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社会見学バスの話・40 崩壊の引き金 


 びっしりと車線を埋め尽くす渋滞の列をかなり強引に横切って、社会見学2年A組のバスはサービエスエリアへの分岐へと差し掛かる。
 恥ずかしい尿意に下腹部をぱんぱんに膨らませ、もはや一刻の猶予もない28人の少女達を乗せ、バスは精一杯の速度で、4時間半ぶりの休憩場所へと急いでいた。
 周囲からの視線を遮るため、カーテンを閉め切った車内は薄暗い。少女達の肌はじっとりと汗ばみ、うなじや襟もとは制服の下のブラウスに張り付いていた。皆の要望で、尿意を加速させる冷房は切られ、車内の温度は徐々に増しているのだ。
 俯いて荒い吐息を繰り返し、かすかなうめき声を堪える。時折、だんだんと床を踏み鳴らす音も断続的に響いていた。革靴の爪先が床を擦り、ぎゅうっとスカートを押さえ込む手のひらと共に、座席シートに押し付けられた腰がぎしっぎしっと淫靡なリズムを刻む。
 きつく唇を引き結び、あるいは中途半端に押し開いて、視線の定まらない目は宙をさまよい――下腹部に荒れ狂う猛烈な尿意に必死に抗う。少女達を襲う排泄欲求は、波と形容するよりは、高潮――あるいは氷河期の終了に伴う海面上昇に近かった。
 一定の間隔をもって押し寄せるのではなく、乙女のダムの内側でせり上がった水面は、そのまま水位の限界線を越えて外に溢れだそうとしているのだ。どれだけ水門を硬く閉じようと、もはやなにをどうやってもそれ以上、内側に液体を留めておけなくなっている。
 ずっしりと、まるで砂袋のように重くなるほど、伸び切った膀胱が一気に収縮に転じ、硬く張りつめた『水袋』が思い切り握りつぶされそうになる、そんな尿意。

 おしっこ。
 
 その四文字が、酷使され続けた排泄器官同様に、少女達の思考のほとんどを埋め尽くしている。サービスエリアでの臨時トイレ休憩を前に、出口に続く短い排水経路に注水が開始され、ほんのわずかに皮一枚を隔てたおしっこの孔のすぐそこにまで、濁流のごとき羞恥の熱水が押し寄せる。
 少女達がその身体の内に抱え込む秘めやかな『水袋』は、満水の中身を保持するために適した姿勢とは正反対の上下さかさま、出口を下に向けているに等しい。脚の付け根、股間の先端、恥ずかしいオシッコをため込んだ膀胱の一番底に、もっとも脆い水門がヒク付きながら震えている。
 ブラウスの下腹部を硬く張りつめさせ、高まる水圧にも関わらずなお注水は続き、膨らみ続けでいる。既に我慢は肉体の限界を越え、精神が身体を凌駕する領域だった。
 乙女のプライド、羞恥心、潔癖な心――そんなものに頼って、途切れそうになる心を奮い立たせ、懸命に、出口を閉じ合わせる。
 まさに一色即発、限界寸前。些細なきっかけがバスの中に大参事を引き起こす引き金になろうことは明らかだった。
 だから、バスがいよいよサービスエリアに近づいたことを知らせるアナウンスがあっても、誰も余計な口は挟まない。お喋りなどもってのほかだ。バスの車内にはじっと、重苦しい沈黙だけが横たわっていた。28人全員が、熾烈な尿意との戦いの中にある。
 バスがサービスエリアに到着して希望が確かなものとなるまで、迂闊な行動は避けねばならなかった。2-Aの28人の少女達はめいめいにバスの座席にじっと座り、一番楽な姿勢を探し、息を殺して身じろぎを押さえ、切ない脚の根元の疼きと、下腹部から押し寄せる欲望による喘ぎをかみ殺す。
 そんなひり付くような緊張の中――

「ッ、ぁぁあ、あぁぁぁぁああああっ!!」

 頓狂にも聞こえる絶叫は、バスの後部座席で響いた。
[ 2013/07/28 09:00 ] 長編連載 | トラックバック(-) | コメント(-)
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