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エレベーターの話。 

 
 楽しかった夏休みもあっという間に過ぎた。陽射しはまだまだ熱いものの、ヒグラシの鳴き声が増えはじめた9月のある日。デパートの買出しを終えたユミは、大きなエコバッグを肩に下げてマンションへの帰途についていた。
「ふー、重かったぁ。ちょっと買いすぎちゃったかもなぁ……」
 デパート指定の麻製エコバッグの中には紙コップにお菓子、ジュースのペットボトルとぎっしりと中身が詰まっている。どれも皆、明日の誕生日パーティの準備のため、奔走して買い集めたものだ。
 クラスの友人が多勢やってくるからと張り切ったものの、ずいぶん色々買い込んでしまったかもしれない。だがそれも、楽しいパーティの事を考えれば些細なものだ。
「ふふ、楽しみだなっ」
 これから部屋の片付けと飾りつけをしなければいけない。いつもは共働きの両親をひとりぼんやりと待つ退屈な時間も、いまはとても待ち遠しい。思わず足取りも軽くなるというものだ。
「とうちゃーくっ」
 とん、と自動ドアの前に立つユミを、ロビーいっぱいの冷たい空気が出迎える。暑がりの管理人さんは今日も冷房を前回にしているらしい。
(はー、涼しい……っ)
 たちまち全身から汗が引いてゆく。少し汗ばんだひたいをハンカチで拭い、ユミは大きく深呼吸。そのままロビーをつっきってエレベーターホールに向かう。
 ユミの住む部屋はマンションの9階。階段で上り下りするには少々大変なため、いつもこのエレベーターを利用していた。
 足元にバッグを下ろし、ユミはエレベーターが降りてくるのを待った。よく冷えたホールで、階数表示のランプはちかちかと点滅しながら右から左に数を減じてゆく。
(……んっ)
 ぶるっ、とユミの背中が小さく震えた。
 ホールにはちょうど冷風の吹き出し口があり、エレベーターを待っているとそれに煽られる格好になるのだ。築15年のマンションの冷房はあまり微調整が効かないため、涼しいというよりは少し寒いくらいの風で、長時間当たっていれば体調を崩してしまいかねない。
 暑い中を歩いてきた少女の身体には、10度以上の温度差はかなりこたえるものだった。吹き付ける冷風に汗が一斉に冷え、同時にそれは『ある感覚』をますます強くユミにもたらしていた。
「…………」
 他に利用者がいるのか、エレベーターは途中の階に停まっては動くのを繰り返していた。7階に続いて5階で停まった後、さらに4階でも停止する階数表示をじれったく思いながら、ユミはサンダルをきゅっきゅっと左右に踏み鳴らし、肩からずり落ちそうになるエコバッグの紐を抱え直す。
(もぉ、遅いなぁ……)
 この夏は節電が叫ばれ、マンションでは2つあるエレベーターのひとつが封鎖されていた。急いでいるなら階段を使うほうが早いのだが、暑い中を階段をひいひい上り下りしたくは皆同じようで、人気が集中するのも仕方のないことかもしれない。
 だが、ユミはそれ以上に焦る理由があった。
「んぅっ……」
 再度、ユミの脚がそわそわと寄せ合わされる。落ち着き無く揺すられる腰は小さく前後に突き出され、手のひらの片方がスカートの裾を手持ち無沙汰にきゅっと握り締める。
(はやく……トイレ……っ)
 高まる尿意は、ユミの予想よりも早く危険水域に達しようとしていた。
 小刻みにかかとを踏み鳴らし、体重を左右の脚に交互に預け、足を閉じるように交差指させる。見るものが見ればはっきりと分かる『我慢』の仕草。ロビーに人目がないのをいいことに、ユミは隠し切れなくなった尿意を紛らわせようと身体をもじつかせる。
(家まで我慢できると思ってたけど、けっこうギリギリだったかも……)
 下腹部にきゅんと響く感覚は、もうかなり切羽詰っている証拠だ。会計を終えた後、途中でトイレに寄らなかったのは失敗だったかもしれない。膝を擦り合わせながらユミはそっと後悔する。
 とは言え、それもあとわずかの我慢だ。
 ちん、とベルの音を鳴らし、ようやくエレベーターが到着する。ユミは慌ててエコバッグを抱え、姿勢を正した。
「こんにちわ」
「ああ。こんにちはー」
 エレベーターには数名の人が乗っており、ユミは小さくお辞儀をして挨拶をし、彼らが全員降りるのを待ってからエレベーターに乗り込む。
 幸いにして、乗り込んだのはユミだけだった。9階のボタンを押し、ユミは閉じるドアの中で奥側の壁に寄りかかる。
「はぁ……っ」
 ぶぅん、と鈍い音を響かせゆっくりと動き始めた小さな個室の中で、ユミは安堵と共に小さく息を吐いた。バッグを床に下ろして空いた手が、知らずきゅうっ、とスカートの前を押さえる。それに反応してちりっ、と敏感に尿意を訴える下腹部は、すでにはっきりとわかるほどに硬く張り詰めていた。
「ふー……あー、やっぱり、途中でおトイレ行っておけばよかったかもっ……」
 思わずそう口に出してしまうほど、ユミの尿意は切迫なものになりつつあった。
 狭いエレベーターの箱内は、誰にも見られないちいさな密室だ。本当の意味で他人の視線を気にせずともよくなったユミは、はっきりと腰を揺すり始めてしまう。
 一度、気が緩んでしまうと、ちいさな身体の中に押し込められた恥ずかしい液体はたちまちユミの意識を占領してしまった。
(あ、あっ……)
 きゅん、と高まる排泄欲求に下腹部が切なく疼く。ちょっとだけのつもりでスカートの前を握り締めた手のひらは、そこから離れることができないまま、ぎゅ、ぎゅっ、と服越しに小さな股間を握りしめる。
「んぅ……っ」
 さらに加えて、エレベーターの上昇とともに、重力がぱんぱんに膨らんだ膀胱を刺激し、たぷんたぷんと中身を揺する。もはやどこにも行き場をなくすくらいに張り詰めたオシッコの容れ物は、ただひとつの出口に向かって中身を集中させてゆくようだった。
 ずしりと重みを増した下腹部に危険を感じ取り、ユミはたまらず両手を使って脚の付け根をぎゅうっと押さえつけた。体重は右足と左足を交互に行き来し、上半身まで伴ってふらふらと大きく揺れ出してしまう。
(あ、あっ、あっ……はやく、はやくっ……早くトイレ……っ)
 原始的な排泄衝動が少女を急かす。重ね当てた手のひらをねじるようにして、持ち上げるように股間を握り締めながら、ユミはその場でくねくねと身をよじり、恥ずかしい格好で我慢のダンスをはじめてしまう。
 両手を間に挟み、太腿のを擦り合わせながら、ユミはじっとエレベーターの階数表示を見つめた。4を超えて5を表示し、6に変わるその数を、トイレに到着するまでのカウントダウンのように心に刻む。
(……あと4……3……2……)
 しかし。
 そのまま減り続け、1、0と続くはずだったカウントダウンは、思いもよらぬ事態によって遮られた。
「……え…?」
 まったくの前触れもなく、唐突にそれは始まった。
 がりがり、という激しい異音が響き、エレベーターが左右に振動を始める。天井の照明が点滅し、足元がぎしぎしと揺れ、ユミは反射的にエレベーターの壁にしがみつこうとする。
 それとほとんど同時に――

 がこ、んッ!!

「きゃぁっ!?」
 がくんと視界が揺れ、激しい震動が鋼鉄の箱にさらに不快な軋みを響かせる。
 一瞬の後に照明が激しく点滅し、狭い個室の中をモノクロに瞬かせる。掴まるもののない壁から手を滑らせ、反射的に目を閉じ手足を縮こまらせてしまったユミは、そのまま床上に投げ出されるように転んでしまう。
 そうして、ぎぎぃ、と最後に鈍い音を響かせ、エレベーターはがくんと上昇を停止した。
「…………、痛ったぁ……」
 痛む腰と膝をこすりながら、ユミはゆっくりと身体を起こした。
 恐る恐る目を開けてみれば、点滅していた照明が数度明滅してからゆっくりと回復し、ちいさな密室はぎし、ぎし……という不気味な軋みをあげていた。
 固唾を呑むユミの警戒の中、エレベーターは数度小さく上下してから停止した。
 ほどなくあたりに静寂が返ってくる。
「……な、なに…?」
 ユミの問いに、答えはなかった。
 どこかで響く機械の低い作動音だけを残し、エレベーターの中は元の状態に戻っていた。
 呆然としながらも起きあがろうとしたユミは、身動きと共にぎしり、と異音を響かせる鋼鉄の箱に思わず身を竦めてしまう。
「……きゃっ……」
 わずかに揺れる足元は、どこか定まらないようにふらふらと傾いているようにも感じられる。ずり落ちて床に倒れたエコバッグからお菓子の袋と一緒にはみ出したペットボトルの中身も小さく揺れ動き、波を立たせている。
「…え……っと…?」
 階数を示すランプは、6と7の両方を赤く灯らせて止まっていた。さっきまで身体を包み込んでいた緩やかな上昇感が失われていることに気付き、ユミはようやくエレベーターが動いていないことに思い至る。
 事態を把握できず、ユミは恐る恐るエレベーターのパネルボタンに触れた。しかし、階数のボタンも、開閉のボタンもいくら押しても反応せず、ランプは消えもしなければ点きもしない。
 ただ、普段はありえない二つのランプを赤々と輝かせたまま、ボタンはかちゃかちゃと虚しい音を立てるのみだった。
「こ、これ、……ひょっとして、動かない、の……?」
 乾いた言葉が、少女の喉から絞り出される。
 ぞわ、とうなじが嫌な予感に逆立ち、背中を冷たいものが走る。不安に竦む手が、きゅっと握り締められ、太腿の上に押し当てられる。
 切羽詰った尿意を抱えたまま、自分が狭い鋼鉄の箱の中に宙吊りに閉じ込められ、恐るべき緊急事態を迎えたことをユミが理解するには、もうしばらくの時間が必要だった。





 ……何時間が過ぎたのだろう。
「ぅ……っ、くぅっ……」
 あるいは、まだほんの数分しか経っていないのかもしれない。しかし、たったひとり狭い個室の中に取り残され、外と連絡を取るあらゆる手段を封じられたユミにはわずかな時間すらも永遠のように感じられた。
 どうしよう。どうしよう。どうすればいいんだろう。
 想定していなかった事態に混乱ばかりが募り、胸が不安に押し潰されそうになる。ユミが懸命にドアを叩き、何度も声をあげて助けを求めてもなお、まったくそれに答える声はなかった。
 パネルの上には緊急連絡用のインターホンが用意されていたが、すっかり混乱してしまったユミはそれを使うことに思い至ってもいない。
「んぅ……ふぅぅっ……」
 なにしろ今のユミにそんなことを考えている余裕はこれっぽっちもなかった。エレベーターの故障で閉じ込められて脱出不可能――そんな危機的状況よりも、遥かに優先すべき逼迫した超緊急事態が、少女の身体には起きているのだった。
(も……漏れちゃうぅ……っ!!)
 押さえようとしても押さえ込めない足踏みがだんだんと床を踏み鳴らす。ぐいぐいと腰をよじり膝をクロスさせてなお、まるで収まる気配のない尿意が、すさまじい勢いでユミに襲いかかってきているのだった。
 エレベーターに乗る前から切迫していた尿意は、エレベーターが停止してからも容赦なく高まり続け、もはや限界に達しつつある。こぽこぽと音をたてんばかりに次々と膀胱に注ぎ込まれるオシッコのせいで、少女のダムは危険水位のはるか上にまで達している。このままでは必死に制止の命令を出し続けているユミを無視して、いまにも水門を解放し放水をはじめてしまいそうだった。
 じんじんと疼く股間の先端、薄い布地には、何度も染み出したオシッコがすでに熱い雫が滲みはじめていた。股間を覆う布地は誤魔化しようが無いくらいにしっとりと湿り、身動きのたびにじんわりと足の付け根に張り付いてくる。
 ぷくりぷくりと出口にイケナイ感覚が広がるたび、股布にじゅうと音を立てる水流によって、濡れた暖かな領域は、おしりの方にまで拡がり出していた。
「う、動いて……動いてよぉ……っ」
 ユミはただひとつの希望に縋り、震える指先でボタンを鳴らす。
 しかし、エレベーターは停止したままびくりとも動く気配を見せなかった。沈黙を守る鋼鉄の箱の中、ユミは息を荒げながら何度も何度も手のひらでボタンを叩く。
「お、おねがいっ……早く、ぅ……しないとっ、で、出ちゃうっ……お、オモラシしちゃう……からぁ……、トイれ、お、トイ、れェ・・…っトイレさせてよぉ……!!」
 もはや見ようによっては完全にオモラシの状況に突入しながらも、完全な崩壊の寸前、ギリギリのところでユミは踏みとどまっていた。それはひとえに、多くの人が使うエレベーターという場所で、万が一にもオシッコをもらしてしまうわけにはいかない、という意識があったからに他ならなかった。
「だっ誰か、誰でもいいから開けてよぉ……だ、出して、ここから出してっ……で、出ちゃう、出してくれないと、もうホントに出ちゃう、漏れちゃうっ、オシッコ出ちゃうからぁ……っ!!」
 溢れそうなオシッコを塞き止めようときつく寄せられた膝がきゅきゅっと床を踏み鳴らす。しかしどれだけ請い願っても、尿意はおさまる気配を見せなかった。
 閉じ込められたと思えば思うほど、激しい尿意が込み上げて来て、ユミは息を詰めながらぎゅうぎゅうと身体をよじる。
 最悪の事態を回避するため、下着をおろし、スカートをたくし上げてしゃがみ込ん出しまいたい衝動を、必死になって押さえ込む。そんなことをせずとも今にも床を直撃しそうな猛烈な尿意が、勝手にしゅるしゅると漏れ出してしまいそうだった。
 加えて、クリーム色の壁に四角い壁のエレベーターはユミの渇望するトイレの個室にそっくりで、それがますますユミを苦しめる。
「おね、がぃ……、ぉ、トイレ…ぇっ!! でちゃう、でちゃうのぉ…っ」
 無論、唯一にして絶対の違いとして、エレベーターの床には便器など備え付けられていない。限りなくトイレに近い場所の中で、決してオシッコすることを許されないという悪夢によって。気の遠くなるような排泄衝動がユミを蹂躙する。
 狭いエレベーターのなかでぐるぐると歩き回ったかと思うと、今度はぴたりと静止し、ぎゅぎゅっと脚を交差させては爪先をぐりぐりと絨毯に押しつける。
 他人の視線がないがせめてもの救いだった。こんなに必死になってオモラシを堪えているのを見られたら、恥ずかしくて死んでしまうに違いない。
 だが、こうしている間にも、お昼に飲んだジュースとお茶が、ユミの身体の中でオシッコに変わっているのだった。ユミの膀胱はすでに満杯で、もうとっくに縁ギリギリまで中身が入っているのに、そこにさらに蛇口をひねって中身を注ぎ続けているようなものだった。入りきらない中身は、当然そのまま外にあふれ出してしまう。

 じゅ…じゅじゅっ、しゅるるっ……

 下腹部の蠕動と膀胱の収縮に耐え切れず、わずかにこぼれたオシッコの先走りが下着を汚し、ユミのキュロットにまで小さく染みをつくる。
「ィヤぁ……っ!!!」
(やだッ、やだぁ…っ!! オシッコ、おトイレ行きたいっ、おねがいぃ、トイレ、オシッコさせてぇ……)
 いまや我慢のためのダンスも思うようにできず、ユミはぎゅっと膝をくっつけたままおしりを突き出し、アヒルのようなへっぴり腰になって壁に寄り掛かるばかりだった。
「動いて、動いてよぉ…!!」
 ついに現実のものとなり始めた『オモラシ』の恐怖に、力の入らない手でパネルのボタンをめちゃくちゃに叩きながら、ユミは一心に祈った。
 すぐにここから出られるように。……あるいは、今すぐこの場にトイレがやってきてくれるように。いかに荒唐無稽なお祈りでも、自分を襲う危機から逃れるための方法を、ユミは他に思い付けなかったのだ。
(あ、明日っ、誕生日なんだからっ……もうひとつおねえさんになるんだからっ……!! い、いくら閉じ込められたからって、こ、こんなところでオモラシなんか……だめっ、絶対ダメっ……我慢、我慢しなきゃ……み、みんな使ってる、エレベーターの中なんだからぁっ……!!)
 そんな場所でオモラシなんて――到底許されることではないのだ。
 しかし、少女の身体はもはや限界を超えて排泄を訴えている。なんでもいいからオシッコが、オシッコがしたい。どこでもいいから、なんでもいいからオシッコのできるところ。狭いエレベーターの中にあるはずもないものを、ユミの視線がさまよい探し回る。
「あ……っ」
 オシッコがしたいのにトイレに行けない、絶望的な二律背反の中――
 ふと、ユミの目に床にほうりだされていたままのエコバッグが入る。同時にある解決手段が、稲妻のようにユミの脳裏を閃いた。
 いや、あるいはそれこそなにか悪いモノの誘惑だったのかもしれない。
(あ、あった……っ!!)
 “なんでもいいから、オシッコできるところ”。
 ユミが目をつけたのは、床に放り投げられたままのエコバッグの中から飛び出したカラフルな紙コップ。ジュースを注ぐために用意したその容器は、ぴったり数も多く、ユミの渇望する条件にぴったり当てはまっていた。
 瞬間、ぞくん! とユミの下腹部が歓喜をあげる。
 これでオシッコできる!! 思わず顔を輝かせかけたユミだが、
「っ、ば、馬鹿っ!!」
 すぐに我に返り、ユミは慌ててぶんぶんと首を振る。

 ――あの紙コップに、オシッコをする。

 苦し紛れの果てに思いついたとは言え、それは少女として許されるはずのない、あまりにもはしたなくも恥ずかしい行為だ。
(――な、ナニ考えてるの、わたしってばっ!? ……あ、あんなトコロに、なんてダメに決まってるじゃないっ!! だ、だってあれ、明日……みんなで、ジュース飲むのに使うんだよっ……!?)
 そんなものにオシッコをしようだなんて、たとえ一瞬でも考え付いた自分が、あまりにも恥ずかしかった。みんながジュースを飲むのと同じものに、あろうことか、オシッコをしてしまおうだなんて!!
 いくら我慢できないからといって、そんなのは絶対にありえない行為だった。
 だが――
(ぁ、あっあ、ダメ、ダメなの、違うの、今のはだめ……っ!! だめなんだったらぁ……)
 とっさに否定しても、もうユミはそれを頭から打ち払うことはできない。事実、その想像のもたらした誘惑にユミの身体はたちまち反応をしてしまっていた。
 はしたなくもみっともない、女の子として失格同然の行為であっても、ただ――たとえ紙コップだろうとなんだろうと、オシッコができる、という希望ががっちりと心を掴んで離さない。
 絶望的だったトイレ――“オシッコのできる場所”の可能性に、ユミの心は瞬く間に虜にされてしまう。
(ぁ、あ、だめ、違うの、あれは違うのに……っ!! 紙コップでなんて絶対ダメ!! し、したくなっちゃダメなのっ!! が、がまん、我慢して、と、トイレまで……ちゃんとトイレで、するんだからぁっ……!!)
 しかしそう念じるユミの理性とは裏腹に、我慢の利かないユミの身体のほうはもう、紙コップでオシッコをすることを冷静に検討し始めていた。なにしろあれなら床も汚さない、オモラシもせずに済む。どのみちこのまま我慢を続けるのは無理だと、ユミ自身も本当は理解している。
 1パック30個入りの、カラフルな紙コップ。そのサイズはおおよそ200ml。
 その一つでも使うことができれば、ユミのオシッコはだいぶ楽になるに違いがないのだ。もはやユミの目には、紙コップが半ば『オシッコをするための入れ物』に映ってしまっていた。
(ぁああぅううぅううっ……)
 それでも揺り動かされる心を叱咤して、ユミは欲望に屈しそうになる身体を、なんとか思いとどまらせようとしていた。
「だ、だめ……だめ、絶対ダメ……っ」
 パーティ用に買いそろえた紙コップは、遊びに来てくれるみんなをもてなすためのもの。仮にもそのために用意した大事なものを、自分のオシッコでいっぱいにしてしまうという、とんでもない想像にユミの羞恥心は激しく刺激される。
 喉を潤すための飲み物を入れるべきところにオシッコするなんて、普段のユミには絶対に考え付かないことだ。
 しかし、ワイヤーだけで中空に固定されたエレベーター、わずか1.5m四方の狭い密室には、勿論トイレなどどこにもない。当然床には小さなくぼみすらなく、少しでも水分がこぼれれば隠しようのない事は明かだった。
 このまま我慢できなければ、オモラシは避けられない。百歩譲って、下着を下ろしてしゃがみ込んだとしても、どれだけ隅っこで済ませようとしても狭いエレベーターのこと、たちまち床一面にオシッコが流れ、隠しようもないのは明白だった。
 エレベーターが動きだし、ユミが助け出されたとき、盛大にオシッコがまき散らされた床や、ごまかしように無いほどに匂いを篭もらせた惨状を晒すのは、繊細な年頃の少女にとって死んでしまいたくなるほどの恥辱に違いない。
 マンションの皆が利用するエレベーターで、オシッコを漏らしてしまうなんてユミには耐えきれない想像だった。
「んぁぅ……くうぅうっ……」
 そしてまた、堪えきれなかった尿意の波が、下腹部のダムを溢れて外にこぼれ出す。下着にじゅわぁあっと拡がる熱い感触が、ユミを戦慄させた。
 わずかに雫を滲ませたことでも、恐ろしいほどの解放感が下腹部を貫く。じんじんと疼く排泄孔は甘く痺れ、なおじゅっ、じゅぅ、と熱い雫を吹き出し下着にたっぷりと染みさせた。
「ぁ、あっ、あ、あっあ……」
 ぞわ、ぞわ、と膀胱が収縮し、排泄孔がヒクヒクと緩む。必死に締め付ける括約筋は長時間の酷使に磨耗して擦り切れ、もはや完全に閉じきることも不可能だった。断続的にじゅわ、じゅわと下着の奥に水音が響き、身動きに応じてくちゅくちゅと音を立て濡れぼそる股布が、堪えきれない熱い雫を染み出させる。
 揺れ続けた天秤が大きく傾いた。
「だめ、……っ、で、でちゃう……!!!」
 排泄への渇望に焦がれ羞恥を押し殺ながら、これ以上のオモラシだけは避けたい一心で、ユミはついに決断を下した。
 がくがくと膝を震わせながら、少女はエコバックからこぼれ出た紙コップの包装をつかみ、もどかしくラップを破りながらエレベータの隅にすり足で移動する。
 片手で下着の股間をぎゅっと引っ張り上げ、突きだしたお尻を左右にクネらせ、オシッコで濡れた震える手で紙コップをひとつ掴んだ。
(っ、……)
 オシッコをするために、飲み物を入れるための紙容器を用意する――少女の倫理に照らしておよそあり得ない『いけないこと』をしている自分自身に、気の遠くなるほどの恥ずかしさがユミを襲う。
 紙コップを使ってオシッコをするなんて、健康診断の尿検査の時くらいしか経験がない。しかしあれにしても、もともと『そのため』に用意したコップを使っている分、まだ気が楽だった。
 だが、これはそんなものではない。
「あ、あっあぁっ、だめ、まだ待って、まだダメぇ!!」
 きゅぅと疼く下腹部に急き立てられながら、ユミは湿って股間に貼りついた下着を膝までずり下ろして、停止したエレベーターの隅にしゃがみ込む。
 むき出しになった股間に、そおっと紙コップをあてがって。
(ぅ、や、ヤダぁ……っ、やだぁあ!!)
 女の子としてありえない行為に、猛烈な後悔と羞恥心がユミの心を切り刻む。オシッコの入れ物が見つかったとしても、エレベーターでオシッコをする、その行為そのものは変わらないのだ。ちくちくと出口を刺激する感覚にユミは泣き出しそうになりながら、もう一度だけエレベーターのドアを睨む。
「ぁうぅっ……だ、ダメ……で、ちゃうぅっ……」
 もはや、何の猶予もない。
 怒涛のような奔流は、出口のすぐ上まで迫っていた。
(ご、ごめんなさいっ……ごめんなさい……!!)
 ぎゅっと目を閉じて、涙を滲ませながら、ユミは誰とも知らない相手に対して精一杯の謝罪を繰り返した。あるいはそれは、このようなはしたない真似に及んでしまった自分自身への懺悔だったのかもしれない。
(すいません、もう駄目なんです、我慢できないんですっ、お、オモラシ、しちゃうんですっ……ごめんなさいっ、ごめんなさいぃ……っ)
 紙コップの縁が、かるく出口に触れるのと、下着の支えを失った水門がとうとう決壊したのはほとんど同時だった。

 ぷしゅるっ!! しゅううぅ、じゅじゅっ、じょじょじょぉおっ!!

「……んんぅうっ!!」
 強烈な感覚が内腿の付け根を走り抜け、背筋へと這いあがってゆく。
 強くほとばしった薄い琥珀色の液体が、激しい水音を立てながら、紙コップのなかに受け止められる。薄い底を直撃し、容器の中に強く飛沫を散らしたオシッコはじゅうじゅうと音を立てながら小さな入れ物の中に注がれていった。
 狭いエレベーターの中に響くには十分すぎるほどの、恥辱の排泄音を伴い、わずか白く泡立った液面を揺らして、紙コップ内の水位がみるみるうちに上昇してゆく。我慢に我慢を重ね、ユミが溜めつづけていた羞恥の液体は、たとえその一部だけとはいえ恐ろしいほどの量だった。
(あ……はぁ……っ♪)
 ずっと堪えていたものを解き放った爽快感に、ユミは腰のあたりがふわりと軽くなるのを感じていた。その安堵感にいっとき、ここがトイレではないことすらも忘れてしまうほどに。

 じょぼぼぼっ、じょぉおぉ……じょぼっ、じょじょじゅうぅっ

 それゆえの心の緩みか。あるいはもともと無理な相談だったのか。
 容量わずか200mlしかない紙コップは、たちまちのうちに一杯になりかけていた。ユミの膀胱の代わりをさせられた紙コップの中、みるみる水面は縁まで近づき、液面の泡が大きく紙コップの上に盛り上がる。
「あ、いやっ……だ、だめっ!!」
 あっという間に紙コップを一杯にしてしまったことに、ユミは耳まで赤く染まる。同時に、『もう溢れちゃう』というの事実はユミを狼狽させた。
 先天的な、少女としての体のつくりによって、女の子の身体というものは一度出し始めてしまったオシッコを中断することはとても難しくなっている。
 慌ててオシッコを止めようとするユミだが、一度緩んだ括約筋は意志とは無関係に開きっぱなしになり、思うように出口を締め付けることができなかった。
「はうぅんん……っっ!!」
 押さえるどころか、いきなり大きく吹きだしそうになったオシッコを、ユミはかろうじてぎりぎりの所で押しとどめる。それでも細く開いた排泄孔から、間断的にぷしゅっ、ぶじゅっ、とオシッコが勢い良くほとばしる。
 ほぼ一杯になった紙コップの縁からあふれた泡が、ユミの手を汚し、さらには股間にまでぴちゃっと触れた。
「ダメっ、もうこれ以上っ……出しちゃだめ!! こぼれちゃうっ、溢れちゃううっ……っ…が、我慢、我慢しないとダメっ……!!)」
 懸命に出口を絞めつけながら、ほの温かいオシッコが溢れそうな紙コップを、ユミはそっと地面に置いた。それでも出口は閉まりきらず、オシッコはちょろちょろと床にこぼれる。おまけに手が震え、なみなみとオシッコを注がれた紙コップから一部が床にこぼれてしまう。
「ぁ、あっ、あぁ、あっ」
(だ、だめ、出ないで、出ちゃダメっ、あ、あとはトイレまで、が、がまんしなきゃ……っ!!)
 しかも少なくとも紙コップに一杯、オシッコをしたはずなのに、尿意はおさまるどころか激しくなる一方だった。
 股間の先端からぽたぽたとだらしなく雫をたらしながら、ユミはふたつ目の紙コップを取ろうと手を伸ばす。下腹部はまるで火に掛けられたようにぐらぐらと沸き立ち、ごぼりごぼりと激しく中身を暴れさせている。
 足元の紙コップに出した量など問題にならないくらいのオシッコが、なおユミのおなかの中に詰まっているのだ。一度収縮しかけ、しかも出口を覚えたオシッコが、そのままおとなしくしているわけがない。始まったが最後、女の子のオシッコは最後まで止まるわけが無い。
 紙コップ一杯だけ――
 限界に限界を重ねて我慢した女の子のオシッコが、そんな中途半端で終わるわけがなかったのだ。
「だ、だめぇええ……っ!!!!

 しゅる、ちゅろろっ……じゅじゅっ!! じょじょじょおぉお!!

 一度ちょろちょろと弱まりかけたかに見えたオシッコが、再び堰を切ったようにあふれ出す。
 間一髪、ユミが思い切り掴んだふたつ目の紙コップは、少しひしゃげたまま脚の付け根に押し付けられ、再開したユミのオシッコを受け止めていた。
 『ふたつめ』の薄い紙コップ越しにはっきりとわかるオシッコの温かさが、ユミの手のひらの上でどんどん重くなってゆく。
 小さな入れ物の中、勢いのいい液体がに注ぎ込まれ、渦を巻いて水面にぶつかり大きく音を立てる。いよいよ本格的に水門が開いている証拠だった。ユミのオシッコの勢いは中断を挟んでなお増している。
(やぁっ……と、止まって……も、もうダメ……ま、またあふれちゃううっ……)
 予想もしていなかった事態にユミは悲鳴を上げかけた。まだまだ全然オシッコは終わりそうもないというのに、二杯目の紙コップまで一杯になりかけているのだ。
 じんじんと広がる甘い痺れが股間の先端を誘惑し、女の子の部分をこじあけようと暴れ回る。女の子の場所から吹き出す水流は、だらしなくしゅる、しゅるるぅ、と漏れ出してもう全く余裕のない紙コップに注がれてゆく。
(こ、こんなに一杯、したのにっ……ま、まだ出るのっ……!?)
 いくら我慢していたとは言っても、実際にその量を目の当たりにすることはユミにとって衝撃だった。紙コップの八分目どころか九分目半以上を満たす、薄い琥珀色の液体。これが今もなおユミを責め嬲る恥辱の液体の一部である。
「そ、そんな、こんなにオシッコしない、わたし……、こんなに我慢してないよぉ……っ!!」
 あまりにも大量のオシッコを出し続ける、恥ずかしい自分の身体。排泄行為にことさらに羞恥を覚える、思春期特有の少女の心理で、目の前の現実を認めきれず、ユミは悲鳴を絞り出す。
 だが、いくら否定したくともこれもユミ自身の身体が長い時間を掛けて精製したものなのだ。小さく薄い紙製の入れ物は、すでに二つ分、その縁のぎりぎりまでユミの恥ずかしい液体を受け止めている。まさにいま、彼女の体内で起きているのと同じ状況だった。
「あ、あ、やだ、もう出ないでっ、出ないでぇ……っ」
 たくさんオシッコをしてしまう恥ずかしい女の子という意識のまま、なお強い尿意を感じているにも関わらず、ユミは羞恥に耐えかねて思わずそれを否定しようと腰をよじる。
 が、むき出しの股間が押さえつけた紙コップの上で前後に揺すられ、ちゃぽっ、とオシッコが紙コップの縁を超えて跳ねる。痙攣のように下腹部を震え出し、締め付けていたはずの女の子の部分から、少女の意志に反して液体がほとばしった。

 ぷしゅっ!!……ぷしゅうっ……!!

「ああ……っ……だめぇ……っ……んぁあっ…!」
 無理に絞めつけようと身体をねじっていたせいで、オシッコの飛沫はまっすぐ飛ばずに、紙コップを外れてぷしゅっ、ぽたぽたと地面に飛び散ってゆく。さらに被害の拡大した床は、すでに悲惨なくらいにユミのオシッコまみれだ。
「だ、だめぇ……っ」
 膝の内側が震え、女の子の欲求になお屈しそうにぴくぴくと引き攣る。太腿の内側にきつく力が篭められ、痙攣するように蠢いた。
「ぁ……っ」
 掠れた声と共に、ユミbの目の前が一瞬、霧が立ち込めたように真っ白に染まる。
 二つ目の紙コップも放り出し、少女はとうとう三つ目の紙コップを引っ張りだして股間に押し当てていた。
「で……っ……でちゃう……っ…」
 既に猛烈な尿意の前にボロボロになったユミは、突き上げる尿意の衝動に尽き動かされるままにはしたない言葉を繰り返してしまう。
 エレベーターの隅から、新しい入れ物を求めてどんどん真ん中へと移動し、おさまりきらなかったオシッコをぽたぽたと床にこぼしながら、しゃがみ込んでお尻を突き出し、股間には恥ずかしい液体を受け止める紙コップを押し当てて。
 ユミの『紙コップ』へのオシッコはなおも激しく続いた。

 しゅるっ、しゅしゅしゅっ、じゅっ、じゅぅうううううっ……!!

 いまだ勢いを減じないまま、三つ目の紙コップまであっさり一杯にする勢いで、三度ユミのオシッコがはじまった。少女の顔は羞恥にゆがみ、声は小刻みに震えてすらいる。
 多くの人が利用する場所であるエレベーターの真ん中で、スカートをまくり下着を下ろし、股間にあてがった紙コップにオシッコをするという恥辱の極みの中、ユミはとうとう泣き出してしまう。
「も、もうやだ……もう出ないでっ、でないでよぉ……な、なんでこんなにいっぱい、オシッコ……っ……」

 じゅぅ、じゅううぅ、じゅじゅじゅうっ、じょぼぼぼぼぼ……っ

 なお衰えぬ勢いで噴出するオシッコは、ユミの感情の昂ぶりに合わせてリズムを刻むように紙コップの中に注がれていった。
 それだけでは飽き足らず、ひしゃげた出口からは脚の間を伝い、オシッコの雫がちいさなお尻のほうにまで回ってゆく。
「あ、あぁ、あっあ、ぁあ……」
 やがて、泡立つ薄黄色の液体がなみなみと紙コップを満たす。手のひらの中に伝わるオシッコの温度と重みで、ユミはとうとう3杯目の『お代わり』までいっぱいにしてしまったことを理解した。
 あくまで控えめに1杯200ml弱としても、確実に500ml超。それだけの量のオシッコをしてなお、まだユミの尿意は衰えなかった。
「やだ、オシッコでないで、でないでぇ……っ」

 その時だ。
 始まった時と同じように、まったくの唐突にがくりとエレベーターが揺れる。ぎし、ぎし、とその身を軋ませながら、エレベーターがゆっくりと上昇を始めたのだ。
 階数表示のランプがちかちかと瞬き、表示が7階へ切り替わる。
(え!? あ、あっ、あ!!)
 支えるものも無く、エレベーターの床の真ん中に、爪先立ちでしゃがみ込んだ姿勢のままのユミは、その急激な振動に耐え切れなかった。
 ぐらり、と傾き倒れこんだ身体に、本能的に危機を察知した少女の手は反射的に前に伸び――結果、股間に押し当てていた紙コップは、床に挟まれてくしゃりと押し潰される。
 無論、そのなかになみなみと注がれていたオシッコも、残らず床にぶちまけながら。
「い、いやぁ……っ!!!?」
 ばちゃん、という激しい水音。
 たちまちエレベーターの中に満ちる、これまでよりもさらに濃密なオシッコの匂い。明らかにユミがここで『排泄』したことを証拠付ける羞恥の液体が、容赦なく閉ざされた鋼鉄の密室を汚染してゆく。
 そして、それだけでは済まない。3杯の紙コップをいっぱいにしてなお、止まる様子のないオシッコは、その下に水流を受け止める容器がなくなっても、構わずに排泄孔から噴出し続けていた。
 四つんばいになる格好で倒れこんだユミの股間からは、なおオシッコがしょろろろろぉ、と流れ落ち、直接エレベーターの床に飛び散ってゆく。
 ここに至れば流石に最初の頃ほどの勢いは衰えているが、なおオモラシとして十分な量だった。もうひとつ紙コップを構えていても、十分に一杯にしきる勢いはあるだろう。
 紙コップから溢れたオシッコの水たまりに、ぱちゃぱちゃと音を立てながら注ぎ足されて行くオシッコが、さらにユミの下半身を汚す。
 困惑の極みにあるユミをよそに、立て続けに事態は進行する。ちん、と音を立てエレベーターがゆっくりと停止するベル音を聞いて、ユミは蒼白になった。
「だ、だめ、だめぇえ!!!!」
 目の前で左右に開き始めるドアに、完全にパニックに陥ったユミは、むき出しの脚の付け根を手で押さえ込んだ。しかし壊れた蛇口のように開ききって勝手にオシッコを出し続ける排泄孔を塞ぐことはできず、手のひらに溢れたオシッコが指の間からいくすじも滴り落ちる。じょじょぅ、じゅぅ、じゅうぅぅ……まるで手のひらに受け止めたオシッコを、そのまま床に撒き散らしているようだ。
 必死に身体を起こそうにも、膝に絡まった下着が邪魔をする。太腿の下を拘束され、這いずることもできないユミの前で、無常にもドアが全開になる。
 決して開かないかと思われたドアが、あっけなく開いていた。
 二つの紙コップをオシッコでいっぱいにし、床に盛大な水たまりをつくって、なお股間から熱い雫を迸らせ続ける少女の姿は、遮るもの無くエレベーターの故障を見守る、マンションの住人たちの視線に晒されてしまう。
 大事な買い物を詰め込んだエコバッグもオシッコをたっぷり吸って、色を変えていた。もう二度と使うことはできないだろう。
「い、いや……見ないで、見ないでよぉ……ッ」
 同じマンションに暮らす顔ぶれは、ユミの知っているものもたくさんある。その前で、ユミは決定的に取り返しの付かないオモラシを疲労してしまっていた。
 痛むような蔑むような、マンションの住人たちの無数の視線の中、悲痛な叫びで泣き崩れるユミの涙は、床上に広がる黄色い水たまりの上に、ぽたんとちいさな波紋を作るのだった。




 (初出:書き下ろし)

 
[ 2009/09/04 18:10 ] 小説 | トラックバック(-) | コメント(-)
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