元をふらつかせる。我慢に我慢を重ねていたものが一気に吹き出す感覚は、ぞくぞくと少女の恥骨から腰骨を伝い、背中を震わせてしまう。
 中途半端に中腰になりかけたせいでバランスを崩し、おまけに膝には脱ぎ掛けの下着が絡み、おぼつかない脚はふらついた身体をとどめきれない。ましてこれまでも、溢れそうになるおしっこをずっと塞き止め続け、少女の下半身はすっかり疲労していた。
 がくり、と、倒れこむ身体はがさぁっと大きく茂みを掻き分け、少女は反射的に地面に手を付いた。
 その瞬間。
 ずるうぅ、と、地面にあるはずの手のひらに、異様な感触を覚え、少女は戦慄する。少女が身体を支えようと手を付いた茂みの下には、1mはあろうかという大きな蛇が、ぐねぐねと身をのたうたせていたのだった。
「っ――――ッッ!?」
 声にならない叫びと共に、少女は飛び上がった。そのまま全速力で跳ね起き、まっすぐに茂みを飛び出そうとする。
 が、足に絡む下着はそれを遮り、急激な緊張に収縮した下腹部はそのままおしっこを継続してしまう。
 恐慌に陥った少女が、這いずるようにしてどうにか更地から道路に転がり出たときには、とっくに本格的に少女のオシッコが始まっていた。
「あ、ぁ、あっ、あっ、や、あぁ」

 じゅじゅっ、じょぅぅ、ばちゃ、ばちゃばちゃびちゃ……じょぼぼぼぼぉぉ……

 腰を抜かし、力の抜けた下半身では、いっさいのストッパーを失って、本当の勢いでオシッコが溢れ落ちて行く。
 レジ袋のすぐ側に膝を付いて倒れこんだ少女の足元から、薄黄色い水流がほとばしる。内腿を滝のように伝い、波打って暴れるオシッコは、スカートと下着を完全に水没させ、むき出しの地面を色濃く変えながら、アスファルトの地面のほうにまで流れてゆくのだった。
 ぱしゃぱしゃと足元を濡らしながら、呆然となる少女を、まるで出迎えるように。
 すぐ近くから、賑やかな話し声が聞えてきた……。



 (初出:書き下ろし)
[ 2009/07/27 20:41 ] 小説 | トラックバック(-) | コメント(-)

プールと水着の話。 


 梅雨明けの青空、燦々と降り注ぐ陽射しをいっぱいに浴びて、賑やかな声が揺れる水面に響き、歓声とともに水飛沫が上がる。夏休みを目前にして最後のプールの授業は、2時間続きの大盤振る舞いとなっていた。
 騒がしいクラスメイトたちの笑顔につられて、残念ながら見学をしていなければならないプールサイドの数名も、我慢できなかったか制服の裾が濡れるのにも構わずに一緒になって騒いでいる。
 そんな中、喧騒から少し外れて、所在なげに金網に寄りかかる少女の姿がある。
 凹凸の控えめな身体を慎ましく覆う紺色の水着から、剥きたての卵のような白い手足が覗く。肩上ほどの髪は、水に湿ってもなお分かる程度の癖っ毛。脱いだキャップは後ろ手に組んだ指に引っかかって、雫をぽたぽたと垂らしている。
「んっ、ふ……んぅっ……」
 小さく鼻にかかった声で、久賀智里は小さく唇を開け、荒い息を飲み込んだ。
 できるだけ『なんでもないですよ』という顔をしているつもりのようだが、一度注目すれば無視できないほどに、少女の様子は目に付いた。
 眉は困惑に歯の字に垂れ、視線もそっと周りを窺うように控えめ。水泳キャップを掴む身体の後ろに回した指で金網を握り、そこを支点に身体を左右に揺すっている。
 細い鎖骨からは水滴と汗の雫がつう、とこぼれて、内股の膝の上では細い太腿がもじもじと寄せ合わされる。
「っ、ふぁ……くぅ…んっ……」
 プールの喧騒に紛れ、そんな小さな声は辛うじて教師たちの耳には届いていない。
 あまり日焼けしていない細い喉が小さく震え、硬く握り締められた手のひらが、一番行きたい場所を避けて、ためらいがちに身体の前を行き来する。
 熱く灼けたプールサイドの上では、小さな裸足の足が交互に体重を支え、寄せ合わされる太腿が水着のクロッチをきゅうと挟む。いっそ腰を下ろしてしまったほうが楽だろうか。そんなそぶりこそ見せるものの、同じように見学しているクラスメイトをちらりと窺い、智里は結局そのまま動けないままだった。
 と、その時だ。
 左右に小さく揺すられていた、紺色の水着に包まれた細い腰が、不意にぴくんと上に跳ねて硬直する。
「ふぁ……っ!?」
 恥骨を響かせぞくぞくと背筋を這い登る感覚に、さっきまでよりも切実な悲鳴が、少女の唇を飛び出した。
 たまらずに、きつく交差させた膝がぷるぷると震え、よじられた腰がくねくねと円を描いて揺すり動かされる。
 細い体の小さなおなかの中、脚の付け根にできた逆三角形の隙間の真上。
 少女の小さな膀胱を、ぱんぱんに満たす恥ずかしい液体が、ますますその存在感をあらわにしている。くつくつと煮えたぎる尿意はなお激しく、智里の下腹部に昂ぶっていた。
(と…トイレ……っ、行きたいよぅ……っ)
 きゅんきゅんと排泄の欲求を訴え、閉じ込められた恥ずかしい液体の解放をせっつく正直な下半身に対し、極度の恥ずかしがり屋の智里の心は、手を上げて『先生、トイレ』の一言がいつまでも言い出せずにいた。
 教卓ので発表どころか、授業で手を上げることもできない智里の繊細な心は、更衣室のすぐ脇にあるトイレまでのほんのわずかな距離を、地平の果てまでもに等しいほどに遠ざけているのだった。
 そのすぐ側では、そんな智里の心中など知る由もなく、高く水飛沫を跳ねさせて、クラスメイトたちが楽しげに騒いでいる。
 プールサイドに上がっての十分間の休憩で、再び元気をチャージしたみんなは、強い夏の日差しの下で時間を忘れて遊んでいた。これからあと40分の4時間目も、あっという間に過ぎ去ってしまうだろう。
「ふ……ぅっ……」
 けれど、智里にとってその40分は果てしない時の果てに近いように思われた。
 3時間目の授業は、智里もクラスの皆に混じって、一緒にプールに入っていた。しかし、その頃から――正確には2時間目の途中あたりから、智里の身体は激しくトイレを要求していたのだ。
 しかし、他の子ならばいざ知らず、着替えて教室から移動するだけで休み時間のほとんどを使ってしまう智里には、途中でおしっこのためにトイレに立ち寄る、という選択肢はない。
 つまり、その時点で智里は4時間目が終わるまでトイレに行けない可能性が大、だったのである。
(……おしっこ……っ)
 みんなのすぐ側でじっとおしっこを我慢することの恥ずかしさに、紅くなった頬を小さく震わせ、智里はもう一度、更衣室の向こうへと意識を飛ばす。
 無論、プール授業中の唯一のチャンスだった十分間の休憩時間――そのわずかな自由に、智里が黙っていたわけではない。しかしもともと身体を動かすのが苦手な智里には、教師の号令も届かずはしゃぐクラスメイトを掻き分けてプールから出て、さらに大混雑のトイレ前の行列を跳ね飛ばし、奥に並ぶ個室まで駆け込むなど、到底叶いはしなかったのだ。
 結局、順番が回ってくる前に並ぶだけで休憩時間は終わりとなり、智里は下腹部に張り詰めた膀胱を抱えたまま、プールに戻ることになった。
 しかし、その頃には水面に爪先を付けるだけで水着の奥のダムが決壊しそうな有様だった。

『さとちゃん、大丈夫?』

 プールサイドで立ち往生していたところを、少し気分が悪くなったのでは、と察してくれた友人のおかげで、少し見学となったものの、授業中ということもありプールサイドを出ることはできない。
 まるで背中の金網は、智里を閉じ込める牢獄の象徴のようにすら思えてしまう。背中を預けてじっと立ち尽くす智里は、焼けるような日差しの下で濡れた水着に包まれた下腹部の緊張をさらに高め、小さな膀胱を満たす液体の圧力にひとり必死に耐えていた。
(……だめ、……おしっこ……がまんっ……)
 体温と日差しで熱された水着は、身じろぎするたびに吸った水を滲ませ、股間を包む内当て布の感触を意識させる。
 じわ、と汗の溜まった水着の背中から、重力に引かれて湿った水がおしりの方へと流れ落ちる。そのくすぐったさに思わず両脚を捻ると、水を含んだ水着が絞られて、じわ、と滲んだ水が溢れては内腿を伝って膝裏からふくらはぎへと滑り落ちてゆく。
 たまらず、智里の手は背中からおしりの上を回り込んで、脚の付け根の水着の股布部分を背中のほうへぐいっと引っ張り、脆くも震える出口を押さえ込もうとする。
 緊張して強張る内腿の隙間から、ぽた、ぽた、とタイルの上にこぼれてゆく水滴そは、ますます智里の我慢をきつくさせた。
(で、でちゃう……)
 ふるる、と小さく震えた身体の訴えは、より切実なものになっていた。困惑に及ぶ視線は、頼りなく周囲をさまよい、濡れぼそった前髪の下でますます眉は垂れ下がる。
 本当は、こちらもぎゅっと水着の前を押さえてしまいたいもう一方の手は、智里の身体の前で折りたたまれて、肘でさりげなくおヘソの上を押さえ、曲げられた指先が閉じられた唇に当てられる。
「っ、あ、っ……んんっ……ふっ」
(と、トイレ……はやく、トイレ……っ、おしっこ……っ)
 そこまでしても、尿意がおさまる気配はなかった。
 水着のクロッチの下でぷくりと膨れ上がる尿意を必死に押さえつけ、智里は浅く、荒く息を繰り返して、寄せては返す波をやりすごす。
 本来の容積を遥かにオーバーして、我慢し続けたおしっこでずっしりと重くなったダムを下腹部に抱え、智里は少しでも楽な姿勢を探そうと、ぐいぐいと裸足のかかとをタイルに押し付け、もう一方の足を絡めるようにして身体をねじった。
 ぎゅうっと、水着の股布を引っ張る指に力が篭もり、伸びた指先が肌に張り付く布地をぐいと押し上げて、むず痒い感覚が集中する出口を直接抑え込んだ。
 じん、と痺れるように敏感に反応するそこに、意識を集中する。
「……ふぅっ……はぁっ……」
 荒い息をこぼす智里の頬は紅く染まり、鼻の頭にもしっとりと汗が浮いていた。
 いくら波を乗り越えても、下腹部でくつくつと煮えたぎる尿意は引かず、それどころか増す一方だ。もはやそんなレベルではないことを、智里は身体で理解する。
(っ、と、トイレ……っ)
 心の中では必死に訴えるその言葉は、しかし誰にも届かない。水遊びに夢中のクラスメイトも、それを監督するので精一杯の教師たちも、その傍らで今にも漏れそうなおしっこを、誰にも言い出すことができず、その場で必死に我慢している智里がいるなどということは、思いもしていないのだ。
 紺色の布地を押し破り、激しい水流が吹き出して、脚の付け根の隙間を満たし、両脚を伝ってぱちゃぱちゃと滴り落ちる――そんな結末は、そう遠くないものと思えてしまうほどだ。
「っ……」
 また、横目でちらり、とプールの出口を見、けれど智里はその場から動けない。声を上げたり動いたりすれば、クラスメイトの注目を浴びてしまうことは避けようがなく、その緊張が智里を縛りつける。
 先生を呼ぼうとする声が喉に張り付いて、手足が強張り、足は地面に縫い止められたよう。ほんのわずか、身動ぎするので精一杯だ。
 そうこうしているうちに、きゅうんっ、と敏感な膀胱が反応する。
 少しだけ気を緩めていた瞬間を狙い済ましたかのように、大きな尿意の津波が智里に叩きつけられた。押さえつけていた出口がじわっと緩み、一番脆い場所めがけて熱い水流が押し寄せてくる。
「ぁ、あ、あっ」
 かくかくと唇を震わせ、智里はきつく歯を食いしばった。
 とっさに空いている手で、太腿の上部分の水着を掴み、さらには股布のクロッチを掴み上げて、ぐいっとねじるように引っ張り上げる。引き伸ばされた布地の隙間からは太腿を越えて、足のその付け根から恥丘のすぐ側まで、ふっくらとした白い肌があらわになった。
 智里は引っ張り上げた布地をねじり、脚の付け根の合わせ目に食い込ませて、滲み出す熱い雫を塞き止めようとする。同時に両脚がきつく交差し、智里はその場で準備運動のように身体をねじり、くねらせる。

 じわ、ぢょっ、じゅぅっ……、ぱた、ぽたたっ、

(だ、だめっ、出ちゃだめ……っ)
 半分剥き出しになった少女の股間は、緊張に震え、けれど間断的に先走りを吹き出させていた。がくがくと震える膝の上で、引っ張り上げられる水着の布地に包まれた股間の先端から、熱い雫が滴り落ちる。
 顔中を真っ赤にして、歯を噛み締め、涙を滲ませ、智里は背中を波打たせ、ぎゅうぎゅうと股間にくいこませた水着をねじった。
「っ、ぁ、あっ」
(が、ガマン……できないっ。…ぉ、おトイレぇ……っ!!)
 必死の抵抗も空しく、小さな出口がぷしゅうと水流を吹き上げた、さっきよりも多くの水流が、閉じあわされた太腿の間を伝ってゆく。じわ、じゅわ、と水着のクロッチがたっぷり含んだ水分を溢れさせ、股間の先端にびりびりと走る甘い痺れが、智里がありったけの力で張り詰めさせている緊張の糸を断ち切らんと誘惑する。
「ぁ、っ……~~っ……!!」
 身体の中心を押さえ込む両手と、細い肩がぶるぶると震え、痙攣して力の抜ける両足は智里の体重を支えきれず、がくがくと揺れる腰がずり落ちてゆく。
 後ろに反り返った身体が、弓のようにしなり、金網に預けられた背中が左右に揺れ絵動く。ぎゅううぅ、と渾身の力で水着を引っ張り上げる手も、限界を訴えるようにぷるる、と震えていた。
 さらに、押さえ込まれたダムの決壊の余波を感じさせるごとく、じわ、と少女の目元が潤み、あふれ出した涙が、智里の頬へとこぼれてゆく。
(だ、っ、あ、で、でちゃう……っ!!)
 プールの片隅で、人知れず繰り広げられていた孤独な戦いは、ひっそりと終焉を迎えようとしていた。
 じゅぅう、という、チャックを開けるときのような音に続いて、ぽた、ぱちゃ、と小さな水の音。それはたちまち連続し、智里の我慢が押し破られる。堰を切って吹き出した熱く色濃い水流は、食い込ませ押し付けられた水着の股布にぶつかり、そのまま飛沫を撒き散らした。

 ちょろ、ちょぽぽ……ぱちゃぱちゃぱちゃっ……

 もともと通水性のいい布地はあっさりとその保水力の限界を超え、股間をささやかに遮る布地にぶつかる水流は、どこに染み込むこともない。智里の身体の内側から勢いよくはじき出された水流は、水風船が中身をほとばしらせるように、大きな放物線を描いてプール脇のタイルの上に飛び散ってゆく。
「や、やだぁ……っ、ぁ……っ」

 じょじょ、じょぉぉっ、じょぼぼぼぼおぉ……

 我慢に我慢を重ねたせいで、小さな膀胱に限界まで注ぎ込まれ、煮詰まった智里のおしっこはその小さな身体にはまるで似合わない、猛烈なものとなっていた。漏らすまいと必死になった分だけ、吹き出す勢いは強く激しく、まるで成人男性のそれに近い勢いと量だった。
 女の子のものとは思えないおしっこの水流は、寄せ合わされた智里の足を伝い落ち、下半身を包み込む熱い感触をともなって、智里の足元に特大の特設おしっこプールをひろげてゆく。
 冷たいプールの水よりもずっと熱く深く、煮詰まった恥ずかしい液体は、いつまでも激しい水流となって足元にこぼれ、智里の裸足の指の間を通じて、プールサイドに広がり続けるのだった。



 (初出:書き下ろし)
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