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河川敷の運動会・4 


 梅雨晴れの空に花火が鳴り響く。
 開会から2時間ほどが過ぎ、河川敷の市営グラウンドには、続々と人々が詰め掛けていた。東西に築かれた紅白の入退場門にはジャージや体操服姿の少年少女達の姿が多く見られる。
「がんばってね、二人とも」
「うん。応援してるからねっ」
 早朝から場所取りをしていると思しき家族連れが観客席をにぎわせる隣では、選手と思われる少女達が今日の意気込みに闘志を燃やしている。

『……プログラム9番、学校選抜対抗リレー・予選に参加されるかたは、入場門前に集合してください』

 放送が呼びかける中、入場門前には既に参加選手たちが列を作っている。
 行儀よく整列し、体育座りをするのは皆同年代の少女達だ。上半身だけジャージを羽織り、その裾からは学校指定の白いハーフパンツ。胸元には所属を示す色とりどりのリボンが覗く。
 もうすぐ出番とあって、入場待ちをする少女達の間にはかすかな緊張感も感じられる。不安に眉を下げている少女を、隣の少女が励まし、お互いに頬笑み合うといった微笑ましい光景も見られた。
 が―― 
「…………」
 そんな中、体育座りの膝を小刻みに揺らし、不安に顔を曇らせている少女が一人。
(……こんなに待たされるなんて……)
 丈の短いハーフパンツのせいで、ジャージから直接伸びているようにも見える足を小さく揺らし、彩香は一人後悔していた。そっとジャージの上から、重くなり始めた下腹部をさすり、小さな溜息をつく。
(これなら、あのまま並んでたら間に合ったかも……)
 リレー予選の選手呼び出しがはじまったとき、彩香はトイレの順番待ちに並んでいた。その時の彩香の前にはあと2人を残すのみで、あと少しすれば順番が回ってくる所だったのである。
 後ろ髪を引かれる思いを断ち切って、諦めて列を抜けて来たというのに――かれこれ10分近く、いまだに彩香の出番はやってこない。
 グラウンドでは相変わらずひとつ前のプログラムの障害物競走が続いていた。進行の都合で競技が長引いてしまっているのだが、トイレを諦めて素直に指示に従っている身としては文句の一つも出ようというものだ。
「ん……」
 もともとの尿意に加えて、いよいよ自分たちの出番だと言う緊張感も、下腹部の張りに拍車を掛けているようだった。こんな状態でリレーなんて、不安がよぎる。
(……ん……っ)
 じんっ、と軽く出口をノックする尿意に、彩香は小さく腰を揺する。
 行儀よく順番を待つ体育座りの列の中、一人落ち着かない様子の自分がみっともなく感じられた。
「はぁ……」
 もう一度、溜息がこぼれる。まさか、漏らしてしまうなどということはないだろうが――決して万全の体調とは言えない。こんな状態で思い切り走れるかというと甚だ疑問であり、リレーの順位にだって影響があるかもしれないのだ。せっかく選手に選ばれているのに、こんなことでつらない成績を残したくなかった。
「……志穂ちゃん、間に合ったかな」
 一緒に列に並んでいた友人が、せめて自分の分まですっきりしていられるようにと心の中で思いながら、彩香はもう一度、張り詰めたおなかを撫でる。
(どれくらいかかるんだろ……)
 競技が始まったとしても、すぐに彩香の順番ではない。
 リレーに参加するのは市内の5校から代表2チームずつで、1チームは初等部の4年生から中等部まで、学年ごとの6人が第一走者からアンカーまでを務める。つまり競技に出場するのは男女でぞれぞれ計60人だ。
 予選ではグループを2つに分けて行い、各予選の上位2校が決勝進出となるのだが――
 彩香の出番は第二グループ、走順は4走目であり、まだまだ出番は先になる。
「…………」
 どうせ並ぶなら――これもトイレの順番待ちならいいのに。
 高まる緊張感の中、彩香はそう思いながら、列の前方を見た。
 しかし、この列の先にあるのはトイレではなく、大勢の応援の交わされる晴れ舞台だ。
 リレー選抜の学校代表として参加するのに、そんな最中に恥ずかしい格好はしていられない。
 ぐっと奥歯を噛み締め我慢のしぐさを飲み込んで、彩香は入場行進促すアナウンスを待ち続けるのだった。



 そして15分。今度はグラウンドの真ん中で、相も変わらず彩香はじっとオシッコを我慢を続けていた。
 ただし、いま待っているのは競技の出番。リレーの走者の順である。
 トラックに出て、スタートラインに続々と並ぶ第1グループの走者たちを、放送と観客の声援が後押ししている。彩香もやがて彼女達と同じようにトラックに並び、あれと同じバトンを受け取ることになるのだ。
 もうすぐ出番――そう思っては何度も首を振って、頭の中からトイレの事を振り払おうとするが、下腹部を重く膨らませる尿意はじんじんと疼き、無視することを許さない。
「んっ……」
 順番が来るまで待つよう指示された体育座りの姿勢も、オシッコを我慢するには向いていない。脚を揃えて地面に直接腰を下ろしたこの耐性は、曲げた膝で下腹部を圧迫し、さらに股間の大事な場所を無防備に外気に晒してしまう。ちょうど、和式便器で用を足す姿勢でそのまま後ろに尻餅をついたような格好に近いのだ。
 地面の冷たさにモジモジと腰をよじり、そっと回した手で太腿の後ろからハーフパンツの股間部分の布地を掴む。わずかに汗ばんだ手のひらは、一向に休まる様子のない尿意の波を耐え続けているためものだった。
(……オシッコ……オシッコしたい……)
 早くトイレに行きたい。これが普段の授業中なら、手を上げてでも教室を飛び出しているだろう。ふー、ふー、と荒い息が体操服の胸元に埋めた口元から漏れ、強い衝動をますます加速させる。
 第1グループの第1走者がライン出揃い、パン、とスタートのピストルが跳ねる。一斉に駆け出す一年生たち――が、すぐに再度、ピストルが2回鳴らされた。フライングの合図だ。
 走者は呼び戻され、再度ラインへと並ぶように指示が飛ぶ。気合い十分で走りだした選手の中には、かなり遠くまで走っていってしまった者もおり、戻ってくる間にもまた時間が浪費されてゆく。
 それらの全てが、彩香には鬱陶しいほどにもどかしい。
(……はやくしてよ……!!)
 彩香にとっていまの待機列は、待ちに待ったリレーの晴れ舞台を臨む緊張の瞬間ではない。一刻も早く、自分の走る順番を終えて、そのままトイレへと全力疾走するための順番待ち行列の延長に近いのだ。
 オシッコを我慢したまま競技に参加することが、真剣なはずの他の選手達を侮辱しているような気がして、彩香は羞恥と共に申し訳なさすらを感じてしまう。
 だが、いくら集中しようとしても、下腹部にはずしりと重いほどに恥ずかしい熱湯が詰まった感覚が膨らみ、大事なところの出口をしきりにノックする尿意はおさまらない。
「ん、はぁ……っ」
 吐息と共にぶるぶると腰を揺すってしまい、隣に居た選手の少女が少し不審げに彩香を見る。
 再度ラインに並んだ選手達が、ピストルの音と主に、今度こそ一糸乱れぬスタートを切る。空気を叩く空砲の音色に、じんっ、と彩香の下腹部の中の液体にも波が走るようだった。
 まるでゴールまでのカウントダウン。一周400mのグラウンドを駆ける選手たちは、まるで大きな大きなストップウォッチの文字盤を進む針のようだ。あの針がグラウンドをあと何周したら、彩香の番が回ってくるのだろう。
(えっと、あと5人だから……5回で……私の前に3人いて……あ、でも全員走り終わるまでグラウンド出れないし……、それに、入賞したら順位発表もあって…、っ…だ、だから……)
 ちゃんと考えればすぐに分かるはずの、簡単な計算もうまくできない。ちくちくと下腹部を刺激する尿意は、彩香の頭から冷静な思考力も奪いつつあった。
 前に居た選手たちが、第二走者としてバトンタッチのために出走位置へと向かってゆく。
 彩香も立ち上がりその後に続いた。たぷんたぷんと揺れる恥ずかしい液体を感じながら数歩を歩いて、また体育座り。
 ハーフパンツと下着の下に隠されたオシッコの出口が、ひくんと震える。
(あと3人と3人で、6人だから……1周1分として……6分で……)
 彩香は忘れている。ついさっきまで自分が並んでいたトイレの事を。時間の経過と共に続々と増え続けるトイレの順番待ちの行列が、いまや数十メートルにわたって個室のドアから伸び続けている事を。
 このグラウンド中央、リレー予選グループの出走順番待ちなど、トイレ前の大行列に並び、個室に辿り着くまでの耐え難くも苦しい、長い長い地獄のような時間に比べれば、ほんのささいな予選会に過ぎないことを。



 女子選抜リレー・予選の第2グループは、彩香のチームがトップで予選通過、決勝進出を決めて幕を閉じた。
 前評判を覆す結果をもたらしたのは、彩香の出した記録によるところが大きい。第四走者の彩香の時点で、トップとの差は10秒以上。チームの順位は5位だった。それを彩香はたった一人で一気にごぼう抜きして、1位まで躍り出たのである。
 チームはがぜん勢いづき、そのままトップを独走。かくして彩香達のチームは予選にも関わらず、順位発表の際には会場も喝采を持って出迎られることとなった。
 バトンタッチの時に、次走者を追い抜きかけてしまったのも、勝負にかける意気込みゆえの御愛嬌。放送による応援が観客を沸かせ、彩香には多くの歓声も飛んだ。
(……うぅ、あのままおトイレ行けてればよかったのにっ……)
 しかし、実際のところは違う。
 競技の直前、彩香は緊張で急激に高まった尿意に、居ても立っても居られないほどに追い詰められていたのだった。もはや走順までは猶予がなく、トイレに行くどころか前押さえすらしていられない状況。
 ほとんど無我夢中でバトンを受け取り、リレーの事もほとんど忘れてそのまままっすぐにトイレめがけて突っ走ったというのが真実である。
 そう。バトンを受け取った瞬間、彩香の頭は真っ白だった。
(出ちゃう!! オシッコ、オシッコ出ちゃう!!)
 いまにもしゅるしゅると音を立てそうなハーフパンツの奥を必死に押さえ込みながら、何もかも放り出して一目散にトイレを目指した。恥も外聞もかなぐり捨てての全身全霊の疾走がもたらした、空前の大記録だったのだ。
 だから、バトンタッチの事も忘れてトイレを――『オシッコのできる場所』目指していた彩香を、掴むように引き留めたチームメイトの次走者を、彩香はまるで睨むように見てしまったほどだ。
 幸い、その視線は勝負にかける必死さということで理解して(誤解して)もらえたようだが――問題はそんなことではない。
 結局、あんなにしたかったオシッコを、一滴も出すことができないまま、彩香はグラウンドに残り続けなければならなかった。
(んぁうッ……だめ、ガマン、我慢んっっ……)
 排泄孔を閉ざそうとする懸命の努力により、おしっこは辛うじて下着を湿らせた程度にとどまり、ハーフパンツにはわずかな染みを作るのみで押しとどめられている。しかしそれは同時に、出したくてたまらない羞恥の液体を下腹部の中に詰め込み続けているのと同じ意味だ。我慢を続ければ続けるほど、彩香の下腹部を膨らませるオシッコの量は増え続けてゆくのだ。
「お疲れさま。カッコよかったよー」
「っ……!!」
 退場門で出迎える香織や貴音たちの声に応える余裕もなく、彩香は彼女達を振り切るようにしてトイレへと走った。
 時刻は間もなく11時半。プログラムの進行が遅れているため、昼の休憩は12時を回ることが確実視されていた。
 三度、管理事務所横トイレのの大行列を通り過ぎ、もうひとつのトイレ――仮設トイレに向かった彩香は、そこの大混雑に顔を歪める。
「んっ、ぁ、あぅぅっ」
 内股に揃えた脚の付け根をきつく握り締め、絶望に傾いてしまいそうな心を懸命に繋ぎ止める。半ば以上予想できたこととはいえ、こうして直接、目の当たりにすると、数十人を超えるトイレの順番待ちの光景は少女のか細い希望を折り砕くのに十分だった。
(っ……が、がまん、がまんっ……)
 また、脚の付け根にじゅじゅぅ、と熱い雫を滲ませてしまいながら、それでものろのろと列に並び始めた彩香だった。



 およそ――40分。昼の休憩の半分ほどを過ぎて、彩香はようやく、仮設トイレ待ちの大行列の半分以上を過ぎた、列の先頭近くへとやって来ていた。
 これまでに4回、猛烈な尿意の大津波があった。
 一度目はうずくまってなんとか耐えた。二度目は思い切りハーフパンツの上から握り締めた下着の奥に、じゅううっと思い切り黄色い雫をちびらせてしまった。三度目はしゅるしゅると漏れ出す水流を押さえ込めず、膝の裏や太腿の内側にせせらぎを滴らせてしまった。
 そして四度目は体操服のほとんどをびしょびしょに濡らすほどになり、漏らしたオシッコは身体の前で握り締めた体操服のシャツにまで薄黄色い染みを広げている。
(あぁぁ、ぁはやくぅ、はやくうっ、きちゃう、また、来ちゃうっ……!!)
 もはや崩壊寸前の水門は、たった今凄まじい大波を乗り越えたばかりだと言うのに、早くも5回目の大津波の予兆を知らせている。
 行列の先、彩香の前にはあと6人の少女がいた。うち3人までは、彩香と同じかそれよりも危険そうな状態で、残りの二人もしっかりと体操服の股間に濡れ染みを広げている。
 少女達はみな、ドアノブの赤い『使用中』マークに閉ざされた仮設トイレのドアを睨みつけ、一刻も早くそこが開いて、自分の順番が近づく事を渇望している。
「あとちょっと、あとちょっと、あとちょっとだけぇ……っ」
 5度めの尿意の大津波に怯える彩香は、目の前の残りわずかな順番待ちの人数を数えて心を慰めようとする。これまで4回、なんとか耐えてきた。あと6人、2人待つ間に1回、大津波が来るとして、あと3回――なんとかそれだけ、我慢を続ければ、トイレに入れる。オシッコができる。4回目と5回目の大津波の間にわずか20秒しかない現実を無視した計算だったが、そうとでも考えなければ今この場で、力尽きた身体は勝手にオシッコを始めてしまうだろう。
 必死に脚の付け根を締め付け、数を数えて残り時間のカウントを始める彩香。
 だが――そんな彩香の前、列の先頭で騒ぎが起こる。
「な、なによ……これじゃ、使えないじゃないっ……」
 ヒステリックな叫びが聞こえてくる。そう。仮設トイレの一つが故障したのだ。
(え……?)
 あまりのことに、彩香は我慢に腰を揺することも一瞬忘れ、ぽかんと口を開けていた。
 あまりに多くの少女が詰めかけ、次々に溜まりに溜まったオシッコの処理をし続けた結果、過剰使用に処理能力の限界を迎え、トイレのタンクが故障、汚水が溢れだしてしまったのである。その有様は惨憺たるもので、とてもでは使用に耐えなかった。中には列が無くなったことで、少しくらいのトラブルならと壊れたトイレに近づいた『豪の者』もいたが、個室内の惨状を一瞥してすぐにそれを諦めていた。
 ここを使うくらいなら、外でオシッコした方がマシ。壊れたトイレは。、それくらいに思えるほどのひどい有様だった。
 少女達の多くはそれを叫び、嘆き、文句を言って――それでものろのろと、絶望に彩られた表情を見せながらも、懸命に他の列へと並び始める。さらに長く伸びる行列に、少女達の間から呻きともつかない喘ぎがこぼれる。
 そんな中、彩香は動けなかった。
(う……嘘……嘘よね、冗談、よね? だって、だって、ずっと我慢して……こんなに並んで、やっと、もうすぐ、オシッコ……。できる、のに…っ)
 まさか、まさか。不安に駆られながらも、彩香は目の前の事実から目をそらそうと必死だった。激しく下半身、脚の付け根を押し揉みながら、その場を離れられない。
 この後、昼休憩のすぐ後に、彩香達のリレー決勝が始まるのだ。
 昼休憩は残り15分。これまで40分以上も並んだのだ。仮設トイレの一つを失ってさらに長くなった列に並んで、自分の番が回ってくることなどありえない。
 あのまま、トイレが壊れずにいれば、もうすぐ、オシッコができていたのに。個室から出てきた子たちのように、天上の悦びを垣間見るほどの解放感を味わえたはずなのに。どうして、よりによって――いくつもある仮設トイレの、自分の並んでいる場所だけが壊れてしまうのか。
 運が悪いとしか言えないが、不運なんて言葉で片付けられていいものではなかった。
 彩香は縋るように隣の列を見る。が、他の仮設トイレを前にして、並ぶ少女達は一様に視線をそらせ、列をぎゅっと詰めるばかりだ。一人二人ならともかくも、トイレひとつが丸々使えなくなるとなると、彩香たちの列を全員、どこかで受け入れなければならなくなる。
 ここまで長い間辛抱した上に、それは誰も彼も願い下げだったのだ。
 順番待ちの先頭に居た子が悲鳴を上げ、その場にしゃがみ込んでしまう。とうとう待ち切れず、その場でオモラシを始めてしまったらしい。その悲痛な叫び声にも、列は動かない。まるでスクラムを組むように強固に連結した順番待ちは、間に異分子を挟みこむことを拒絶していた。
 うぅーっ、と口の中でうめきをあげながら、別の少女が彩香の隣を通り過ぎてゆく。怒りよりトイレを優先した。隣の列の一番後ろまで走って行って並んだのだ。
(……そ、そんな……)
 その流れはもう決定的だった。並ぶ場所を失い、更なる“難民”となった彩香たちは、他の列の一番後ろに並ばねばならない、という約束が出来上がってしまったのだ。
 もたもたしている少女たちを置いて行くように、まだ余力のある何名もの少女達は他の順番待ちの列に並び、動けない少女達を取り残してゆく。


 そうして――お昼ご飯を食べることもないまま、昼休憩のほとんどを費やしてなお。
 彩香はついにトイレへと入ることは叶わず、予選を終えた時を遥かに上回った尿意を堪えたまま、リレー決勝へと向かう羽目になる。
 レースの開始と同時、おチビりを始めてしまった彩香は、4番目の走順でスタートラインに並んだ瞬間に思い切りしゃがみ込んでしまい、足元に猛烈な水流を噴き付けてしまう。
 驚く他の走者やチームメイトを余所に、ほとんど無意識のまま、バトンを受け取ろうとした彩香は、そのままへっぴり腰のよろよろ歩きで、オシッコまみれの手を伸ばして、立ち上がろうとして――そこで限界を迎えた。
 溜まりに溜まった尿意を迸らせながらも、選手としての責務を果たさんと前に進もうとして。彩香は、そのままばちゃばちゃと恥ずかしい乙女の水流を、トラックのコース一面に撒き散らしてしまったのである。
 競技はそのまま中断し、予選の大活躍とは一転、クラスをどん底の最下位へと叩き込むという結末を迎えたのだった。




(初出:書き下ろし)
[ 2012/01/02 22:29 ] 小説 | トラックバック(-) | コメント(-)
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