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イジメのお話。(full.ver) 

 
「はぁっ、はぁっ……」
 放課後のチャイムが鳴り響く夕暮れの校舎。午後5時の廊下を、高坂エリは足早に進む。
 荒い息、赤い顔。上気した頬の上でメガネが揺れる。彼女の足取りはおぼつかないままで、その右手はおなかにぴったりと添えられている。小刻みに握り締められる上着の袖は、切羽詰ったエリの状況を如実に顕していた。
 目指す先は3階の階段横。待望の女子トイレ。
 朝から我慢しつづけたおしっこが、少女のおなかでたぷんと揺れる。
「っ……ふぁ…あぅっ……」
 今日のエリはとことんまで間が悪かった。
 休み時間は委員会の子に用事を頼まれたり、移動教室の時に忘れ物をしたりしてついに行けずじまいだった。昼休みの時も席を立とうとした瞬間に隣の席の子がコンタクトを落としてしまい、その騒ぎで結局5時間目が始まるまで教室を出ることができなかった。
 まさかという思いはあったが、本当にそのまま一度もおしっこができないまま放課後を迎える羽目になるなんて、エリには信じられなかった。トイレを済ませず家を出てしまった朝の事が死ぬほど悔やまれる。
(ああっ……もぅ、げんかいぃっ……)
 ざわざわと下腹部に疼きが走る。昨日の夜から数えて実に16時間。エリの体内で抽出されたおしっこは下腹部の許容量いっぱいにまで達している。一刻も早くトイレに向かわなければ、最悪の事態だってありうるかもしれない。
 スカートの裾を軽く握り、エリは小走りに廊下を急ぐ。
 次の角を曲がればトイレだ。やっとおしっこを済ますことができる。一足早く安堵しながら、エリは最後の数メートルを走る。
 だが、そこでエリは予想もしなかった事態に直面することになった。
「え……」
 トイレの入口にはエリと同じ学年の少女達が揃って並んでいた。それぞれお喋りに興じながら佇んでいた彼女達は、駆け込んできたエリに気付いて一斉に顔を上げた。いきなりの注目に呆然となるエリのほうを見て、少女達はくすくすと笑いあう。
 彼女たちの制服のリボンは細い白線の入った緑色。エリのような受験組とは違い、初等部から陵桜に通っている内進生たちだ。

 じくん、じくっ、

(は、はや、くぅっ……!!)
 きゅうと収縮する下腹部に急かされ、エリは口を開く。喉がもうカラカラだった。
「あ、あのっ……」
「なぁに? 外進の子が、何か用?」
 少女たちの一人がことさらに険悪な態度を返す。鋭い視線に曝されたエリは、思わずその場を後ずさってしまった。
 伝統的な進学校である陵桜学院では、内部進学の生徒は早い時期から一学年先の授業を進めるカリキュラムがある。そのせいか内進生は外進の生徒を見下す傾向があった。そのテンプレートどおりの対応に、エリはきゅっと身を竦ませる。
 何か用、もない。エリのおなかの中は今とんでもないことになっていて、一秒でも早くトイレに駆けこまねば大変なことになってしまうのだ。だがトイレの前に並ぶ少女たちは、まるでそんなことは知らないとでも言うようにエリに冷たい視線を向ける。
「そ、そのっ……」
 上手く舌が回らず、言葉にすることができない。もじもじと情けない格好でおしりを揺するのを隠せず、エリは俯いてしまった。
「い、入れて……ください……」
「あら、あなたお手洗いに用なのかしら?」
「……っ」
 明け透けに言い返されて、エリの頬が真っ赤になる。たとえ同性であっても、親しくもない相手にトイレを察せられてしまうのはエリのような年頃の少女にとって耐えがたい苦痛だ。
「どうしたの? ここに用なの? ちゃんと仰ってくださらないと解りませんわ」
 駄目押しのように問いかけられる。
 エリはますます赤くなって足元まで視線を落とし、小さく頷いた。
「は、はいっ…ぁっ、…あのっ、早く……」
 答えた直後に、ぞわりと尿意の波が持ち上がってきた。エリは我慢できずに言葉の途中でくねくねと身体をよじってしまう。
『……あら、あの子本当にダメみたいね?』
『みっともないですね。こんな人前で。……これだから外進の人は』
『ねえ、見てよあのカッコ。ひどいわね?』
「あっ、あぅうぅぅっ……」
 少女達の間から、くすくすと忍び笑いが漏れる。
 容赦のない周知に胸を締め付けられながらも、エリの爪先は廊下を叩き続け、おしっこ我慢のリズムを取る。
「ふぅん……でもあなた、……高坂エリさんと言うのかしら? 外進クラスの子でしょう? どうしてこんなところのお手洗いに来るのかしら? ここはわたくしたちの校舎ですわよ? 外進生はきちんとそちらのお手洗いがあるはずでしょう?」
「そうそう。わたしたち内進はあんた達と違って、授業中にトイレなんか行けないくらい一生懸命勉強してるんだから、悪いけど譲ってあげられないわよ」
「え……っ」
 それはあまりにも残酷な宣誓だった。衝撃に耐えかね、エリはきゅっとスカートを握り締める。
「そ、そんな…どうして……入れて、入れてよぅっ……」
「ちょっと、何よいきなりっ、あんたっ」
「あらあら。随分と余裕のないことですのね。いけませんわ。陵桜の生徒はいつも淑やかであるべしと校則にもあるのをご存知かしら?」
 少女達はまるでエリをブロックするように、トイレの入口を塞ぐ。
 彼女達の行動が理解できず、エリの頭は一気にパニックになった。
「お、おねがい……もう、本当に……っ、入れて……入れ、てぇ……」
「くす。みっともないですわよ。高坂さん。そもそもあなた、入ってどうするつもりなのかしら?」
「そ……そんなっ、決まって……はぁぁ…っ」
 下腹部を恥ずかしい液体でぱんぱんに張り詰めさせたエリが、トイレに入ってする事など一つだけだ。少女として耐え難い恥ずかしい行為を強要してくる少女たちに、エリは下を向いてモジモジと膝をこすり合わせながら口ごもってしまう。
 エリはトイレを目前にして動けなくなってしまった。声をかけるきっかけを失って黙ってしまったエリを、外進生たちの無遠慮な視線が眺め回す。
(っ……やだ、恥ずかしい、よぉっ……)
 再び尿意の波が来た。切羽詰ったエリの膀胱はとうに限界に達し、ひっきりなしにエリにおしっこを命令してくる。ぎゅうぎゅうとスカートを前押さえしてしまう少女の姿は、どう見ても陵桜の生徒がしていい振る舞いではない。
 こんな風にトイレを我慢したのは小学校の低学年以来だった。情けなさで目元を熱くするエリが、もう一度勇気を振り絞ってお願いをしようとした瞬間。
「ねー、どうしたのカスミ?」
 背中から掛けられた声に、エリははっとして振り向く。
 そこにはエリのクラスメイトの白河アカリが、にこにこと笑いながら立っていた。
「あらアカリ。丁度いいわ、聞いてくださるかしら。この方がここのお手洗いを使いたいといって聞かないのよ」
「へー、そうなんだ?」
 アカリはちらりとエリを見る。
 どうやら先頭に立つ外進生の少女とアカリとは顔見知りのようだった。カスミと呼ばれた長い髪の彼女は、困ったものですというように軽く両手を開いて、
「ええ、そうですの。それでここは外進生のお手洗いだと説明してさしあげたのだけど、どうも高坂さんは強情で、聞いてもらえなくて困っているのよ」
「ぁ、アカリちゃんっ……その、わたしっ」
 とにかく、エリにしてみればまさに天の助けだった。クラスのリーダー的存在であるアカリならば、外進生の子達を説得してくれるかもしれない。そう思い、エリはくねくねと腰を揺すりながらアカリに縋る。
 だが、エリの懇願の先でアカリが浮かべた笑みは、エリを取り囲む外進生たちの浮かべるものと同じ種類のものだった。
「ねえエリちゃん、どうしたの? そんなにおトイレ行きたいの?」
「え……あ、あの、アカリ、ちゃん……?」
「どうなの? そんなにおトイレいきたい? もう限界?」
 まるで悪気もないように聞いてくるアカリ。けれどその質問は、カスミがしていたものとまったく同じもの。答えられずにいるエリに、アカリが顔を寄せてくる。
「そ、それは……っ、んぅっ……」
「ほらぁ、言ってくれなきゃわからないよー?」
「っ、……っ、……」
「んー? 聞こえないなぁ?」
 煽るように耳を近づけるアカリ。クラスメイトの明け透けな態度に、エリはぎゅっと唇を噛んで耐える。
「な、なんで……アカリちゃん、までっ…。い…いじわる、しないで…よぉ……」
「えー。全然いじわるじゃないよー? だってエリちゃんがおトイレに入りたいのかどうか教えてくれないと、あたしだってカスミに説明できないもん。それじゃエリちゃんもこまるんでしょー?」
「そ、そんなぁ……!!」
 エリは目の前が真っ暗になるのを感じた。
 まさか、アカリまでエリにそれを要求してくるなんて。なんで、どうして? パニックを起こしたエリの頭はすっかり混乱して、自分がどこにいるのかも忘れかけてしまう。
 そこに襲い掛かってくる尿意の大波。
「うぁっ……ふぁううぅぅぅっ……」
 エリは交差させた脚の付け根にぎゅうぎゅうと両手を押し込んで、爆発してしまいそうな膀胱を押さえ込む。とうとうスカートの中に手を突っ込んでしまった彼女に、周囲から明らかな失笑が漏れた。
「ほらほら、エリちゃん? じっとしてていいのかなー?」
 面白そうに顔を覗き込んでくるアカリ。
 エリは“その単語”を口にする激しい羞恥に真っ赤になって俯いてしまう。
「……っ、…しっ……せて……さい……」
「よく聞こえないわね。まったく、用事もないのにお手洗いに入ろうとしないで欲しいものですわ。用が済んだなら早く出ていってくれませんこと? 高坂さん」
「っっ……」
 カスミの侮蔑に、かあっ、と下を向いているエリの耳が、先端まで赤く染まった。
 エリの下腹部がきゅぅんと切なく収縮する。
「っ、お、おねがい、しますっ……」
 尿意に身悶えしながら、途切れ途切れにエリはどうにかそれだけを口にした。
「おねがい、です……お…といれに……い、いれて、ください……」
 ……ついに言ってしまった。羞恥に染まるエリの耳たぶがかすかに揺れる。
 だが、アカリたちはなおも退こうとはしなかった。
「ふーん。そんなにトイレ入りたいんだ?」
「は、はいっ、だから、そのっ、……は、はや、くっ……」
 エリはカラカラの喉にむりやり唾を飲み込む。
「や、いやあぁ……おね、がいいっ……ぉ…お、しっこっ……させて……っ……」
 瞬間、
 周囲の少女たちから一斉に笑い声が上がる。頭が焼き切れてしまいそうなほどの羞恥が、エリの繊細な心をずたずたに引き裂いてゆく。
「へー、おしっこ? エリちゃんおしっこしたいんだ?」
「い、言わないでよぅっ……」
 言いながらもまっすぐ立てないエリに、アカリはぴったりを身体を寄せてきた。小刻みに震える膝を感づかれてしまい、エリは嫌っ、と身体をよじる。
「あっははっ、ほんとだー。これすっごい我慢してるんだねー、エリちゃん。ぷるぷるしちゃって辛そうだねー。ねー、どれくらいしたいの? おしっこ」
 意地悪な笑みを浮かべながら、アカリがエリの顔を覗き込んでくる。
 だが、絶え間ない尿意と羞恥に、エリは答えることもできず小さく唇を動かすのみだ。
「ほらぁエリちゃん、ちゃんと説明してくれなきゃわかんないよー?」
「あっ…だめっ、やめてっ、やめてよぅっ!!」
 アカリがつんつんとエリの下腹をつつく。一番いけない部分を無抵抗のまま触られ、途端に我慢できなくなってエリはぎゅうっとスカートの上から下着を力いっぱい引っ張った。
 ぷるぷるとお尻が震え、膝小僧がコツリコツリとぶつかり合う。
「ぅ……はぅっ……ふぁ、ぅううっ………!!」
 噛み締められた唇がきゅっと引き絞られ、鼻の上でメガネがカタカタと揺れる。
 自分を取り囲む少女達の気配に、エリの目尻がじわっとぼやけ始める。
「あれ? どうしたの? エリちゃんそろそろ限界~?」
「本当ですわね。恥ずかしくないのかしら。そんなにお尻をいやらしく振って。陵桜の生徒とは思えませんわね」
 容赦のないカスミの台詞が、アカリの言葉が、外進生たちの囁き声が、エリの羞恥をザクザクと刻んでゆく。
 それでも彼女には他の選択肢は残されていなかった。おしっこを我慢するお尻を突き出した不恰好な中腰のまま、エリは羞恥に消え入りそうになりながら少女たちに懇願を繰り返す。
「ぉ…おねがい、ですっ……おねがいっ、します……っ、ぁ、…わ、わたし、今日、一回も…いちども、……おトイレ行けて……ないんですっ…だから、……おねがい、おトイレ……おトイレで、……おしっこさせてくださいっ……」
 全身全霊を込めた、お願いだった。
「ぷっ、あっははははっ、もうだめー、限界ーっ!!」
 だが、エリの切羽詰った視線の先で、アカリはお腹を抱えて爆笑する。
「あー、もー、おっかしー。最高だよエリちゃん。ねーみんな聞いた今の? 『おしっこさせてくださーい』だって。ホントにそんなにおトイレしたくなってるんだ、あっはははーっ!!」
「ぇ、あぅっ……な、なんで? アカリちゃん……どうして、そんなこと…っ」
「あっはははっ。もー、なんでもなにもないよー。鈍いなぁエリちゃん。気付いてなかったの? 今日一回もオシッコしてないなんて、クラス全員知ってるよー、そんなこと」
「え……」
 それはあまりに衝撃的な発言すぎて、しばらくの間エリはアカリが何を言っているのか理解できなかった。
「え……っ」
 そしてエリは思い出す。
 今日、まるでなにかの嫌がらせのように、エリをトイレに行かせてくれなかったいくつもの『偶然』を。よそよそしい視線で委員会の手伝いを頼んできた隣の席の子、どこか怯えながら掃除当番を変わってくれないかと申し出てきた小学校からの幼なじみ。まるでエリが立ち上がるタイミングを見計らって床に落ち、ちょうど昼休みの終わりと同時に見つかったコンタクトレンズ。
「じゃ、じゃあ、今日……ずっと……?」
「嫌ですわ、まさか本当に気付いてなかったのかしら? 鈍いにも程がありますわよ、高坂さん」
 カスミが唇の端を歪める。
「ど、どうして、こんなっ」
「勿論。決まっていますわ。あなたに身の程を知ってもらいたいからです高坂さん。……内進生のくせに調子に乗って!!」
 怒気すら孕んだカスミの侮蔑に、エリはびくっと身体をすくませる。
 何がなんだか、解らなかった。
(なんで、なんで……こんな、うぅうっ……)
 陵桜の伝統は戦前まで遡る。有名私立へも多くの生徒を輩出する名門で、中学からの編入組の、しかも転校生のエリがクラス一番のアカリはおろか内進生たちをもやすやすと飛び越えて実力テストのトップを取ってしまったこと。
 それが、アカリたちをこんな行為に走らせた直接的な原因だった。
 だが当のエリはそんな事を考えつきもしない。内気なエリにはそんな感情は理解できなかったし、極限まで高まった尿意がそれを許さない。
「そ、そんな、入れて……入れてよおっ……トイレ、おトイレっ……」
「あっははっ、エリちゃんそんなにオシッコしたいんだ? さっきからもじもじしてばっかりだねー」
「あら、いけませんわ高坂さん、はしたない振る舞いはやめてと申し上げたでしょう。そんなに恥ずかしいことを口にするなんて、陵桜の生徒にはあるまじきことですわよ」
「そうそう。5時間目のときなんか、机の下でぐいぐいあそこ押さえてたもんねー。もう必死で、これが見てて笑えるんだー。エリちゃん、いけないんだよ、女の子があんなことしちゃ」
「あ、ああっ、あれはっ……もう、本当にがまんできなくてっ……」
 確かに、5時間目はエリが今日体験した人生最大のピンチのひとつだった。
 括約筋や膝をこすり合せるだけではとても太刀打ちできないほどの大津波だったのだ。手を当ててぎゅっと出口を塞いでいなければ絶対にそのまま漏らしてしまっただろう。実はそれでもほんの少しだけ我慢しきれず、わずかに下着を汚してしまったほどなのだ。
 エリの精一杯の反論を嘲笑うかのように、外進生たちの冷ややかな視線が集まる。
「ふふーん。ほらほら、『あっあっダメぇ、でちゃう、オシッコでちゃうよお!!』 ……みたいな感じー?」
 アカリはスカートの上から股間に手を当てて、くねくねと腰を振ってみせる。それはひどく誇張されたものだが、確かにエリの物真似だった。少女達の間から笑い声が上がる。
 ともかく。
 ちゃんとトイレに行きたくてたまらないことも、その理由も説明した。もうこれで十分なはずだ。痛む胸を押さえ、エリはトイレの中に駆け込む。
 もはや彼女には小さく区切られた個室しか見えなかった。誰にも知られない秘密の小部屋の中でのもっとも恥ずかしい行為を、下腹部が激しく切望する。
 だが――エリがドアノブに手をかけた瞬間、それを押さえる手がすぐ傍から伸びていた。
「どうなさるおつもり? 高坂さん?」
「え……」
 慌ててカスミを見上げるエリが、彼女はドアを押さえる手をどけようともしない。
「そ、そんな、ちゃ、ちゃんと説明してって、言ったのにっ……」
「もちろんそうですわ。でも、誰もあなたにお手洗いを使っていいという許可をした覚えはなくてよ?」
「え、えっ!? な、なんでっ…!? そんなぁっ……」
「あら、心外ですわね。はじめにちゃんと説明してさしげましたわ。ここはわたくしたちのお手洗いですもの。内進のあなたに使う権利なんてありませんわ」
「そ、そんなっ……のって、…ぁああっ。…っ、ずっ、ずるい…よぅっ……」
 まさか、トイレの中でおしっこすることを禁止されるなんて。考えもしなかった事態に、エリはがくがくと腰を痙攣させる。
 おなかの中でたぷたぷと揺れるおしっこがそれを引金にして暴れ出した。猛烈な尿意がぎゅるぎゅると膀胱を駆け抜け、激しい蠕動が少女の股間を直撃する。
 暴走を始めてしまったエリの股間は、少女の意志を無視して勝手におしっこの準備を始めてしまった。
「や、ぁ、ダメッ、ぁあぁああっ、ふぁあんっ……!!」
 しゅるしゅると漏れ出しそうになるおしっこを食い止めながら、エリは腰を揺すり、その場で行進のように大きく足踏みをはじめた。じっとしているだけでもう限界だ。
 我慢の限界をはっきり示したエリのおしっこダンスに、少女たちからくすくすと笑い声が上がる。
(やだっ……きちゃう……おしっこ、おしっこしたいのがきちゃうううっ!!)
 狂ったように制服の下腹部をさすり、暴れ回る膀胱をなだめようとするエリだが、それでもおなかの中でおしっこはおさまろうとしない。震える脚は力なく折れ曲がり、まるで重力に引かれるように、エリはその場にしゃがみ込んでしまった。
「くす。高坂さん、そんなところでお座りになったりして、まさか本当にそこで始めてしまうおつもり?」
『本当ね。トイレの前なのに我慢できないなんて』
『子供じゃないんだから、ねえ?』
『呆れた。少しは陵桜の生徒って自覚を持って欲しいですね』
『みっともないわ……』
「っ、あああぅっ、そ、そんなっ、そんなぁっ……おねがい……んぅっ……意地悪しないでぇっ……もぅ、でちゃううっ、でちゃうよぉ……」
 爆発寸前の膀胱を抱え、懇願するエリ。だが見下ろす内進の少女たちの視線はあくまで冷ややかだった。
「そうだねー、みんなの言う通りだよエリちゃん? お犬さんだってちゃんと決められた場所でオシッコするよねー? 自分の小屋の中でなんかぜったいにしないよね? 陵桜の生徒がそんな事もできないなんていけないよ? エリちゃん、お・ん・な・の・こでしょ?」
 涙を滲ませるエリの眼鏡をつんと押し上げて、アカリがにっこり笑う。
 その笑顔は、エリの心をきつく締め付けた。
「なんで……なんで、そんなこと言うの……アカリちゃんっ……やだよぅ、こんなのやだ……っ くぅん……っ」
 涙ながらの訴えさえ、猛烈な尿意に邪魔をされる。友達の名前を呼びながら、くねくねを腰を揺する少女に再びどっと笑い声が上がった。
 うずくまったエリはどうにかおしっこの暴走を耐え抜いて、大きく息を繰り返していた。いまだ激しい尿意の残滓が恥骨にじんじんと響いているが、どうにか耐えられないレベルではない。
 だが、遠からずそれが終焉を告げるのは明らかだった。
(はぁ、はぁっ、はぁーっ……)
 ぎゅっと両手に力を込める。しゃがみ込んだおしっこをするための姿勢で、エリはこの上もなく惨めな気持ちを味あわされて続けていた。彼女を囲む少女達はそれぞれ奇異と好奇に彩られた悪意で、苦悶を訴えるエリを見物しているのだ。
(やだ、もう……やだよぉ……こんなの……)
 夢ならいいのに。そう思うエリだが、しくんしくんと疼く膀胱はそれをはっきりと否定する。
「あ、そーだっ♪」
 唐突に声をあげたのはアカリだった。彼女ははいいことを考えついたとばかりに両手を打ち鳴らす。
「ねえねえカスミちゃん、あたし思ったんだけど。エリちゃんって最近転校してきたばかりじゃない? この学校のトイレの事よく知らないみたいだしさ、教えてあげようよ」
「……そうですわね。それはいい考えですわ、アカリ」
 アカリが何を考えているのかを察したのか、カスミも成る程、というように頷いた。それを見たエリの背中に怖気が走る。
(も、もう、ホントに限界なのにっ……でちゃう、もうでちゃうよぉ……)
 すでに酷使された括約筋は麻痺をはじめ、ひくひくと細かく痙攣を繰り返している。両手を離したら十秒も持たずにおしっこが始まってしまうかもしれない。それなのにアカリたちは、これ以上一体何をさせようと言うのか。
「ねえエリちゃん、そんなにトイレ行きたい?」
「……っ、は、はいっ……」
 彼女達がなにを考えているのかとても不気味だったが、『おしっこ』の単語にエリには頷くことしかできない。彼女達が許してくれなければ、今のエリはトイレすら自由に入れないのだ。
「じゃあ、あたしたちがエリちゃんのこと、案内したげるよ」
「え、ぁ…案内……っ?」
 予想外の言葉に疑問を浮かべるエリだったが、次の瞬間アカリはいきなりエリの手を掴んでぐいっと引っ張り上げる。
「や、だめえっ……でちゃう、立ったらでちゃうぅ……っ!!」
 無理矢理立たされたことによって、一気におなかが圧迫され、治まっていた尿意が再び爆発した。悲鳴を上げるエリには構わず、アカリはエリに抱きつくように身体を寄せてきた。
「ほらほらー。これからエリちゃんが行きたくて行きたくてどうしようもないトイレに連れてってあげるんだから。こんなとこでオシッコなんかシちゃダメだよー?」
「ぃひぁあぁああっ!! だめ、やめてぇ……っ!!」
 アカリは震えるエリの腰をぽんぽんと叩く。恥骨に響く刺激に、限界水域のダムがビリビリと反応した。溜まりに溜まった中身をたぷんたぷんと震えさせる衝撃に、エリはますますお尻を突き出して、「くぅぅうっ」と切なげな悲鳴を上げざるをえない。
 ぎり、と食いしばった歯が小さく震え、エリは全身を堅くして強烈な尿意をやり過ごす。ぐらぐらと沸騰したおしっこが今にも溢れ出して来てしまいそうだ。
(くぅうっ、ぅああああっ、あぁあぁあっ……)
「はーっ、はあーっ、だめ、だめえ……」
 途切れ途切れに訴えるエリだが、二人は容赦しなかった。両脇からエリを抱え込むようにして立ち上がらせ、くるりとトイレに背を向ける。
「それでは参りましょうか。高坂さん?」
「ほら、いこ、エリちゃん」
 くすくす、と忍び笑いをこぼしながら、外進生たちが道を作って左右に割れる。
(あ、あああ……違う、のにっ……そっちじゃ、そっちじゃないよぉ……といれ、おといれはやく、おしっこ、おといれっ……)
 おしっこを我慢し続けることにありったけの力を注ぐエリに、もはや二人を振りほどく余裕はない。
 ついにエリは二人に手を引かれるままトイレの入口から引きずり出されてしまった。絶望に霞むエリの耳元で、アカリが意地悪く囁く。
「ほらほら、ちゃんと歩きよエリちゃん。みっともないよー?」
「あ、ああっ、まってっ、待ってぇっ……」
 強引に引きずられるようにして廊下を歩かされる。エリの脚はすでに満水のダムを堰き止めるのに精一杯で、移動のための手段としてまともに機能していなかった。





 長い長い廊下を立ち止まっては歩かされ、歩かされては立ち止まりを繰り返し、エリはついに後者の端まで連れてこられてしまった。
 階段を下りる衝撃に腰を砕けさせてしまい、しゃがみ込んで上履きのかかとをぐりぐりとあそこに押し付けるエリを見下ろして、アカリとカスミがくすくすと笑い合う。
「ふふふー。そんなカッコしてちゃダメだよエリちゃん。ほら、ここだと他の子にも気付かれちゃうよ? エリちゃんがいっぱいいっぱいオシッコ我慢してますー、いまからここでシちゃうかもしれませんーって」
「……くす。外進の子はお手洗いのしつけもできていないんですのね? はしたない」
「ちがっ……ちがう、よぅっ……」
 もう、立っているだけでも辛いのだ。それなのにおしっこを我慢させられたまま学校中のを連れ回され、しかも途中にあるトイレの前は全て通り過ぎている。アカリ曰く、これは『トイレの見学』なのだ。見学である以上、もちろんトイレは使えない。
「は、はや、くっ……」
「あっはははっ。そんなに焦らなくても全部説明してあげるから心配ないよエリちゃん。終わったらいくらでもオシッコしていいからさー」
 目の前のトイレを無理矢理素通りさせられる。今のエリにこれ以上辛い事があるはずもなかった。それぞれの場所で一回ずつ用を足したとしても足りないくらい、エリの膀胱は限界水量を超えたおしっこに蹂躙されている。
 手摺にしがみついてもぢもぢとおしりを振りながら階段を昇り、アカリに急かされて無理矢理急がされ、翻弄され続けるエリの膀胱はもう何度も危機に陥っていた。それでもなんとか失敗せずにここまで歩けたのは、エリの必死の我慢と少女としてのプライドのおかげだった。
 そうして辿り着いたここは体育館前。校舎内とはやや趣の違うトイレを前に、アカリが楽しそうにエリを振り返る。
「はーい、次の見学先とうちゃくー。ここが体育館のおトイレでーす。エリちゃんどう、わかったー?」
「う、ぅうぅっ、……っ」
「あはっ、エリちゃんだいぶ限界みたいだねー。がくがく震えちゃって、オシッコそんなにしたいのかなー?」
 まるで子供に語りかけるように聞いてくるアカリに、エリは真っ赤になって俯くことしか出来ない。それでも何とか必死に勇気を振り絞って、こくり、と小さく頷き返す。
「あら。高坂さん、しっかりなさって。高坂さん? ……くす。どうしましょうアカリ? 本当にだめみたいですわよ、高坂さんは」
「……うーん。でもね、この時間はねー」
 わざとらしく腕組みなんかをして、アカリは賑やかな体育館にちらりと視線を向けた。
『あー、休憩休憩ー』
『ね、お手洗いいこー』
『わたしもー』
『もう限界だよーっ』
『あはははっ、ちょっとお行儀わるいよ、みんなー』
 同時、どやどやと体育館から、ジャージ姿の少女たちがあふれ出してくる。運動部の子達がちょうど休憩の時間になり、外に出てくるところだった。
「ほら。見てエリちゃん。ちょっと混んでるし、運動部の子達のこと邪魔しちゃいけないでしょ? エリちゃん間に合わないんじゃないかなー?」
「くす、そうですわね?」
「あ、はぁぅっ…そっ、そんなことない……っ、ちゃ、ちゃんと、入れてって、お願いすればっ……」
「高坂さん、はしたないことはおよしになって。仮にも陵桜の生徒がお手洗いを我慢できないから先に使わせてくださいなんて口にしていいとお思いですの?」
 冷酷に告げるカスミに、エリは喉の奥で悲鳴を上げそうになる。
「そうだよねー。あの子達も我慢してるんだしさ、せっかくの休憩時間なんだよ? エリちゃんが邪魔しちゃったら、トイレ済ませられないかもしれないよー? いきなり入ってっちゃだめだよね? そう思うでしょ?」
 明るく告げるアカリ。
 だが、既にエリは真っ青だ。ぴくぴくと張り詰めた下腹部はもう限界で、脆くなった脚の付け根のダムは決壊してしまいそう。歯の根も合わないまま、エリは必死に二人に懇願する。
「ああぁ、あああっ。……お、おねがいっ…お願い、しますっ………もう、本当に限界なんですっ……ダメなんですっ……ぉ、しっこ…おしっこ、させてください……っ」
「あっはは、そっか。じゃあ仕方ないねー」
 にこりと邪気のない笑顔を見せて、あっさり答えるアカリ。
 え、と思うエリの前で、アカリはトイレの入り口に向き直ると、すぅと息を吸い込んで口の左右に手を添え、高らかに声をあげる。
「ねえみんなー、ちょっと聞いてーっ、ちゅうもーくっ!!」
 かなりの大声に、何事かと運動部の少女たちが一斉に振り向いた。
「おっけー。ごきょーりょくありがとねー。あのさ、この子、高坂エリさんっていってあたしのクラスの子なんだけど、さっきからものすっごくおトイレに行きたって言ってるんだー」
「―――っ!!!? ちょ、ちょっと、アカリちゃんやめてっ!?」
 とんでもない行動に出たアカリにエリは我を忘れて飛びつこうとする。だがそれは余裕の笑みを浮かべるカスミにあっさりと阻止された。今のエリはおなかに爆弾を抱えているのと同じなのだ。
「エリちゃん、朝からずーっとオシッコ我慢してて、もうぜんっぜん我慢できないって言ってるんだよねー。このままだと漏らしちゃうみたいだから、入れてあげてもいいかなー?」
 どよどよとざわめきが走る。
 一斉に注視が集まり、がくがくと我慢の真っ最中の自分が衆目に曝されてしまう。
(や、だ……見、ちゃ、イヤぁあああぁ……っ)
 窺うような、気にするような、案ずるような視線の群れ。自分のおなかの中の状態まで事細かに知られてしまう途方もない羞恥に、エリは気絶しそうになった。必死になって隠し、我慢に我慢を重ねて耐えている尿意を大声で宣伝される。恥骨を弱火で焙られているような、限界間近の尿意を堪えている少女にとって、これ以上の苦痛があるだろうか?
「アカリ、少しはしたないですわよ。いくらお友達のためとは言っても、もう少し言葉は選ばなければいけませんわ」
「あ、ごめんねー。でもぐずぐずしてたらエリちゃん、ホントに漏らしちゃいそうだからさー。で、オシッコがしたくてしたくてたまらないエリちゃんを、おトイレに入れてあげてもいいって思う人ー!!」
「やだ……っ、やめて、やめてよぅ……」
 さらに追撃がかかる。
 ホントに? 我慢してるの? そんなに、おしっこ? ずっと? 朝から? みっともない……雑音に紛れて聞こえてくる少女たちの声が、エリの心をずたずたに切り刻む。
「っっ!!」
 もう、どうしようもなかった。死にたくなるほどの情けなさが胸の中で爆発する。エリはひくっ、と喉を震わせて、真っ白になったままの頭で廊下を走り出した。待望のトイレに背を向けたまま――





「はーいっ、追いついたー。もー、ダメだよエリちゃん? せっかくあたし達が案内してあげてるのに逃げたりしちゃ」
「まったくですわね。アカリが恥を忍んでお願いして差し上げているのに、当のあなたがお礼も言わずにいなくなるなんて、恥知らずにもほどがあると思いませんの?」
 必死に逃げていたはずだったエリだが、おしっこを我慢したまま全力疾走なんてできるはずがない。程なくして二人に追いつかれたエリは、再び校舎に戻って西棟の二階、職員室の上の階に連れてこられていた。
 廊下の脇にぽかりとあいた入口。そしてその上には、恥ずかしい場所であることを知らせる赤い女の子のマーク。
 おしっこができる場所を目の前にして、エリの足は知らずそちらに向いてしまう。
 が、その歩はすぐにアカリとカスミに阻まれてしまった。悶えるエリを押しとどめ、アカリはさっきと変わらない笑顔で聞いてくる。
「あ、ほらエリちゃん、ダメだよ入っちゃ。ちゃんと読まなきゃ。なんて書いてあるのかな~?」
「や、やだよぅ、もう、こんなの……いじわる、しないで……アカリちゃんっ」
「だからー、ほらほら、ちゃんと見なきゃダメだよー」
 アカリに促されて、エリは入り口の横にあるプレートを見た。かすれた声で書かれた文字をを読み上げる。
「職…員……用…」
「そうでーす。よくできまちたー。ぱちぱちぱちー」
 無邪気な笑顔を見せながら、アカリはエリの肩をしっかり捕まえて話さない。もう逃がさない、という無言の意思表示だ。エリの股間がきゅぅん、と切なげに悲鳴をあげる。
「大正解。すごいねエリちゃん。職員用、来賓用のトイレなのでーす。ここは先生専用のおトイレなのでー、エリちゃんは使えませーん」
「そ、そんなのっ、ムチャクチャだよぉっ……!!」
 論理も何もあったものではないアカリの物言いに、エリは必死に言い返す。だがくすくすと笑うアカリはそれをまともに受け取ろうとしない。
「あら。当然のことですわよ? こちらは先生方や大切なお客様のために用意されたお手洗いですもの。もし高坂さんが使っていたりしたら、その人たちが我慢しなければいけなくなりますわ。いくら高坂さんが困っていらしても、そのために大切な方にお手洗いを使わないようお願いするなんて、そんなことは許されるわけないですもの。ね?」
(あ、あぁぁ……)
 エリは悟った。
 このままでは本当に、どんなことをしても、自分はトイレには行かせてもらえないのだと。
 彼女達の機嫌を損ねてしまったことが、そんなにも思い罪だったのだろうか? けれど、お漏らしなんてそれこそ死んでもできるわけがない。陵桜の生徒だとかは無関係に、もう中等部の少女には絶対にあってはいけないことだ。
 一呼吸ごとにおなかの中でたぷたぷとおしっこが揺れる。股間をじりじりと焼き焦がすような終わりのない責め苦に悶えながら、エリはぎゅっと唇を噛み締めた。
「ぅうっ、……はぁぅ…ぅ……っ」
「こらこらエリちゃん? そんなにもじもじしちゃってたらみんなにオシッコ我慢してるのバレちゃうじゃない。いいのかなー、風紀のセンセイにも陵桜の生徒がそんなことしてちゃダメですよーって怒られちゃうよ? こんなふうに」
 アカリはすっとエリの側に身体を寄せると、激しい尿意と戦っているエリの下腹部をぺしんと叩く。
「うぁぅっ、ぁああっ、ふぁぅううう~~~……っ!!!」
 どうにか膠着を保っていた戦局は、あっという間に崩壊した。おしっこに侵略されたエリのおなかの中はびくんと跳ね上がり、限界水域をこえてたぷたぷと揺れる恥ずかしい中身がエリの頭の中にまで溢れてくる。 
 じいんんんっ、と響くイケナイ振動。おなかの中で膨れ上がる灼熱の気配に、エリはぎゅっと身体を縮こまらせた。恥骨に伝わる刺激が尿意を増幅して、少女は激しく身体をくねらせる。激しく渦を巻いて波立つおしっこが、ダムの一番脆い部分を突き崩そうと大攻勢を開始した。
 決壊寸前のダムを抱えて、エリはとうとう股間を思いきり握り締めてしまった。 
 切に限界を訴える下半身をもうどうすることも出来ない。必死におなかをさすり、どうにかおとなしくしてくれとなだめるだけだ。自分の身体の中から湧き上がる自然の摂理に、エリはまったくの無力だった。
「まったく、はしたないにも程がありますわね。高坂さん、あなたは一体学校になにをしにいらしているの?」
「ぁあっ、あああっ、んっ、くうぅ……~~、っ」
 どれだけ鋭い言葉で羞恥心を抉られても、大津波まっただなかのエリにはもう答えることもできない。じくん、じくんと排泄孔が震え、中身を下着に撒き散らそうと緩んではきゅっと引き絞られるのを繰り返す。
 きゅうんっ、と膀胱が収縮の予兆に身動ぎする。エリはただ、ぎゅうっと膝を交差させ、足の間に手を押し込んで股間を握り締めるだけだ。
「ふふ、カスミー、教えてあげよっか? エリちゃんはいつも休み時間になるとおトイレいくんだよ? 今日もずーっと前押さえたままもじもじしてたし。エリちゃんの身体って、きっとおしっこいっぱい出るようにできてるんじゃないかな?」
「ち、ちが……ぅうっ、そんなこと、ないっ、ぃい……っ」
 ぎゅっと閉じたまぶたの間から、ぽろぽろと涙がこぼれる。それでもエリの頭の中はおしっことその我慢だけで埋め尽くされていた。トイレのことだけしか考えられないなんて、年頃の女の子にとってこれほど惨めなことはない。
 じくんじくんとお腹を責め嬲る感覚が、緩みかけるダムの隙間から今にも滲み出そうだ。
 はぁ、はぁ、と息をついて、エリがぐっと括約筋に力を入れるたびに、おしりがつんっと上を向く。まるでヨチヨチ歩きのアヒルだった。
(だめぇっ……おトイレ、おトイレしたいっ……でちゃう、もうでちゃううっ、)
「ん、どうしたんだ、君達」
 不意にかけられた声に、エリは壁に手をついたまま振り向く。もはや我慢の格好を見られることは諦めていた。
 廊下の向こうでは、英語の教師が足を止めて、怪訝そうにエリ達を見ていた。廊下の真ん中で立ち止まってお喋りなんて、陵桜の生徒は普通してはならないことだ。
「ぁ、あのっ、わたし……っ」
 形振り構っていられなかった。ここで知らせなければ本当に漏らしてしまうかもしれない。教師に訴えかけようとしたエリが続きを口にしようとした瞬間、
(っ、ひぅぁああああああぁああっ!?)
 アカリの手がエリの腰を抱え込むように回りこみ、ぎゅうっとエリの下腹部を押し込んでいた。
(ぁ、ぁ、ぅ、あ、ぁあ……っ、~~……っ!!)
 外からの容赦のない圧迫に、エリの膀胱が大きくひしゃげ、出口に凄まじい圧力となって襲い掛かった。
 これまでどうにか耐え忍んできた波とは規模が違っていた。『おしっこをしたい』という欲求ではなく、『おしっこを出す』という物理的な反応。暴力的なまでの尿意が少女の小さな身体に叩き付けられる。
 股間を握り締めたまま、エリは息を詰まらせて尿意に抵抗する。
 じゅじゅっ、しゅるるっ、しゅるっ。
 だが、きつく締め付けたはずの排泄孔から、ほんの少し漏れ出したおしっこが、エリの下着をじんわりと染めてゆく。
(ぅ、あ…あぁっ、だっ、め、だめっ、だ、めええ……ぇっ!!)
 ついに現実のものとなり始めた『お漏らし』の恐怖にエリは声なき絶叫を上げた。途方もない刺激が恥骨を駆け抜け、膀胱がエリのおなかを内側からを圧迫する。緩み始めた排泄孔はなおもだらしなく、しゅるしゅるとおしっこを漏らし続ける。たらたらとエリの内腿を黄色い筋が滑り落ちて、ソックスの色を濃く変えてゆく。
(み、みられちゃ、ぅ、や、せん、せぇ、でない、で、ちゃ……っ!!)
 それを悟られぬよう、エリは必死になって腰をぐねぐねと前後に揺すり、脚をぎゅうっとねじって太腿に垂れてゆくおしっこを隠した。
 しくん、じくっ、びく、びくっ、
 少女の体奥が深くうねる。ぱんぱんに膨らんだ膀胱がびくびくと痙攣し、エリに今すぐここでおしっこを始めろと命令してくる。おしりが勝手に突き出され、知らずのうちに膝が曲がり、おしっこをするための体勢を整えさせようとしてくる。エリの身体はすっかりおしっこの準備を終えており、今すぐに排泄をはじめそうだ。
 もちろん従うわけにはいかない。エリは壁に爪を立て、崩れ落ちそうになる姿勢を支えた。
「こんなところで立ち止まってしまって申し訳ありませんでした、先生。こちらの……高坂さんが、急に具合が悪くなってしまったそうなんですの」
「はい、あたし保健委員ですから付き添ってたんですけど……大丈夫? 高坂さん」
「っ、……~~~っ、ぁっ」
 まるで本当に心配しているように様子を窺ってくるアカリ。けれど今のエリはそれどころではない。いまや崩壊の瀬戸際にあるおしっこを我慢するために全身全霊を込めたまま、エリは必死にぶるぶると首を振った。だが、アカリの手はエリがそこから逃げ出そうとすることを許さない。あとほんの一押し、アカリの手に力がこもればエリの我慢は潰えてしまうだろう。
 だがアカリは絶妙にそれをコントロールし、エリの動きだけを封じていた。
「そうですか。お任せしてもいいですか? 二人とも」
「ええ、勿論ですわ」
「そうですか。……お大事に、高坂さん」
 さらりと答えるカスミに、教師はにっこりと笑顔を浮かべ、去ってゆく。
(あぁ、あぁあああ……っ)
 教師の後姿が声を掛けてももう届かないほど十分に離れてから、アカリはようやくエリの腰に回した手を離した。
 絶望で目の前が真っ暗になる。彼女達はどうしてもエリをトイレには行かせない気だ。じゅわっと滲み出した熱い雫が下着を汚し、エリの指にまで湿り気を伝わせる。
「さ、いこー。エリちゃん」
「ねえっ……お願い、アカリちゃん……もう、いじわるやめてっ……くぅうっ、……ぁ、はあっ、はぁっ……お願い、だから……あぁぁ……おトイレに、……おねがい、おねがい…しますっ、……~~っ!!」
「あー、そうなんだ。エリちゃんそんなにふらふらしちゃうほど調子悪いんだ。じゃ保健室でちゃんと横にならないとねっ」
「ゆっくり休めばよくなりますわ。さあ」
「おねがい……もう許して……ゆるしてください……」
「あははっ、そんなにしたいの? オシッコ」
「ぅぁあっ、だめ、だめええっ……言っちゃだめ、また、またきちゃうっ、…せ、っかく、がまん、できた…のにっ、ま、またっしたくなっちゃう、からぁっ」
 アカリの一言にも、敏感になった腰が反応をはじめてしまう。今のエリにとって、排泄を予想させる単語は完璧な鬼門だ。またもほんの少し緩んだ水門から、じゅっ、とくぐもった音が響く。
「あっはははっ。エリちゃんすごいカッコー。そんなにトイレしたい? トイレでオシッコしたいー?」
「っ、めて、や、めて…ぇっ」
「ひょっとして、もう漏らしちゃってるのかなー? エリちゃんてばっ」
「ち、ちが…うよぉっ、そんな…こと、な…なぃい……っ」
 エリの反論は弱々しいものだった。どれだけ強く否定しても、じゅうっと音を立ててと下着に広がる熱いおしっこや、じっとりと湿って肌に張り付く股布の感触までは誤魔化すことはできなかった。
 内腿を伝うおしっこの跡を隠そうと、エリはスカートの前をぐいぐいと引っ張り下ろす。もちろん脚はばたばたと行進のリズムを刻んだままだ。ぐっしょりと湿った下着の上から排泄孔を押さえ、エリはしゃくりあげるように二人を見る。
「くす。もう、本当にどうしようもない方ですのね、そんなにみっともない格好をして。まるで幼稚園の子のようですわよ? 高坂さん、あなたもしかして通う学校を間違えてらっしゃるのではなくて?」
「あっはは。そうかもー。エリちゃん幼稚園なんだねー。だからそんなにもじもじしても平気なんだ」
「っ、ぁ、や、ぁ…てぇ」
 ふるふると首を振るエリ。もうずれた眼鏡を直す余裕もなかった。両手の力を使っても塞き止めるのが精一杯で、手を離したらまたおしっこが出始めてしまう。
 と、カスミはふと視線を止め、あの笑顔を覗かせた。
「確かに、そうですわね……アカリ、高坂さんは普通のお手洗いは難しすぎて使えないようですから、ちゃんと相応しい場所に連れて行ってあげませんこと?」
「ん。なになに? 何か思いついたのカスミ?」
「ええ。……高坂さんにぴったりのお手洗いを思い出しましたの」





 初等部の一年生二年生たちが、お行儀良く列の順番待ちをしている。
 クリーム色の壁は、中等部の校舎よりもより明るい色合いで、清潔感と共に安心感を与えてくれる。まだ排泄という行為に嫌悪感を持つ年端もいかない小さな淑女たちに、安心して排泄を促す工夫だ。
 初等部の子達の心を和らげる穏やかな雰囲気も、今のエリにとっては見ているだけでおしっこを強制される牢獄に等しかった。
 きちんと列を作り並んでいる一年生、二年生の子達の中で、中等部の制服を着た少女が股間を押さえて懸命に震えている。準備運動のように足を交差させて、スカートの下でおしりをひくつかせながらもじもじくねくねゆらゆらと落ち着きのカケラもない。
「あっ、ぁあっ……」
 もはやエリはうまっすぐ立っているのも難しいのだ。何十回目になるかわからない尿意の波に脚をばたつかせるエリだが、たぷたぷのおなかの中身は収まるどころかますます激しさを増してゆく。
「ねえ、お姉ちゃんお行儀悪いよ?」
「そうだよー、ちゃんと並んでよー」
 初等部の少女たちから次々に上がる抗議の声。
 自分が曝しているみっともない姿に耳まで赤く鳴りながら、おしっこ我慢のステップを止められないエリに、入口の方から声が届く。
「くすくす……あらあら。城崎さんは初等部でも不合格になってしまいそうね? 本当に幼稚園まで戻らなければいけませんわよ? きちんとお手洗いのしつけもできていないのかしら」
「っち、が…よぉ……」
 自分はずっとイジメられていて、トイレに行きたいのにずっとそれを禁止されていて、だからもう本当に我慢の限界で。もうおしっこがいつ出てしまってもおかしくないくらいおなかのなかにぱんぱんに溜まっている。
 でもそんなこと、説明できるわけがない。陵桜の後輩たちに、お姉さんである自分が、一度もトイレにいけていないなんて、そんな恥ずかしいことをしているなんて言えるわけがない。
「高坂さん。この子たちだって早くお手洗いを済ませたいのに、順番抜かしなんかせずにちゃんとお行儀良く待っているんですのよ? あなただけ特別というわけにはいきまわんせよね? ……くすくす。あなたのほうが、おねえさんなのですもの」
「っ……」
 正確には、エリはそんなプライドだけで順番待ちに参加しているわけではなかった。たとえここが無人でドアが開きっぱなしになっていても、そこに駆け込んでおしっこをするだけの余裕がないのだ。
 小さな一年生達の列に混じって、エリは両手で股間をおさえ、気付かれない程度に前屈みになって、今にもあふれそうになるダムを堰き止める。
 水を流す音が聞こえ、幸運にも早々と用を足す機会を得た子が個室を出る。その顔は笑顔に満ち、すっきりとさわやかだった。代わって、列の先頭の子が制服のスカートに手を掛けて個室に飛び込む。これを、あと5回待たなければならない。
 いや。5回ですらなかった。気を失いそうになるエリの前で、それを遠巻きに眺めている子が一人、開いた列の隙間に並ぶ。
(なんで、っ、いちばん、おしっこしたいのわたしなのに、っ、といれいきたい、おといれはいっておしっこいっ、っ、……あの子みたいにおしっこ、いっぱいしてっ、すっきりしたい、おしっこっ、おしっこだしたい……っ!!)
 ふざけ合いながら更衣室に戻っていく初等部の子たちを見ながら、エリは彼女達とおなかの中身が交換できればなどという空想にすがる。
 たとえあの子たちが、エリよりもずっと容量の小さなおしっこの容れ物しか持っておらず、ちょっとだけしかおしっこを我慢することできないのだとしても、今の自分よりはずっと楽なはずだ。列の先頭でなくてもいい。一番最後でも構わない。
(おしっこ、おしっこさせて……でちゃうぅっ……トイレ、おといれはやくおといれといれといれといれっ、おしっこといれおしっこ……っ)
 憧れのまなざしで見つめられる陵桜の生徒が、頭の中をおしっこのことで一杯にして、足を小刻みにく震わせている姿はなんとも痛々しいものだった。
 初等部の子達はただでさえおしっこに時間がかかる。ひとり2分として、5人で10分。いまのエリには絶望的な数字だった。
(はやくはやくかわっておしっこといれはやくはやくっ!!)
 すぐ目の前の何mか先にはおしっこをする場所があるのに。そこまでの距離は無限に近かった。
 エリのおなかの中にある秘密のティーポットはぐらぐらと沸き立って、今にも口のところまで中身を吹き上げてしまいそうだ。長い我慢ですっかり赤くなってしまった少女の股間がしくしくと疼き、ごぽりと中身を煮えたぎらせる。
 スカートを直す振りをしてそっと股間を抑える。トントンと爪先で地面を叩き、くねくねと腰をくねらせる。そんなさりげない動作は不可能だった。トイレを我慢するサインはもはやさりげなくで隠せるようなものではなかった。
 スカートが捲れ上がるのにも構わず、両手で股間をぎゅうぎゅうと押さえるエリを、高学年の生徒たちが眉をひそめて見つめる。
「ねえ、あの人……」
「うん、すごく我慢してるみたいだね……」
「……中等部の人みたいね。どうしてこんな所に……」
「なんでちゃんとお手洗い行かないのかしら……」
「……ちょっとみっともないよね……」
 なまじ陵桜の生徒として分別がついているだけあって彼女達の言葉は辛辣だった。交わされる囁きがエリの羞恥心をちくちくと刺激する。それに併せてポンプのように膨らむ尿意が膀胱を揺さぶった。股間に重ねられた手のひらにびくん! と力が入り、エリは背中をのけぞらせる。
「ぁあっ、おしっこ、おしっこぉ……っ」
 過剰に摂りすぎた水分は外に出される……それは生命活動の基本である。エリのしている『おしっこを外に出さないこと』はまさしく、それに逆らう不自然極まりない行為だ。
 だからどれだけ我慢をしても、膀胱の中を満たすおしっこはなくなってはくれない。むしろ尿意は更なる尿意を呼び、限界水域を越えてもなおダムに注がれる水量は増していく。
「ねえお姉ちゃん、我慢してるの? じゅぎょうの時でもちゃんとおトイレいきたいですって言わなきゃだめなんだよ?」
「……へいきですか?」
「ぅうっ、ぅううっ……」
 そんなことを言われても、エリの口はもはや人間の言葉を喋ってくれなかった。おなかのなかにはただでさえ出口をつんつんと刺激するおしっこが、ぎゅうぎゅうに詰まっているのだ。普通にしているだけでじゅわ、じゅわ、と漏れてしまうそれを我慢するには、ぎゅっと足をくっつけてお知りをアヒルみたいに突き出していなければならない。
 その間にも、エリが摂った水分は、体中を巡る長い旅を終えてエリの膀胱に帰ってくる。
 列の残りはあと4人。つまり8分。
「ぁ、あ…く、ふぁあ……ぅぅぅ……っ、」
 果てしないガマンの時間に耐え切れず、、エリはしゃがみ込んでしまった。
(もう出ちゃう、もれちゃううっ!!)
 エリはしゃがみ込んだままおしりをゆらゆらと揺する。
「高坂さん? そこはお手洗いではありませんけれど? くすくす」
 トイレでおしっこ。トイレでおしっこ。
 それだけで頭をいっぱいにして、エリはずず、ずず、と少しずつ足を前にずらして進もうとする。もちろん、列を作る人数は減っていない。一刻も早くトイレに入っておしっこを済ますこと以外をエリの頭は考えてくれなかった。
(でちゃう、おしっこでてきちゃうっ、おしっこきちゃううっ!!)
 じゅじゅじゅじゅっ、じゅわっ。
 わずかに噴き出したおしっこが、下着にじわりと広がった。エリはおしりに広がる温かみに思わずびくっと飛び上がった。
「んんんんんっ、だめ、だっ、め……ぇっ!!
 制服に包まれた小さな体がぷるぷると震える。熱い雫をにじませる丸いおしりは、内側からあふれ出しそうになるおしっこに耐え切れずにひくひくと何度も地面に押し付けられた。
 それでもどうにか完全な決壊だけは避ける。耐える。耐え抜く。
 もはや人智を超えた精神力だけが、エリの我慢を支えていた。
(おしっこが、おしっこがきゅうんって、きゅうんってなってるぅっ……)
 エリは次々と襲い来る、おさまる事のない欲求に必死になって耐え、またそろそろろと脚を動かし始めた。
 ちゅるっ、ちゅるるるっ。
「あぅっ、またっ……」
 じんわりと股間に暖かいものが広がる。
 彼女の膀胱には、普通では考えられないほどのおしっこが今にもあふれそうにぱんぱんに詰まっているのだ。動くだけでそれがこぼれてしまうのは道理だった。
 少しずつおしっこが出ていっているというのに、エリの尿意はますます高まるばかりだった。身体の構造上、少女に排泄を途中で止めることはほぼ不可能であったし、夕方の空は、エリの体の中の水分をどんどんと一ヵ所に集めてしまう。
 おなかの奥で作られたおしっこは、もう満杯の膀胱に容赦なく詰め込まれていく。
(おねがいっ……もうちょっとだからぁ、っ、でないで、もうでないでぇっ……)
 徐々に暗くなってゆく視界の中、エリは胸元を握り締めて、必死に訴え続けた。





「~~・・…っ、くぅぅうっ……はぁっ、はぁ…っ・・…」
 ちくちくと鈍い痛みにも似た感覚が、少女の身体の奥深くに響く。痛いほど張り詰めた下腹部は、限界を超えておしっこに膨らみ、蠕動を繰り返して排泄を求める。
 それを、女の子のプライドだけでおさえこんで、エリは決定的な崩壊の時を先延ばしにする。すでに股間の先端からは熱い濁流が滲み出し、じゅじゅっ、じゅじゅっと断続的に下着を汚している。
 それでも、最後の最後、本当の意味でのおもらしだけは、どうにかおさえこんでいた。
「うわー、すごいすごーい、良く我慢できたねー、エリちゃん」
 ぱちぱち、と手のひらを叩いてアカリが囃したてる。
 気付けば初等部の子達はいなくなり、トイレの前の列も消えていた。全員トイレを済ませて帰途についたのだろう。
 しゃがみ込んだまま一歩も動けなくなってしまったエリは、涙で濡れた眼鏡を拭うこともせずに二人を見上げる。
「お、ねがい……もう、だめ…なのっ……本当に……くぅんっ……次、きちゃったら、でちゃう…からっ……トイレ、おトイレ……させて……くださいぃっ……」
「んもー、お行儀悪いなぁエリちゃんてば。何度言ってもわからないんだねー。こんなところでオシッコなんて、陵桜の生徒が言っちゃダメだよー? そんなにオシッコのことばっかり考えてるなんて、エリちゃんってホントに恥ずかしい子なんだね」
「ち、ちがぅっもんっ……さ、っさきから、みんなっ、ぁああっ、い、意地悪ばっかりするからっ……」
「えー。いじわるじゃないよー?」
「そうですわ。あまりに高坂さんがみっともないので、みなさんでしつけをしてあげているだけですのよ。綾桜の生徒に相応しいお手洗いのしつけをね」
 カスミは笑顔を見せたまま、とん、とエリの肩を押した。
 バランスを崩しそうになったエリは思わず一歩を踏み出してしまった。上履きの底が激しく廊下をこする。
「ぁくぅっ……!! ……ぁあああっ……~~~っ、っ!!」
 背筋を突き抜ける衝撃。膀胱に隙間なく詰め込まれたおしっこがごぽりと渦を巻き、たった一つの出口に向かって殺到する。エリの頭は真っ白になってしまった。そのまま漏らしてしまいたくなるのだけをどうにか堪える。
「くぅっ、……~~~~……っ!!」 
 ガマン、ガマン、ガマン。
 これが最後、これが最後と必死に自分に言い聞かせて、爆発しそうになるおしっこを捻じ伏せる。でも一体、これが何度目の『さいごのさいご』だろう?
 すっかりおしっこを吸った下着から、ポタ、ポタ、とお漏らしの雫がタイルに落ちる。もうエリの靴もソックスもおしっこで水浸しだ。それでもエリの膀胱は楽になるどころかますます激しく尿意を訴える。
「あら、どうなさったのかしら? お漏らししてしまったの、高坂さん?」
「えー。そんなことないよ。だってもし万が一こんなトコでシちゃったら、もう明日から学校にもこれないよ? あたしだったら死んじゃうかも」
 二人の声がくすくすと響く。
 もう限界なのだ。おしっこをたぷたぷに溜めているダムはヒビだらけで、いつ崩壊してもおかしくない。トイレにさえいければ最悪の事態だけは回避できるのに、それなのに、それがどうしてもできない――!!
「お願いします……お願いしますっ……!! おトイレに、おトイレにっ…くぅぅっ……いかせて、くださいっ……はぁはぁ、っ、……ぁあっ……おトイレでおしっこさせてくださいっ……」
 もはや恥も外聞もなかった。大声を上げてエリは二人に懇願する。
 猛烈な尿意に耐えかね、じんじんと疼く股間を押さえ、スカートの股間を握り締めてしゃがみ込むその様子は幼稚園の子にそっくりだった。
「困りましたわ……高坂さんのお手洗いなんて、心当たりがありませんのよ」
「ふふふ、そうかもねー。だってエリちゃん、初等部の子よりもお行儀悪いんだもんね。トイレトイレって言ってるけどもうそんなに漏らしちゃってるしねー。ちゃんとトイレの順番待ちもできないんでしょ?」
「や、やだあっ、やだああっ」
 染みのついたスカートを指差され、エリはたまらずぎゅっと前を押さえた。今の布地が、おしっこで汚れた指に掴まれてさらに色を変えてしまう。
 あと何分かすれば、染みは完全なお漏らしになって、エリの制服は二度と使い物にならなくなってしまうだろう。
「っ、おねがいします、おね…がいっ、おしっこ、おしっこぉっ……おしっこいかせてくださいいっ、お、おとこのこの……トイレでもいいですからっ!!」
「あっはははははは!! ねえ、エリちゃん今すごいこと言ってるよ? ねえ、わかってる? エリちゃんっ?」
 震える唇が情けなさに噛み締められる。
 おしっこのためにならどんな場所でもよかった。お漏らしよりはずっとずっとマシなのだ。
 と、
「お待たせ、カスミ」
「みなさま遅いですわ。待ちくたびれてしまうところでしたのよ?」
 最初にエリの邪魔をした内進生たちが、ぞろぞろとトイレに入ってきた。あっという間に取り囲まれ、エリは少女たちの注視に曝されてしまう。
「くす、そんなに不安がらないでくださいな、高坂さん。わたくしがみなさんにお願いしましたの。あなたのためにお手洗いを探してくださるように」
「え……」
 呆気に取られるエリの前に、がこん、とブリキのバケツが置かれる。
 何の変哲もない、掃除の時に使われているバケツだ。
「お待ちどうさま、高坂さん。あなたのお手洗いですわ」
 それを指差し、カスミはこともなげに言った。
「お似合いでしょう? 中等部にもなってお手洗いのしつけもできていない高坂さんにはぴったりですわね」
「や……やだ、っ、なんで、そんな……やだよっ、……わたし、ちゃ、ちゃんと、おといれでっ……」
「ですから、これがあなた専用のお手洗いだと申し上げておりますの。ほら、どうぞ遠慮なさらず、存分になさってください?」
 ブリキのバケツがぽかりと穴を覗かせている。音消しもできず、水も流れず、個室すらなく、視界を遮ることもできず、おしっこをするための機能は何も備えていないそれを、カスミはトイレだと言い切った。
「はーい、じゃあこれがエリちゃん用のトイレでいいと思う人ー」
 アカリの宣言に、並ぶ内進の少女たちがこぞって手を挙げる。
「はーい、賛成多数。ぱちぱちぱちー。そういうことで、これはたった今からエリちゃん用のトイレでーす。よかったねエリちゃんー。ずーっと我慢してたもんね。お待ちかねのエリちゃん専用のおトイレだよ? これでもう心配せずに思う存分オシッコできるよねー?」
 言うが早いか、アカリはエリの腰に抱きついて、くいくいといけない場所を刺激してくる。もう一滴分だって余裕がないのに、ぱんぱんに膨れ上がった恥ずかしい水風船を刺激されて、エリははしたなく悲鳴をあげてしまう。
「あぅ、あぁ…ふぁぁんっ…っ!! …や……やだ……っ」
 だが、たとえ口でカタチばかりの否定をしても、エリはそれを克明に想像してしまっていた。
 震えた脚が前に出る。かくかくと揺れる小さな膝はきゅぅときつく閉じあわされ、おなかにたぷたぷと溜まった中身を支えるので精一杯。
 それでも辛うじてブリキのバケツを跨ぎ、何度もチビってしまったせいでぐしょ濡れの下着を苦労して足元まで引き下ろし、スカートを引きあげてしゃがみ込むのだ。
 間髪入れず、女の子の一番無防備な部分が怒涛の尿意に貫かれる。まるで滝のようにバケツの底に猛烈な勢いでぶつかる水流。長時間の我慢を強いられたゆえに、その反動はとてつもなく大きく、制御できない恥ずかしい音が部屋いっぱいに響いてしまう。あっという間にバケツはおしっこで重くなり、じゃぼじゃぼと音を立てながら泡だって黄色い水で一杯になってゆく。
 みんなの前で、
 おしっこ、する。
 トイレですらない場所で、絶対に誰にも知られちゃいけない秘密の好意を強いられる。
 絶対に、絶対に見られたくない、おしっこをしているところを見られる。それだけでは済まない。これまでエリがどれだけはしたない我慢を続けてきたのか、エリがどれだけおしっこをおなかのなかに溜めてしまっているのか、色も、音も、匂いまで何もかも知られてしまう。

 ――そんな想像は、エリから一切の希望を失わせるに等しかった。

「や、やだぁっ……そんなの、や……」
 目の前のバケツを恐怖の眼で見下ろして、ぶるぶると震えながらあとずさるエリ。
 そうしてエリは、本当に最後の最後のチャンスを逃してしまった。
 今の今まで、寛大な慈悲をもってお漏らしの危機を先延ばしにしてくれていたエリの身体が、とうとうエリ自身を裏切った。
 きゅうんっ、と鋭い刺激がエリのお腹の奥で響く。
 それはエリの排泄器官がエリの意志を離れる瞬間だった。
「ぁ、ああっ、だめ、ダメ……~~…っ!!」
 じゅじゅっ、と何度も何度もおしっこを先走らせていたエリの恥ずかしいところが少女の我慢を超えて痙攣を始める。
 蠕動を繰り返す排泄孔が別のイキモノのようにうねり、渦を巻くおしっこが熱い奔流になって、内側から外側へと走り出す。ちくちくと続いていたむず痒さは、一気にエリの下腹部を支配した。
「どうしたの? エリちゃん。おトイレあるのに使わないの?」
「ふふ、それは高坂さん専用のお手洗いですもの。どなたも文句なんて言いませんわよ。遠慮なさらずにどうぞ?」
「だ、だめえっ。こんな、こんなのっ、ちゃ、ちゃんとした、おといれじゃなきゃだめっ、だめええっ」
「えー? なんで? さっきからエリちゃんオシッコ行きたいって言ってるから連れてきてあげたのに。じゃあもういいんだ? オシッコしたくなくなったんだね」
 そんなわけがない。
 時間を追うごとに募る尿意は、既に過去エリが一度も体験したことがないほどに高まっている。猛烈な尿意に抵抗し、じくん、じくんと引きつる括約筋は、今にも力を失ってしまいそうだ。そう、今すぐにも。
 じゅじゅ、じゅぶっ、ぶじゅじゅっ、
 膀胱が断続的に収縮を始め、本格的な排泄の準備を整えてしまう。
 トイレではなく、おしっこを済ますための場所でもない、教室の真ん中で。エリはとうとうおしっこを始めてしまった。
「で、でちゃう、でちゃう……全部、ぜんぶぅ……っ」
 膨らみきった下腹部が一際大きく蠕動し、一気に収縮を開始した。にじみ出ていた熱い雫とは比べ物にならない勢いで、エリはおなかのなかに溜め込んでいたおしっこを下着の中に噴き出してしまう。
 ぶじゅっ、じゅぶ、じゅじゅじゅじゅじゅっ、
 凄まじい勢いのおしっこはあっという間に下着を侵食し、押さえ込んだ指の隙間からびちゃびちゃと地面に飛び散った。
 じゅじゅじゅぶぶっぶじゅううっばちゃびちゃびちゃっ、じじょじょじゅじゅじゅっ!! じゅばじゃばばばばばじゅじゅじゅばちゃばちゃばちゃ――!!
 おしりに広がってゆく温かい水流。手が痛いほどの勢いで噴き出すおしっこは、当然あり得ないほどの量だった。まるでホースの端を押し潰して水を撒いているよう。遠巻きに非難する内進生たちの足元まで届くほどだ。
 耐え続けてきたものの解放感に、エリの意識がかくん――と落ちる。
 それでもエリの手のひらは、股間から離れることはなかった。滝のように噴き出すおしっこがスカートとソックスを台無しにし、制服の上着まで大きく染みを作る。ずっと股間を押さえっぱなしの袖はもう壊滅状態だ。とどまる所のないおしっこは上履きを水浸しにしてタイルの床に大きく水溜りを広げていく。
 バケツを前にしたまま、エリは我慢できなかったおしっこを排泄し続けた。床に広がったエリのおしっこは、隅の排水溝へと流れ込み、ごぽごぽと音を立てる。
 おしっこを噴き出すたびに小さくへこんでゆく下腹部を感じながら、エリは膝を突いてしまった。ばしゃり、と自分のおしっこに汚れる膝の感覚ももう遠い。

「あっははははっ……」
「くすくすくす……」

 遠く聞こえるクラスメイトたちの笑い声が、もはやどうしようもない所まで行き着いてしまった事態を知らせている。
 憧れの制服が、自分のおしっこで取り返しのつかないほど汚れていくのを感じながら、エリは静かに泣き崩れた。



(初出:学校でトイレを禁止されるいじめ 24-32 2006/02/09)

 
[ 2007/10/13 09:36 ] 小説 | トラックバック(-) | コメント(-)
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