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ある趣味式ウミガメのスープ 



 ある趣味@JBBS 「4twt45ujrt」スレ>>237より。
 途中まで書いてから永久我慢モノになってることに気付いて、どちらのスレにも投下できなくなったネタの供養。






 MEMO

 尿意に苦しむ3人の女性と
 尿意と無縁な1人の女性

 なぜか3人は自分たちがトイレに行くより
 もう1人がトイレに行くことを優先する

 尿意とは無縁、トイレにも人一倍行けるチャンスの多い1人は
 それなのに時々おもらしをする

 さあ何故でしょう







 殺風景な部屋の中だった。
 壁も床も一面の白で統一され、目につく調度品と言えば精々テーブルと椅子くらい。それらもまた、同じ汚れ一つない白で彩られている。入口はと言えば壁の一方に硬く施錠されたドアがひとつ。どこか病室、あるいは実験室のようにも見える。
 部屋の中には4人の少女の姿もあった。背格好も服装も、年齢もバラバラである彼女達は、しかしひとつだけ、共通点を持っていた。
 部屋の中の彼女達は、全員共に、今まさに激しい尿意の最中にあったのである。

 椅子の上に浅く腰かけ、足をしきりに組み直し。
 落ち着かない様子で、ぐるぐると部屋の中を歩き続け。
 机に寄りかかるようにして、ぎゅっと脚の付け根を押さえ。
 立ち尽くし、すりすりと太腿を擦り合わせ。

 四者四様の思い思いの仕草で、彼女達は高まり続ける尿意に抗していた。
「………っ」
「はぁ……ぅ」
「くぅん……」
「ふぁ、ぁんっ……」
 必死に息を詰めて押し寄せる衝動を堪える中、飲み込み切れずにこぼれた荒い息が、悩ましげな喘ぎ声、熱い吐息となって部屋の中に響く。
 誰かがひときわ大きな波を堪えんとぎゅっと目を閉じ、股間を握り締めて腰を揺すれば、それが“呼び水”となって他の3人もすぐに小さな呻きをあげる。それがまた新たな尿意を呼び――という悪循環だ。
 当然ながら、部屋の中には身を隠す場所も、気付かれずにトイレを済ませられるような物陰もない。椅子やテーブルも機能性を追求したシンプルなデザインで統一されており、とても視線を遮るような作りではなかった。床も天井も壁も、部屋の中は磨き抜かれたように真っ白で、たとえわずかでも汚れが付けば、ひとめで目につくような状況なのだ。
 誰かが尿意に耐えきれないまま、部屋の隅でこっそり用を済ませようとしたとしても、他の3人の視界から逃れることは叶わなかった。壁に向かってお尻を丸出しにして腰を落とし、顔をあからめ羞恥に唇を噛んで、飛沫を散らし盛大に音を立て、股間から勢いよく噴水をほとばしらせる羞恥の一部始終を、他の少女達に見られてしまうことになる。
 さらにその恥辱はその行為中にすらとどまらない。
 部屋の床に傾斜などなく、排水溝のようなものも見当たらない。つまり、一度でもそんな行為に及んでしまえば、排泄の痕跡は真っ白な部屋の中に大きく広がる水たまりとなって、いつまでもそこに残り続けるのだ。
 白い部屋を彩る、におい立つ薄黄色の水面は、はしたなくも生理現象に屈した乙女失格の証拠として、少女のプライドを引き裂き続けるにに違いなかった。

「……ね、ねえ、こうしててもしょうがないよ。やっぱり……」

 沈黙に耐え切れなくなったひとりがそう言いだしたのに促され、俯いて背中を丸めていた他の少女達も、ゆっくりと顔を上げた。
 彼女達はきつく脚を組み替え、腰を小刻みに震わせながら、この部屋唯一のドアの方へと視線を向ける。
 ――正確には、そのドアの横に取り付けられたプレートへ。
 そこには、このように記されていた。




 MEMO

 尿意に苦しむ3人の女性と
 尿意と無縁な1人の女性

 なぜか3人は自分たちがトイレに行くより
 もう1人がトイレに行くことを優先する

 尿意とは無縁、トイレにも人一倍行けるチャンスの多い1人は
 それなのに時々おもらしをする

 さあ何故でしょう





 出口の閉ざされた部屋、高まり続ける尿意、そして、鍵のかかったドアのとなりに掲げられたこの不自然な文章。この三つから、この問いかけの答えが、事態打開のための何かしらのヒントになるのではないいかということは、少女達も想像しなかったわけではない。
 無論それが、即、この部屋からの脱出につながるものとは限らない。
 しかし、ただ俯いてじっと我慢を続けるだけでは、わずかに残された時間をいたずらに浪費するだけであろうことに、少女達はようやく気付き始めていたのだ。
 何もない部屋に閉じ込められ、脱出路もない。何ものかの意図を感じずにはいられないいシチュエーションだったが、その裏側をを類推するだけの材料はなにもなかったのだ。ゆえに、彼女達は最低限の自己紹介や状況の確認を済ませただけで、あとは何がしかの変化が起こるのを待つ、という消極的な選択肢を選んだのだった。
 事態の打開の方策を練ることを放棄したその判断は、しかし部屋の中に閉じ込められた状況では全くの悪手とは言いきれない。時間がたてば何か変化が――状況を説明するなにかや、誰かが現れるかもしれない。そんな淡い期待を抱いたこと自体は、けっして間違いではないだろう。
 だが、そうして無為に時間を過ごすことはただ、全員から思考の余裕を奪い、より切羽詰まった事態を呼び寄せる結果しかもたらさなかったのである。
 こと、ここに到り。少女達はいよいよ余裕のなくなった身体で、放置していたプレートの内容についても考え直す必要に迫られていたのである。

「でも、そんなの解いて、どうにかなるの……?」
「わかんないけど、こうしてても……んっ……しょうが、ないじゃないっ」

 別の少女――便宜上、先に声を発した少女をA、それに異を唱えた少女をBとする――Bの疑問に対し、Aは言葉の途中で辛くなったか、小さく唇を噛み、息をのんだ。

「も、もう……そんなに、我慢、もたなそうだもん……」

 Aの言葉は、少女たち全員の状況を代弁していた。口には出さなくても、少女達はすでに我慢の限界に近付いている。部屋の中に異性の眼は無いとはいえ、もはや外面を取り繕っている余裕がないほどにはっきりと“我慢”の仕草を隠せずにいるほどなのだ。
 このままただ時を過ごしているうちに、いつかは限界を迎えてしまう。その事実からはいくら目を反らそうとしても、逃げられないことを、少女達は自覚していたのだった。

「ね? その、気分も、まぎれるかもしれないし……」
「そ、そうですね……」

 Aの主張に、Cも賛同する。Bももう異論は口にせず、最後に残ったDも小さくうなずいて同意を示した。
 だからと言ってこの問題を解いたからここから出られるという保証もまた無いのだが――もうそんな繰り言を蒸し返す余裕は、少女達には残されていないのだ。
 最初に言葉を交わして以来、ほとんど無言のままだった少女達は、ようやくそろってプレートの文章を見直す。

「……でも、これ、どういう意味なんでしょう……」

 プレートの一文を指差して、Cが言う。

「……えっと、その、……この『1人の女性』さん、お手洗いに行かなくてもいいのに、お手洗いに行って……それなのに……ぉ…………オモラシ、しちゃうって……良く分からないですね……?」

 その言葉はあまりにももっともだ。尿意に無縁であるならば、トイレに行く必要もないし、ましてオモラシするわけもない。Bもそれに応じるように、別の一文を指差す。

「そんなこと言ったら、こっちの……、『3人の女性』だって、なんで我慢してるのか分からないじゃない。わざわざトイレに行きたくない人に、順番譲ってるんでしょ……?」
「……たぶん、そこを上手く説明するのが問題の要」

 ふいに、これまで黙っていたDが、口を開いた。
 落ち着いた雰囲気の彼女の台詞は、さして声量も大きなものではなかったが、残る3人の注目を集めるには十分だった。

「一応、さっきから考えてはいた。これに良く似た遊びがある。ウミガメのスープ……と言うけど、聞いたことは?」
「ウミガメ……?」
「あ、私知ってるかも。一見意味が分からない問題文を出して、答えるほうが相手に質問して、相手が答えて……ってやつでしょ? そういうのを繰り返して、正解を探すっていう」
「そう。ただ今回は、質問者がいないから、定番通りにはいかないけど」

 Aに頷いて、Dは椅子からゆっくり腰を浮かせると、そっとプレートに近付いていく。
 一見、表情もあまり変わらず、落ち着いて見えるDだったが、立ち上がるのにも十分すぎるほどに慎重に時間をかけている様子から、彼女も他の3人と同じように我慢の最中にあることは明らかだった。

「一読しただけでも、この問題文には矛盾があることは明らか。でも、最後に『なぜ』を問う言葉があるからには、この矛盾を満たすような状況が、解答とされているはず」
「そうね、それを見つければ……んっ……いい、のよね?」
「……意地悪な、問題文だけどね……」

 吐息と共にAがそう言うと、B、C、Dも思わず曖昧に視線を反らす。Aがそっとさすった下腹部は、石のように固く張り詰め、重く恥骨の上に圧し掛かってくる。
 少女たちは皆、刻一刻と高まり続ける排泄欲求を、時限爆弾のように下腹部に抱えているのだ。この状況では、できることならトイレにまつわるような会話は避けておきたいというのが普通だった。いつ終わるともしれない苦痛の中で、気をまぎらわすにはあまりにも向いていない。
 そんな少女達の心理を見透かすように設定されたとしか思えない、プレートの問題文。尿意に苦しむ女性達を題材にしたその問いかけは、少女達にはあまりにも悪趣味なものとしか思えなかった。

「状況を、整理……してみる。文章は3つの段落からできていて、それぞれ1段落目は尿意について、2段落目はトイレに行けるかどうか、最後は……間に合わないかどうかについて書いてある。
登場人物も2種類に分けられる。『3人の女性』と、『1人の女性』……」
「3人いるのに、2種類……なんですか?」
「3人は一セットっぽいから、それでいいんじゃないかな……状況も同じだし」

 Aが補足すると、Dはわずかに息を飲み、ぶるる、と腰を揺すってからプレートの文章を指差した。

「このうち『3人の女性』については、状況は分からなくもないと思う。尿意に苦しんでいるけど、トイレに行くのは後回し。『3人の女性』が……オモラシをしたかどうかは記述がない。……であれば、何か理由があって『3人の女性』が『1人の女性』を優先するのなら、そんなにおかしくはない。けれど」
「要するに、問題なのは、『1人』のほうなのね。……と、トイレに行かなくてもいいのに、『3人』に順番を譲られる……?」
「……辛いのは分かるけど、言葉を言いかえると意味が変わるかも」
「わ、わかってるわよ……っ」

 Bが顔を赤くする。彼女はまさに今、我慢の絶頂にあるようで、ぎゅうぎゅうと股間を押さえこんでしまっていた。喋る余裕があるというよりは、少しでも気分をまぎらわせたい一心なのだろう。その状況で『オモラシ』なんて単語が禁忌中の禁忌であることは皆も理解していた。限界近い我慢の極限状況では、言葉すらも容易に崩壊の呼び水になり兼ねない。
 押し寄せる尿意の波に耐えかね、Bが無意識のうちに他の言葉を選んでしまっているのは間違いなく。その気持ちは、他の3人にも十分すぎるくらいに共感できた。
 だが、Dの言うことにも一理ある。Aはそう思い、言い直す。

「ええと、『1人の女性』は、にょ…尿意と無縁なのに、『3人』より優先してトイレに行けて、……それなのに、お、……オモラシする?」
「……これ、『1人の女性』さん、お手洗いに入れてるかどうか、わからなくないですか? 行くチャンスが多いっていう、だけで……その、私たちみたいな状況なら……」
「どういうこと?」

 Dの問いかけに、Cはかあっと顔を真っ赤にして俯いた、足元を見つめるように視線を落とし、その場でもじもじと手を握り締め、足を擦り合わせる。
 言いにくそうに――しかしもはや躊躇している場合ではないと、彼女も悟ってはいるのだろう。3人の視線に晒されながら、Cは少しずつ話し始める。

「あ……あの、ですね? その、は、恥ずかしい話、なんですけどっ……わ、わたし、……その、……わ、和式の……お手洗い、使えないんです……。あの、小さい頃、両親の仕事の都合で、外国に居て……」
「…………」
「そ、それで思ったんですけど、……この『1人の女性』さん、お手洗いに行くチャンスはあっても……そのお手洗いが使えなくて、……ええと……お、オシッコは、我慢したままなんじゃないかな……って。それなら、オモラシしちゃっても……」
「でも待ってよ、じゃあ……この、尿意と無縁ってのはどうなるの?」
「あ、……そ、そうですね」
「尿意と無縁ってことは、……ぉ、オシッコ、したくないってことでしょ? なのに……なんで、オモラシ……なんか、しちゃうわけ?」

 Bに指摘を受け、尻すぼみになりかけたCだったが、Aが代わりにその先を続ける。

「自己申告、とかかな…? ほら、恥ずかしくて、トイレって言えない時ってない? 今はさ、もうどうしようもないから、私もぶっちゃけちゃってるけど……あんまり大っぴらに言うことじゃないし」
「でも、この問題だと、女の子どうしで……ですよ? そんなに遠慮なんかしなくても……」
「せ、先輩とか、先生とか、みっともないとこ見せたくない相手って、……女の子相手でもいると思うんだけど…どうかな? ほ、ほら! それに、他に男の人が、いるのかもしれないし!! ねっ!?」

 ――あたし、トイレなんか行かないもん。
 具体的に口にしてみれば、まるで漫画の中のようなセリフだ。そんなことを公言するのは――少なくとも、幼稚園くらいのころまでじゃないだろうか、とAも思ってはいた。
 それでも。憧れの相手が目の前に居たのなら。自分はそうしてしまうかもしれない。そのAの告白は、実際にそうした相手がいることを宣伝しているのに等しいものだったが――敢えてその事は、誰も指摘せずにいた。

「――興味深い意見だけれど、もし、羞恥を理由にそう言っていても、『3人の女性』にトイレを譲られていたら、成り立たないと思う」
「そ、そっか……そうだね……」
「それに、一応は客観的に書かれている文章だし、疑うのはもう少し他の可能性を考えた後でもいいかも。問題文に規定のない内容は、あるとも言えるし、無いとも言える。書いてないから何でもありだ、と考えていると……かえって思考がまとまらない
「ほ、他の可能性って……?」
「例えば、この――『トイレ』が『お手洗い』や『お花摘み』のような、隠語の意味を含んでいる単語だったなら、今の推論は矛盾を満たして成り立つかもしれない。
 『1人の女性』が本当に尿意とは無縁であったとしても、『お手洗い』や『お花摘み』が文字通り“手を洗う場所”だったり、野原で“花を摘むこと”だったりすれば、いまの解答でも文脈的にも違和感はないと思う。でも――普通、トイレと言えば―――排泄、以外の用途ではあまり使われない。一応、着替えや化粧直しのためと取れなくはないけれど……それで通すには、少し苦しい」
「そ、そうだ、けど……」

 Dの論調は、全員に賛同を持って受け入れられたわけではなかった。
 しかし、実際に今のCとAの回答でも、特に部屋の中に変化は見られなかった。回答の方法すら定かではないが、正解が他にあるのなら、考えを休めるのは得策ではない。
 だが、他の答えを導き出すのはそう簡単なことではなかった。
 ふと生まれた会話の空隙に、相談はぷっつりと途切れたまま――4人は問題文を前に、再び沈黙を始めてしまった。

「んあっ……」
「はぁ……はぁ……っ」

 考えをまとめ問題に集中しようとする傍から、くつくつと下腹で煮詰まる尿意は激しさを増し、少女達の思考力を外へと追いやってゆく。
 いったん言葉が途切れると、その隙を見計らったかのように、尿意がいやらしく津波のように割り込んでくるのだ。溜まらず腰を揺らし、身をよじり、少女達の身じろぎの音だけが、部屋の中に響く。

「ぅ……く……っ」
「……ふ……」

 Cなどは我慢しきれないのか、机の角に股間を押し当て、ぐりぐりと体重をかけてねじり出す始末だった。Aも両手を脚の付け根に押し込み、Bはその場で行進の練習でもしているように足踏みを繰り返す。
 一番落ち着いていたように見えるDですら、その場にしゃがみ込み、かかとを脚の付け根に押し当てるようにして、開きそうになる恥ずかしい液体の出口を押さえこんでいた。

「……あ、あのさ……思ったん、だけどっ」

 沈黙に耐えられなくなったか、閉じ合わせた太腿の奥、ちょうど恥骨のあたりを、身体の前と後ろから押さえながら、Aが息を荒げて言う。

「と、トイレって、ほかに使わないかな……? き、気分悪くて吐いちゃう時、とか……。ほ、ほら、そうすれば、尿意と無縁でも、『3人の女性』より、優先されるかも……」
「……それだと、……ぉ…『オモラシ』……の、ほうに、無理がでちゃいませんか……? これも、あんまり……その、おトイレする時以外には、使わない言葉だと思います……」
「あ……あぁ~……そ、そっか。そうだね……」

 Aは誤魔化すように舌を出して見せた。
 普段ならば些細なしぐさだが、それくらいのことでもAは顔をしかめ、きつく身をよじる。
 その切羽詰った姿に、もう、Aには余裕がほどんどないことをありありと伺わせていた。そしてそれは、他の3人も全く同じことだ。

「でも、そうすると……えっと……うーん、と……っ、んぁ……うぅ……だめだ、うまく考えらんない……っ」
「っ……はあ、っ、も、もう、何なのよ……これ……。こんなのに、答えなんかあるわけ……?」

 Bのセリフは、その場全員の気持ちを代弁していた。
 本当にこんなことをしていていいのか――根本的な疑問が少女たちを疑心暗鬼の渦へと追い込んでゆく。こんなわけのわからない問題に、馬鹿正直に答えている暇があるなら、もっと他に、現実的に尿意を解消する手段や、脱出の方法を探すべきではないのか?
 そうして部屋の中の雰囲気は、またも振り出しに戻ってしまう。さっきよりも余裕をなくし、さらに険悪な雰囲気のまま。
 不可解な設問と不可解な状況、そして迫りくる限界がまともに考える余裕を奪い去ってゆく。
 身悶えしながら少女たちは、まるで図ったように同時に――けれどそうと意図はせぬままに、部屋の中を見回して、どうにか用を済ませる方法がないかを確認した。

「…………」
「…………」
「…………」
「…………」

 しかし――視線を遮るものなどなにもなく、ただただ継ぎ目なく広がる、汚れ一つない白い部屋のなかで、いったいどうやって、こっそりとオシッコを済ませることができるというのだろうか?
 下腹部を締め上げるほどにきつく服が食い込み、かたく強張った下半身はぱんぱんに膨らんでいる。
 少女達は皆、いちど自分が壁や部屋の隅に向かってしゃがみ込んだが最後、床一面を余すところなく覆い尽くさんばかりにあきれるほどたっぷりと、大量に、オシッコを出してしまうことを理解せざるを得なかった。
 考えてみれば、この部屋自体が、あえて排泄の痕跡を決して隠滅できないような構造になっているのかもしれない。
 それは、今の状態を作り出した誰かの意図を想像すれば、決して的外れには思えなかった。

「で、でも……やっぱり、こんなところでなんて……っ」

 悲痛な声を絞り出し、Cが叫ぶ。
 室内にいるのは全員ともが年頃の少女だ。排泄や性に関することには人一倍過敏になる年代であり、たとえ同性にだってトイレに行くのは見られたくはない。まして、他の視線や物音を遮ることすらできないこの密室で、他の3人の前でオシッコをするなんて――
 検討するまでもなく、許容はできない。

「ぁ……ぁ、あっ」

 不意に、Aが唇を震わせて、小さく囁く。
 ぱくぱくと口を押し開き、切羽詰って絞り出されるかすれた声は、しかし狭い密室の中にははっきりと響いた。

「ダメ、……っ、も、もう、ガマン……できない、かもっ……」
「ちょ、ちょっと!! やめてよね!? じょ、冗談じゃないんだからっ」
「で、でも……っ」

 くねくねと身をよじるAに、Bが声を上げる。こんなところでオシッコなんて――という非難をぶつけられてなお、Aはもはや耐え切れないという姿勢を隠そうとはしなかった。
 ちらちらと、部屋の隅とB、C、Dの3人とを、眉尻を下げた視線で交互に窺う。

「やめてってば……!! ホントにっ」
「だ、だって……」

 Aの様子はもはや限界をはっきりと示しており、両手を身体の前後から閉じ合わせた膝の奥に突っ込んで、ぎゅうぎゅうとスカートを引き絞っている。いよいよ乙女のプライドが、迫りくる崩壊の危機に屈し始めているのは明らかだった。
 そんなAを、Bは激しく非難する。

「やめてよ!! そんな、小さな子じゃないんだからっ」

 単純な嫌悪感だけではない。Bも、同じように尿意の最高潮を迎えているのは変わらないのだ。沈黙を貫くCも、同じようにうらみがましい視線をAに向けている。
 一人だけ先にそこからの解放されようとしているAへの嫉妬と、そんな事をされたら自分ももう我慢していられなくなる――という心理だった。 Aが我慢に我慢を重ねたオシッコを済ませる決断をし、その光景を目の当たりに(たとえ直接は目にしなくとも、音やにおいや、地面に撒き散らされた水溜りを見れば)、これ以上を我慢をつづける気力を失い、同じように部屋の隅で済ませてしまおうという誘惑に打ち勝てる自信がないのだった。
 その気持ちはAも理解している。けれど、大自然の誘惑の前に、もはやこれまですがり続けてきた乙女のプライドすらも限界だった。
 だが――

「ひとつ……」

 その、Cの叫びを引き金に、Dが何かに気づいたように表情を変える。

「ん…っ、……ひとつ、思いついた……」

 3人が慌ててDのほうを振り向く。気づけば、Dも恥も外聞もなく、その場に足踏みを繰り返していた。身体をメトロノームのようにリズムよく大きく左右に揺すり、なお口調だけは冷静に、静かに吐息を飲み込んで、Dは続ける。

「子供……そう、この設問はただ、女性としか言っていない。つまり――単にこれを、成熟した女性として考えるのではなく、男女の区別をする性別を表わしたものだとすれば、その年齢は問うていない」
「……どういうこと、ですか……?」

 Cは、壁に手をついて前屈みのまま、Dを促す。
 出口のない部屋の中、迷宮のように正解のみつからない問題。思考と現実、二重の密室の中で、わずかな開放でもいいから、事態の打開を皆が望んでいたのだ。
 猛烈な尿意を抱え込みながら、いまにも出口をこじ開けそうな乙女の羞恥の噴水をなお堪え続けるには、それしかなかった。

「つまり、この『一人の女性』が幼児、あるいは生後間もない年齢であると仮定する。そうすれば……」
「そ、そっか! 小さな子がトイレに行きたがってるなら、他の人はトイレに並んでても、順番、譲ってくれるってこと!?」
「……そう。その過程なら、……オモラシをしてしまうことも説明、できなくはない。……低年齢であるなら、尿意を我慢する能力も未発達だから」

 見え始めた光明の中、少女達の顔に解決の糸口を掴んだことへの安堵が覗く。
 しかし、そんな中、Bはまだ異論を挟む。

「ちょっとまって、じゃあ、この――尿意と無縁ってのはどうなのよ? 小さい子だって、トイレに行きたいんだから、無縁ってのはおかしくない?」
「……あ、赤ちゃんならどうですか? ……オムツ、当ててるくらいの、生まれたばかりの子なら……その、ガマンっていうほど、しっかり我慢できてないっていう風には、言えませんか?」
「そこは、正直、微妙でも、あるけど……」

 Dもその部分だけは自信がないようだった。珍しく困惑を見せながらも、持論を曲げようとしない彼女も、もはや限界が近いのだ。これからまた、一から思考を積み上げるような回り道は、許容できないに違いなかった。
 切羽詰った尿意はいよいよ激しさを増し、刻一刻と残り少ない余裕を削り取ってゆく。タイムリミットは目前に迫り、他の思考を今からまとめる余力は、もはや少女たちの誰にも残されていなかった。

「…………」
「…………っ」

 息を詰めながら、少女達はじっと、この設問を設けた主に対して、必死に考えだした回答をぶつけるしかなかった。
 じっと、ただじっと――4人の出した答えが、正解であることを信じて。
 その正解が、この停滞した状況の澱みを打ち破り、皆を解放へと導いてくれることを信じて。
 じっと、4人はドアを睨みつけた――



 (初出:書き下ろし)

 
[ 2010/09/10 23:19 ] 小ネタ | トラックバック(-) | コメント(-)
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