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全校放送のお話。 

 
「ねえ、まだやってるの? 今日の放送、坂崎さんの番でしょ?」
「あ、は、はいっ……」
 同じ放送委員の加奈が、口を尖らせて理穂を睨んだ。黒板いっぱいに書かれていた板書をやっと写し終えると、理穂は慌てて席を立つ。もうすっかり給食の準備は終わっており、すでにクラスのみんなは『いただきます』の体勢だ。
「い、いってきますっ」
「早くしなさいよっ」
 ばたばたと鞄の中から原稿の入ったファイルを取り出し、理穂は大急ぎで教室を出た。理穂はクラスの学級会で選ばれた放送委員だ。これからお昼休みが終わるまでの40分、お昼の放送をしなければいけない。
(…………うぅっ……)
 途中、階段横のトイレが視界に入り、理穂はきゅっとスカートの前を掴んだ。
 実は今日、理穂は朝から一度もトイレに行っていない。おなかの中ではずっと我慢しつづけたおしっこが出口を求めて暴れており、一刻も早くトイレに駆けこまねば危険な状況だった。
(どうしよう……放送室入ったら、これからまたずっと我慢しなきゃ……)
 放送が終わるまで40分。理穂はその間ずっと、おしっこを我慢しなければならない。
 とても無理だと、落ちつかない下腹部がざわざわと尿意を訴える。
 しかし、放送室は職員棟の3階にあり、急いでもかなりの時間がかかる。もうお昼休みは5分以上過ぎてしまっており、これ以上放送を遅らせるわけにはいかない。
 みんなに迷惑はかけられない。
(大丈夫……ガマン、できるよっ……)
 真面目な理穂は、そう自分に言い聞かせると、背中に感じるトイレの誘惑を振りきって廊下を走った。





 マイクのスイッチが入り、お昼の放送のテーマがはじまる。
『お昼の、放送ですっ』
 スピーカーから聞こえるのは、もうすっかりお馴染みになった今年度の放送委員の声。5年4組の委員の女の子は、すこし小さいけれどよく通る声で、全校生徒にもそれなりの人気がある。
 しかし、その子の今日の放送はどこか落ちつきが足りなかった。
『きょ、今日もおいしく、給食を食べましょうっ……』
 ぺらりと原稿をめくる音。
 その動作も、どこかもどかしげに不安定だ。時折かすかに響く物音が、かすかな違和感を滲ませる。敏感な生徒たちの数名は、もうその頃から今日の放送の異常を感じ取っていた。
『いただき、ます……っ』
 放送に合わせて各クラスの“いただきます”が唱和する。
 ゆっくり流れ始めた音楽の隙間に、くしゃっと何かが握り締められる音と、
『……ふぁっ……』
 そんな小さなうめき声を聞いたのは、やはりそんな敏感な生徒たちだった。


  「…………?」
  「なんだろ?」


 些細な疑問は、しかしまだ形になることはない。曖昧な疑念を交えながら放送は続いてゆく。
 今日の放送はリクエストのあった土曜日朝9時のアニメのテーマ。高学年の生徒は子供っぽいと馬鹿にしているが、低学年のクラスでは大盛り上がりだった。
 けれど、曲を繋ぎ変えるときに妙な間が開いたり、ぷつっ、と音が途切れて『失礼しました』とフォローが入ったりする回数はいつもの数倍だった。もう11月、放送委員はすっかり仕事に慣れ、最近ではそんなことはもう滅多に起きない。
 聡い生徒たちは、「なにがあったんだろう?」「だいじょうぶかな?」とスピーカーの向こうを想像し、顔を見合わせていた。
 そうして、悲劇の幕が開く。
 流行のポップスの曲のサビの直前で、突然パチン、とマイクのスイッチが入り、放送が切り替わったのだ。
 音楽のボリュームがぐっと下がり、スピーカーにマイクを通じた放送室の生の音声が割りこんでくる。
 ぎしっぎしっと軋む椅子と床、擦れ合う布地の音。
 さすがにこの段に至り、多くの生徒たちが不審を抱く。
『……ふぅ……っくぅっ……』
 その頃にはもう、どの教室でも半分近くの生徒が、流れる放送の声が小さく震えていて、いつもの調子とは違うことに気付いていた。
 手持ち無沙汰な指先が、原稿をくしゃくしゃに握り締める音。
 ぎゅぎゅっと、椅子の上でどこかを固く握り締める音。
『……ぅ……ちゃううっ……』
 かすかに聞こえる声は、意図せずに漏れてしまうかすれた声音。びくん、びくんと突っ張った上履きの爪先が床をこすり、せわしなく叩く。
『おしっこ……』


  「え……?」
  「ちょっと、え、今の」
  「聞こえた?」
  「うん、僕も……」


 それぞれのクラスが一斉にどよめき、お喋りを止めてスピーカーの向こうで繰り広げられている事態に注目する。
 そして、今度こそはっきりと、マイクが少女の囁きを拾う。
『…おしっこ、でちゃうっ……』
 ぎしっぎしっと椅子が軋む音。座る位置を何度もずらし、落ちつきなく腰をよじり、ぎゅうぎゅうと股間を押さえる。高性能マイクによる臨場感たっぷりの放送は、放送室にいる少女がもう立ちあがることもできないほど切羽詰って、おしっこを我慢しているのをはっきりと伝えていた。
 というのに、放送室の少女は我慢に夢中で、マイクのスイッチが入ったことにも気付いていない。
『トイレ……おトイレ、いきたい……』
 恐らくは誰にも聞こえない場所でしか露になることがない、あからさまな尿意の告白。おしっこのできる場所を求める声は全校生徒の耳にしっかりと届き、一年生から六年生までの全クラスは固唾を飲んで放送に聞き入っていた。


   「おいおい……マジかよ」
   「トイレ、我慢してるんだ……」
   「おしっこ、出来なかったのかな?」


 それは、教師とても例外ではない。
 全校生徒に生中継される、小学5年生のおしっこ我慢。
 一種異常な雰囲気に飲まれ、こんな時ただちに動くべき教師たちも、事態の動向を注視するばかりだった。
 ぎしっ、と椅子の軋みが深くなる。
『んっ……ぅっ』
 鼻にかかった声は、どこかエロティックですらあった。
 ぐっと身体を伸ばして、大きな尿意の波に耐える少女の姿。それを想像し、早熟な生徒たちは顔を赤らめ、俯いてしまう。
 と、揺れ続けていた音が不意に途切れた。
『え……』
 呆然とした声。途切れた言葉が、事態を把握して一気に青ざめる少女の動揺を如実に伝えていた。
『ぁああっ!? やぁ……っ、ち、違いますっ、違うんですっ!!』
 否定に合わせて、ぎぃ、がたっ、と椅子が揺れる。これまでの事態を悟り、少女はとっさに立ちあがってしまったのだろう。
『違うんですっ、これは、そのっ……えっとっ、そ、その、……わ、わたし全然オシッコなんかしたくないですっ、ガマンなんかしてませんっ!!』
 少女は完全にパニックに陥ったようだった。いくら否定しても、これまでの放送を聞いていればすぐに嘘だとわかったし、そもそもそんなあからさまな否定を聞いて信じる者など居ない。
 それに第一、そんな事を言いながらも少女の足が小刻みに震え、床を軋ませている音ははっきりと響いているのだ。


   「違うよね、すっごく我慢してる」
   「うん……」
   「我慢できないのかな。お姉ちゃんなのに」


 猛烈なおしっこの攻撃に耐えながら、おしっこなんてしたくない、と叫び続ける少女の恥態は、好奇心旺盛な小学生たちにとって格好の獲物だった。
『ちがいます……っ、、お、おしっこ……なんかっ』
 声が震え、マイクががたがたと揺れる。少女は耐えきれずにひざを折り曲げてしまい、マイクスタンドにすがりついたのだ。
 衝撃で原稿の束がばさり、と床に落ちる。
『ぉ、おしっこ……ぁ……だめ、ぇえっ……』
 音響装置の乗ったテーブルの角にぐりぐりと股間を押し付けて、破裂しそうな膀胱を圧迫し、尿意を無理矢理ねじ伏せようとする。そんな惨めな努力がはっきりと伝わってきた。


   「ね、ねえ……この子、もう漏らしちゃってるんじゃない?」
   「うん……」


 高学年の女子の心配通り、くぐもった水音がかすかに、しかし確かに聞こえてくる。
 ぷじゅっ、じゅじゅるるっ、じゅじゅじゅじゅじゅ……
 スカートの中の、白い下着の中。小さな排泄音が止まらない。下着の股布に次々と噴き付けられるおしっこが、少女の細い足を伝ってゆく。足踏みの音にも濡れたものが混じり始めた。


   「ねえ、オシッコ漏らしてるよ! お姉ちゃんオシッコ漏らしてるっ!!」


 低学年の男子が無邪気に叫んだ。
『違うんです……っ、…ぁあ……っ、やだ、ぁっ……』
 それが聞こえたわけではないだろうが、少女は必死に否定し、かぶりを振る。しかしすでにはじまったおしっこをとめる事はできず、足を伝うおしっこの筋はどんどん増えてゆくばかりだ。ぱた、ぽた、という雫の音も響き始める。
 がたん、と激しい音がスピーカーを叩いた。
 マイクスタンドが倒れて、床に落ちたのだと多くの生徒が悟った。
『ぁ、ダメ……、だめぇっ……!!』
 遠くなった少女の、身を切られるような切ない叫びが響く。


   「ぅわ……」
   「こいつオモラシしてるぞっ!! きったねー!」


『出ないで……出ないでぇ……っ』
 ぎしっぎしっと椅子を揺らし、机の角に股間を擦りつける必死の動作。
 それにも関わらず、緩み始めた水門からは熱い雫が次々に溢れ出す。長い長い間少女のおなかの中に閉じ込められたおしっこが、出口を求めて床に撒き散らされてゆく。

 じゅじゅじゅじゅっ、ぱたたっ、ばちゃ、ちゃばばばばば……

『ぁあ……はぁぅ……っ』
 排泄の解放感に声を上げながらも、少女の理性にすがって羞恥に身を震わせながら、我慢の限界を迎え床に大きく水たまりを作ってしまう一部始終。そんな恥辱の風景がはっきりと全校生徒に生中継されてゆく。
 床に落ちたマイクは臨場感たっぷりにオモラシの音を拾い、床を直撃する放水やぎしっぎしっと軋む椅子の様子を伝える。時折響くぼつっ、というノイズは、水たまりで跳ねたおしっこがマイクを直撃する音だ。
 少女が身体をよじってなんとかおしっこを止めようとする仕草や、匂いや湯気までがはっきり伝わってきそうなほどだった。
『ぅうっ……ひっく……ぇうっ……』
 いつの間にか、BGMになっていた音楽は2ループめに突入している。もう何分もたつというのに、長い長いオモラシは終わりそうになかった。
 おしっこのこぼれつづける音と、ばちゃばちゃという水流の響きを背景に、少女の嗚咽がスピーカーに響いている……



(初出:おもらし特区 SS図書館 2006/10/26)

 
[ 2007/10/13 09:43 ] 小説 | トラックバック(-) | コメント(-)
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