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犬と飼い主のお話。 

 
 遠く、チャイムの音が聞こえてくる。
 ゆるやかに傾いたお日様が窓から差し込み、少し湿った風が吹き込んで机の上で開きっぱなしの算数のノートをぱらぱらとめくった。
 リビングからは5時のニュースを読み上げるアナウンサーの声。
 鬱陶しい空が久しぶりに青を取り戻し、夏の訪れを感じさせてくれた梅雨の晴れ間の日曜日も、そろそろ終わりを告げようとしていた。
「あーあ……お休みおしまいかぁ……」
 田辺家の二階、自分の部屋のベッドの上で寝転がりながら、秋乃はふぅと大きなため息をついた。明日からはまた学校。夏休みまではまだまだ一月近くもある。カレンダーの睨んでみても、夏はやってくる気配はない。
 先週買った漫画のまだ読んでいない読者アンケートなんかのところを読むともなしに眺めて、もう一度ため息。
「つまんないなぁ……」
 せっかくの週末も、日曜日の朝まで雨が続いていれば出かけるわけにもいかない。ようやく晴れたと思えばお昼を過ぎていた気まぐれな空に、秋乃は心の中で文句を言った。
「秋乃、ごろごろしてるならごはんの前にラッキーの散歩にいってきてちょうだいっ」
「……はぁーい」
 一階の台所から、夕飯の準備を始めた母親の声が響いてくる。
 秋乃はごろんとベッドの上で寝返りをうつと、読み飽きたマンガ雑誌を放り投げた。机の上で汗をかいている1.5Lのペットボトルに口を付けて、まだ半分以上も残っている炭酸飲料を一気に喉に流しこむ。
「秋乃ーっ!!」
「んもーっ、わかってるってばーっ。いってきまーすっ!!」
 急かす階下の母親に叫び返して、秋乃はベッドから跳ね起きた。
 階段を一気に駆け下りて玄関脇の戸棚からリードを取り出し、サンダル履きのまま庭に下りる。
「行こっ、ラッキー」
 蛍光イエローのリードを振るのは、散歩の合図。
 庭でさっきまでの秋乃同様ごろんと寝転がっていたラッキーのしっぽがぴんと跳ね上がる。ご主人様の意図を理解したラッキーは犬小屋の下の日陰から飛び出して秋乃に飛びついてきた。
「っと……おとなしく、してってばっ。意地悪しないからさぁっ」
 嬉しそうに吠えながらじゃれついてくるラッキー。秋乃が学校に入る前はバスケットの中で丸まってクンクン泣いていた仔犬だったが、今では秋乃を背中に乗せられるくらいの立派なオトナの身体だ。
 ところが、ラッキーときたら中身はまだまだ甘えたい盛りの子供なのだった。ご飯のときも散歩のときも、ご主人様である田辺家の面々を見るや否や、ものすごい勢いで向かってくるのだ。
「こらぁっ、やめなってラッキーっ!! 怒るよっ!? って、うわぁっ!?」
 ラッキーにしてみれば小さな頃と変わらず甘えているつもりなのだろうが、当の秋乃にしてみればたまったものではない。自分の倍以上もある大きな身体に押し倒されそうになりながら、どうにか鎖を外してリードを付ける。
「んもーっ、すこしはおとなしくしなさいっ」
 ラッキーの頭をぽかりと殴るまねをしながら、尻餅をついたキュロットのおしりをぱんぱんとはたき、よいしょっ、と身体を起こす秋乃。
 このところ雨続きでよっぽど退屈だったのだろう。ラッキーは千切れそうになるくらい元気にしっぽを振りながら、全身で喜びを表現するように秋乃のまわりを飛び跳ねる。
 散歩セットを確認して、リードの持ち手を手首にくるりと二重に巻いて、出発の準備は完了。
「じゃあ、いってきまーすっ!!」
「はいはい、いってらっしゃい。気をつけるのよ」
「平気だってばっ」
 わぉんっ、と元気良く鳴くラッキーと共に、窓ガラス越しのいってきますをして、秋乃は田辺家の玄関をくぐった。





 ラッキーの散歩コースは、一度海に出てから橋を渡り、川沿いを歩いて県立公園を回り、駅前にでる道順。ゆっくり歩けば1時間くらいかかる。普段はもっと短い市立中学校の前を通るコースなのだが、今日のラッキーはそれくらいでは満足してくれそうになかった。
 お日様もまだ十分に高いし、遠回りしてもいいだろうと決めた秋乃は大通りを海のほうに歩き出す。
「……~~♪」
 鼻歌を交えて軽い足取り。サンダルで歩道のアスファルトを叩き、先を行くラッキーが他の人に迷惑をかけないようにきちんとリードを握る。もちろんおりこうなラッキーはあたり構わず吠えるようなことはしないが、生来の人懐っこさのためいきなり知らない人にじゃれついたりしてしまうことがあった。
 そんな相手はたいてい大の犬好きで、なにかの問題になることは少なかった。だが、たとえラッキーがそんな相手を見分けてやっているとしても、きちんとしたしつけはしなければいけないのだ。
 自転車に乗って急ぐ高校生や、買い物帰りの主婦、公害のデパートで買い物の帰りらしい家族連れとすれ違いながら、秋乃は思いっきり背中を伸ばした。
「んー……っ!!」
 せっかくのお休みをずっと家の中で過ごしていたので、ぐっと胸をそらすとぱきっと背中が鳴る。
 夕方の風がさわさわと半袖のシャツを揺らし、心地よい涼を運んできた。
「……ほら、ラッキー、もうちょっと落ち着きなってばっ」
 よほど外に出れたのが嬉しいのだろうか。せわしなくしっぽを動かし、ぐいぐいと先を急ごうとするラッキーに引っ張られ、秋乃は小さく抗議の声を上げた。かつかつと地面を叩くラッキーの脚はアスファルトをぐっと掴み、邪魔なリードごと秋乃をかっさらっていきそうな気配だ。
「っと、ほらラッキー、赤信号だよ。待て」
 横断歩道の前でそわそわとしているラッキーを制して、秋乃は毛むくじゃらの頭を撫でた。ぉん? と首を傾げるラッキーに、リードを引いて車が来ていることを教える。
 ごぅ、と風を切って走り去ってゆく大きなトラック。それに続いて何台もの乗用車が交差点の向こうに消えてゆく。
 この信号は一度変わるとなかなか青にならないので有名だった。
 行き来する車を眺めながら、秋乃は落ち着きのないラッキーのリードを引っ張り。サンダルの脚を交互に踏み変える。
「んもーっ……!! どうしたのラッキー? じっとしてなってばっ」
 秋乃に怒られてすら何度も立ち上がろうとするラッキーは、大きな身体を揺すってせわしなく秋乃の周囲を歩き回る。
 ラッキーがぐるぐる歩き回るせいで、秋乃は足をリードでがんじがらめにされてしまいそうだった。秋乃はリードをぎゅっと握って擦り寄ってくるラッキーに押されて転びそうになるのを踏みとどまった。
「うわ…っとっ…!? ……ああぁもぅーっ、ラッキーっ!? 何よっ」
 どうにも様子のおかしいラッキーを覗きこんで問いかけるも、つぶらなひとみはじっと交差点の向こうに注がれている。秋乃がいくら目を凝らしても、その向こうに愛犬の興味を引くようなものは見つからなかった。
 やがて、目の前を進む車の列が途切れる。車道の信号は青から黄色に変わっていた。
「っ、こらぁっ、待てっ。まだダメだってばっ!!」
 車がいなくなった瞬間、ラッキーはわぉんっと吠えてスタートダッシュを切る陸上選手みたいにすごい勢いで飛び出した。ぐいぐいと先に進もうとするラッキーを制し、秋乃は引きずられそうになりながらリードを引っぱる。
 だが、学校でも背の順で前から数えたほうが速い秋乃ではラッキーと綱引きをして勝てるわけがない。
「きゃっ……んもーっ、まだ信号赤だよっ!? ラッキーっ!!」
 幸い、秋乃が横断歩道に出た頃には横断歩道の信号も青に変わっていた。
 片足立ちのサンダルでとっ、とっとバランスを保ち、辛うじて倒れこむのをこらえながら、秋乃はラッキーにほとんど引きずられるようにして横断歩道を渡りきった。
「もーっ、さっきからヘンだよラッキー……。どうしたの?」

 わふ、わふっ!!

 秋乃の問いかけにも、ラッキーは元気のいい返事をしてリードを引くばかり。そのわがままに秋乃がまたまた『んもーっ』と言いかけた時だった。
「あれっ、秋乃ちゃん。お散歩?」
「あ、裕香ちゃんっ」
 聞き覚えのある声に振り向けば、鞄を背負ったクラスメイトがひょこっと手を挙げる。秋乃はぶんぶんと手を振り返して、仲良しの友達の所に走り寄った。
「裕香ちゃんは? 塾の帰り?」
「うん。もうすぐ模試だから……」
 クラスメイトの大きな鞄を見て、秋乃はうわぁ、と嫌な顔をする。
「お休みまで勉強なんだ。大変だねー。わたしなんかまだ宿題も終わってないのに」
「あはは。……でも、やっぱりやる以上は一生懸命がんばって結果を残したいし。大変だけどね」
「すごいなぁ……」
 すっかり感心してうなずく秋乃。再来年私立のお嬢様学校を受験するという裕香は、秋乃と今年の4月のクラス替えで知り合った。見た目も正反対の二人は、なぜか会って2週間ですっかり仲良しになった。今では毎日一緒に登下校するくらいの大親友だ。
「この子、秋乃ちゃんの家の子なの?」
「うん。ラッキーっていうんだ。……ほら挨拶しなきゃ、ラッキーもっ」
 リードを通して促すものの、ラッキーは落ち着きなく身体を振っている。裕香のことなどまるでどうでもいいという様子に、秋乃はむーっ、と頬を膨らませた。
「んもーっ。わがまななんだからーっ」
「あ、いいよ。無理やりじゃかわいそうだし」
「いつもはもっときちんと言うこと聞くのになぁ……どうしたんだろ?」
 とんとん、とサンダルのつま先で地面を叩きながら、秋乃は首を傾げる。
 確かにまだまだ甘えん坊のラッキーだが、基本的にはしつけのきちんとした名犬である。散歩のときでもこんなふうに秋乃を困らせることはめったになかった。
「まあ、ラッキーちゃんも時々はいろいろいやになることもあるんじゃないかな? 怒っちゃかわいそうだよ」
「うん。そうだね……それよりさ、裕香ちゃん昨日のテレビ見た? ちょうど昨日、お姉ちゃんと――」





「あ、そろそろ行かなきゃっ」
「そうだね。私も早く帰らないと、お母さん心配させちゃう」
 長々と話し込んで、いつの間にか太陽はずいぶん地平線に近づいていた。人通りがだいぶ少なくなってきた夕方の大通りを、大きなトラックが走り抜けてゆく。
「ごめんね裕香ちゃんっ、こんなに遅くまでっ」
「ううん。楽しかったから。それにまだ6時前だし、平気だよ」
 にこにこと笑顔の友達に、きゅっとシャツのおなかのところを握り締め、秋乃は頭を下げる。
 ようやく動き出すことを決心した主人の意を悟ったのか、ラッキーは跳ね上がるようにリードを引っ張った。『うわぁっ!?』とそれに引っ張られ、秋乃は思わず膝を寄せ合わせる。
「そ、それじゃ――もう行くねっ、お散歩途中だしっ」
「うん。ばいばい。明日学校でね」
「ばいばーいっ!!」
 小走りに去ってゆく友達に大きく手を振って、秋乃はぐっとリードを握る手に力を込めた。裕香が曲がり角の向こうに消えるのを待ってから、シャツを握る手をそっとおなかの上に当てる。
 ぞわっ、と恥骨の下から響く感触が、秋乃の背中を震わせた。
(……ぁ…っ)
 おヘソの下がきゅぅんっと疼き、むず痒いような、切ないような気配がぞくぞくと脚の付け根にたまってゆく。ぐりぐりと忙しなくサンダルのつま先がアスファルトをこすり、キュロットからのぞく脚にはうっすらと鳥肌が立っていた。
 それは、紛れもなく――秋乃の足をある場所へと向けさせる感覚。
(…お、おしっこ……)
 切羽詰まった尿意が、秋乃の下腹部を支配していた。
 出かける前にラッパ飲みしてしまった炭酸飲料のせいだろう。裕香と立ち話を始めてから、秋乃は尿意を感じ始めていたのだった。はっきりと意識してからもう何十分も経っている。話の途中で気付かれないようにさりげなく腰をねじったり、膝をくねくねと重ねたり、股間を押さえそうになる手を慌てて誤魔化したり、いつしか秋乃はラッキー以上に落ち着きをなくしていた。
(出かける前に、トイレいっとけばよかったなぁ……)
 思い返せば、ベッドに横になっている頃からなんとなくおしっこの重みを感じてはいたのだ。母親に急かされてすっかり忘れていたが、良く考えてみれば今日は朝から一度もトイレにいっていない。
(えっと、5、6、7……)
 いったい何時間分のおしっこが溜まっているのだろう。指折り数えてみて、秋乃はそのことに呆れてしまう。屋外で長い時間話し込んだことによる体の冷え、水分吸収の良い炭酸飲料。秋乃が暢気に話し続けている間にも、健康的な少女の新陳代謝は幼い膀胱をたぷたぷに満たすのに十分な量のおしっこを抽出し続けていたのだった。
「ぅうっ……」
(トイレ……行きたいっ…)
 ぶるっ、と小さな身体が震える。一度はっきりと自覚してしまうと、尿意はたちまちのうちに膨れがあった。秋乃の小さなおしりはぐっと我慢をするたびにひくひくと震え、おなかのなかのおしっこを納めた秘密のティーポットをたぷたぷと揺らす。
 秋乃の頭の中は、あっという間におしっことトイレのことでいっぱいになってしまった。
(えーっとっ……こっちって、トイレあったっけ? ……あのスーパーはすっごく汚いし、CDショップは……確か店員さんがイジワルで使えなかったし、海の通りのコンビニは……あ、ラッキーがいるからダメだっけっ……)
 秋乃の頭の中にたちまちのうちに知っている限りの町じゅうののトイレが検索され、そのほとんどにバツがついてゆく。ラッキーを連れたまま入れるトイレはとても数が少ない。といって、ラッキーを残して秋乃だけがおしっこをしに行くわけにもいかなかった。
 残った候補はわずかに数箇所。しかも、そのほとんどが海とは反対側だ。
「我慢……できる、かな」
 秋乃は不安の混じった声で、確認するようにつぶやく。
 我慢とは、もちろん家に帰るまでの我慢だ。まだ散歩コースは10分の1も進んでおらず、どれだけ急いでも30分近くかかってしまうだろう。だが、秋乃のおなかの中のおしっこはそれよりもずっと早く緊急事態を迎えてしまいそうな気配だ。
 時折つぅんっと強まる尿意に、秋乃の姿勢は自然と前かがみになり、太腿を寄せ合った内股になってしまう。
(だめかも……っ、すっごく、したくなってきちゃった……っ)
 ぴりぴりと走る刺激に耐え切れず、秋乃の腰がくねくねと揺すられる。
 学校の授業中でも、今すぐ手を挙げてトイレに駆け込んでしまいたいくらいの切羽詰った尿意だった。

 わふっ!!

 ひときわ強く鳴くラッキーの吠え声に、秋乃は我に返る。
 ぐいぐいと先を促すラッキーに、秋乃はごくっと口の中のつばを飲み込んだ。
 服の上からでもはっきりと分かるくらいに、秋乃のおなかは硬く張り詰めている。まるで石でも触っているみたいだった。
「ら、ラッキー、だめ。今日は帰るよっ」
 結論――とても我慢はできない。無理。
 そう決めた秋乃は、ラッキーのリードをぐいっと引いた。ここから引き返せば家までは5分もかからない。ラッキーには悪いけど、今日はこれでおしまいにして急いで帰ろう。
 そうすればトイレに入れる。おしっこができる。
 そう思って回れ右をしようとした秋乃は、しかしその考えを実行することができなかった。
「きゃ……ぁあっ!?」

 わふわふっ、わぉぉおんっ!!

 まるで秋乃のそんな態度に強い抗議を示すかのように、ラッキーは物凄い力でリードを引き返した。これまでのじゃれ合いとは桁違いのすさまじい勢いに、秋乃は両手を引っ張られてバランスを崩す。
(んぁう…うっ!!?)
 反射的に踏み出した一歩が激しくアスファルトをこすり、衝撃がびりびりと秋乃のおなかに響く。辛うじて落ち着いていたおしっこが大きく波立ち、尿意の大波が一気に秋乃の股間に襲い掛かった。
「ぁあああ……~~っ、だ、め、っ、…出ちゃぅ、ぅううっ……だめ、ラッキーっ、……や、やめっ…て……っ」
 秋乃の頭を占めていた“したい”が“でちゃう”に変わる。
 おヘソの下の秘密のティーポットがこぽこぽと音を立てる。秋乃は崩れそうになる股間の貯水池の出口を開いている手で押さえた。キュロットの前をぎゅうっと握り締め、引っ張られるリードに力を込める。
 だが、そんなご主人の状況には構うことなく、ラッキーはぐいぐい前に進もうとした。
「ま、待ってっ……ラッキーっ、そっちじゃないよっ、そっちじゃ、なくて……戻らないと、だめ…なのっ……」
 内股で定まらない足取りのまま、秋乃はラッキーに懇願する。だがラッキーはそれを聞き入れるどころかますます激しい勢いでリードを振り回し始めた。ただでさえ不安定な姿勢で、リードを握る手を左右に動かされ、秋乃はひょこひょことバランスを崩しながら歩道を引きずられる。
「や、あ…ぅ……こら、ラッキーっ、ダメ、ラッキーってばぁっ……ふあぁんっ……っく、ぅぅっ……」
 大波にさらされて脆い部分が決壊してしまいそうになり、秋乃はキュロットを下着ごとおもいっきり引っ張りあげた。ぐいぐいぎゅうぅと前を押さえながら、はぁはぁと浅く荒い息をつく。
 今にも溢れそうなおしっこを塞き止めることと、ぐいぐいと引っ張るラッキーを押しとどめること。その両方を同時に行うのは不可能だ。ラッキーとの綱引きに負けた秋乃は、ずりずりと引っ張られ次第に大通りを海のほうへ、家とは反対方向にひきずられてゆく。
「待ってえっ、す、ストップ……行っちゃ、ダメぇ……っ」
 秋乃は必死に手に絡まったリードをほどこうとしたが、主人のいうことも聞かずずんずん前に進むラッキーに引きずられながらではうまくいかない。
 いまにも漏れそうなおしっこを我慢し、内股のへっぴり腰では踏ん張ることもできなかった。





 限界に近い尿意を抱えながら、秋乃はラッキーに引きずられて通りを二つ越え、川沿いの小さな道に出る。ここから県立公園までは一本道だ。人通りもまばらな道を、おしっこを我慢した秋乃はラッキーに引きずられるまま進んでゆく。
「ラッキーっ、こらぁっ……ダメだって…んくぅっ……言ってる、のにっ……ホントに…っふぁ、…もう、がまんできなくなっちゃうっ……」
 おしりを後ろに突き出し、身体を半分に折り曲げて、片方の手はリードに引っ張られ、もう一方の手はキュロットの股間を硬く握り締め。惨めな格好のまま秋乃は何度もラッキーに命令をする。
 しかし、おしっこを我慢しながらではうまくラッキーのリードを引いて『それはダメ』の合図を送ることすらままならない。ラッキーはそんなご主人さまをぐいぐいと先導し、草の覆い茂る川原に下りた。荒くなった地面に耐えるため慎重な足運びになった秋乃の股間に、地面の衝撃がダイレクトに響く。
「…ぅく……っ……」
 秋乃は慌てて股間を握る手に力を篭めた。
 どう見ても明らかな、おしっこを我慢するしぐさ。しかしもう人の目を気にしている場合ではなかった。幸い、河原には人もまばらで、秋乃のほうを見ている人はいない。
「ね、ねえっ、ラッキーっ」
 ふいに、秋乃の手を拘束していたリードが緩む。
 気付けば秋乃は背の高い草の中に囲まれて、ようやく歩くのをやめたラッキーのすぐ後ろに立っていた。おなかの切羽詰った状況にせかされて秋乃はリードを引っ張るが、さっきまでの焦りはどこへやら、ぴたりと立ち止まったラッキーは今度はてこでも動かなそうにしっかりと地面を踏み締めている。
「ちょっとっ……早く…行こうよっ! …んもぅーっ、言うこと聞きなさいっ」
(でないと、ホントに、おしっこっ……)
 きゅぅん、と疼く膀胱を押さえ、秋乃がぎゅっとリードを退いた瞬間だった。 

 ぶじゃあああああっ!!
 じょぼっ、じょじょぼぼぼぼぼぼーっ!! ばちゃばちゃばちゃばばばっ!!

 ぐっと踏み締められたラッキーの足の間から、すさまじい勢いで吹き出した水流が秋乃の目の前に叩きつけられる。
「ぇ……っ」
 それは、紛れもなくオシッコ。
 秋乃が今一番したいことだった。
 いくらかしゃがみ込むように曲げられた足の間、地面に近付いたラッキーのおしりから、水道が壊れてしまったような激しさで吹き出したおしっこが地面にぶつかって大きな音を立てる。
「ちょっと、ラッキー……っ」
 秋乃は、散歩に出てからのラッキーの行動の謎をようやく悟った。
 横断歩道でなかなか変わらない信号待ちをしていたときも。秋乃が裕香と話していたときも。ラッキーはこの川原に来るまで、ずっと漏れそうなおしっこをがまんしていたのだ。
 お行儀のいいラッキーは、雨続きで外に出られない間、小屋を汚さないようにずっとおしっこをがまんしていたのだろう。もちろんどうしても無理な時は庭のどこかで済ませていたのだろうけど、いつもの場所で以外はトイレなんてしたくなかったに違いない。
「ふぁ……んっ」
 地面をえぐる猛烈な勢いの水流を見せつけられ、秋乃の唇がきゅっと噛み締められる。
 ラッキーのおしっこはなかなかとまらなかった。
 地面にできた黒い染みはあっという間に大きな水たまりになって、泡を立てて流れ出す。足元を流れてゆくおしっこの小川を見ているうちに、秋乃のの膝はぎゅっとくっついていた。
(いいな……ラッキー、どこでもおしっこできて…)
 草むらの地面にたっぷりおしっこをして、ラッキーは気持ち良さそうに尻尾をふる。すごい勢いで地面にぶつかり、じょぼじょぼと音を立てて泥を掘り返すラッキーのおしっこに、秋乃のおヘソの下のあたりがきゅんとなった。
 まるで、おなかの中で火にかけられたティーポットがくつくつと沸騰しているみたいだった。
「で……」
(でちゃうっ……)
 おなかを圧迫するおしっこの感覚は、おヘソの下から脚の付け根まで降りてきていた。出口寸前までおなかの中をおしっこに占領されて、秋乃は背中をきゅぅっと丸める。
(ずるいよ、ラッキーっ……わたしも、わたしもおしっこしたいのにっ……)
 じょぼじょぼと派手な音を立て続けるラッキーの放水を、秋乃は魅入られたように見つめてしまう。秋乃よりも大きな身体をしたラッキーは、その分だけおしっこの量も多いのかもしれない。
(ここで……)
 こくり、とつばを飲み込んで、秋乃は自分を誘惑するイケナイ考えと戦う。
(ラッキーと、いっしょにしちゃえば……バレない、かな……)
 目の前でラッキーのおしっこ姿を見せ付けられ、秋乃の膀胱も敏感に反応していた。ざわざわと高まり続ける尿意の波に晒されて、股間を押さえていた手は自然とキュロットの前ボタンに伸びていた。そわそわと落ち着きのない脚はしゃがみ込む姿勢を取ろうとゆっくり曲がりはじめる。
 幸いにして、周囲には背の高い草が生えていて、周りから覗きこむことはできなさそうだった。こっそりと穿いているものを足首まで下ろしてしゃがむのはそう難しくない。
「しょ、しょうがないよねっ……恥ずかしい…けど、っ、もう、ホントに無理だしっ……うん。しちゃおう……」
 恥ずかしさをごまかすため、あえて口に出して自分に言い訳をし、秋乃はキュロットに手をかける。
「んしょっ……っと、……ぅ、……あ、あれっ?」
 ボタンを外し、前のファスナーを下ろそうとしたところで――ふいにがちりという手ごたえが秋乃の指から金具をもぎ取った。
「ぅうっ……え、あれ? …開かな、い?」
 焦る秋乃を急き立てるように、膀胱にかかる重みが増す。
 慌てた秋乃は無理矢理キュロットを脱ごうとしたが、ファスナーは端から1センチあたりの場所でがっちりと布地を噛んでしまい、上にも下にも動かない。当然、そのままではキュロットを脱ぐことはかなわなかった。
「ちょ、ちょっとぉっ……なによー、もぅーっ!! な、なんで開かないのっ!?」
 ファスナーの金具を掴んでがちがちと引っ張るが、焦っているせいかうまく外れない。秋乃はくねくねとおしりをもじつかせながら苛立ちの声を上げる。
「んも-っ、な、なんでこんなっ、時にぃ…っ は、はやくしないと困るのにっ……ぁあっ、開いてっ、開いてよぉっ!! せっかく、おしっこできるのにぃっ……!!」
 そうしている間にも秋乃のおなかでおしっこが暴れ出す。中腰のままぎゅっと股間を押さえた秋乃は、金具をぎゅっと摘むと力任せに下に向けて引っ張った。がちり、と金具がきしむ音を立て、ファスナーはやがてぶちぶちぶちっと嫌な音を立てて千切れる。
 壊れたファスナーが大きく開き、その隙間に秋乃の真っ白な下着を覗かせる。ファスナーの金具はすっかり曲がって動かなくなっていたが、そんなことよりも今の秋乃には出る寸前のおしっこのほうが重大事だ。
「っ、くぅっ……あ、開いたぁっ……!!」
 尿意を急き立てるおしっこに最後の一時待機の命令を出しながら、秋乃はぐいっ、とキュロットと下着をまとめて掴み、一気に足首まで引き下ろした。汗の篭ったパンツの下からきゅっと閉じた女の子の部分が顔を覗かせる。
(できるっ…おしっこ、やっとできるんだ……っ)
 はぁあぅっ、と大きく息を吐いて、秋乃は地面にしゃがみ込んだ。
 すっかり整ったおしっこの格好。視界を遮る背の高い草むらは、秋乃の恥かしい姿をすっかり覆い隠している。地面にはラッキーのおしっこが川を作って低い方へと流れている。まるでそこは、おしっこを我慢できなくなった秋乃のための臨時仮設トイレだった。
 草むらの真ん中でおしっこを済ませてしまうことには抵抗があったが、些細な羞恥心はおなかの中で暴れるおしっこに追いたてられて消えてしまっている。ゆっくりと緩み始めた水門からは、ぽた、ぽた、ちょろっ、と本格的な排泄の予兆になる先走りの雫が早くも漏れだしていた。
「はぁあ……っ」
 秋乃が安堵の吐息とともに、最後の緊張を解こうとしたその瞬間。
 すっかりおしっこを終えていたラッキーが、ぶるるっと身体を震わせた。その意味を理解するよりも速く、秋乃の背中を冷たいものが走り抜ける。
(え、や、待っ……)
 ラッキーはずっとガマンしていたおしっこをし終え、すっかり上機嫌だった。あぉんっ、と一吠えしてリードを引っ張り、散歩の続きを元気いっぱいに秋乃にねだる。。
 突然のことに、秋乃は思わずおなかにぐっと力を入れて、おしっこを中断してしまう。
 同時に、まだ手首に絡まったままだったリードに引きずられ、秋乃の身体はぐいいいっと前に引っ張られた。
「っっ、っ、い、ゃあああっ!!」
 ぎゅっと閉じた脚の奥で、しゅるしゅると熱い雫が漏れる。
 じゅわっ、と脚の間に広がる感覚を止めることができないまま、秋乃は悲鳴を上げた。
「やめ、っっ……やめて、っ、ダメ、ラッキーっ……」
 もう、いつでもおしっこができる姿勢のまま、秋乃は倒れそうになる身体をリードに預けて必死に押さえ込んだ。だがそんな状態では出てしまう寸前だったおしっこを止めることは不可能だ。
 ぎゅっと閉じた脚の間にちょろっ、ちょろろっと滲み出したおしっこが秋乃の膝の裏側を伝ってゆく。
 漏れ出すおしっこはしゅるしゅると秋乃のおしりを伝い、地面にぽた、ぽた、と黒い染みを作ってゆく。脱ぎかけのキュロットにもおしっこの雫が飛び散った。

 ぉんあぉんっ!! わぉんっ!!

「ら、ラッキーっ、ダメ、だめぇ、ストップっ!!」
(ヤダぁダメっ、おしっこひっかかっちゃうぅうっ!!)
 キュロットが汚れてしまう事を恐れて、秋乃は必死にリードを引く。
 しかし、ご主人様の様子に首をかしげながら、ラッキーは『さあ出発っ!!』とばかりに川原沿いの道に向かって走り出した。茂みがあっという間に押し広げられ、秋乃はラッキーのおしっこの場所から引き離されてしまう。
「っやぁ、ラッキーっ、そっちはだめっ!! 止まって、止まってよぅっ!!」
 地面にずりずりと靴跡を残しながら、秋乃は今にも暴発しそうな股間をぎゅっと握り締めることしかできない。元気いっぱいに地面を蹴るラッキーと、キュロットを膝に絡めたまま転ぶのを堪えるだけで精一杯の秋乃では勝負になるはずもない。。
 そしてついに、秋乃は完全に茂みから引きずり出されてしまった。開けた視界の中、おしっこに濡れた手で脱げ落ちそうになるキュロットを必死で掴みながら、秋乃はラッキーを落ちつかせようとリードを引いた。
「ま…待ってぇっ!! ……み、見えちゃうっ、見られちゃうよぉっ!!」
 キュロットと下着は一緒になって膝に引っかかったままだ。むき出しの股間を覆うものはなにもない。ひやりと内腿を撫でる風の感触に、秋乃はとっさにシャツの裾を掴んでぐっと前を隠す。しかし当然短いシャツがキュロットの代わりになるわけがなく、押さえた反対側の白いおしりが丸見えになってしまう。
(やだ、やだやだっ、今誰か来ちゃったら見えちゃうっ、だ、だめっ、だめぇ!!)
 パニックになりながらぐいぐいとシャツを引っ張る秋乃。
「ラッキーっ!! 止まって、止まってぇ!! ぁ、だめっそっち行っちゃダメええぇ!!」
 ラッキーは階段を駆け上がり、河原沿いの道に昇ろうとしていた。舗装された道まで引き摺られながら、秋乃はシャツを引きちぎらんばかりに握り締めた。
 キュロットをずり下げ、おしりを丸出しにしたその格好。
 こんなところを誰かに見られたら、死んでしまうかもしれない。
(は、はやくパンツはかなきゃっ、こんなところでおしっこしようとしてたの見られちゃうっ……!!)
 それ以外の選択肢は秋乃に残されていなかった。
 秋乃は電光石火の早業で、無理矢理膝に引っかかったキュロットのを掴んで引っ張りあげた。
 まだおしりは半分見えたままの格好だったが、とにかく本当に大事なところだけはぎりぎりでカバーしなければいけない。ふらふらとラッキーの後を追いながら、ぐいぐいとキュロットを引き上げてゆく。
(み、見られてないよねっ……誰もいないよねっ!? だ、大丈夫だよねっ)
 何度も何度も辺りを見回し、秋乃はぎゅっと唇を噛み締めた。
 先を行くラッキーに強い視線を向け、リードを力任せに引っ張る。
「もう、もぅーっ!! ラッキーっ!! わ、わたし怒るよっ!? なんで意地悪するのっ!? せっかくわたしがっ――」

 オシッコ、できるところだったのに。

 そのことを意識した瞬間、忘れていた尿意が一気に蘇った。
「……ぅ、はぅっ!? や、やだっ、またっ、っダ…メ、も、もれちゃ…っ…」
 ついさっきまで、秋乃はまさにおしっこをしようとしていたのだ。おなかはすっかり準備を整えてしまっており、今さらダメですは通らない。
 無理矢理引っ張られた布地が秋乃の下腹部を圧迫し、膀胱の中身を激しく震わせる。ぶるり、と猛烈な尿意が秋乃を襲った。
「ぃやぁあ…もれちゃ、……あぁ、ぁ、ぁああぁ~~っ…!!」
 すっかり緩んでしまった括約筋の力だけでは、それを押さえ込むことは不可能だった。とっさに股間を押さえようとする秋乃だが、とんでもないことに気付いてしまう。
「う、うそっ、やだっ……!?」
 そう。さっき無理矢理引き剥がしたキュロットのファスナーは、壊れたままだった。
 手を離せば、引っかかるところのないキュロットはすぐにすとんと足元まで落ちてしまい、下着がすっかり丸見えなのだ。ウサギのバックプリントのお気に入りがぐっしょりとおしっこに湿っているのが、道路の真ん中で見られてしまう。
 それを避けるためには、キュロットを引き上げる手を離すわけにはいかなかった。
 片手はラッキーの首輪につながるリード。
 もう片手はキュロット。
 しかも、ラッキーはおぼつかない足取りの秋乃を構わずぐいぐいと引きずってゆく。
 今にも爆発しそうな股間を押さえる手段は、どこにも残されていなかった。
「ぅ…あ、…ひぁっ……く、……や…だめ・……ぉ…しっこ…ぉ……っ」
 声にならない悲鳴を上げながらくねくね腰をゆすり、必死に膝をこすり合わせる秋乃。ぐぃぃぃっと思いっきり引っ張りあげたキュロットの股間部分が秋乃の股間に食い込んでゆく。しかしその努力もむなしく、いったん緩み始めた水門からはじゅじゅじゅっと激しい水流の音が聞こえ出した。
「ぁ、あ、ぁっ、ぁー…っ、ぁ……!!」
 ついに秋乃は、穿いたばかりのパンツに漏れ出したおしっこをたっぷり染み込ませてしまった。押し付けられた布地の中、ぐじゅっと暖かい湿り気が脚の間に広がり、股布から滲み出した熱い雫がキュロットの股間を大きく濡らしてゆく。
(いやぁっ、オモラシ、オモラシしてるの見られちゃ……ぁああぅっ…)
「くぅ…ぅ、ぅあっ……だ、め、……がまん、ガマン……っ……」
 キュロットの股間が引きちぎられんばかりに秋乃の脚の間に食い込む。しかしそんなもので到底間に合うわけもなく、頼りない括約筋は断続的にじゅじゅっ、しゅるるっと緩み続けた。キュロットの隙間からはじわじわと染みがひろがり、股布部分の保水力の限界を越えたおしっこが太腿を伝ってぽたぽたと地面に垂れてゆく。靴下もすっかり色を変え、スニーカーまでぐっしょりと濡れていた。
「はぁ…っ。ふぅうーっ、はぁあーっ……」
 荒い息をつきながら、ぎゅうぎゅうとキュロットを引っ張りつづける秋乃。
 今や秋乃には、おしっこを我慢するために一番楽な姿勢を取ることすら許されていなかった。
 プァン、と響くクラクションの音に、秋乃はふと我に帰る。
 ラッキーはいつもの散歩コースを通り、駅近くの大通りへと向かっていた。
 片側2車線の大通りだ。駅から繋がる商店街を経由して隣町まで続いており、人通りも多い。
(……嫌ぁっ……見られちゃ……っ!? ぉ、おしっこでちゃったの……っ、おもらしパンツ、見られちゃうっ!?)
 秋乃はぞっとしておしりに手をやった。脱げかけのキュロットのおしりははっきり分かるほどぐっしょりと濡れていて、薄いベージュから深い茶色に色を変えている。軽く押せば今にも雫が滴り落ちそうなほど、指先にもはっきり濡れているのが分かる。
 隠しようもない“失敗”の痕跡が刻まれた股間をぎゅっと握り、秋乃は慌ててラッキーのリードを引く。
「だっ、ダメ、ラッキーっ!! ……だめ、…そ、そっちはやめよう? ……ね? い、いつもと違う道で行こうよぉっ!!」
 キュロットの壊れたファスナーを押さえ、秋乃はいやいやをするように激しく首を振った。しかしラッキーはきょとんと首を傾げるだけで、なんだろう? というように鳴くばかりだ。
「ねえっ、ラッキーっ!! こ、こらぁっ、言うこと聞きなさいっ!! ……だめっ、お願い、待ってぇっ……!!! み、見つかっちゃうからっ……おしっこっ、我慢出来なかったの見られちゃうからぁっ…!! ぁああっ!!」
 秋乃の懇願にも構わず、ラッキーはべそをかく御主人様を通りへと引きずってゆく。
 まるで、さっきまで自分が強いられていたことをそのまま秋乃に対して繰り返すかのように。
「ぁ、あっ、あーっ、ダメっ、ダメぇ、やめてぇ、……っ、ラッキー……っ!!」
 ついに秋乃は大勢の視線がある大通りに引きずり出されてしまった。
 むりやり一歩を引っ張られるたびに、秋乃の股間はじゅっ、じゅじゅっ、と股布におしっこを吹き出した。アスファルトの上を引きずられ、倒れそうになる身体を必死に支える秋乃の脚の動きはそのままぱんぱんに膨らんだ膀胱を圧迫し、中身を絞りだしてしまうのだ。
 キュロットの股間に染み出したおしっこは、あっという間におしりまで回り、熱い雫が裾からぽた、ぽたと地面に落ちる。
 壊れたファスナーの隙間から白いパンツの端が覗いている。秋乃がぐしゃぐしゃになったキュロットを握り締めるたび、おしっこをたっぷり吸いこんで色の変わってしまった部分がちらりちらりと顔を出す。
(あぁああ……やだっ、やだあっ……み、見られちゃうっ……オシッコ我慢してるのっ……トイレ行けてないところ、見られちゃうよぅっ……)
 猛烈な羞恥が秋乃の心をざくざくと切り刻む。
 爽やかな風が吹きぬけていく中を、秋乃はぎゅうっとキュロットを握り、顔を伏せたまま進んでゆく。オモラシの跡を見られてしまう――そう意識するたびに下腹部のティーポットが疼き、切ない尿意がくつくつと沸騰する。
 濡れた下着に擦れた秋乃の女の子が、じんじんと熱くなっていた。
 長い我慢に加え、むりやり布地に擦られた秋乃の股間は、すっかり赤くなってしまっている。
 秋乃が大通りに出ると、目の前で、歩行者用の信号がちかちかと点滅を始めたところだった。
(はやくっ……おうちにっ……)
 一刻も早く、家に戻ってキュロットを脱ぎたい。トイレに入りたい。おしっこをしたい。はやる一心で横断歩道を渡ろうとした秋乃だが、その手はぐいっとリードに引き戻される。
「ら、ラッキーっ、な…なにしてっ…るのっ……は、はやくしないと、信号変わっちゃ…ううぅ……っ!!」
 秋乃を急き立てているのは羞恥心ばかりではない。
 ちょっとずつのおチビりを繰り返し、ますます募る尿意が、秋乃の小さな身体を攻め立てる。
 しかし、ラッキーは横断歩道の手前できちんと足を揃え、『まて』の姿勢で静止していた。
「ラッキーっ、はやくっ……ねえっ、どうしたのよぅっ!!」
 ラッキーはとても賢い犬だ。いちど教えられた事はすぐに理解して、きちんと守る。たとえおしっこを我慢していても、横断歩道の前では信号が変わるのをちゃんと待つこと。車が来たらとても危ないのだ。
 さっきの秋乃の教えをきちんと護って、ラッキーは動こうとしない。
 信号の点滅はやがて早まり、道路の車はしずかにブレーキを離してじりじりと進み始める。
「お、お願いっ……ラッキーっ、意地悪しないでっ……こ、ここの信号っ、すっごい待つんだよっ!? ……ま、また……がまん、できなくなっちゃうぅっ……ラッキーっ…」
 秋乃は焦って、力の入らない腕でむちゃくちゃにリードを引いた。しかしそんな曖昧な命令ではラッキーにはうまく伝わらない。
 仮にリードを離しても、ラッキーを置いて秋乃一人だけ家に戻るわけにはいかないのだ。
「ぁ、あああっ……だめえっ……」
 弱々しい秋乃の悲鳴と共に、信号は無常にも赤に切り替わる。
 片側2車線の道路を、勢い良く車が進み始める。
 同時に支える場所もなく、まっすぐ立つこともできない秋乃の目の前に、ウィンカーを出したバスが進み出てくる。
 混雑した車内には大勢の人が乗っており、その視線は自然と窓の外へ――秋乃のほうへと向けられていた。
(やだあっ…見ないでっ……!!!)
 脚を擦り合わせたままの滑稽な姿勢のまま、秋乃は声にならない悲鳴を上げた。どれだけ我慢しても、もうおしっこがしたいことを他人に悟られずに我慢することは不可能だった。乗客達の何気ない視線は無造作に、しかし容赦なく横断歩道の前で腰をくねらせる少女に注がれる。
 母親らしい女性に伴われ、窓際の席に行儀良く腰掛けていた――小さな女の子と、秋乃の視線が合う。まるで行進でもしているかのように足踏みを繰り返す秋乃を、女の子はじっと見つめていた。
(ち、ちがうのっ……ちがうんだから……っ、ら、ラッキーがいけないんだよっ!! ……こ、これはね、おもらしなんかじゃないんだからねっ!? ……お、おしっこなんかしてないのっ……暑くて、汗かいちゃっただけなんだよぉっ……)
 秋乃はたまらず、聞かれてもいないのに必死に股間の染みを言い訳する。しかし、そんなことで尿意がおさまるわけもなく、脱ぎかけのキュロットを押さえながらおしっこを我慢しつづける不自然な立ち方はかえって女の子の興味を引き立ててしまっていた。
「はぅうっ……うっ、くぅぅっ……ふぁぁ、んっ……っ!!」
 下腹部で張り詰めた感覚が強くなる。つぅん、と股間に走る甘い痺れが、秋乃の女の子の部分を誘惑する。このまましゃがみ込んでしまえとばかりに震え出す脚を押さえこみ、秋乃は信号機の柱にしがみついた。
 ラッキーがぉうん? とおすわりの姿勢のまま秋乃を振り返る。
 リードを握る手にじっとりと汗が浮かぶ。腰をくねらせ、膝をこすり合わせ、背中を丸めて浅く息を繰り返す。秋乃はおしっこを我慢することに全神経を注ぎこまねばならなかった。そんな秋乃を見ながら、女の子は隣に立つ母親の袖を引いて、秋乃を指差した。
 母親が慌ててやめさせるが、女の子は幼いゆえの無邪気な残酷さで喋るのをやめようとしなかった。
 それは、明らかに秋乃がトイレを我慢していることを指摘するもので。
 その証拠だとばかりに、はっきりと乗客達の何人かが秋乃のほうを振り返る。
(やだっ、やだあっ、ちがうのっ、してないっ、おもらしなんかしてませんっ!! ……ちゃ、ちゃんと我慢してますっ、…おトイレまで……っ、が、がまんっ、がまんするのっ…っ!! ちゃ、ちゃんとっ……オシッコ、オシッコぉ……っ、おトイレで…ぇっ、す、するのっ……)
 おヘソの裏で女の子の秘密のティーポットがぐらぐらと沸騰している。きゅん、と疼く下腹から股間までの甘い痺れが、ぎりぎりのところで綱引きを続ける秋乃の我慢を緩ませようとしてくる。
 へっぴり腰のまま、内股のみっともない格好で電柱にしがみつく少女。
 その股間を伝うおしっこの筋がさらに増し、ぽた、ぽた、と地面にまで染みが増えてゆく。
 排泄を待ち焦がれてひくひくと震える股間は、勝手におしっこの準備を整え、おなかの中にたまった熱い雫を吐き出そうとする。秋乃の理性はここはトイレではないと弱々しく抗議するが、その程度で秋乃の股間はおさまらなかった。
 長い長い我慢で酷使され、すっかり赤くなってしまったおしっこの場所がぎゅっと疼く。
 ぐっしょりと濡れたままの下着の股布に、またじゅじゅじゅっとたっぷりとおしっこを染みこませてしまう。保水力の限界になったキュロットから熱い雫が滴り落ちる。
 すっかり濃い色に変わったキュロットをぎゅぎゅっと握り締めると、絞りだされたおしっこが秋乃の脚をいく筋も伝う。
 お気に入りのスニーカーも、靴下ごとすっかり秋乃のおしっこで水浸しだ。
「ふ……くぅうっうっ……うぅっ、くうぅうぅぅぅぅううぅっ……!!」
 この後に及んでも、なお秋乃は我慢を続けていた。
 勝手におしっこを漏らし始めている下半身を精一杯つなぎとめ、必死に信号が変わるのを待つ。
(だめ……おうちまでがまん……がまんするのっ……おうちのトイレ……おトイレぇええっ……おもらししないのっ、しないのおっ……)
 秋乃の状況はすでにどう言い訳しても明確な『オモラシ』でしかなかったが、漏れ出したおしっこの量はまだ全体の3分の1にすら及ばない。こうしている間にも、秋乃ががぶ飲みした1.5リットルのペットボトル一本分の水分が、秋乃の身体でじわじわとおしっこに変わっているのだ。
 秋乃はシャツが透けてしまうくらい、背中までびっしょりと汗をかいていた。おもらし寸前の我慢が少女の体力を奪い、弱々しい括約筋の力をさらに失わせている。
 おしっこの匂いが風に乗って立ち昇る。ずずずっと倒れこみかけた秋乃に気付き、ラッキーが励ますように勢い良く吠えた。横断歩道に近付いてきた部活帰りの高校生のグループが、なにごとかと秋乃の方を見る。
「やだ……見ないでぇ……ちがうのっ、おしっこじゃないのっ」 
 電信柱に抱きついたまま動けず、秋乃はべそをかきながら言い張った。
 コンクリートの柱にがりっと爪を立て、ぐしょ濡れのキュロットの上から股間を押さえる。
「でちゃ…っ ぅ……だ…め・・…っあ、ふ、くぅ……ふぁっ」
 ぽたぽたと落ちるおしっこの雫が、電柱の足元に次々と染みを作ってゆく。
 濃いおしっこの匂いが立ちこめてゆく。ここは秋乃専用のおしっこの場所だとマーキングをしている。ラッキーでも我慢できたのに、秋乃にはできない。
 だらしない御主人様を急き立てるようにラッキーはリードを引っ張るが、もはや秋乃の脚はおしっこを塞き止める姿勢の内股からぴくりとも動かなかった。

 ぶしゅ、ぶしゅじゅじゅっ、じゅばじゅるじゅじゅじゅっ!!

「ぁ、あーっ、あーーっ、ぁー……っ……~~っ!!」
 握り締めたキュロットの股間から、猛烈な排泄音と共に大量の雫が吹き出した。秋乃のおなかの中に溜まっていたおしっこが一斉に吹き出して、キュロットの裾から滝のようにこぼれ落ちる。黒く染まったおしっこの染みがキュロット全体を占領し、秋乃の下半身を蹂躙した。
 ラッキーがご主人さまを心配して吠えるたび、回りの視線はおしっこを漏らし続ける秋乃に集中した。
「やだぁ・…っく…やめてよぅ……もう、いじわるしないで……ラッキー…っ」
 交差点の前、信号機の根元にラッキーの代わりにたっぷりとおしっこを撒き散らして、秋乃は股間を震わせた。ぶじゅぶじゅと恥かしい音を立てて吹き出すおしっこが下着にぶつかり、秋乃の下半身を浸してゆく。内腿からおしり、そして脚を伝って靴まで。暖かい感触が、秋乃の身体を水浸しにしてアスファルトに大きな水たまりを作る。
「やだぁ……おしっこ……オシッコっ……」
 膝から力が抜けて、秋乃は自分の作ったおしっこの水たまりにばちゃん、と座り込んでしまった。地面にこすりつけた股間から恥ずかしい熱湯が吹き出して、ぶじゅぶじゅぶぶっ、とくぐもった水音が響く。
 まだまだ秋乃のおしっこは終わらない。
 信号が変わって、横断歩道を渡ってきた人たちが何事かとギョッとしながら秋乃を見つめる。
「うぇっ……ひっ…うっ、ぇっ、ふえ、っ……」
 込み上げてくる嗚咽を我慢できず、泣き出してしまった秋乃の回りで、ラッキーはいつまでも吠えながら、おうちに帰ろうとリードを引き続けているのだった。



(初出:おもらし特区 SS図書館 2006/11/20)

 
[ 2007/10/13 09:41 ] 小説 | トラックバック(-) | コメント(-)
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