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社会見学バスの話・38 都築朝香その2 

 朝香はその時、汗ばんで脚に絡みつく下着を膝下まで下ろし、座席シートの上に浅く腰かけ、腰を突き出して、スカートをおヘソの上まで捲り上げていた。
 下半身は肌もあらわ、女の子の大事なところを露出させ、硬く握り締めたペットボトルの小さな飲み口を、オシッコの出口にきつく押し当て、いままさにオシッコを出そうとしていた瞬間だったのである。
 朝香も多くの少女達と同様、市立公園を出てからの長い時間の我慢を強いられ、バス内のほとんど身動きの適わない自分の席で、少女の敏感な排泄孔を執拗な尿意に延々と責め嬲られていた生徒だった。クラスの中でもいたって普通、成績も背の高さも真ん中くらいという、特段目立つことのない彼女が、まさにその瞬間、蓉子に見つかったのは、不幸な偶然としか言いようがない。
 この時点で、何らかの方法によってバスの中でオシッコを済ませようとしていた、あるいは済まさざるを得ない状況に追い込まれていた生徒達は朝香のほかにも複数存在していた。その中で彼女だけがその行為を見咎められ、不必要なまでにあげつらわれる謂われは無かっただろう。
 けれど。
 サービスエリアでの緊急トイレ休憩を告知し、あと少しの我慢でちゃんとしたトイレに行ける、と、それを心の支えに己を鼓舞していた女教師にとって、目の前でオシッコを始めようとしている朝香は、自分の懸命の我慢を突き崩しかねない危険な存在であり、クラスの規範となるべき教師である自分を差し置いて、卑劣な抜け駆けをしようとした反逆者としか映らなかったのだ。
「都築さんっ、あ、あっあなた、なっ、なんてことしてるのッッ!?」
 ほとんど悲鳴のような金切り声に、少女達は目をつぶった。授業中に騒いでいたのを怒られた時にも聞いたことのない、清水先生の本気の怒声だった。
 蓉子は肩を怒らせ、目を吊り上げて、ずかずかと大股で朝香の元に駆け寄る。
「え、あ、せ、せんせ……」
「やっ、やめなさいっ!! なにしてるの、はしたないッッ!!」
 バスの中の視線が一斉に朝香へと注がれる。隣の席のクラスメイトにも気付かれぬよう、こっそりと進めていたオシッコの準備が、白日のもとに暴露されてしまったのだ。
 下着をずりおろし、恥ずかしい場所にペットボトルを押し付けた姿勢のまま、呆然として硬直する朝香のすぐ傍に、仁王立ちになって。蓉子は更なる大声を張り上げる。
「こっ、ここっ、こんな所で、オシッコなんて!! 都築さんっ、は、恥ずかしいとっ、思わないのっ!? だっ、だだ、ダメじゃないのっ、もうすぐ、と、っととっ、トイレ、行けるのよ!? な、なんで我慢できないのっ!?」
 理不尽極まりない叱責だった。何故も何も、もうどうにも我慢できないからこそ朝香はバスの中でペットボトルにトイレを済ませようなどという、はしたない行為に及ぼうとしているのである。
「ん、ぁ、だ、で、でも、先生、わたし、もう、ずっと、オシッコ……」
「い、いいからやめなさいッッ!!!」
 蓉子は振り上げた手を素早く動かし、朝香が握り締めていたペットボトルを奪い取った。いまにも噴出する朝香のオシッコを受け止めるはずだったペットボトルは、緊急用トイレの役目を果たすこともできず、バスの床に転がる。
「こ、こんな所でオシッコだなんて、絶対にダメよ!! 都築さんっ、あ、あなたもっ、女の子でしょ!? ダメ、絶対にダメなのよ!? ねえ、分かってるのッッ!?」
 叫ぶ女教師の叱責が、哀れな少女を打ち据える。クラス担任の立場を借りて投げつけられる冷酷で卑劣な言葉が、乙女の羞恥を踏みにじる行為であるとは、当の蓉子には思い至らない。
(んぁあああ!! ダメ、出ちゃう、出ちゃう、でっでで、でちゃううウウゥんん~~っッッ!?)
 なにしろこの時。蓉子は、己の恥ずかしい女性の部分を突き破らんと荒れ狂う鉄砲水のような尿意に耐える事だけで精いっぱいだったのだ。女教師の下腹部に溜まった1リットル半ものオシッコは、時間の経過と共になおその水圧を増している。
 もし朝香がペットボトルにオシッコを始めれば、それに連動して女教師の下腹部でもダムの猛烈な放水を始めてしまう事は確実であった。それゆえに蓉子は何が何でも朝香の卑劣な暴挙を阻止せねばならなかったのである。
 自身の生徒に投げつける、理不尽で無茶苦茶な言葉の大半は、蓉子自身に向けられたものでもあった。
「せ、せんせえ……っ」
「と、とにかくっ、ダメよ!! はっ、はやく、パンツをあげなさいっ!! そんな格好してたら、お、おもッ、オモラシしちゃうでしょうっ!! ほ、ほらっ!!」
 あろうことか、蓉子は朝香の膝に絡まった下着を掴み、思い切り上に引きずりあげた。ハイレグめいて引き伸ばされた下着の股布がぐいいいっ、と朝香の幼い股間に食い込み、きつく締め付ける。
「んっ、ッ、ぃ、いやぁ……ッッ!?」
 異常な光景であった。執念めいた女教師の視線は異様なまでに濁り、血走ってすらいる。脚の付け根を覆う布地を強引かつ無理矢理に元に戻され、たまらず身をよじる朝香。その股間の股布には、じゅぅっと黄色い染みが広がり始める。
 下着を無理やり引っ張り上げられ、股間を圧迫されたせいで、朝香がこれまでの必死の我慢でなんとか回避していたおチビりが強制発生し、少女の下着を濡らしてしまったのだ。
「ぁああっ……ッ」
 少女の本能で、剥き出しの下着の上から股間を押さえ込み、激しく揉みしだく朝香。前押さえは、猛烈な尿意を押さえ込むための反射的な動作だ。しかしそれでも、出せるはずだったオシッコはなおなお朝香の下腹部にとどまり続けることを強いられ、激しく暴れ回る。中身をぱんぱんに詰め込んだ水風船が少女の意志を無視して収縮し、じゅっ、じゅううっっと断続的に熱い雫を噴き上げる。
 ぴゅっ、しゅるるっ、と、少女の股間から水流が噴き出す。しかしそれを受け止めるはずだった朝香の緊急用トイレ、350mlのペットボトルは床の上を転がってゆく。距離にして数メートル。けれどそれは身動きできない朝香には絶望的なまでに遠い。
 漏れ出すオシッコは少女の全身を使った我慢でもなお足りず、じわじわと噴き出しては無残に床を、座席シートを濡らすばかり。
「い、いいわね、都築さんっ、ダメよ!? 絶対に、漏らしちゃ駄目だからね!? ほ、ほかの、皆もよっ!? もっ、もう少しで、おトイレ行けるんだからねッッ!!」
 傲慢に言い捨て、蓉子はバスの中をじろりと睥睨する。
 がくがくと震える膝を擦り合わせ、下腹部をぱんぱんに膨らませる1リットル半ものオシッコを、蓉子は驚異的な精神力で堪え続ける。苦しむ生徒達のようにタイトスカートの上から下腹部をぎゅうぎゅうと押し揉んで、この地獄のような尿意を少しでも和らげたい――女教師の惨めなプライドに縋って、切なる欲望に耐えながら。
 そんなクラス担任をよそに、朝香は悲痛に身をよじり、なおも断続的に噴き出すおチビりに、制服と下着を汚していくのだった。
[ 2013/07/26 09:00 ] 長編連載 | トラックバック(-) | コメント(-)

社会見学バスの話・37 動く密室ダム/都築朝香 

 喜色満面の笑みでバスの行く先を見つめるクラス担任以下、限界を越えたオシッコ我慢を強いられる28人の少女達を乗せ、2-Aの社会見学バスは高速道路の渋滞をゆっくりと進みながら、サービスエリアへの降車口へと進路を向ける。
 蓉子が歓びの中サービスエリアでのトイレ休憩をアナウンスしてなお、バスの中に閉じ込められた2-Aの少女達の顔は曇ったままだ。
 まさか、トイレに行きたい、オシッコが我慢できないというただそれだけで、本来のバスの行程にはなかったはずの『トイレ休憩』を急遽差し挟まれるなど、バスが出発する前には思いもよらなかった事態である。
 まして、2-Aの少女達は既に一度、バスを路肩に止めての臨時トイレ休憩まで訴えた後なのだ。多感な年頃の少女達にとって、この期に及んでオシッコのために社会見学の予定を捻じ曲げてしまうことに、強い羞恥と抵抗感を覚えるのは仕方のない事だった。
「んっ……んぁあ……っ」
「は、っああ、だめ、だめぇ……」
「で、でちゃう、漏れちゃ、う……っ、もうだめぇ……オシッコでちゃうう……っ」
「だ、っだめだよ、我慢、あとちょっとなんだから……ちゃんと、おトイレまで我慢しなきゃ……」
「わかってるわよぉ……でもっ、あ、あっああ、ああっ」
 なによりも、いまにもはち切れそうなほどに乙女の水風船を膨らませ続けた少女達にとってみれば、あと十数分というサービスエリアまでの短い距離すら、世界の果てに辿り着くまでの無限にも等しい時間に感じられるのだった。
 サービスエリアへの出口にも、渋滞の列は続いている。3車線の高速道路がぎっしりと視界の端まで車の行列で埋まるこの有様なのだ。一旦休憩を入れて渋滞の解消を待とうと考える利用者達も少なくなかった。
 ウィンカーを出し、のろのろと動く車の列を堰き止めるように、28人プラス1人のオシッコで下腹部をぱんぱんにした少女達をのせたバスが車線を移動してゆく。
 この道の先に、少女達が焦がれて止まない聖地がある。バスの陰や、路肩の茂みなどとは違う、本物の、オシッコのための場所がそこにあるのだ。
 ――今度こそ、本当に、ちゃんとしたトイレでオシッコができる――。
 その事実は、少女達にとってあまりにも甘美な毒であった。
 既に待ち切れず、想像の中でサービスエリアのトイレの中へと心を飛ばしている女生徒達も少なくない。彼女達は一流のアスリートたちが世界大会の決勝に臨む時のように、オシッコのイメージトレ-ニングを繰り返し、猛烈な尿意を紛らわせていた。
 クリーム色のタイルときちんとした密閉性を保つ壁に仕切られた清潔な調度、世間の喧騒から隔絶された落ち着いた個室の中、白い便器に跨り、あるいは深く腰を下ろして、じんじんと疼く股間の先端から凄まじい勢いで恥ずかしい熱水を足元へと噴射させる――
 危険な妄想に身を委ね、少女達は既に閉じ合わせた太腿を擦り合わせ、くねくねと腰をよじるのを隠そうともしない。
 硬く閉ざされていた水門がぷくりと緩み、いまにも下着の奥でダムの堤防が決壊しそうになる、その危険な想像が、しかし下半身の緊張をわずかにほぐし、既に伸び切った膀胱の壁を僅かに延長させるだけの余裕を作り出していた。佳奈も、有紀も、皆そうやって、想像の中で何度も何度もオシッコをして、限界までの時間を少しずつ先延ばしにしているのだ。
「ぁ、あっあ、あぁあっ」
 無論、加減を間違えてしまう少女も居た。また一人、緩んだ水門からじゅじゅじゅうっと熱い水流を噴き出させてしまう。隠しようもなく響く水音と、立ち込めるオシッコの匂い――トイレの中よりも濃いオシッコの気配が、文字通りの呼び水となって、近くの少女達の身悶えを一層激しくさせた。
 今、漏らしてしまったのは、湿って股間にぴたりと張り付いた下着を噴き出す水圧で持ち上げさせてしまうほどの――おチビりなどというには生易しいほどの被害が、制服のスカートと下着に広がっている。しかしそれでも、懸命に歯を食いしばってダムの本格的な崩壊はなんとか喰いとめる。
 自分だけではない、クラスの皆のために、オシッコを我慢しなければならない。
 もはやバスの中の28人は一蓮托生、運命共同体だ。誰かが気を緩めてしまえば、もうあとは歯止めがきかず、雪崩のようにつぎつぎと連鎖してしまうことが、少女達には分かっていた。
 我慢しているのは自分だけではない。他のクラス全員分のオシッコが、少女達一人一人の尿意を通じて共有されている。28人分のオシッコを我慢しているのに等しかった。




 サービスエリアまであと300m。時間は焦れるほどに長く、粘性をもって引き伸ばされる。ほんの数分であるはずの時計の針が、まるで遅々として進まない。
 車内の少女達の苦悶はさらに増し、座席シートの上に身を丸めるようにして、膝を抱え込み、両掌で腿に挟みこんだスカートをぎゅうっと押さえつけ、股間を握り締めてしまう者もいる。
「んっ、んぅ、んっ……」
 くぐもった呻きが、羞恥に彩られて車内に響く。
 担任の清泉先生から、もうすぐトイレに行けるというアナウンスがあってから既に20分が経過していた。尿意に苦しむ少女達の安息の地であるサービスエリアへの進路転換。それは彼女達を乗せたバスが切望するトイレ、オシッコのための場所へと直行することを意味する、地獄に仏の報せであったはずだ。
 しかし、遅々として進まないバスに2-Aの生徒達の表情はいまだ晴れぬまま。喜色満面でトイレ休憩をアナウンスした担任は、焦りを滲ませてバスの行く先をじっと睨んでいるばかりであった。
(は、はやく、はやくしてっ、なんで進まないのよっ……)
 まるで生殺しだ。
 バスの中には少女特有の甘い匂いと、細く狭い管を勢いよく水流が通り抜ける、微かな水音が断続的に聞こえてはじめていた。既に2-Aの28人の生徒達の中には、バスの到着を待ちきれず、このままバスの中でオシッコを済ませようとしている者が出始めてしまっていた。
 無理もない、『もうすぐおトイレが出来る』という言葉に敏感に反応してしまった少女達の膀胱は、その瞬間からすでに準備万端に排泄の準備を整えている。
 徒競争で言うならスタートラインに付き『位置について、用意』のまま、延々と待たされているのに等しい。いまにも下腹部をはじけさせてしまいそうな尿意を抱え、そんな状態で長時間の『おあずけ』に耐えきれるはずがなかったのだ。
 羞恥に紅くなった顔を俯け、ちらりちらりと周囲を窺い、息を殺して慎重に、築かれぬようにこっそりと。水筒やペットボトル、バスに供えられたエチケット袋、お菓子の入っていたビニール袋。果てはタオルや着替えを股間に当てがって。少しずつ少しずつ、漏れ出すオシッコをそこに吸収させようとする。
 しゅる、しゅっ、じゅっ、じゅうぅ。
 座席シートに漏れ出すオシッコがじわじわとその染みを広げてゆく。
 ――限界ギリギリの状態で、極限の選択を迫られた少女達は、ついに猛烈な尿意の責め苦に耐えかね、最大の恥辱に屈しようとしていた。
 そんな彼女達は蓉子の席から離れた、彼女の背後の列の後部座席に集中している。別段、その近辺に座る少女達が特段強く尿意を覚えていた訳でも、揃って我慢が足りなかった訳でもない。
 ほんの数分前、バスの前方座席でこっそりペットボトルにオシッコを済ませようとした都築朝香が、蓉子に見つかってしまったからだった。
[ 2013/07/25 09:00 ] 長編連載 | トラックバック(-) | コメント(-)

社会見学バスの話・36 トイレに向かって進路を取れ! 


 カーテンに仕切られた薄暗い車内に、オシッコの匂いが立ち込める。既に限界を迎えつつある28人の生徒達のおチビりによるものだ。
 バスの中には倦怠と疲労、そして何よりも絶望が満ちていた。
 恥ずかしさを堪え、バスの陰の臨時の野外トイレを使ってオシッコを済ませに行ったはずの9人は、下半身を丸出しにして道路を100m近くも練り歩くという悲劇に見舞われ――しかも、ほとんどの少女達はわずかな放水、おチビリをした程度で、オシッコを済ませることすらできず、まだ大量のオシッコを乙女のダムに溜め込んだままなのだ。
 渋滞の行列から携帯のレンズを向けられ、オモラシの瞬間や路面にオシッコを噴き出させる一部始終を録画され、その上高速道路の車の合間をあそこを押さえてガニ股で歩く姿を見られる――そんな惨状を目の当たりにした少女達に、もう一度バスを降りるなんて選択肢はあり得なかった。
 今すぐここから飛び降りて死ねと言っているにも等しい。
「ふぐっ……ぅ、ううぅっ……」
「あ、あっ、あ……あああっ、ああああ……っ」
 また、くぐもった水音が響く。バスの床をぽたぽたと垂れ落ちる水滴の音が、ちょろちょろと流れ落ちる細い水流の音が、ぷしっ、と噴き出す高圧の噴射音が、指に、布地にあたってじゅじゅじゅうと震える熱い放出音が、幾重にも重なってハーモニーを奏でる。
 もはや後は時間の問題――最後の、野外排泄という手段すら失った2-Aの生徒達は、あらゆる希望を断たれ、動く密室と化したバスの中に閉じ込められたまま、最後の瞬間を迎えるしか道が残されていない。
 あらゆる希望を失って、それでもなお往生際悪く、少しでも崩壊の瞬間を先延ばしにして、懸命の我慢を続けていられるのは、ひとえに彼女達が、なによりも繊細で潔癖な世代の少女であるからに他ならなかった。
 その、時だ。
「み、みなさんに、お知らせがありますッ」
 突然、バスの連絡用のスピーカーにノイズが入る。
 ガッツポーズと共に携帯を握り締め、いきなりマイクを手にした清水先生が通路の真ん中に立ち上がったのだ。尿意を堪えていた少女達も、もう限界の我慢の綱引きの真っ最中の子を覗いて、一斉に顔を上げ、何事かとそちらに顔を向ける。
「皆さんっ、き、聞いてください!! じゅ、渋滞がっ、ひどいので!! はうぅ……っ、い、今から、っ、はあはあっ、こ、このバスはっ、す、すぐ近くの、さ、サービスエリアに行きますっ! そ、そこでっ、とっ、とと、トイレ!! トイレ、休憩をッ、す、する、ことに、っ、な、なりましたっ!!」
 張りのある声で、良かったですね!! と喝采を叫ばんばかりの清水先生の声。事実、先生の顔は笑顔に輝き、車内から歓声が上がることを期待している風な気配だった。
 皆を励ますようにするための、殊更に明るい『清水先生』の声。しかし28人の少女達を乗せたバス内には対照的に重い空気が漂う。
「……そ、そんなぁ……」
「な、なにそれ……!!」
 不穏な気配を孕んだざわめきが、バスの中を伝播してゆく。
(……おかしいよ、ヘンだよ、そんなのっ……だ、だって……っ!!)
(なら、どうしてさっき、バス、停めたのよ……!?)
(あ、あんな恥ずかしい目にまであって……!! が、ガマン、したのにッ……!! なんで、先生、もっと早く言ってくれないのっ……!?)
(わ、分かってたら、皆の前で、ぉ、お外に、オシッコになんか、行かなかったのに……!!)
 彼女たちの多くは、さっきの停車時にバスを降りた少女達だった。繊細な羞恥心を必死に押さえこんで、バスの陰での野ションまで決意したのに。それをすべて無駄にし、しかも裏切られた彼女たちの恨みは根深い。
 ひときわ敏感な世代の少女たちがが恥を忍んでそんな行為を許容したのは、渋滞の中でバスがどうなるかも分からず、これからトイレに行けるとは思えなかったからだ。蓉子が提案したバスの陰でのオシッコという、恥ずかし過ぎる選択肢を選んでしまったのは、あの時点でそれ以外の手段が無かったからに他ならない。
 その挙句、彼女達は周りの車に乗っている人たちからあんなにも恥ずかしい姿を見られることになってしまった。――それなのに。
 今からバスは予定を急変して、トイレに行くというのだ。もはやこれまでと観念して、死にそうな羞恥をこらえ、バスを降り――或いは、水筒やペットボトルに、座席シートの上で恥ずかしいオモラシを許容した少女達が、その事に憤るのも仕方がない。
 待望のトイレは確かに近づいたが、そのことを素直に喜べる生徒達はほとんどいなかったのである。
 しかし。バスの影の臨時仮設野外トイレなどではなく、本物の――間違いなく本物の『オシッコをするための場所』へ向かうこととなったバスに、内心飛び上がって歓声をあげたい蓉子はそれに気付かない。
「ぁ、あと15分くらいでっ、付くと思うからっ♪ そ、それまでもう少し、頑張ってね、みんなっ♪」
 無責任な先生の発言に、車内には見えないイライラが溜まってゆく。
 そんな中、当の蓉子は――
(やったぁ♪ やった、やった、やったわぁあっ♪ 頑張った、わたし、とっても頑張ったわっ……!! あ、あとすこしっ、あとすこしでっ、と、トイレに行けるの!! おトイレできるのよぉっ……!! はぁあ、トイレ、トイレ、オシッコ、オシッコ、オシッコできる、オシッコじゃーってできるっ、ぷしゃーって、トイレで、ちゃんとしたお手洗いで、しゃーって、思いっきりオシッコできるのよぉおっ♪ はあんっ、はぁあああんっ…♪)
 まるで恋人に会う乙女のごとく、浮足立つ爪先がみっともないリズムを刻む。
 蓉子はすでにまだ見ぬサービスエリアのトイレの個室の中へと、待ちきれない心を飛ばしていた。
[ 2013/07/24 09:00 ] 長編連載 | トラックバック(-) | コメント(-)

社会見学バスの話・35 清水蓉子その5 


「ええ、はいっ、そうです……もう皆、だいぶ疲れてる様子で……ほかの組の子もそうですよね? 休ませてあげたいと思いますっ、ええっ、い、いいですよね? いいですよね!?」
 汗ばむ手で携帯電話を握り締め――蓉子は電話口に叫んでいた。
 そう、汗だ。断じて汗以外の何物でもない。さっきまでバス乗車のどさくさに紛れて、恥も外聞もなく『がばぁっ』と捲り上げたスカートの中に手を突っ込んで思い切りあそこを押さえていた蓉子の手が湿っているのは、汗以外が原因にあり得ない。
 バスのタラップをひっきりなしに足踏みし、いっときも収まることなくくねる腰が、はしたない我慢ダンスを踊っているが、クラス担任たる『清水先生』は、あくまで『オシッコなんか我慢してません!!』という態度の初心貫徹を崩さなかった。
(ぁはぁ……んっ……くうぅうっ、ダメ、我慢、我慢よ、我慢するのよ、蓉子っ……!!)
 オトナの女性に相応しく、みっともない真似はしないように、腿の内側の筋肉だけでいまにも暴発しそうな股間の蛇口を締め付ける。それももはや、傍目にはあきらかに嘘とわかる、ただ本人が認めていないだけの薄っぺらい主張でしかなかったが。
「……え? 一度高速を降りちゃうと合流できない? も、もうっ! そんなことどうだっていいじゃないですか!! ぐ、具合悪い子もいるんですよ!! 休ませてあげなきゃ可哀想じゃないですかぁあっ!!」
 電話の相手は、後続する3号車の学年主任だ。蓉子の上司であり、今回の校外学習の責任者ということにもなっている。
「せ、生徒の事を思いやるのも、教師としての務めじゃないですかっ……!! え? そ、そんなの知りませんッ!! ほ、他のバスが降りられないかもしれないとか――そ、そんなこと、言われても困りますッ!! ……わ、わたしは、2年A組のく、クラス、担任としてッ、見過ごせないって言ってるだけですっ……!!」
 ほとんど怒鳴るように電話口に叫び、蓉子は傍らにある座席シートの背もたれに、身体を押しつけるようにぴったりと寄せた。太腿に背もたれを挟んでぐりぐりとスーツの股間を押しつけ、円を描くように腰をよじり擦りつける。
 まるで発情したメス犬のような有様のそれは、オシッコの出口を物理的に塞ぎ、もっとも脆いダムの出口から尿意を少しでも分散させようとする必死の動作だった。手で押さえたらオシッコしたいのがバレてしまう――その考えに固執するあまり、蓉子は自分が今どんな姿をしているのか、客観的に見る事すらできていない。
(はぁああんっ……!!! ……出ちゃう、出ちゃうっ、オシッコ!! オシッコ出ちゃうのぉおっ!! あぁーーーんっ、も、もうッ、ガマンするなんて無理なのよぉッ…!!)
 あそこを手で握り締めるのなんてはしたない――最初は、それが頭にあった。
 けれど募る尿意は和らぐどころか激しさを増すばかりで、摂取したショウガ紅茶の利尿作用はいよいよ本格的に牙を剥き、代謝機能を活性化させる機能を十全に発揮しつつある。スーツの下腹部をぽっこりと膨らませるほどの大量のオシッコが、蓉子の膀胱をかつてないサイズまで拡張しているのだ。
 じんじんと下腹部を襲う、鈍い痛みすら伴う排泄衝動は全身を使った我慢でなければとても耐えきれるものではなかった。
 だからこそ、『手で押さえていないから、OK』とばかりに、とても成立しない逆説を免罪符に、蓉子のトイレ我慢はますます大仰なものとなってゆく。
 小さな子供染みたその悶えぶりは彼女の教え子たる生徒達と比べても酷いもので――年齢と体格差を考慮した、膀胱の貯水量の差を差し引いてなお、そもそも真っ当な大人の振る舞いとしても失格な格好であった。
 蓉子は、オンナの欲望を剥き出しに、今すぐ一心不乱にありったけの力で股間を揉みほぐし、いっときも収まることのない尿意を和らげたい――その欲求と戦いながら、オシッコを我慢しているのである。
「で、ですからっ…!! もう、トイレ、ガマンできない子が、ウチのクラスに大勢いるんですっ!! ぉ、オモラシ……トイレじゃないところで、ぉ、オシッコ、漏らしちゃうしちゃうかもしれないんですよッ…!? ぉ、女の子なのに、ガマンできないなんて……惨め過ぎますッ、か、可哀想だとっ、思わないんですかぁッ!!」
 今すぐにでもサービスエリアに向かうべきだという蓉子の主張に対し、主任はそれに難色を示していた。先行する1組と2組のバスはすでにサービスエリアへの出口を通り過ぎてしまっているというのだ。渋滞の中後戻りはできないし、予定にも大きくずれが生じるという主任の声に、蓉子は声音を強めるばかりだ。
「こ、これ以上、がっがが、ガマンなんてさせられませんッ!! も、もう漏らしちゃってる子もいるんですからッ!! 井澤さんとかッ、坂上さんとかッ、麻生さんもッ!! お、オシッコ、もう、出ちゃいそうにしてるんですよぉ!!」
 渋滞の中で分断され、お互いの姿すら見えなくなっていたはずの、他のクラスのバスにまで――2年A組のオモラシと、臨界状態の尿意を懸命に堪えるオシッコ我慢の全貌が、余すことなく実況生中継で知らされていく。
「――ば、バケツ!? 当然却下ですッッ!! 当たり前じゃないですかっ、女の子がそんなところで、オシッコなんかダメです、絶対ダメぇええ!! は、はやくしなきゃ、もう、本当にッダメ、なんですぅう!!!」
 そこまでして必死になる蓉子の言葉の裏には、今更言及するまでもないだろうが、別の意図があった。
(――わ、わたしがっ、もうオシッコガマンできないの、出ちゃうの、オシッコ、モラしちゃのぉよぉおおッ!! ああぁっ、はぁ、はぁあああんっ……!!)
 くねくねッ、モジモジッ、たんっ、たたんっ。
 澱みなく繰り広げられる、羞恥の我慢ダンス。トイレの欲求を少しでも先延ばしにせんと喘ぐ蓉子は、荒い息の中凄まじい剣幕で眉を吊りあげ、口角泡を飛ばして携帯にに叫ぶ。
「だ、だったら、そのッ、……つ、次のサービスエリアで待ってるとか!! そ、そうですよっ。ほ、他にもッ、ほらっ、い、色々あるじゃないですか!!! ね、ねぇ? それでいいですよね、しゅにんせんせえッ!!」
 痴態にまみれたその姿から視線を反らし、声だけを聞いていれば、生徒達のことを思いやる熱心な教師――と、見えない事もない。異様な気迫や強引極まりない頑固な主張、焦って震える声音など、諸々の失態に目をつぶればだが。
 しかし、『清水先生』の仮面の下で、蓉子はまさに『オンナ』の薄汚い欲望に塗れた、打算を繰り広げていた。
(そっ、そうよ!! こうなったら、な、何としてもサービスエリアまでっ……ガマンしてやるんだからぁ……!! も、もうすぐ、もうすぐおトイレ出来るのッ……あんな風に、皆みたいに、バスの陰なんかでみっともないことしなくなったって、いいんだからッ……!! だっ、だから、それまで我慢っ、ガマンするのよ、っ、蓉子っ……!!)
 ぱんっぱんに空気を入れた、パンク寸前のタイヤのよう。強張った下腹部をスカートの上から思い切り握りしめ揉みほぐしてしまいたいという、強い女の欲望を必死に堪え、辛うじて腰を揺するだけにとどめて、蓉子は電話の向こうの主任に訴える。
「主任先生、い、いいですよねっ!! いいって言ってくださいっ!! じゃなきゃ、み、生徒達みんな、漏らしちゃいますよッ!! ねえっ!!」
 もはや脅迫だ。身悶えし鬼気迫る形相で叫ぶ蓉子を、運転席から恐ろしげなものでも見るような眼で見つめている運転手の姿は、蓉子にはまったく見えていない。
(ぁああーんっ、トイレ、トイレっトイレトイレおトイレェっ…!! オシッコ出ちゃう!! オシッコ出ちゃうのぉおっ、あぁあーんっ!! はやく、早くおトイレ!! おトイレ行きたいぃい!!! オシッコおぉおおおっ!!!)
 だだんっ、と強く床を踏み鳴らした蓉子からは、既に『清水先生』のクラス担任という仮面が緩み、外れかけていた。

[ 2013/07/23 09:00 ] 長編連載 | トラックバック(-) | コメント(-)

社会見学バスの話・34 佐野真彩その4 

 真彩は窮地に陥っていた。太腿の内側に重ねた手のひらをぎゅっと押しあて、前屈みになった姿勢で激しく膝を擦り合わせる。
 じりじりとせり上がり、水位を増した尿意が全く収まらないのだ。さっきまでは大津波とはいえ、断続的な高低差を持った『波』だった尿意が、いまは高潮のように強まったまま、どんどんとその力を増してゆくのだ。
「うく……ぅ……」
 胸の奥が詰まるように呼吸が浅く、早い。少しでも気を抜けば一緒に股間からも熱い水流が噴き出してしまいそうだ。酷使され続けた括約筋が痺れ、熱をもって疼く。じんじんとおなかに響く衝撃に、内側からノックされ続けるダムの放水口がぷくっと膨らみそうになる。オシッコの出口を塞ぐため、お尻の孔にきゅっと力を込めるたび、下着の中で桃色に染まった恥ずかしい場所がひくひくと震える。
 それでも押さえた指を下着とスカート越しにも湿らせるはしたないおチビりの感触が、真彩を追い詰めていた。
 尿意の波――バスの中に閉じ込められて4時間近くが経過した今となっては『オシッコしたい』と『すごくオシッコしたい』と『もう限界』の間を行き来するような状態だが――それでも本当に辛い瞬間とそうではない時の差がある分だけ、一番危険な瞬間に必死に我慢を集中して、波のうねりを乗り越えさえすれば、少しは気が休まる瞬間があった。
 だが、今の真彩の尿意はそうではなく、高くせり上がった水面がまったく下がる気配を見せない。『オシッコしたい』という尿意の波の、一番危険な瞬間が延々と続いているのだ。
「ふ、は……く、ぁ……」
 満足に息継ぎもできないまま、全身が黄色い海の底に沈み、溺れていくようだった。両手と太腿と使って必死に押さえ込んでいる水門は、内部の水圧に負けるようにじりじりと押し開けられてゆく。じゅ、じゅ、とイケナイ音を響かせる股間に、真彩は背中を丸めて耐える。
 少女のおなかの内側で限界まで膨らみ張り詰めた膀胱が、これ以上の伸び切ることができないと、真彩の意志を無視して中身を絞り出そうとしているのだ。排泄器官を掴んでひねり上げるような、強烈な排泄衝動――膀胱が爆発しそうなほどの猛烈な尿意が来る。
(っあ……やば、ぃ……っ!!)
 膀胱が排泄の本能のまま、きゅうっと収縮をはじめようとする予兆に、真彩は眼を見開いて背中を戦慄させる。おなかをさすってそれを押さえ込みたいが、手が離せない。真彩の十数年の生涯初めての『オモラシ』のカウントダウンがはじまっていた。
 少女の身体は排泄欲求の本能を優先し、倫理や理性をかなぐり捨てようとする。『これだけ我慢したんだから』『こんな状態じゃしょうがない』と、少女のプライドがこれまで頑なに否定してきた、最悪の事態をいよいよ許容し始めた時、カーテンの隙間から見覚えのある色彩が覗く。
 陽射しを反射する銀色のワンボックスカーが、タイヤを鳴らすようにして車線に割り込み、強引に路肩に停車した。
 非常駐車帯に停まるやいなや、ワンボックスの助手席のドアが吹き飛ぶように開く。
(あ、あれ、さっき、の……)
 見たことのある車だと気付いたのは、見覚えのある男の子が、続けて後部座席のドアをスライドさせて車内から顔を覗かせたからだ。
 次の瞬間、路肩に向けて凄まじい勢いの放水が叩き付けられる。炭酸飲料のペットボトルを思い切り振り混ぜて蓋を開けた時のような、容赦のない本当の勢いのオシッコ。
 そう。あろうことか――助手席のドアから身を乗り出した女の人が、車の外へ向けて下着もほとんど下ろせないまま、大股開きになって、腰を突き出し、路肩に向けて凄まじい勢いのオシッコを始めていたのだ。
(う、嘘……っ)
 頭をぶんなぐられたような衝撃が、真彩を襲う。子供までいる大人の女の人――真彩のお母さんとそう歳の変わらない人なのに、こんな所で、ガマンできずにオシッコをはじめたのだ。しかも、とてもではないが慎み深いとは言えない状況で。
 上手くドアを使って見えないようにしているつもりらしいが――車高の高いバス、真彩の位置からはちょうどそれが丸見えだった。
 あまりの姿に、ちょっと心配そうな顔をして、男の子もその様子を案じている。彼の視線の先、助手席のドアの陰で、立派な大人の女の人――男の子のお母さんが、気持ちよさそうにオシッコをしている。
(……こ、これだけ渋滞してるんだもん、っ、し、しかた、無いよね……)
 はしたない、と目を背ける事もできただろう。しかしもはやその光景は真彩を躊躇わせることはなく、むしろ少女の背中を後押しする。
 女性だから、大人だから。恥じらいを持たねばならないと叫ぶ理性を置いてきぼりにして、余裕を失った下腹部が激しい訴えを繰り返す。
 そう。――むしろ逆に。
 ちゃんとした、立派な大人だからこそ。どうしようもなくなるまで我慢を続けるなんて事の方が、愚かしいことだと言うのをわかっているはずなのだ。
 どれだけ慎み深く、礼儀正しいお嬢様だって、トイレに行けないまま、ずっと我慢を続けていればいつかは限界がやってくる。それは仕方のないことのはずだった。
(そ、それに、本当の、本当に、ガマンできなくなっちゃったら……っ)
 我慢を続けたまま、一歩も動けなくなって――そうなった時の結末は、火を見るよりも明らかだ。カウントダウンを始めたオシッコの出口と、ますます硬さを増す下腹部をさすり、真彩はぶるりと背中を震わせる。
 そもそも、こんな万が一の危機的状態に陥らないようにすることこそが、本当のきちんとした大人の振る舞いだと言う至極まっとうな意見は、頭のどこかにこびり付いてはいたが。
 もう真彩にそんな理屈は通じない。
(どうしようもないんだもんっ、オシッコ、出ちゃうもんっ…!!)
 行き場を失くした女の子のおしっこは、なお真彩の下腹部を膨らませて、出口を求めて暴れ続ける。額にはじっとりと汗が浮かび、恥骨にはじいんと甘い痺れが響く。おしりの孔にまできゅっと力を込めて締め付けなければ、排水口はいつ緩んでしまうかもわからない。
 きつくつぶった目の向こうで、真彩は、オシッコをしている自分の姿を思い描く。
 ワンボックスカーのドアの陰で響いているであろう、滝のような水音を想像しながら、真彩の息づかいは一段と荒くなっていった。

[ 2013/07/22 09:00 ] 長編連載 | トラックバック(-) | コメント(-)