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謎の競技の話。 


 最初は女の子たちが謎の状況でくじ引きでトイレの順番待ちをしてるってだけの妙なシチュエーションを書くだけの予定が,だんだん変な方向に。





 そこは大きな、まるで体育館のような部屋だった。
 屋外ではないことは、空を覆う天井と、小さな窓から夜空が覗いていることでわかる。見上げる天井も高く、端までは大きく、バスケットのコートどころかサッカーグラウンドですら入ってしまうのではないかと思うほどに、広い。
 そこが何のための設備なのかは、一見してわからない。ワックスを掛けられた板張りの床は段差も継ぎ目もなく、軋むこともなかったが、さりとてその上に何かのスポーツの試合場などが用意されているわけでもない。
 確かに、床には白いテープが何かを示すように張られ、この会場を用意した人間の意図を知らせている。しかしそのテープが作るのは、細長い四角。
 そう、まるで駅のホームにある、車両ドア前の列を作るためのガイドにも似ていた。
 そして事実、そのガイドに従うように、多勢の少女達が列を作り、並んでいた。

「っ、くぅ……」
「ぁあぅ……っ、」
「はあ、はぁっ……」

 少女たちは一様に顔を曇らせ、悲痛な表情を浮かべていた。その脚は硬く閉ざされ、姿勢は前屈み。いまにも倒れこんでしまいそうな者や、顔をうっすらと赤くして、息を荒げている者もいる。
 年齢はみな一様で、さしたるばらつきは見つからない。まるでどこかの学校の一学年をそのまま抜き出してきたようだ。それを証明するかのように、少女たちは同じ服装をしていた。
 やや厚めの生地の、白いTシャツと、深い紺色のスパッツ。
 誰が見ても納得の、体操着である。流石にこのご時世、もはや化石を通り越して骨董価値をもつようになったブルマを身につけていることこそないものの、下半身を覆う薄い布地は、健康的な少女の脚をしっかりと包み、その柔らかな曲線を綺麗にトレースしている。 
 いまはぎゅうっと閉じ合わされた内腿と、その上にくいと切れ込んだ股の付け根のささやかな食い込みも、しっかりと覗かせるほどだった。そこから、少女達が当然その下に穿いているはずの下着を身につけていないこと、競技用のスパッツには当然あるはずの、股間を保護するパッドの縫いこみもないことが見て取れる。
 そしてまた――ばらつきのある中で特に発育の良い少女の胸元に眼をやれば、その体操着の胸元を押し上げる胸の膨らみを保護するブラも、また少女たちには許されていないこと分かる。
 ブラに限って見れば年齢を考えればそのような少女がいてもおかしくない世代ではあるが、それにしても全員そろって、おまけに下まで、体操着以外をなにも身につけていないというのは、いささか異常な状況である。

「ぅ、あ……く……」
「っふ、はぁ、はあっ、……ぅああぅ」

 体操着そのものにも、異常はあった。ふつう、胸に記されるのは、古式ゆかしくクラスのナンバーか、あるいは昨今の防犯事情から目立つものは何もなく、裏地に小さく名前を記す程度のもの。
 しかし、少女たちの胸には確かにゼッケンのようなものがあったが、そこに記されているのは共通性のないただの数字だけだった。ぱっと見たところ3桁以上のものはなく、そして同じ数字を振られている少女もいない。それだけ見れば、たとえばマラソンの選手番号にも見えるかもしれない。
 だが――その数字は、やけに偏っていた。300番台から、400番台――時折500番台が混じり、ごくごく稀に600番台、700番台前半の番号が見える。800を超える番号はほとんど見当たらず、逆に200番台の前半や100番台もまた、ほとんど見つからない。
 まるで何かの成績のようだが、少女たちの様子とその番号が付随している様子もなかった。番号が大きいから皆苦しげなのかと言うとそうでもなく、その一方で小さな番号でも今にも倒れてしまいそうにふらふらな少女もいる。
 そして――少女たちは同時に全て裸足だった。体育履きどころか、ソックスまで脱がされた剥き出しの脚のままでいた。まだ季節的には十分に冷えるこの時期の夜中、広い広い板の間に立つには、少々辛いものがあるだろう。
 思わず爪先立ちになってしまうのは、そのせいだろうか?
 しかし、少女達が小さく声を上げながらも切なげに身をよじり、ふらふらと危なっかしく身体をゆするのには、他にも理由がある。
 少女たちの手は、皆、誰一人の例外もなく、背中で細い紐を使って、しっかりと縛られていたのだ。ちょうど腰の上、肩甲骨の下、『背中に手が回る』の言葉を文字通り体現するかのように、少女たちは両手の動きを完全に封じられている。
 ただでさえ冷たい板の間で歩きづらいところに、手まで縛られて――うまくバランスを取るのは至難の業だ。おまけに、並んだ列にいる皆が一様に同じ格好をしているため、誰かがふらつけば他の誰かにぶつかったり寄りかかったり、ちょっとしたことで次々連鎖的に倒れてしまいかねない。
 手を使わずに起き上がることは、このまま立っているよりもさらに難しいことを、少女たちは知っている。

「っ、あ、はあ、は、はっ」
「ね、ねえ、は、はやく――お願い、はやくして……っ」
「もぅ、ほ、ほんとうに、だめ、なのぉ……っ!!」

 身体をくねらせる少女のうち、列の先頭のほうにいる少女たちが、小さく唇を震わせて懇願する。
 その視線の先には、制服姿の数名の少女が、小さなテーブルについていた。体操着の少女たちとさして年齢のかわらない彼女たちは、しかし幾分大人びた雰囲気で、いかにも多勢の前で喋るのに慣れている、と見える。
 その保障のように、制服の片袖にピンで留められた腕章には「生徒会執行部」と記されている。そのことが、多くの少女たちと、その向かいに立つ制服姿の少女たちの間に、明確な差をつけているようだった。
 列を作る少女たちは一見、順番を待つかのようにもみえる。しかしその先頭の少女が何かを許されているかというとそんなこともなかった。他の体操着姿の少女たちとまったく同様、腕を後ろに縛られたまま、腰を震わせての前傾姿勢だ。
 もはや、彼女たちの『オシッコ我慢』は限界に達しつつあるのは誰の眼にも明らかだった。



 そんな状況の中、机に座る制服姿の少女のひとりが、隣の少女に軽く視線を向けた。制服姿の少女たちは何かを確認するように小さくうなづきあってから、その中の一人がパイプ椅子を引いて席を立つ。
 一斉に、体操着姿の少女たちの視線が、そちらに集中した。一つ一つの言葉を聞き取れない、騒音にも似たかすかなざわめきが起こり、広い室内に浸透してゆく。
 そんな注視の中、まったく気にする様子もなく、席を立った制服姿の少女は卓上のマイクを取り、軽く音響のオンオフを確認して、口を開く。

『皆さん、長い間ご苦労様でした』

 わずかにハウリングの残る声が、大きな室内に反響する。部屋のどこにいようと関係なく届く、無視もスルーもできない、まるで命令のような声だった。
 それに従い、体操着の少女達が小さく身を震わせる。脚を深く『く』の字に曲げ、まるで柔軟体操のような姿勢。けれど、緊張に硬く強張った少女たちに余裕の色は見えない。
 ご苦労様と言われても、それで彼女たちが苦痛から解放されるいるわけではない。現在進行形で激しくなり続けるさざ波のような排泄欲求に、少女達は背筋にうっすらと汗を浮かべ、熱い吐息を繰り返す。

『まもなく集計が終わります。結果発表までは今しばらくおまちください。……初めに、生徒会執行部より今期の総評を申し上げます』

 どこからか、苦悶のような声が上がった。
 そんなことはいいから早く! という一同の強烈な視線を、まるで風を受け流す柳のようにあっさりと流して、生徒会の少女は一度、手元の目録に視線を落とし、再び顔を上げる。

『今期の測定では、記録を更新された方々はかなり少ないものとなっています。全体的に伸びは低下し、昨年までの状況に比して、特に上位の伸びが著しく低下していることが、集計結果に現れています。一方で下位成績者のなかには努力を放棄するような姿勢もみられ、各委員会からも厳しいご意見をいただきました。また測定中の規律にも大きな乱れが見られ、学院生徒にはあるまじき姿を晒した生徒も少なくありません。……今一度、“貞淑なる乙女”たらんとするものの集う本学院の本分に立ち返り、より一層の向上をはかることが急務と思われます』

 生徒会の少女は、良く通る声で淡々と総評を読み上げてゆく。
 寄り添う少女達の多くは、けれど半分上の空で、一刻も早く順位発表に移って欲しいとただその一念を繰り返していた。なかには本当に口の中で小さく、はやく、はやくとつぶやき続けているものまでいる始末。
 ただ、ぎゅうっと下半身の一箇所、熱い水流の渦巻く場所の出口を閉ざしているだけで、余裕や節度といったものは微塵も感じられない。
 そんな有様であることも、生徒会の少女たちには嘆かわしいものに映る。これがかつて戦前は県下随一の偏差値を誇り、かの霧沢と並んで全国にその名を示した聖ユリアン女学院の現在なのだ。
 来年度から実施が予定されている強化プログラムの執行も、これではしかたないことかもしれない。そんな、諦観にも似た共感が、生徒会の少女たちの間に広がる。なによりも先に立って、かつての栄光の復権を目指す生徒会の前には、重くも遠い道のりがあることが改めて感じられた。

『それでは、これより上位成績者の発表を行います。
 ――順位の発表の前に、再度、順位と賞品の確認をいたします。まず第1位。校舎一階、西館トイレ、4番目の個室の鍵』

 ざわぁ、とまるでうねりの様にざわめきが膨れ上がった、その一言だけで、これまで小さな静寂を保っていた広い室内に、喧騒にも似た騒音が巻き起こる。
 これまでの長い長い我慢が報われる瞬間を前に、体操着の少女たちに落ち着けというのが無茶と言うものだった。彼女達は皆、全校生徒の面前でのオモラシという最低最悪の結果を回避するためだけに、脚を寄せ合い腰をよじって、必死に耐えてきたのである。
 それに加えて1位の賞品内容はまさに破格。どれだけ占領しても、どれだけ思う存分使っても構わない、自分専用のトイレが与えられるということだ。これはおよそ一週間にわたり、学院で誰も手に入れられなかったものである。
 気兼ねなく思う存分に好きなだけオシッコのできる、そのための専用の場所――どれほど焦がれて、どれほど恋しかったことか。喉から手が出るほどに欲しいまさにその場所が――1位の賞品だという。何十時間にも渡るガマンの果てにそんなものを示されて、これでおとなしくていろという方が無理だろう。
 ぎゅうっとスパッツの上から脚の間を押さえ込みながら、体操着の少女たちは誰もが皆、自分が“そこ”を使っている光景を想像する。たとえ絶対に1位なんてありえないことが分かっていても、そうせずにはいられない猛烈な衝動が、いまなお下腹部に激しくこみ上げているのだ。想像の中で、400人近い少女たちのオシッコが、一斉に校舎一階、西館トイレ4番目の個室の中へと流れ込んでゆく。
 怒涛のような熱気のうねりを前にして、しかしマイクを取る生徒会の少女はまるで動じず、賞品説明の補足を付け加える。

『言うまでもありませんが、賞品は一人でしか使用できません。規約に違反した場合、入賞資格とともに賞品も剥奪になりますので、ご注意ください。その場合、繰り上げ当選などもありません。
 続いて第2位、こちらのシビンです』

 言葉に従って、生徒会の腕章をつけた少女の一人が、高々とガラスの容器を掲げて見せた。1位の待望のトイレから、2位にいきなりのランクダウンを宣言され、落胆と悲痛の声が湧き上がる。
 そう、確かにこのガラス容器も、オシッコを済ませるためには問題なく使えるもので、そのために用意されたものだ。もともとの用途から異なるそこいらの缶やペットボトルなんかに比べれば、遥かに遥かにマシなのだが。
 しかしせめて、2位ならば、準優勝ならば。“おまる”くらいはあるかもしれないと思っていた少女たちには、あまりにも辛い仕打ちだった。
 なにしろこのシビンは透明なガラス製の容器。無論ながら男女兼用のようなちゃちなものではなく、ちゃんと思春期を迎えたばかりの少女の身体に合わせてにつくられた特注品である。だが、それでもトイレとはまったく違う。たとえカーテンの裏側や物陰などに隠れてこっそり使ったとしても、その透明な容器にたっぷりと注がれた、恥かしい液体の様子も量も色合いもなにもかも、余すところなく見られてしまうのである。
 賞品内容として上げられたのはシビンのみで、それの使用時、あるいは使用後に、中身をどこかに処分するための権利は付随していないことが生徒会から強調される。予想通りのことではあっただろうが、少女たちはさらに悲鳴を上げた。
 つまり、あのシビンにオシッコを済ませてしまったが最後、それをずっと持ち続けていなければならないというわけだ。

『3位は携帯トイレ。ごく標準的な、市販のものです』

 体操着の少女たちの苦悶をよそに、淡々と解説が進む。
 3位の携帯トイレを見て、少女たちの多くは意外な安堵を見せた。実のところシビンなどといわれるよりは、気分的には遥かにマシなシロモノである。もちろん比較の問題ではあるが、シビンと同じ使用法だとしても、人生でお世話になるかもしれない回数を比べれば、こちらのほうがずっと抵抗が少ないのだ。
 その一方で、緊張に全身を強張らせた少女たちも少なからずいる。顔色を変えた少女たちの胸元の数字は、一様に500を超えていた。
 市販品、つまり一番良く使われるということは、まず標準的な使用方法、あたりまえな使用条件を前提にしている。だからこそ、予定を超えた状況には対応しきれないということだ。
 もっとも、こんなものにオーダーメイドなどないわけだから、仕方のない問題ではある。しかしどれだけ希望的観測をしても、そもそもこの賞品が自分にとって役に立たないことをはっきりと自覚している少女たちにしてみれば、こんなものはまるで賞品たりえないのである。
 もう脚の付け根の出口のすれすれまでやってきているオシッコは、一度出し始めたが最後、途中でとまることなどない。それゆえに、標準的な携帯トイレで最後まで“済ませられない”となれば。余った分は全部外に溢れてしまう。それでは――トイレを使った意味などないのだ。その意味で、まず間違いなく誰でもすっきりと楽になれるだけ、シビンのほうが上等とも言えた。
 折角、苦労に苦労を重ねてたどり着いた上位入賞の賞品が、その実まるきり役立たないなど――報われないにも、程がある。だからこそ、おそらくあの小さな携帯トイレよりも多くのオシッコを、おなかの中に溜め込んでしまっているだろう少女たちは、そのことに苦悶し、表情を青ざめさせていた。

『4位の賞品は、あちらに用意しました』

 次の賞品は、生徒会の手によって示されることはなかった。マイクの解説に促され、少女達はその視線の先に、それを見つける。
 4位、表彰台を外れて入賞のトップに当たるその賞品は、いかにもなイメージそのままの、チープなデザイン。白鳥を模した子供用の“おまる”だった。
 先ほど、いっそもうそれでもいいと思っていた少女たちも、その光景を見て絶句する。どうしてトイレの次あたりに来そうなこの賞品が4位なんて中途半端な順位に用意されていたのか――。
 その理由は、本来、持ち運びができるはずのそれが、部屋のほぼ中央あたりにせり出した大きなステージの上に、高々と設置されていたから。これ見よがしに大きなボルトと金具でステージ上に固定されたそれは、さらにガムテープでぐるぐる巻きにされ、持ち運びをはっきりと禁止されていた。
 つまり、あの遮るもののないステージの中央で、おまるを使えと、そういうことなのだ。いくら緊急避難でおまるそのものを使うことは許容できても、400人を超える視線の中であの赤ちゃんがトイレトレーニングに使うような器具をまたぐとなると、その難易度は桁外れに跳ね上がる。
 もはや、3位の表彰台を外れた者は、評価にすら値しないと言わんばかりの仕打ちだった。

『なお、前後いたしますが努力賞も隣に用意されている金ダライです。努力賞の発表は入賞者の発表後に行います』

 さらに幾分酷いのが、憎らしいほど配慮されたその隣の金ダライ。条件そのものはおまるとほぼ一緒だが、もともとそのための用途に作られていないわけだ。
 生徒会の少女が試しに軽く叩いただけでかぁん、と五月蝿いほどの音を立てる金ダライは、まるで音響増幅器のように、激しく迸り叩き付けられる少女の水流の水音を、受け止めたそのままに、この広い部屋の中いっぱいに喧しく鳴り響かせることだろう。
 それのもたらす苦痛といったら、あのマイクの比ではない。どちらが少女たちを辱め、苦痛を強いるかは言うまでもない。
 しかしそれも仕方のないことだ。努力賞とは努力したことに対し報いるための賞ではなく、より大きな努力を期待するための、一種の罰ゲームに近い。ゆえに、我慢の足りない少女にはそれ相応の大きな羞恥を与えると言うのが、今の生徒会のやり方である。

『5位は、飼育委員会からの提供です。この場を借りてご協力に感謝いたします』

 次にてできたのは、ペット用の室内トイレ。匂い消しの砂が敷かれた猫用のものと犬用のものが用意され、用途に合わせてどちらでも選択可となっている。しかしそんな選択肢を、与えられたところで崖から落ちるのとライオンに食べられるのどちらがマシかというような問いしかない。用途に合わせてなんて、いまにもオシッコの漏れそうな少女たちにとって、使用方法はひとつしかないに決まっているのだ。
 しかも、室内用のペットというのは総じて小さい。それだけにそのトイレもとても小規模なもので、普通に使うにしたってそもそも無茶がある。いくら小柄な少女と言っても、チワワや猫にくらべて、出す量が少ないわけがない。まして今ここにいる生徒の全員は、ほぼ膀胱の貯水量の限界までオシッコをガマンしているのである。明らかに吸収が間に合わないことがはっきりと分かるものだった。
 しかしそれもまた当たり前のこと。5位の商品が、それより上位の賞品よりマシなわけもない。
 ……唯一の救いは、この5位の賞品が4位の賞品のようにステージ上に固定されているわけではないということだろうか。生徒会の補足もなく、それは、少女たちにこのペット用トイレを使ってオシッコをする場所だけは自由であることを保障するものだった。
 もっともその利点も、砂のぎっしり敷かれた重いペット用トイレを、少女の細腕とふらつく脚でどこまでか持っていけることができるというの問題を踏まえたうえでの話なのだが。

『6位は紙おむつです。なお、前回はこちらの不手際で幼児向けのものが用意されておりましたので、今回は成人女性用のものを用意いたしました。きちんと着用の上、ご使用願います』

 そろそろ本当に賞品なのかも怪しくなってくる。確かにオムツにすること自体はオモラシとはやや趣を異にし、違うと言えるかもしれないが、そもそも少女達が今切実に欲しているトイレという場所がきちんとあって、その使い方も分かっているのに、その上であえて、漏れそうなオシッコのためにオムツを穿いて、そこにオシッコをしろなどというのは実に問題外、ありえないことだ。
 前回も今回と同じく6位の賞品はオムツだったが、生徒会の不手際によって幼児向けのサイズのものが用意されてしまった。そのため見事6位に入賞した少女はそれを着用できないという理由を盾にこれ幸いと地面にそれを配置して、そこにオシッコを済ませ、想定とまったくことなる使い方をされてしまったという珍事が起きている。
 これでは、人目から隠れてきちんとシビンなり、携帯トイレを使ってしまうのと大差がなく、持ち運びの許されない4位、5位の賞品よりも事によると上位の賞品と扱われかねないものだった。
 その反省を踏まえ、生徒会はきちんと着用して使用できるものを用意し、権利にもそれを含めてきたのである。

『7位、シャベル。使用敷地は校庭グラウンド内のいずれかとします』

 体操着の少女たちの悲痛な呻きも、そろそろ最高潮に差し掛かっていた。一見まるっきり無関係にも見えるこの賞品、要するにどこでもいいから穴を掘って済ましなさい、ということだ。
 しかもなんとだだっぴろい校庭の、グラウンドの中だけをその対象にするという凄まじい縛りつき。そもそも我慢しながらのへっぴり腰ではまずまともに使えるだけの深さ、大きさの穴を掘りきることもできないだろうし、万一間に合っても、グラウンドの中央でなければならないという制限が同時に発生し、ステージの上での行為よりも酷いことになりかねない。
 第一、自分のオシッコのための穴をいちいち掘るなんて、惨め極まりない思いをせねばならないとなれば、受け入れられる者はほとんどいないだろう。
 なお、こちらも、数年前に砂場を利用した少女がいたため、以後レギュレーションに改定が加えられているのだった。

『8位、西棟三階視聴覚室横トイレの鍵』

 ここで、いきなり具体的に出てきたトイレの配置に、一瞬少女達の間からざわめきが起こる。しかし、そこが男子トイレの場所であり、おまけに個室が全て鍵で封印されているという条件が継いで明かされると、ざわめきは叫びに変わった。
 たとえ男子トイレに入ること自体に抵抗があっても、個室そのものは女子トイレと何も変わらない。それだけならご褒美にも思えるものだが、個室が封印されているということは、使えるのは小用便器か、あるいは排水溝くらいのものだ。そこで用を済ませるというのは、正直に言っても恐ろしいほどの苦痛である。
 8位の賞品に許された自由は、立ってするかしゃがんでするかを選択できる程度のものでしかなかった。

『9位、ポケットティッシュ』

 ここで示されたのはなんとも意地悪なことに、本当にただのポケットティッシュ、それも使い古されてあと残り1、2枚というだけのものがひとつだけだった。もはや限界に近く肩を寄せ合う少女たちの前にそれを堂々と掲げてみせる生徒会も、大したものだといえる。
 確かにいま、体操着のみの着用を許され着の身着のままの少女達は他に何も持たされておらず、後始末に使うポケットティッシュは必須のものだろう。何しろこれまで示された賞品の権利には、1位の賞品を除いてこの後始末という観点がすっぽり抜け落ちている。
 だが、逆にポケットティッシュだけ提示されてもどうしようもないのだ。仮に家庭用のティッシュひと箱ともなれば、出てきたオシッコを全部、染み込ませてしまうという方法もないわけではないが、もしそれが叶うならそれは4位、あるいは3位の賞品だろう。
 9位の賞品に相応しく、少女たちの苦痛の解放には何の助けになるわけもなく、ただ握り締めるくらいにしかならないのである。

『10位、入賞最後となる権利は、我慢権です』

 耳慣れない単語は、しかし体操着の少女たちにはすぐに理解のおよぶところとなった。生徒会が示したのが、彼女たちの備品の鋏だったからだ。つまり、いま背中で固定されたこの腕を自由にしてくれるので、どうぞご存分にぎゅうっと握り締めて、オモラシを我慢なさいということなのである。
 姿勢もポーズも制限なし、まったくのフリースタイル。今は膝の交差と腰のくねりに頼るしかないために、いますぐ両手でそこを押さえ込みたいという猛烈な衝動は、ほぼ全ての少女たちに共通の思いだった。そこで、10位にギリギリ食い込んだご褒美に、どうぞ心ゆくまで堪能してもいい、というものなのであった。
 思うように動けないことに比べれば破格の、けれどまったく根本的解決にならない商品なのは、実に憎らしい。
 そして――ここに至り、少女達は気付く。
 これまでに示された9位までの全ての賞品に対し、両手を自由にするという条件が含まれていないことに。
 つまり、1位のトイレ使用権も、2位のシビンも、3位の携帯トイレも、4位のおまるも、努力賞の金ダライも5位のペット用トイレも6位のオムツも7位のシャベルも8位の男子トイレの使用権も9位のポケットティッシュですら。
 そもそもそれを使うための、手が使えないのだ。
 そんな状況では、たとえどんなに素晴らしい賞品をもらえたとしても、ただの宝の持ち腐れ。オシッコを済ませるための何の役にもたちはしない。それどころか、なまじできるという希望がチラつかされるだけ、苦痛を倍増させるだろう。その果てに待つものは間違いなく、限界を超えてのオモラシである。

「い、意地悪っ……!!」
「ひどいよ、ひどすぎるよぉ……」
「そんな、そんなのって……」

 渦巻く抗議の中、上位10位の成績が公開される準備が始まる。ほんの十何分か前まで、少女達が命と引き換えにしても欲しいと思っていたものは、まるで砂漠の蜃気楼のように、どこかに消えうせてしまっていた。身をよじらせる少女たちに、しかし無常にもランキングを並べた紙が掲示板に張られて行く。
 さっきまでは羨望の対象であったはずの上位入賞者。しかしいまはそこに選ばれてしまうことこそが、最悪の罰ゲームだ。

『さて、それでは順位の発表となります。なお、選外の方々には残念賞として、お茶が配布されます。良く冷えていますので、残さず飲んでください。
 また、前回記録を更新された方には、身体を温められるように暖かいお茶が用意されています。それでは――』

 そして――
 少女たちの苦悩は、続くのである。


 (初出:書き下ろし)
[ 2009/04/04 16:51 ] 小ネタ | トラックバック(-) | コメント(-)
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