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シュレーディンガーのトイレ 

 実験開始から4時間が過ぎ、いよいよ全員の我慢は限界に近づいていた。
 かなり広い――バスケットボールのコートほどもある部屋。板張りの上にパイプ椅子と、簡素なテーブルだけが並んだそこには、10人ほどの少女達の姿がある。
 軽食や飲み物なども備えられており、テーブルの上には雑誌など、時間を潰すための品物も散見される。
 しかし、少女達はほとんどそれらに手を付けることなく、大きな動きも無いまま、部屋のあちこちにじっとしていた。
「んぁっ………」
「はぁ……はっ、……っ」
「ふぅうぁぅ……っ!!」
 少女達のほとんどは、苦しげに息を切らせ、身をよじっては小さく声を上げている。
 椅子に腰かけ、壁に手をついて、うずくまって、しゃがみ込んで、小さく飛び跳ねながら――懸命に脚の付け根を押さえ、腰を揺すり続ける。
 さながら『オシッコ我慢』の見本市のような有様だった。
「っ……!!」
 何人かの少女は、憤りすら感じさせる鋭い視線で、じっと部屋の壁を睨んでいる。
 そこには大きな電飾板があり、点滅を繰り返しながら数字を表示していた。数字が示すのは、現在の時刻と、実験の残り時間。
 一秒に1回、点滅しながら刻々と減じてゆく残り時間は、しかしまだ8時間近くを示している。
 それはもはや一刻の猶予もない少女達にとっては永遠に等しいものだった。
「ぁ、……っ、あっ……」
 俯いた少女の一人が、スカートの上から腿の間に挟んだ手のひらを前後にねじる。切羽詰った喘ぎ声と共に、パイプ椅子が腰の揺れに伴ってギシギシと音をたてた。それにつられたように、少女たちの何人かが激しく身悶えを始める。
 少女たちを襲う尿意の波が、波打ちうねる姿が目に見えるかのようだった。
「くぅ……ぅぅう……っ」
 少女達はそれぞれの我慢のポーズで、顔を真っ赤にして、きつく唇を噛む。
 下腹部の中に膨らみきった尿意の圧迫に、小さな排泄孔がひくんひくんと小刻みに痙攣する。いまにも緩み、開きそうになる羞恥の出口を押さえこみ、少しでも楽な姿勢、楽な呼吸を探して、少女たちは思い思いの姿勢で我慢を続けている。
「ぉ……」
 かすれたような声は、誰の唇を震わせたものだったか。
「おトイレ……っ、!! ……おしっこでちゃう……っ!!」
 それが、この部屋にいる少女達全員の、なにものにも代えがたい切実なる訴えだった。少女達は必死に身体をクネらせ、我慢に我慢を重ねながらじっとじっと、電飾板を睨みつける。
 その視線の先には、もうひとつ、別のものがあった。
 ちょうど残り時間を刻む電飾板の真下。ごくありふれた白いプレートの付いた、ドアが一つ。
 ……そこには、赤い女性を模したピクトグラムで、『女子トイレ』を示すマークがあった。
「っ………」
「…ぁん……だ、ダメぇ……」
 もはや限界、一刻の猶予も無いほどの尿意に、執拗に下半身をなぶられながら。目の前にこれ以上ないほどはっきりと、『オシッコをするための場所』を突き付けられて、なお少女達は誰も動こうとはしない。
 熱く疼く下腹部を、懸命に握り締め、太腿をひっきりなしに擦り合わせ。
 ひり付くほどに、その奥にある大切な場所に焦がれながらも、少女達の誰もそのドアを開けようとはしなかった。



 ――少女達にこの不可解な行動を取らせているのは、今から4時間と少し前、実験の開始時に彼女達に伝えられたある条件によるものである。
 この実験の対象となった少女達は、不特定多数の母集団から無作為に抽出された24名。
 部屋に集められた彼女達は、12時間を閉鎖されたこの密室の中ですごさなければならないことがまず告げられた。
 次に、少女達が先ほど口にした飲料には、強い利尿作用をもつ成分が含まれていること。
 そして、少女達は厳正なくじ引きで12名ずつの二つのグループに分けられ、それぞれ別々の部屋に閉じ込められていること。
 ふたつの部屋は行き来も不可能で、片方の部屋からもう片方の片方の部屋の状況を知ることはできないよう対策が施されていた。連絡を取り合うことも、そもそも説明されたとおり、本当にもう一つの部屋があるのかも、少女達は知ることができない。
 このふたつの部屋は設備、構造、状態、あらゆるものが同一だが、たったひとつだけ違う部分がある。
 それが、この小さなドアの奥。そこにあるトイレの有無だった。
 片方の部屋のドアの奥にはトイレがあり、もう片方の部屋は、ドアの向こうはただの小部屋である。むろん、トイレでないほうの部屋はオシッコの場所――トイレとして使うことなどできず、一回開けたら最後、ドアを閉じて視線を遮ることすら許されない。
 その違いは、外からうかがい知ることはできず、ドアを開けてみるまで分からないのだ。
 仮にドアを開けてみたとして、そこがトイレならば、それは全く問題ない。次に誰が使うかの順番争いなどでもめることはあるだろうが、全員が心ゆくまでオシッコを済ませ(間に合えば、だが)、最高の解放感と共に、残る8時間を快適な時間として過ごすことができるだろう。
 しかし。そこがもし、トイレではなかったのなら。
 残る8時間という、途方もなく長いく苦行の時間を、少女達は救いのない完全な密室の中ですごさなければならない。
 実験時間の三分の一、わずか4時間を過ごしただけですでに少女達の膀胱はぱんぱんにい張り詰め、膨らんで、もはやほとんど猶予がない。この状態でさらに8時間の我慢など、貫き通せるわけがなかった。
 そして、――最後の条件がもうひとつ。
 どちらかの部屋のドアが開かれた時点で、両方の部屋にそのことが知らされ、もう一つ部屋のドアは使用不能となるということ。この場合、もともとのトイレの有無に関わらず、開けられなかった方のドアは開閉不能となり、中を確かめることも、使用することも不可能となる。
 これらの説明が終わると共に、少女達の我慢実験はスタートとなった。
 利尿剤の効き目は十分で、実験開始から30分もしないうちに、トイレを済ませていなかった数名が落ち着きをなくしはじめ、二時間も過ぎた頃には少女達の9割が尿意を覚えだしていた。
 そして4時間が過ぎた現在、少女達はもはや形振り構わず、人目をはばからずに我慢のしぐさをとらねばならないほどに追いつめられている。
 同性ばかりの密室環境とはいえ、顔見知りでもない集団の中で、子供のようにトイレを我慢する様子を見られるのは思春期の少女達にとってこの上もない恥辱だった。
 そして――さらに。こうして我慢できているうちは問題ないのだが、もし少女達が我慢しきれずに、オモラシ、あるいはトイレではない場所、部屋のどこかでしゃがみ込んで自主的な放尿に至った場合、その少女達の氏名、プロフィールと共にその様子が、プライバシーなど無視した超法規的措置で全世界に動画付きで公開されることになっているというのだ。
 例え服を汚さなくとも、トイレではない場所で、本来オシッコを許可されていない場所での排泄は、オモラシと何も変わらない。汚してはいけない場所を汚し、してはいけない場所でオシッコをしてしまったことにはなんの変りも無いということだ。
 それが本当かは確かめるすべはない。ただの出鱈目かもしれない。
 しかし、実験の主催者を名乗る人物から、スピーカーを通じて淡々と抑揚なく告げられる説明は、無視するには強すぎる印象を少女達に与えていた。
「はぁ、はぁっ、はーっ……」
「、ん、んっ……んっ!! ……ふぅ……」
 下腹部をさすり、前屈み。もじもじとお尻を振り、かかとを脚の付け根に押し付けるようにしてぐりぐりとねじり。断続的に寄せては返す尿意の波をやりすごす。
「……っ……よかった……おさまったよ……」
 ちょっとだけ楽になったと、表情を緩めたのもつかの間。瞬く間に次の波がやってくる。
 あ、あっと声を上げながら、また少女たちが脚を擦り合わせ、膝を何度も組み替えて、身体の前後から手を股間に押し当てる。
 着々と効果を発揮し続ける利尿剤。そして長い時間。健康な少女達の循環器と利尿作用の相乗効果でつくられた恥ずかしい液体は、すでにぱんぱんに膨らんだ膀胱の中に、音を立てんばかりに注ぎ込まれてゆく。1分におよそ10回の尿管蠕動と共に、少女達の下腹部の液体は増量されてゆくのだ。水門を閉じるための括約筋は酷使され、いまにも焼き切れんばかり。
 水圧に負けてぷくりと膨らみそうになる排泄孔を、気力だけで抑え込んで。ヒビの入ってゆくダムの底を、指でふさぎ続ける。
 だが。
 ここまで追い込まれ、それでもなお少女達は、そのドアに近づこうとしなかった。
 さっきから何度となく、気分を紛らわせるようにわずかな会話を挟み、俯いて苦悶の呻きを上げながらも、少女達は頑なにドアを開けようとはしない。
 石のように硬く強張った下腹部の内側、尿意は限界まで膨らみ、身体の中に溜まった水は、たぷたぷと揺れるごくたびに猛烈な大波になって出口のすぐ上まで押し寄せてくる。それを懸命に押しとどめて、少女達は耐え続けている。
 それはひとえに、ある理屈のためだ。
 理屈とも言えない、ただの屁理屈。無茶苦茶な暴論。それが少女たちを支えている。

 そう、これはいわば不確定の、シュレディンガーのトイレ。
 
 部屋の真ん中にあるあのドアを開けてしまえば、そこにトイレがあるかどうかを知ることができる。そのこと自体はあまりにも簡単で、ほんの数メートル近づいて、ノブを握ってみればいい。確かに我慢に切羽詰ってはいるけれど、もう一歩も動けないほどギリギリの少女は、辛うじてまだ出ていない。
 問題はその先なのだ。
 ……もしそこにトイレがあるのなら、それでいい。
 けれど、けれど、もし。
 そこがトイレでもなんでもなく、オシッコすら許されないただの部屋だったとしたら。
 少女達は縋っている希望すらもすべて失って、トイレのない部屋の中であと8時間にも及ぶ我慢を過ごさなければならないのだ。そんなことは絶対に、絶対に不可能だと、部屋の中の誰もがはっきりと悟っている。
 ほんのわずかな観察で、あのドアの向こうにあるものが希望か絶望かが、決まってしまうのだ。

 ドアを開けなければ、50%。
 ドアを開ければ、0%か100%。

 だと、するなら。
 すべてから救われる可能性と共に、2分の1で、希望が絶無のトイレのない世界が待つかもしれない未来よりも。
 確かめることも、実際に見ることも、使うことすらも許されなかったとしても。
 そこに50%の確率で、トイレがあるかもしれない――そんな不確定な現状の維持こそが、今の少女達の心の支えになりうるのだった。

 ドアを開ければその不確定のトイレも、すべて消し飛び、0か1かの、明確な結果だけが残されてしまう。ならばドアを開けて確かめるのは、本当の本当に限界になって、いざとなってからでも遅くはない。
 どうせ確かめてしまえば、それですべてが決まるのだ。……むしろ、それまでは少しでも長くその希望を繋ぐことこそが、少女達の心の支えになる。少しでも長く、我慢を続けられる。そういう理屈なのだ。
「ぁ……っ、はあぅ……っ」
「トイレ、……行きたいよぉ……っ」
 存在の有無も不確定な、未確定のトイレ。
 けれど、有るも無いも決まっていないそのトイレを、わずかな心の支えにして。少女達は懸命に時間が過ぎ去るのを待つ。
 半数ずつ二つの部屋に隔てられた、24人の彼女達にとって最もいい結果と言うのは、お互いにこのドアを開けることなく、最後の最後まで、我慢を貫き通した時なのだ。理不尽な理屈であっても、それに縋ることを少女達は選んでいた。

 ……片方の部屋で、少女達の誰かがドアを開けたとしよう。
 そこがトイレだった場合、その部屋の少女達はトイレに行くことができる。しかし、もう一つの部屋のにいる、残る半数の少女達はすべての希望を奪われ、残り時間を耐え抜くことは不可能に近い。つまり、残る半数、12人の少女達はオモラシを強いられる結果となる。
 そしてもし、先にドアをあけ中を確かめた少女達の部屋に、トイレがなければ。
 それならば、途方もなく低い確率だが、我慢をしとおすことができるかもしれないのだ。
 そのことが、皆分かっていないわけではない。
 だが――理屈で割り切れても、熱く打ち震える下半身は、そんなものを吹き飛ばさんばかりの猛烈な熱量を伴って、無力な少女達に原始的な生命の摂理を思い知らせようとしている。熱く渦巻くはしたない奔流の誘惑が、少女達を執拗に追いつめてゆく。

 そして――

「もうヤダぁ……っ!! 最後までなんて無理、絶対無理だよぉ……!!」
「っ、ダメ!! 開けちゃダメっ!!」
「離して!! こんなっことしてたって、みんな間に合わなくなっちゃうに決まってるよ!! そ、それでもいいのッ!?」
 癇癪を起した少女の一人が、辛抱できずにドアに突撃しようとするのを、とっさに周囲の少女が押しとどめる。しかし、限界を迎えた少女はなおも無理やり、ドアへと向かおうとしていた。
 大事なところを押さえておくのに一生懸命な手を離していなければならず、周りの少女達もたちまち足元の落ち着きを失ってゆく。
 揉み合っているうちにお腹を押されたり、せっかく波と波の合間の『安定期』となって落ち着いていた尿意が暴れ始めるのに耐えらえず、少女たちは次々股間押さえ込んでしゃがみ込んでしまう。
「だめ、だめだよ……そんなこと、しても……っ」
「でも!! もし私達がこんなことしてるうちに、向こうの子たちが先にドア開けちゃったら……!!」
 悲痛な叫びに、部屋の中が波を打ったように静まりかえってゆく。
 それはここにいる全員が、これ以上ないくらいにはっきりと理解していながらも、敢えてずっと目をそらし続けていることでもあった。
「みんなも、わかってるよよね!? このままだと……っ!! 向こうの子たちがドアを開けちゃったら、私達、絶対にここ、使えないんだよ!? ここに、……本当にトイレがあっても!!」
 少女達が心の支えにしている50%の、不確定の幻想トイレ。
 だが。それは同時にもう一つのことも意味している。この閉ざされたドアの向こうに、トイレがあるかどうかを確定させることができるのは、ふたつの部屋のうち、先にドアを開けた少女達だけなのだ。
 もしこの部屋に、本当にトイレがあったとしても。
 こうして馬鹿正直に我慢を続けている間に、もう一つの部屋でドアが開けられてしまえば。その瞬間にこの部屋のトイレは使用不能となってしまう。トイレの有無は確定し、この部屋の少女達は自動的にすべての希望を失ってしまうだろう。
「みんな、もう、限界でしょ!? ホントにいいの!? 我慢できるの!?」
「やめ、て……よっ、そんな事言ったって……!!」
 今こうしている間にも、向こうの部屋ではドアが開けられようとしているかもしれない。
 50%の不確定トイレを、100%の本物のオシッコできる場所に確定できる権利は、迷いを捨てて先にドアを開けることを決心した少女達にだけ与えられる。
「ねえ、っ、!! ……まだ、8時間もあるんだよ……!?」
 絞り出される声はかすれ、悲鳴のようになっていた。
 耐えがたい誘惑と、疑念と、困惑と。お互いの状況を知ることができない二つの密室に隔てられて、少女たちを包む熱の渦は過熱してゆく。


 残る時間は、点滅するデジタル数字と共に、
 7時間50分を切っていた……。



 (初出:ある趣味@JBBS 永久我慢の円舞曲206-222 2010/07/18)
[ 2010/10/29 20:31 ] 永久我慢 | トラックバック(-) | コメント(-)

世界を救う勇者一行 

「……ねえ、勇者様まだ戻ってこないの?」
「うん……まだみたい」
 ここはアマルカンドの西、黄金のカギの洞窟の地下3階。
 魔王を倒し世界を救うべく旅を続ける勇者一行――その一員である戦士、僧侶、魔法使いの3人は、顔を寄せ合って勇者の様子をじっと窺っていた。
 パーティの先頭を歩いていた勇者が、洞窟の攻略中にいきなり動かなくなってしまってはや1時間。
 勇者の頭上には、神の天啓(コマンド)を受け取るためのメニューウィンドウが開きっぱなしになり、いまも『しらべる』の真横で白いカーソルが点滅を繰り返している。
「……ね、ねえ、戦士ちゃん……ぁの、ボク…もう……っ」
 3人の中で一番背の低い、年下の魔法使いがそわそわと杖を握りしめ、釣り目気味の目元を不安げに揺らして唇を震わせる。いつもは元気に口元から覗くチャームポイントの八重歯も、いまは引き結ばれた唇に隠れていた。
「そんな顔しないでよっ、あ、あたしだってさあ……」
 魔法使いにすがりつくような視線を送られ、戦士も落ち付きなく、鋲を打った革靴の爪先を地面にこすりつけてしまう。
 スタイルの良い身体を包む、露出の多い鎧の下、もぞもぞとスパッツの太腿を擦り合わせて、戦士もまた小刻みに足踏みを繰り返していた。
「…………」
「………………」
 魔法使いと視線を合わせ、戦士はしばしの逡巡ののち、あーっ、と声を荒げて頭を掻き毟った。
「なあ、あたしたち、やっぱちょっと――」
「だめですよっ! もし勇者様が戻ってきたらどうするんですか!?」
 機嫌を伺うような申し出をバッサリと切り捨てて、僧侶は眉を逆立て、二人の前に立ちふさがった。
 そんな彼女も、いまや法衣の前を大胆にぎゅっと握り締めていた。穏やかな笑顔で人々に神の慈愛を説く唇も、小さく噛みしめられている。しかし、彼女は神への祈りを小さくつぶやいて気を取り直し、
「ここに4人揃ってなかったらどうなるか……判ってるでしょう…?!」
「で、でもさ……」
「そうだよ、お姉ちゃん……ボクも、もう、げんかい……っ」
「やめてください……そんな目で見られても困りますっ。わ、私だって……」
 そうやって二人からまっすぐに、強い欲求を込められて言われてしまえば、僧侶だってたじろがざるを得なかった。
「…………」
「…………」
「…………」
 3人は再び、視線を揃えて勇者の背中を見つめた。
 勇者は相変わらず、洞窟の通路の真ん中に直立不動で突っ立ったまま、まるで動く気配がない。いつも通りの意思を感じさせない表情も、『ガンガンいこうぜ』『めいれいさせろ』と作戦を下す時以外には『はい』『いいえ』しか喋らない寡黙な口元も、中途半端に開いたまま、まるで時間が停止したみたいに止まっている。
 途絶えることなく勇者へと下され続ける神様の天啓(コマンド)は一体どうなっているのだろうか。どこかへ行ってしまった勇者の帰りを待ち、これまで3人はじっと辛抱強く待機を続けてきた。
 しかし、そんな彼女たちの我慢もいよいよ限界を迎えようとしていたのだ。
 何もすることのない時間はただでさえ長く感じられる上に、彼女達は今、それぞれに切迫した理由を抱えている。フィールドマップでなら何十日にも匹敵する1時間は、辛抱強い少女達の我慢を失わせるのには十分すぎるほどだった。
「もうっ……勇者様ってば、人の気も知らないで……っ」
「そうよっ、レアアイテム出るまで粘るのもいいけど、もう……本当にヤバいんだから…、早く戻ってきなさいよぉ……」
 珍しく語気を荒げる僧侶に、戦士も思わず文句を重ねる。
 もし予定通り探索を続けていれば、今頃はそろそろHPもMPも心許なくなって、洞窟を脱出、町に向かっていたはずなのだ。
 それなら、どれほど良かったことか。
「……っ……」
 すっかり予定を狂わされてしまった3人は、ひんやりとした空気の満ちる洞窟の壁際に寄り添うようにして集まり、仲良く揃って前かがみ。
 太腿をこすり合わせ、足踏みを繰り返し、しきりに腰を揺すっている。
「っ……」
「んぅ……ぁ……」
「っは……くぅ……」
 もぞもぞと、洞窟の岩壁に手を当て、揃って下腹部をかばうような前傾姿勢は、はっきりと彼女達の切実な欲求を知らせていた。

「「「…おトイレ……っ!!」」」」

 暗い洞窟の、休む場もない地下三階で。
 3人の身体の内に膨らむ尿意はますます高まるばかりだった。




「い、いつまでかかるのかな、勇者様……? ……ボク、もうっ、が、我慢っ、できないよぉ……!! は、はやく、おトイレ……ぇっ!!」
 魔法使いが、舌足らずな声で熱っぽい喘ぎをこぼす。一番年下である彼女はまだ、ぎりぎり、人前でそれを口にすることをためらわない年代だった。もっとも、その顔は羞恥に赤く染まっている。
 いくら言うことができても、はっきりとトイレの欲求を露わにすることが、乙女として苦痛でないわけがない。
 戦士も僧侶も、はっきり口に出してはいないが思うことはまったく同じだった。3人とも、世界を救う勇者の一行とはいえ、その前に年頃の女の子なのだ。いくらオシッコがしたくても、こんな地下の底、天然洞窟のダンジョンの中ではどうにもならない。
「ね、ねえ、やっぱりちょっと行って来ちゃわない? …ね? ほら、勇者の奴がもどって来るまで、たぶんまだかかるわよ。それまでにトイレ済ませちゃって、また戻ってくればわからないからさあ――」
「だ、だから!! それで間に合わなかったらどうするんですか? いきなり勇者様だけになってるのに気付かれたら、いったいどうなるか判りませんよ!?
 それに、今は4人いるから魔物も襲ってきませんけど、その、……お手洗いの時に、ひとりだけになったら……」
 神様からの展開を受け取るためのメニューウィンドウが開いている間は、魔物が不意を打って勇者一行を襲ってくることはないという協定がある。
 しかし、画面の外でコントローラーを持つ神様が動きを見せず、勇者がパーティに不在状態となっているいま、彼女達がモニタから見える範囲を外れてしまったとき、果たして本当にそれが守られるのか、戦士たちには知る由もない。
 いつもは戦闘画面に収まる適当な数に分かれて、順番に襲ってくることになっている魔物たちが、もし波打って襲いかかってきたら――その光景を想像し、戦士は思わず息をのむ。
 今にも漏らしてしまいそうなオシッコを我慢しながらのよちよち歩きでは、満足に武器も振るえないし、震える唇では呪文だって唱えられない。そんな状態で魔物の群れを切り開いて進んでゆくなんて、絶対に不可能だった。
「でも、勇者様が戻ってきたらさ、きっと……まだまだずっとこの洞窟の中、調べようって……言うとおもうよ?」
「それは……っ」
 魔法使いが泣きそうになりながらそう言えば、僧侶も口籠ってしまうしかなかった。彼女も、自分たちの我慢が、そう続かないことは悟っているのだ。
 3人とも女の子のステータスウインドウはまっ黄色に異常を示し、乙女のプライドの残りHPはこうしている間にもどんどんと減り続けている。前押さえや膝を擦り合わせるだけでは時間稼ぎにもならないだろう。
 いまや、本物のステータスにまで状態異常となって表示され、影響を及ぼしかねない有様なのだ。
「……も、もぉやだよぉ……ちゃ、ちゃんとしたおトイレ……行きたいよぉ……っ…んぁん……っ」
 魔法使いはとうとう杖を跨ぐようにして、脚の付け根に押し付けて、ぐりぐりと腰を動かし始めてしまう。
 まるで登り棒に捕まるように、杖をスカートの上からぐいぐいとあそこに押し当てるはしたない格好に尿意を呼び覚まされ、思わず戦士と僧侶も腰の揺れを大きくしてしまう。
 まだあどけなさを残す魔法使いだからこそ許さるしぐさであったが、戦士も僧侶も、同じようにぎゅうぎゅうと脚の付け根を押さえつけたいのは変わらなかった。
「んぁ……っ」
 この世を支配せんとたくらむ魔王の四天王をうち2人までを倒し、いまや世界有数の強さまでレベルアップした勇者一行だが、ちからやすばやさがいくら高くなっても、乙女のオシッコ我慢のパラメータはLv1のままなのだ。
 ……いや、冒険に出てからいくぶん、レベルが上がったことは否定できない。しかし、いくら我慢強くなったところで何日も何日も、宿屋にも泊まらずに洞窟に潜り、フィールドを歩き、トイレタイムすらなしに冒険を続けるなんてことは、非常識でしかない。
「で、でも……じゃあ、まさか、ここで……?」
「やめてよ、そんな、無理に決まってるじゃないっ……」
 たとえ、ともに旅をする仲間であっても。みんなの見ている前で、モニタに映っている最中に、トイレを済ませるなんてできるわけがない。
 そもそもモニタの外では、コントローラーを通じて勇者に繋がっている神様以外にも、誰が彼女達を見張っていたっておかしくないのだ。
 しゃがみ込んだ足元から、洞窟の床一面に大きく広がるほかほか湯気の水たまり――そんなものを見られたら。恐ろしい想像に、3人は身を震わせた。
 魔法使いがたまらずに悲鳴を上げる。
「そんなの、恥ずかしくて死んじゃうよぉっ!!」
 そして残酷なことに、たとえそれを恥じて命を投げ出したとしても、勇者一行であるかぎり、教会ですぐに蘇生させられてしまうのだった。
「そ、そもそもさ。勇者ってば、自分だけ男のくせに女の子3人のパーティなんか組ませてるのがおかしいのよね……」
「下心、丸見えですよね……申し訳ないですけど」
「……うん。勇者様、いつもボクのこと、えっちな目で見てるんだよ……この前なんか、一緒にお風呂入ろうって……ボク、そんなに子供じゃないのに……」
 涙ぐむ魔法使いの気持は手に取るようによく分かる。戦士も僧侶も、悲痛な面持ちで溜息をついた。着替えやお風呂を覗かれたことは一度や二度ではない。
 年齢問わず、女の子とみれば欲望丸出しのスケベ勇者には、3人ともほとほと手を焼いていたのだった。
「それでいて、妙なところでヘタレで紳士ぶってるんだから……っ」
 本当にタチの悪い犯罪者なら、勇者失格だと叩きのめしてしまう事も、王様に言いつけて勇者をクビにしてもらうことも出来るのだが、半端に勇者としての使命や正義感も持ち合わせているのが、なおさら厄介なのだった。
 そして今、世界の危機よりも切実な事態が、彼女達の下腹部に押し寄せてくる
「ぁっ……ぁあんっ……」
 いつも物腰柔らかでおしとやかな僧侶が、頬を染め、甘く声を掠れさせて法衣の前を握りしめる。
「んぅ……っ」
 同性・異性を問わず頼りにされる、力強く勇敢な戦士も、いまはすっかり女の子の顔で何度も足を交差させる。
「だ、だめぇ……」
 幼くして天賦の才を持ち、いくつもの呪文を巧みに操る魔法使いのくちびるは、青ざめて小さく震えるばかり。
 必死に身をよじり、腰をクネらせながら耐え続ける3人は、棒立ちになったままの勇者の背中をじっと、穴があくほどに睨んでいた。
「それに、そもそも今日だってさ、勇者のやつが悪いんじゃないっ。あいついっつも宿代けちって回復の泉にしか行かないんだから……だから、こんな、我慢する羽目になっちゃうのよ…!!」
「う……うぅ……っ」
 彼女達はもうここ何日も、まともな宿屋に近づいてすらいなかった。
 セーブのためにお城に行くか、武器やと道具屋、預り所に立ち寄るくらいだ。宿屋の前はゴールドの節約のためと通り過ぎるばかり。
 だから、戦士も僧侶も魔法使いも、ちゃんとした宿屋のお手洗いを使うことすら、もう一ヶ月近くも許されていなかった。
 回復の泉では確かにHP、MPは全快になるものの、まさか多くの旅人が利用するそこで、女の子の恥ずかしい水が溜まった下腹部を空っぽにすることができるはずもない。
「っ、ねえ、もし、もし、だよ? もしこの前みたいに、洞窟の中で、セーブされちゃったら…ボクたち、また、ここで……っ」
「や、やめてよ、そんなこと言うの……!!」
 お城に戻ってセーブされれば、ゲームが再開されるまでの間にこっそり酒場に帰って一息つくことだってできる。お風呂に入ったり、遊んだり、トイレに行くのだって簡単だ。
 しかし、もし万が一、洞窟の中でセーブされてしまっては、いよいよ彼女達は覚悟を決めるしかない。
 洞窟の一角、奥まった行き止まりにしゃがみ込んで。
 我慢に我慢を重ねた結果、はちきれんばかりにおなかをたぷたぷと満たした女の子の水流が、噴水のように恥ずかしい飛沫をあげて足元に飛び散る恥辱に耐えなければならないのだ。
 もし、力及ばずそんな結果になってしまったら……
 魔物すら寄せ付けぬであろう乙女の“聖水”が、たっぷり我慢に我慢し続けた3人分、洞窟の地面いっぱいにびちゃびちゃと捲き散らされてゆく光景を思い描き、3人はそろって顔を真っ赤にしてしまう。
「もう、嫌です、あんなの……っ」
 一番気丈なはずの僧侶が、とうとう悲鳴を上げて顔を覆う。
 彼女達がそうした緊急避難を強いられたことは、これまでにも何度かあった。神に仕える彼女は、自分の身体から迸らせた恥ずかしい水流で、往来を汚してしまうことに何よりも傷ついていたのだ。
「ボクだって、やだよぅ……っ」
「……っ、ホントに、はやくしてよね……ばか勇者っ……」
 しかし、いくら急いたところで、彼女達に出来るのは、きつく腰をよじり、足の付け根を握り締めて、ただ勇者の帰りを待つことだけだった。
 何を言おうと、こうしてゲームが動いている最中は、イベントでもない以上勝手にどこかに行くことは許されない。
「んぁ……んっ……」
「うぅ…っ、はぁあ……っ」
「ぁ、あっ、あ……ぁっ……」
 だから3人はただ、いつ勇者が戻ってくるか分からないまま、必死に心を奮い立たせて、時間が過ぎてゆくのを待たなくてはいけなかった。

 いつまでも、いつまでも。



 ▼

 ゲームを続けますか?

   はい
 ニア いいえ



 (初出:ある趣味@JBBS 永久我慢の円舞曲2 2010/07/13 190-202 改訂 2010/10/27)

[ 2010/10/29 20:26 ] 我慢 | トラックバック(-) | コメント(-)

お姉さまと一緒のお話・2 


「……ごきげんよう、彰子お姉さま。結衣さんも」
「ええ、ごきげんよう」
「ご、ごきげんよう、っ、姫子さんっ……」
 笑顔と共に姫子たちが見送られ、ぎい、と閉じられたドアの中。
 ようやく姉と二人きりとなった結衣は、ついにはしたなくも耐え切れず、ぎゅううっとスカートの前を握り締めてしまう。濃緑の布地に折られたプリーツが、大きな皺に激しく乱され、脚の間に巻き込まれた布地が惨めなほどにねじられる。
 まるで、脚の付け根に雑巾をあてがって、思い切り絞っているかのようなありさまだ。とても礼園の生徒――それも、下級生からの憧れの的である生徒会役員の姿とは思えない。
「あ、あっ、あ、あっ」
 結衣は口を小さく「ぁ」の形に開き、空気を求めるようにぱくぱくと震わせる。どくん、どくんと身体の奥で波打つ猛烈な潮の満ち干に小柄な身体をよじり、湿った唇は色鮮やかな桜色に、何度も引き結ばれては空気を求めて開くのを繰り返した。
「っ、っ……」
 ひり付くようにうねる衝撃に、結衣の身体がちいさくくねる。
 それは、まさに今、結衣のもうひとつの秘めやかな場所――乙女の大切な場所で繰り広げられている光景に寸分違わぬ動作だった。
 熱くうねる濁流のようにダムの出口に押し寄せる水圧が、結衣の仕草からこの一年でなんとか身に付けた『お嬢様』の成分を奪い去ってゆく。
「ふふ、結衣? もう我慢できないのね……そんなに恥ずかしい格好をしてしまって」
「あ、ああっ、ごめんなさいお姉さまっ、ごめんなさいっ……!! でも、も、もうダメです、もうっ……む、無理なんですっ!!」
 耐え続けていた限界を叫ぶ声が、立て続けに結衣の口をついた。
 身を揺すりながら、最愛の姉の前ではしたない姿をさらしてしまうことに死にたいほどの羞恥を覚えながらも、結衣はそうやって限界を訴えるしかなかった。
 もはや薄紙一枚ほどのぎりぎりでなんとか踏みとどまっている我慢は、とっくにロスタイムに突入しており、いつ危機に瀕する「乙女」を打ち破ってもおかしくない。
「お、お願いします……お姉さまっ……お、……ぃ のっ」
 くねくねと身を振り、左右に括った髪の房を揺らして、結衣は『その言葉』を口にしてしまう。礼園の生徒であれば、そのような素振りを見せることすらはしたないと眉をひそめられるような――その言葉を。
「お、お手洗いの……許可を、くださいっ……お姉さまっ、あ、っ、ぉ、お願いしますぅ……っ、お、お手洗いにっ、いかせてくださいぃっ……!!」
 目前に迫る崩壊の瞬間を前に、わずかな身じろぎすらできない無力な少女はただ、そうやって惨めにも破裂しそうな排泄器官を押さえ込み、ただただ必死に懇願するしかなかった。
 それ自体が意思を持って疼くほどに膨らみきった下腹部の水風船を抱え込み、もはや結衣には一刻の猶予も残されていない。
「ふふ、こんなにお腹を張りつめさせて……とっても我慢してるのね」
「あぁ、だめ、お姉さま……っ」
 すい、と身を寄せた章子は、制服の上から結衣の下腹部を撫でる。
 ぱんぱんに膨らんで、ぱちんと弾けてしまいそうなその部分は、もう風が撫でるただでさえ辛いのに、そこをそおっと絶妙な力加減の指先で刺激され、結衣は思わず頤を上げ、小さな悲鳴を放ってしまう。
「ふぁ……んんっ……んぅ……」
 結衣の頬にさっと朱がさす。
 まだ、姫子たちが外に出て行って僅かな時間しか経っていない。彼女達は部屋の前で何かを話しているかもしれない――それなのに、こんな恥ずかしい声を上げてしまうなんて――!!
「ぁ、あっあっ」
 しかし、スカートの上から脚の付け根の『おんなのこ』を押さえ込む手のひらは、わずかでも力を緩めればそのまま崩壊に繋がりかねない。ゆえに、結衣は腰を揺らし身体をよじる以外に、彰子の手から逃れるすべをもたなかった。
 それをすべて知った上で、彰子は結衣の尿意を弄んでいるのだ。結衣は必死に唇を噛んで、それ以上の悲鳴が口からこぼれないようにする。吐息がますます荒くなり、少女の耳までが真っ赤に染まる。
「素敵よ。とっても可愛いわ……結衣」
「ぉ、お姉さまぁ……っ」
 耳元で囁かれる甘い言葉に、結衣の胸が高鳴った。
 憧れのお姉さまに可愛い、と告げられ、心はまるで天にも昇るほどの歓喜を覚える。もしこんな切羽詰まった時でもなければ、そのまま嬉しさで気絶しかねないほどのものだった。けれどそんな幻想に浸ることも許さないほどに、切羽詰まった女の子の衝動が結衣の恥ずかしい場所に集中してゆく。
「ぁ、あっ、お姉さま、もう、もう本当に……お願いします……、お手洗いに、いかせてください……っ。こ、このままじゃ、ここで……っ」
「ここで? ……ふふ、“ここで”どうしたのかしら?」
「っ……」
 殊更に。煽るように囁いてみせる彰子の言葉に、きゅう、と結衣の身体が悲鳴を上げる。鼓動は激しく高鳴り、胃の奥がぎゅっと縮んで、それらの動きすら下腹部へのいけない衝撃となって響く。『おんなのこ』が身悶えし、きつく押し当てた手のひらの内側でぷくりと口を開けてしまいそうになる。
 けれど、彰子の言葉は絶対だ。結衣は答えなければならなかった。
 うつむいたまま、蚊の鳴くような声で――結衣は、訴えを絞り出す。
「こ、ここで……ぉ……オ、モラシ、し、してしまいます……っ」
 口に出した瞬間、かぁと顔じゅうに火がついたような羞恥が沸き起こった。
 このまま、はしたなくも耐えきれず限界を迎えて、滝のように恥ずかしい水を迸らせ、床に盛大な水たまりを築き上げてしまうその瞬間を幻視したかのように、結衣の腰がじわぁと熱くなる。
「お、おねぇ、さま……っ」
「うふふ……そんなはしたない事を言ってしまうなんて……いけない子ね、結衣」
 ぱくぱくと、酸素を求めて小さく開閉する結衣の口を、そっと彰子の指先が押さえこんだ。全てが彰子の思うがままだというのは、とっくに結衣だって理解している。けれどその上でなお、彰子はこうして、結衣にトイレを我慢させては、恥ずかしく身悶えし、懸命に腰を震わせ脚をすり合わせるその姿を見て楽しむのだ。
 一番最初の大失敗から、半年。結衣はこれまでにも何度も、こうして大好きな彰子お姉さまに焦らされ、弄ばれ――気の遠くなるような我慢を強いられてきた。
 彰子は結衣の限界を実によく見極めており、ぎりぎりの、本当にぎりぎりの限界のところで結衣を解放するのだ。がくがくと震える脚で、結衣が懸命にトイレへと急ぐとき、彰子は実に素敵な笑顔を浮かべ、満足そうに微笑んでいる。
 最後の最後にトイレへの許可を与えられたというのに、一歩も動けず、床をスカートを、下着をびしゃびしゃに濡らしてしまった経験も一度や二度ではない。
 今日も結衣は、彰子によってお手製の紅茶をたっぷりと採らされて、4時間近くもトイレに立つことを禁じられていた。
 この半年、休み時間の度にトイレに立っていたころに比べると、結衣の排泄器官ははるかに強靭なものとなっていたが――それでも、成長期の少女の身体は容易く限界を迎えてしまうのだ。
「お姉さまっ、……も、もう、本当に……駄目です…っ。お願いしますっ……、お、お手洗いにっ……お手洗いに行かせてくださいっ……!!」
 彰子とて、そう何度も何度も部屋を汚されることを好む筈もない。そう信じて懸命に許可を求める結衣だが――そうして必死に尿意に抗う表情や仕草こそが、彰子の嗜虐心をますますそそる姿なのだとは、まだ思い至っていなかった。
 そして今日、彰子はまた、とんでもないことを言い出したのだった。
「ふふ、もう我慢できないのかしら?」
「っ……」
 唇を噛み、懸命にこくこくと首を振る結衣。それを見て彰子はくすりと頬笑み――ふと、結衣の背中の方に視線を向けて何かを思いついたようだった。
「そうね、あまり我慢させると、身体に悪いし」
「じゃ、じゃあっ……」
 ぱあっ、と顔を輝かせる結衣。しかし彰子は身体を浮かせるとサイドボードへ手を伸ばし、結衣の目の前に、『それ』を差し出してみせる。
「じゃあ、結衣。これに出してしまいなさい?」
「え……っ」
 その言葉の意味が分からず、結衣は呆けたように声を上げていた。
 目の前に突き出されたのは、さっきまで薔薇の花束を生けていたガラス製の花瓶だった。手の込んだ細工模様に彩られたそれは、触れるのも躊躇われるほどに曇り一つなく、上品で希少な気配を漂わせている。
 姫子たちが花束を受け取っていったため、今は空っぽとなった花瓶の取っ手を持ち、結衣の身体を抱きよせるようにして、彰子はもう一度、結衣に言いつける。
「我慢できないのでしょう? 結衣。いいのよ、ここに出してしまいなさい?」
「っ…………」
 『これ』をトイレ代わりにしろと――彰子はそう言っているのだ。結衣の耳が拒否した言葉を、無慈悲にも再度言い聞かせるように、彰子は結衣の耳元に唇を寄せる。
「ふふ。だって、結衣、もう立てないのでしょう? 途中で間に合わなくなってしまうわよ?」
「そ、そんな……嫌です、お、お手洗いに……っ」
「これが結衣のお手洗いよ。結衣がどんなに我慢しているのか、調べてあげるわ」
「お、おねえ、さまぁっ……」
 ほとんど悲鳴のように叫んで、結衣はいやいやと首を振った。どんなに慕う姉の前だとしても、見せたくない姿というものはある。たとえ彰子が心から望むことだとしても、それは誰にも秘密にしなければならないはずのものだった。
 だが――そうやって懸命に抗い、羞恥を訴える結衣の姿を、なによりも彰子は楽しむのだ。
 抵抗できない身体を後ろから抱かれるような格好にされ、結衣の背中から手を伸ばした彰子は、結衣が懸命に押さえつけている下腹部を、手のひらの上からそっと撫でさする。
「ふふ……結衣、だめよ? こんなにここをカタくしてしまうなんて……」
「ぁあっ、だめ、だめぇ……」
 憧れの“お姉様”の手によって、張り詰めた下腹部がやわやわと揉みこまれてゆく。撫でられればわかるほど、恥ずかしい液体を溜めこんで膨らんだ下腹部は、敏感に反応してしまうのだ。
「お願いしますっ……お姉さま、っ、ちゃ、ちゃんとした……お手洗いに…ぃっ」
「あらあら……一人じゃ出来ないのかしら? 仕方ないわね、手伝ってあげるわ」
「ふぁああ!?」
 きゅうっ、と一際強く下腹部を圧迫され、思わず結衣が悲鳴を上げた瞬間。するりとスカートが腰上まで捲りあげられる。さらには大きく足を広げられ、両手も強引に押さえつけられ、結衣は下着一枚の下半身を、はしたなくも無防備な大股開きの格好をさらしてしまっていた。
「い、いやぁぁあっ、嫌です、お姉さまっ、だめ、だめ……っ」
「ふふ……どうして? あんなに我慢できないと言っていたのに」
 くい、とガラス容器の縁がが結衣の下着の股布部分へと押し付けられる。布地一枚だけを隔てたすぐその下、出口のすぐそこまでをぱんぱんに満たした恥ずかしい液体が、結衣の『おんなのこ』を刺激する。
「くぅぁ……っ……」
 唇を噛み、か細い括約筋だけにありったけの力を込めて懸命に崩壊に抵抗する結衣。しかし汗に湿る白い下着の奥で、大切な『おんなのこ』が悲鳴を上げ、出口がぷくりと膨らみ始めてしまう。
「ぁ、あっ、あっだめっ……出ちゃうぅっ!!」
 漏れちゃう――あまりにもはしたない叫び。結衣には見えていないが、悶え喘ぐ少女の姿に、彰子の瞳には一層妖しい輝きが濡れ煌めいていた。
 細い妹の身体の中に、限界まで溜め込まれた羞恥の熱水――それが勢い良く溢れガラス容器の底を激しく叩く瞬間を求め、彰子はさらに結衣を追いつめてゆく。
「うふふ。……結衣? もう我慢できないのなら、ちゃんと言って御覧なさい?」
「ぁ……ぁっ、あっ……」
 もはや応答できる様子のない結衣は、それでも必死に首を横に振って抵抗する。学園の生徒として――いや、もっと根本的な乙女のプライドとして、姉の部屋の、それもベッドの上で、花瓶をトイレの代わりにして排泄するなど、赦せるような行為ではないのだろう。
「それとも、このままお部屋と服を汚してしまう方がいいのかしら?」
「っ、ち、ちが……ぁっ……」
 声を絞り出すように、結衣は彰子の手のひらに爪を立てる。きつく食い込むその痛みは、しかしむしろ彰子の興奮を煽るだけだった。かわいらしい、飾り気のない白の下着が覆う、ふっくらとした下腹部。その下に繋がる、脚の付け根の最も敏感な場所。ぷくりと膨らんではきゅっと収縮を繰り返す出口へ、再度花瓶の縁を押し当てる。
「ふあああああ!!」
 ちりちりと身を焦がすような尿意は、その刺激で一気に燃え盛る炎へと変わる。
 ガラス容器の縁が、下着の上から大事なところに押し当てたまま、上下に動かされていた。恥ずかしい出口の場所を探るように、硬く冷たいガラスの縁に敏感な『おんなのこ』を刺激され、結衣は悲鳴を上げた。
 今にも弾けてしまいそうにぱんぱんの乙女の水風船を刺激され、はしたなく腰を揺らし、ひくひくと下着をよじらせてしまう。
 排出口を堰き止める最後の抵抗すら、もはや無意味だった。股布部分の中心にぽつりと小さな染みが浮かび、それがじわじわと大きく広がってゆく。
「やっ、あぁ、ぁっだめだめぇえぁっ」
 がくがくと肩を震わせ、結衣は腰をよじり身を波打たせて押し寄せる尿意の大波を堪えようとする。それでもなお、彰子は結衣が脚の付け根を押さえこむことを許さなかった。
「うふふふ。……もう駄目みたいね?」
「ぁ、あっあ……ぁっ!!」
 背中から抱きかかえられ、大きく脚を広げられて。可愛らしい下着を丸見えにしたあられもない姿。大股開きの脚の付け根には、彰子の手にしたガラスの容器。
「ほら、さっきよりもここがもっと硬くなって……」
 はち切れんばかりに中身を詰め込んでぷっくりと膨らんだ結衣の下腹部を撫でさすりながら、彰子はさらに笑みを深くする。緊張に強張り、柔軟さを失った下腹部は、もはやこれ以上、少女の体内に水分を蓄えておくことを放棄していた。
「ね? ……結衣がおしっこするところ、見せて頂戴?」
「ちが、っ、違うんですお姉さま、そのっ……そうじゃ、なくてっ……あぅっ!?」
「……ああ。下着を汚してしまうのが嫌なのかしら? ふふ、だったらいいわ、……ほら」
「あぁあっ!?」
 彰子は結衣の下腹部を撫でていた手を離し、結衣の下着の股布部分に指をひっかけると、真横にすべらせるように引っ張った。
 結衣の『おんなのこ』が、一気に露わになる。
 誰にも見せたことのない場所を、一気に明かりの下に晒されて、結衣はパニックになった。
「ぃ、嫌っ、お姉さま、は……恥ずかしいですっ……!!」
「うふふ。……素敵よ結衣。とっても可愛らしくて……赤ちゃんみたい。そう言えば、こんな明るいところで見せて貰うのははじめてかしら……?」
 彰子は残る指先を伸ばして、緊張に強張る乙女の部分をつんつんとつついた。お姉さまに『おんなのこ』を悪戯されて、結衣はさらに声をあげてしまう。
「はぁあああんんっ!?」
「あらあら……結衣は可愛らしいけど、ここもまだ子供なのね……?」
「あ、あっ、あああぁ……っ」
 憧れの“お姉さま”にそこを見られて、優衣はもう言葉もない。
 これまでにも何度か、お姉さまに可愛がっていただいた経験はあったが――こんな風に明るい中で、はっきりと見られてしまったわけではなかった。
「うふふ……こんなにひくひくさせて……いやらしいわ、結衣」
 真横にずらされた股布の奥。もはや何も遮るもののなくなった少女の秘裂から、しゅるしゅると雫が滴り始めていた。小指と薬指でずらした下着を保持したまま、彰子はまだ硬いその割れ目を押し開くようにして、排泄のための部位をくつろげる。
 水流の噴射を遮らないように広げられた『おんなのこ』。そのすぐ真下にはガラス容器が傾けて配置され、万全の準備を整えていた。
 脚の付け根に押し当てられたガラス容器の感触につられて、股間の先端からじゅじゅうっと噴き出した熱い雫が花瓶の底に溜まってゆく。
「っあ、ぁ。ああっ、だめ、お姉さま、だめぇ!!」
「ほら……もう大丈夫よ結衣。いつ出してもいいわ。……ね?」
「だめっ、だめ、だめえっ!! お姉さまやめてぇえっ、出ちゃう、ホントに出ちゃいますうっ!!」
「うふふ……ほら……しー、しー……」
「あ、あっあだめ、だめぇだめえええ!!」
 我慢、我慢、必死に食い止めようとしていた排泄欲求が、少女の意思を無視して膨らんでゆく。トイレの合図でもある“しー”――耳元で囁かれる禁断の言葉に、もはや本能はあらがえない。
 膨らんだ排泄孔はぱくりといやらしく口を開き、身体が反応を始めてしまう。憧れのお姉さまの前で失態をさらすことへの羞恥が、少女の心をきゅうと締め付ける。
 同時に、まるで幼児のようにおしっこをさせられることへの被虐心がぞくぞくと背中を這い上がる。猛烈な羞恥と、崩壊の衝撃が少女の思考を焼いてゆく。
 我慢に我慢を重ねていたものが、ついに扉を突き破って溢れだす。
「ぁ、ああぁ、ぁっあ、あああああぁああーーーーっ!?」

 ぶしゅっ、ぶじゅぅううううっ!!

 まるで、噴水のように。
 放出という言葉では足りはしない。噴出――噴射とでも呼ぶのが相応しいだろう。下腹部に限界まで注ぎ込まれ、長時間に渡って煮詰められていた尿意の元が、堰を切ってほとばしった。
 しっかりと結衣の出口に押し当てられたガラスの花瓶の中、猛烈な勢いで薄黄色の液体が噴き上がっては波打ち、ホースで水を撒くような野太い水流が透明な容器の中にぶつかってゆく。
「あぁ、。ああぁっだめ、だめ、止まって、止まってぇ……」
 憧れの彰子お姉さまの目の前で、しかも、お花摘みのための場所――トイレでもなんでもない、寮の一室で、花瓶の中にお手洗いをするなんて。
 猛烈な羞恥に顔を覆って悶える結衣だが、決壊した乙女のダムはそんな事情などお構いなしに、ガラス容器の底めがけてのたうつように激しい水流を注ぎ込んでゆく。

 じゅぶじゅぶじゅぅううううううーーーっ、
 じゅぼぼぼっぼぼっ、じょごごごごぉおおおおおおーーーっ!!

 容器の底を打っていた水流は、すぐに水面を泡立てかき混ぜるさらにみっともなくもはしたない音に変わる。
 乙女の秘所が響かせるにはあまりにも下品な排泄音は、部屋の中に余すところなく響き、ガラスの容器の中をたっぷりと満たしてゆく。
 ぴったりと結衣の股間に押し当てられたガラス容器の中に、みるみるうちに薄黄色の液体が泡立ちながら水位を増していった。水位はあっという間に花瓶の容量の半分を過ぎ、八分目を超え、容器のなかをいっぱいに満たしてゆく。
「いやぁああ………ぁあ……っ」

 じゅぅうううっ、じょぼぼぼっ、じゅごぉーーーーー……ッ

「うふふ……結衣、すごい音よ……?」
 熱っぽく興奮した彰子の囁きが結衣の耳朶を打った。喉を震わせ、しゃくりあげ始めてしまう結衣だが、興奮と緊張はさらに排泄を加速させていた。
 ほんのりと湯気さえ立たせそうな液体をたぷんと揺らし、ずっしりと重くなった花瓶を動かして、彰子はくすくすと微笑んだ。
「あっという間にこんなにいっぱい……ずっしりね? ふふ、こんなに沢山、おなかの中に溜まっていたの? ……我慢できなくなるはずね」
「あああっ、あぁ、っ、だめ、だめ、止まってぇ……っ」
 彰子の声も聞こえないまま、必死に出口を絞ろうとする結衣だが、堰を切ってダムの底から溢れ出した水流は、いくら身悶えしても左右に揺れるばかりだ。みるみるうちに水面は容器の縁まで迫ってくる。
「やだっ、やだあ、お姉さまの前なのにッ、見られてるのに、おしっこ……止まらな……っ」
 誰にも秘密にしていなければならない、羞恥の姿。
 厳重に施錠し、音消しと消臭設備の整えられた個室の中でこっそりと行われるべき、乙女の排泄行為が――あろうことか寮の一室の中、ベッドの上で繰り広げられている。
「あらあら……」

 じょぼっ、ぶしゅっ、ぢょっ、びちゃびちゃっ……

 ついに花瓶の縁を超えて溢れた恥水が、床へとこぼれ出した。せっかく用意してもらった自分専用のトイレだというのに、それでも処分できないほどの恥ずかしいお湯を、みっともなくも溢れさせて――結衣は声もなく、涙に濡れた顔を左右に振り立てる。
「うふふ……結衣? どうしたの? まだ出るのかしら?」
「あ、あっ、いや、違うの、違うのお姉さまっ!! こんなの、こんな、いつもはこんなにいっぱい出ないんですっ。わたし、こんなにおしっこ沢山出したりなんかっ……!!」
 懸命に括約筋を引き絞ろうとする結衣だが、それは噴出し続けるはしたない噴水の勢いに間断をつける程度のことでしかなかった。じゅぼぼっ、じゅごぉーっ、とガラス容器の中に叩き付けられた水流は、そのまま一気に縁を乗り越え、泡立った暖かい液体を溢れさせてゆく。

 じょぼぼぼぼ、びちゃびちゃびちゃっ、ばちゃっじょろろろぉお………


 ほんのりと白い泡を浮かべた薄黄色の液体は、少しだけ傾いた容器からびちゃびちゃとこぼれ出してゆく。
「こんなに大きな入れ物なのに、まだ納まりきらないなんて――結衣ったら、いったいどれだけ我慢していたのかしら?」
 決して少なくないはずの花瓶の容積を軽々といっぱいにして、なお溢れて。
 結衣のはしたない『おんなのこ』が噴き出させる琥珀色の水流は、ようやく噴出量を弱らせ始めていた。
 ぱちゃぱちゃと軽くなった水音が、滴る雫が、徐々に勢いを失ってゆく。
 持ち上げた腰を波打つように上下させ、ひくひくと排泄孔を引きつらせて、結衣が奔流をせき止めた頃には、ガラス花瓶を溢れさせてなお床にも大きなおしっこの水たまりができていた。
「うふふ……結衣、凄かったわね……こんなにいっぱい。手まで汚れてしまったわ」
「っ、やだ、お姉さま……っ」
 なみなみと、縁から溢れんばかりに乙女の羞恥を注ぎ込まれたガラスの花瓶を、結衣の顔の高さまで差し上げて。微笑む彰子に結衣は顔を反らし、俯いてしまう。
 透明な容器は、わずかに泡立つ黄色い液体をこれでもかとばかりになみなみとと湛えていた。
「床もこんなに汚して……はしたないわ。」
「ごめんなさい……御免なさい、お姉さまぁ……っ」
「うふふ……いいのよ、結衣。我慢できなかったのでしょう?」
 くすくすと笑いながら、彰子は花瓶をゆっくりと傾けた。
「あ……いやあ、……っ」
 床に向けて、花瓶の中に溜まっていた恥ずかしい液体がぱしゃぱしゃとまき散らされてゆく。
 溢れさせた分と、花瓶に出した分。両方合わせれば一体どれだけの量になるだろう。寮の床一面を汚す薄黄色の水たまりは、ほんのりと結衣の匂いを立ち込めさせていた。
 結衣の脚から汚れた下着を引き抜き、
「ねえ、結衣?」
 囁くように。耳元に唇を寄せて、彰子が言う。結衣はぞくりと背中を震わせた。
「……まだ、我慢しているのよね?」
「っ………」
 息を飲む結衣の脚の付け根に、再びガラス容器が押し当てられる。結衣の放出した恥ずかしい液体で暖まった容器の縁は、さっき感じさせた冷たさはなく、むしろさらなる解放を促すようにほんのりと温かい。
「我慢しないで、って言ったでしょう? 全部、出してしまいなさい?」
「ぁ……あ……」
 もう限界だった。懸命に、必死になって塞き止めていた最後の力が、お姉さまの囁きでぷつんと途切れる。
 こんなにもはしたない姿、これ以上見せていたくはないのに――まだ、たくさんおしっこが出そうなのに。
「おねえさま……ぁあっ」
 ひくっ、と震えた結衣の『おんなのこ』が、再び激しく薄黄色の水流を吹き上げる。

 じゅっ……じゅわぁあぁあああっ、じょぉおおおおっ……

 力強く噴出を再開したはしたない噴水は、空になったばかりのガラス容器の底を打った。
「あらあら……まだこんなに出るのね? 結衣ってば、一体どれだけ我慢していたのかしら」
「………っ!!」
 いつまでもおしっこを出し続けてしまう恥ずかしい身体。我慢の利かないだらしない排泄器官。いうことを聞かない『おんなのこ』。
 死んでしまいたいほど恥じる心とは裏腹に、波打ちほとばしる水流は止まらない。さっき花瓶を一杯にしたばかりだというのに、またも結衣の身体は熱い水流を絞り出し、花瓶の中を勢いよく満たしてゆく。

 じょぼぼぼ……じょろろろろおぉぉお……

 流石に先程までのような猛烈な噴射力こそないが、彰子にゆっくりと下腹を撫でさすられ、結衣はまた『はうっ』と身体をすくませる。じゅぅううっ、と太い水流を塊のようにガラス容器の中に噴き付けてしまい、結衣はがくがくと背中を震わせる。
 我慢からの解放はとめどもなく、終わりなく続き、苦痛からの解放感は大きなうねりになって少女を襲っていた。
 中断をはさんで二度目の排泄だというのに、終わる気配もなくガラス容器の中に注がれ続ける恥ずかしい噴水は、またも花瓶をいっぱいにしてしまっていた。
 ゆっくりとガラス容器の縁から床へと溢れだしてゆく黄色い滝を見て、彰子も目を丸くする。
「……あ、あっ……いやぁあ……っ」
「凄いわ……またこんなに出しちゃうなんて……」
 結衣の熱に当てられたか、彰子の声も上擦っていた。
 どう少なく見ても、数百cc以上は入るだろう花瓶を、2回もいっぱいにして、なお余る量を溢れさせているのだ。結衣が身体を震わせるたび、じょじょっ、じょぼぼっ、じょごごっ、と絞り出された羞恥の液体は勢いよくガラス容器の水面を打ち、そのままぱちゃぱちゃと床の上に飛び散ってゆく。2回目の排泄も、量だけで見れば1回目とほとんど変わらないだろう。
「違いますっ、ちが……こんなに、いつもはオシッコ出ないんですっ!! 今日はずっと我慢しててっ……ずっとずっと、おトイレ行きたくて……ッ こんなに、しないんですっ……」
 ぐすぐすと泣きながら、それでも結衣のお手洗いは止まらない。
 本来なら最低でも3回くらいに分けてトイレで済まされるはずだった排泄が、彰子の目の前、ガラス容器を受け皿にして撒き散らされてゆく。
「素敵よ、結衣」
「……おねえさま……」
 ついに床上に噴き上がる琥珀色の水流を見ながら、彰子は花瓶と結衣の脚を押さえる手を離し、うっとりと、結衣の唇に自分の唇を重ねていた。
 床上に広がる水たまりの中央には、縁ぎりぎりまで黄色いオシッコを注がれたガラス容器が残され、そこに結衣の噴射する水流が降り注ぐ。
 乙女の身体が溢れさせる羞恥の泉の中、ほんのりと泡を残しながら置かれた花瓶は、太陽の光にきらきらと輝いていた。




 (初出:書き下ろし)
[ 2010/10/09 20:30 ] 小説 | トラックバック(-) | コメント(-)
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